右端文学     

右端文学についての説明:書いてある文章のいちばん右端を縦に読んで下さい。おわり。    

REFERENCE

#01: 最期の時 (00/10/09) / #02: コルサコフ教授の憂鬱(00/10/09) / #03: たとえようもなくひどい物語(00/10/10) / #04: あの扉(00/10/11)


#04 あの扉



 「気楽な気分で訪ねる所じゃないよ。意志
がどんなに強くたって、帰れなくなる。」村
役場の先輩はそう言い残すと姿を消した。け
っして誰もが近づこうとはしない部屋。そん
な奇妙な部屋の存在自体現実主義者の香には
不思議に思える。しかしながら会計課の村田
が地下一階にあるあの部屋に先月分の飲み代
を集金に行って以来、帰ってきてないのもま
た事実だった。「用心なのはけらけら嗤いさ
。それさえ耳にしなけりゃ帰って来られるし
べつに問題はないよ。」まだ役場勤め新米の
彼女に課長は気楽な口調で語った。過去を顧
みるに問題が無いはずはない。職員、招待客
あわせて、去年だけで20人もの人間が未だ
帰らぬ人となっている。「い、いやあ、きっ
と居心地がいいだけじゃないかなあぁ。」た
ぬき爺。心の中で100回殺す。でも課長の
命令なら仕方ない。嫌々”あの扉”に手をか
けた。扉が開く。世界各国、あらゆる様々な
祝祭がその小さな扉の中から噴出する。「あ
みーが!あみーご!」失踪したはずの村田、
マラカスを振りながらの登場だ!華麗なるそ
のステップ。けらけらと嗤い、叫ぶ。「がん
がん腰を振れ!もっと!もっとだ!」軽快な
リズム。必死に両耳を塞ぎ、耐える香。「感
情を殺さないと。帰れなくなる。」堅く閉じ
た足。軽快なリズム。踏みたい。踊りたい。

#03 たとえようもなくひどい物語



 蒼く大きな月が向こうに懸かっている。ギ
イギイが鳴く声が小さくこだまする海。キョ
ザは呪術師の男に所有されている少年だ。ウ
ルコギム(悪しき者)と呼ばれる男はキョザ
を隣村にいる貧しい両親から買いつけると、
供物として捧げられるよう、肉体を改造した
。まず手始めに呪術師は、キョザの手にはま
るように加工されたドラセナ樹で出来たそり
状の板を2本取り出すと、その1端を水に漬
け、すぐさま取り出すとそれを1本づつ、け
して外れぬようにキョザの両手に取り付け、
ゴムバンドでぐるぐる巻きにした。しだいに
ドラセナ樹の板に水が染み込むにつれ、ぴん
と反り返り膨張していく2本の器具。苦痛に
悲鳴をあげるも、外されることは決して無く
関節は軋みをあげキシキシと音をたて、半ば
気絶しかけなキョザの苦痛は毎晩続く。じっ
さいの話この段階で舌をかんで自殺するしか
この全身をつんざくような痛みからきっぱり
逃れる術は他に無い。キョザは耐えた。月食
の夜、呪術師をその両手で打ち殺すと、すべ
からくその屋敷から逃げ出した。伸びきって
今は何もせずとも地面に届くような長さにま
でなった両の手をぶかっこうにゆらゆら揺す
りつつ走るキョザ。「果物は取りやすいな。」

#02 コルサコフ教授の憂鬱



 いいかい、まずかんじんなことは――そん
な、気楽な口調でコルサコフ教授は私に話し
始めた。ゆっくりと、諭すように。いっしょ
に思えるもの、それらのものの中から<真ん
中>を探し出し、つぎに<始まり>を、そし
て<最後>を探し出す事。重要な事は、ちょ
うど裏返しに見えるような出来事の全てが、
本当は1つの輪となって、繋がっている事な
んだ。世界に起こる諸々の事象に終わりなん
かない。全てはあるがままに続いてる。ただ
君の観測の方法によって君の周辺の物事はそ
う認識されるだけに過ぎない―――ひと通り
そんな事を言うとコルサコフ教授は美也ちゃ
んの手を握り、研究室の中へと消えていく…
美也ちゃんの背中の赤いランドセルも一緒。
「偽善」「姦淫」「虐殺」。私は自分の過ち
を激しく悔いた。「創造主どの、ほんのちょ
っとだけ、ほんの少しでかまわない。くたび
れ果てた私の前にその姿を現し下さい。きっ
とそのお情けによって魂は救われます。」ツ
ーツーツー。受話器の向こうの信号音。「最
愛の人よ。お前もか!!」教授の絶叫が声高
に響き渡る。「俺のお楽しみを邪魔するな!」

#01 最期の時 his last moment


             
あの悲惨な強制収容所時代、わ
れわれ囚人たちが、唯一人畏れ
と尊敬の念を抱いて接した、ポ
ルコノーレ獄卒。ポップコーン
を食べながら様々な拷問の発見
や発明に日々努めた彼の数奇な
生涯。「邪悪、悪意、不誠実が
この世に満ちている限り、我ら
正義の実践者たる存在はいまだ
神との契約を完了できぬ。自ら
の存在、それは聖なる帰依。だ
から毎日全裸ですごすし、奴ら
はかまわず皆殺し。<聖なる書
>の信徒たちに憐憫の情を抱い
てはならない。邪悪な存在全て
に死を。天も地も全て消えさる。」

→Go Top Page