コミックビーム収録作品リスト(2002年)

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2002年12月号

収録作品
作者タイトル備考
志村貴子表紙
志村貴子放浪息子新連載・含4C
吉田戦車武侠さるかに合戦
岩原裕二いばらの王
うすね正俊砂ぼうず
唐沢なをきさちことねこさま
森薫エマ
羽生生純青 オールー
しりあがり寿真 ヒゲのOL 薮内笹子新連載・含4C
作:ラスト☆パス+画:やまだないと夕陽の落ちるころ
水野純子ファンシージゴロ▽ペル
鈴木みそ銭−ぜに−
摩訶国彦驚異の旅目次漏れ
肉柱ミゲル100万円!ベガスくん
福島聡少年少女
作:TKD+画:竹谷州史皆殺しのマリア
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
安永知澄まる。(後編)
新谷明弘からだの国のありす新シリーズ
鈴木マサカズブルー・ドッグ・ブルース
タイム涼介あしたの弱音
須田信太郎ウルティモ・スーパースター
谷弘兒影絵の街
いましろたかし新世紀トコトコ節新シリーズ
金平守人カネヒラデスカ?

 今号もいろいろ読みどころが。まず志村貴子の新連載「放浪息子」がスタート。とある町に転校してきた女の子のような可愛らしい容姿をした少年と、男の子のようにサバサバした性格の少女が出会う。何やら女装をめぐる物語になりそうな感じだが……。まずはほのかにくすぐったいような感触の中で物語は発進。面白くなりそう。それからしりあがり寿の新連載「真 ヒゲのOL 薮内笹子」もスタート。PUFFYが「面白い」とテレビでいったら出版社も動いて再版されてしまったという例のヒット作。ちょいと間抜けだけど、真剣かもしれない愛の歌というテイストは変わらず。

 それから今号で非常にうれしかったのが、新谷明弘の新読切シリーズ「からだの国のありす」がスタートしたこと。ありすちゃんという女の子が出会う、からだに関する不思議な話。理科風味とファンタジー風味が融合した、なんとも不思議なテイストの作品。落ち着いた雰囲気もいい感じ。今後も楽しみだな〜。いましろたかしも読切シリーズ開始。「新世紀トコトコ節」。亀岡くんとチバちゃんという二人の、なんということもない日常を描いた作品。肩に力は入ってないけど妙に味がある。キャラクターの造形も、「釣れんボーイ」より「いかにもいましろたかし」って感じがする。

 読切の安永知澄「まる。」は後編が掲載。ちょっとしたことから日常に違和感を持ち始め、生活がちぐはぐになっていた少年の姿を丁寧に描く。絵の完成度も高いし、爽やかな読後感も良い。森薫「エマ」は、ウイリアムとエマがすれ違い続ける展開。そろそろクライマックスが近そうとか思ったが、次号予告には「新展開」とあるのでまだまだ先はあるのかな。福島聡「少年少女」は、故障中で動けない軍艦の乗組員の少年と、近くの島の少女とのエピソード。言葉は通じないながらもやりとりは微笑ましい。そんなほのぼのとした光景と軍艦という取り合わせも面白い。鈴木みそ「銭」。第2回めにして漫画雑誌にかかるお金の話題かー。興味あるテーマではあるけど、ちょっと内輪っぽさは出てしまうのでもう少し後回しにしたほうが良かったネタだったような気も。

※目次に記載されていた肉柱ミゲル「100万円!ベガスくん」は未掲載。代わりに摩訶国彦「驚異の旅」が掲載。


2002年11月号

収録作品
作者タイトル備考
やまだないと表紙
作:ラスト☆パス+画:やまだないと夕陽の落ちるころ新連載・含4C
須藤真澄おさんぽ大王
岩原裕二いばらの王
吉田戦車武侠さるかに合戦
うすね正俊砂ぼうず
唐沢なをきさちことねこさま
森薫エマ
肉柱ミゲル100万円!ベガスくん
鈴木みそ銭−ぜに−新連載
竹本泉よみきり▽もの きくばらないな少女
福島聡少年少女
作:TKD+画:竹谷州史皆殺しのマリア
水野純子ファンシージゴロ▽ペル
羽生生純青 オールー
深谷陽パチャールは朝やって来る
タイム涼介あしたの弱音
鈴木マサカズブルー・ドッグ・ブルース
安永知澄まる。(前編)
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
須田信太郎ウルティモ・スーパースター
摩訶国彦驚異の旅
金平守人カネヒラデスカ?

 新連載2本。やまだないと「夕陽の落ちるころ」(原作:ラスト☆パス)とと鈴木みそ「銭」。やまだないとについては、技量・完成度の高さは認めざるを得ないけど、この人が出てくるとなんかみんな同じ雑誌に見えちゃうようなところがあるので、正直どうかなーという気はする。ただ読んでみたらいつもの大人の恋愛っぽい話ではなく、女子高生のお話だったのでいつもよりはだいぶ違った印象だった。鈴木みそ「銭」は、死んで幽霊だかなんだかなった少年と、彼の人生の勝ちを値踏みするこれまた幽霊らしき少女が、お金というものの不思議を探っていく……という感じかな。一見ファンタジーっぽいけど、けっこう勉強になりそう。

 読切、安永知澄「まる。」。地球は自転しているから空を指して動かないでいれば地球と同じ大きさの丸が描ける。そんなことを考えついたが、公転を考えるとそれが正確な丸にならないことを知り愕然とした少年。それ以来、そのことが心に引っかかり続け、少年の心理状態は千々に乱れていく。ナイーブな少年の心を描いていくという物語は、スッキリした絵柄の魅力もあって、かなり引きつけられるものがある。今回は前編で、次号に後編が掲載。続きがすごく楽しみだ。深谷陽のバリ島シリーズ第4弾「パチャールは朝やって来る」は、予言能力があるかもしれない少女とその言葉に従う女性を中心としたエピソード。いつもながらにお話は鮮やかにまとまっており、さすがのうまさを感じさせてくれる。

 岩原裕二「いばらの王」は第2話めで、お話は「ジュラシック・パーク」ばりにスペクタクルに展開(といいつつ「ジュラシック・パーク」は観てないけど).なかなか力が入っているようでこの先も楽しみ。森薫「エマ」。今回はエマは登場せず。でも良家のお嬢さまであるエレノアちゃんがなかなか可愛い。福島聡「少年少女 土に還る花」。ボランティアで老人介護をやっている少女・エビスが覗き見る、ゆったりとした死のエピソードとでもいえばいいのかな。作画技術は高いし、物語の進め方も着実で巧み。やっぱりこの人漫画うまいなー。10月25日発売の単行本1巻も楽しみだ。作:TKD+画:竹谷州史「皆殺しのマリア」は爆発力が素晴らしい。滅びのイメージを常にまとっているようでゾクゾクさせられる。竹本泉「よみきり♥もの きくばらないな少女」。今回の主役の大ざっぱな女の子が踊るようなポーズをとっているところでけっこうトキめいた。


2002年10月号

収録作品
作者タイトル備考
岩原裕二表紙
岩原裕二いばらの王新連載・含4C
吉田戦車武侠さるかに合戦
唐沢なをきさちことねこさま
須藤真澄おさんぽ大王
森薫エマ
竹本泉よみきり▽もの どっちもどっちも
作:TKD+画:竹谷州史皆殺しのマリア
肉柱ミゲル100万円!ベガスくん
しりあがり寿弥次喜多 in Deep最終回・含4C
水野純子ファンシージゴロ▽ペル
羽生生純青 オールー
タイム涼介あしたの弱音
福島聡少年少女
鈴木マサカズブルー・ドッグ・ブルース
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
須田信太郎ウルティモ・スーパースター
さかいわたるoto chan
みずたまさやすアゴリンピック
田邊剛二十六人の男と一人の少女
金平守人カネヒラデスカ?

 岩原裕二の新連載「いばらの王」が始まって大期待。現代の医学では治せない難病を抱えた患者たちが、治療法が確立する未来になるまでのコールド・スリープに入るが、目覚めてみたら状況は一変。人っ子一人いないし周りは奇怪な植物のつるが取り囲んでおり、何か良くないことが起きていたということが一目で分かる状況に。主人公と思われる人物は、双子の片方に代わってコールド・スリープに入った少女カスミ。なかなかスケールの大きな話になりそうで楽しみ。前連載の「地球美紗樹」がいくぶん不完全燃焼で終わってしまった感があるだけに、今回の連載ではその流麗な筆を振るって満足行くところまで存分に描いていってほしい。こういうダイナミックで雑誌読みしやすそうな作品の存在は、雑誌全体のバランスから考えてもいいと思う。

 しりあがり寿「弥次喜多 in DEEP」は今回でついに最終回。「リアル」なんてものはあるようなないような。でも何かを信じて生きるほかない。幻覚的な世界を描いた作品としては相当な長編だったし、内容もみっちり詰まっていて毎回驚きに満ちていた。これは単行本でまとめ読みするとさらにすごそう。作:TKD+画:竹谷州史「皆殺しのマリア」はビンビン邪悪なまでのテンションが伝わってくる展開。激しく力強くパンチが利いてて面白い。とはいえお話はまだ序盤だから、今後どうなっていっちゃうんだろうと考えるとますます楽しみ。

 森薫「エマ」。寂寥感漂う展開。愁いに沈むご婦人は美しいねえ。竹本泉「よみきり♥もの どっちもどっちも」。まあなんとマイペースなことか。この人の作品内にある、恋愛のような恋愛ではないような……という不思議な距離感はまさに独特。吉田戦車「武侠さるかに合戦」は最後のコマで思わず爆笑。*という感じ。やはり吉田戦車は珍妙なキャラを描かせると抜群だ。あと今号では「秋の新人読み切り3本立て」ということで、さかいわたる「oto chan」、みずたまさやす「アゴリンピック」、田邊剛「二十六人の男と一人の少女」(原作:ゴーリキー)が掲載。さかいわたるはTシャツの図柄にでも向きそうなポップなデザインの作画、みずたまさやすはアゴで闘う格闘技というヘンなものをパワフルに描いてしまう荒削りな魅力、田邊剛は固さはあるものの丁寧に描き込まれた白黒のコントラストの利いた作画と、それぞれに持ち味あり。この中で一番活躍できそうなのは、みずたまさやすかなー。


2002年9月号

収録作品
作者タイトル備考
吉田戦車/唐沢なをき表紙
吉田戦車武侠さるかに合戦新連載・含4C
森薫エマ
羽生生純青 オールー
うすね正俊砂ぼうず
水野純子ファンシージゴロ▽ペル
竹本泉よみきり▽もの 台風上陸少女
唐沢なをきさちことねこさま新連載・含4C
作:TKD+画:竹谷州史皆殺しのマリア
鈴木マサカズブルー・ドッグ・ブルース
須藤真澄おさんぽ大王
肉柱ミゲル100万円!ベガスくん
柳澤一明真・女神転生カーン最終回
福島聡少年少女
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
小林哲也デンドロ・ロリータ
ファンタジー・ファンマナベウミ
タイム涼介あしたの弱音
須田信太郎ウルティモ・スーパースター
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
作:ダークマスター+画:泉晴紀オトナの漫画
金平守人カネヒラデスカ?

 表紙にデカデカとうたわれているように、吉田戦車と唐沢なをきが新連載を開始。まず吉田戦車「武侠さるかに合戦」はさるかに合戦をモチーフとして、イヤな顔イヤな性格のサルとかに娘らが怨念をぶつけ合ったりする模様。「象の怒り」に続いて、なんだかまた妙な味わいのある長編となりそう。唐沢なをき「さちことねこさま」は、頭の上に守り神のねこさまをぷわぷわ浮かばせためがねっ娘女子高生・薄氷さちこさんが主役のドタバタコメディという感じ。とりあえず今のところどんな風に展開していくのかは分からないけど、さちこさんはすごくかわいいなと思った。いい女子だ。吉田戦車、唐沢なをきともに、全盛時ほどの勢いはなくなってきて作風がずいぶん落ち着いてきちゃっている感があるけれども、それだけに懐の深いギャグを見せてくれるといいなと思う。

 一昨日シーズン増刊で読んだばかりだというのに、こんな短いスパンでまたお目にかかれるとは思っていなかった、マナベウミ「ファンタジー・ファン」。点描、カケアミを駆使したファンタジー心あふれる絵柄は尋常でなく美しい。この人は画面のクオリティだけでも相当なもんだし、描きさえすれば載っける雑誌はいっぱいありそうなんでガシガシ作品を発表していってもらいたい。とはいえ定着できるかといえばまた別問題で、どの雑誌がこの人の作風にベストマッチかなーと考えると案外難しいような気もする。福島聡「少年少女」。学校の部活では無視されていてある日問題を起こしてしまった少年が、単身自転車に乗って放浪の旅に出る。自分の実力のできることできないことを確認した彼の旅の結末は、ちょっぴり前向きな想いで締めくくられる。大きな事件は起こらないけれどもいいお話だ。

 森薫「エマ」。イギリスの階級社会の壁は厳しく。エマのような娘さんを不幸にするとはまったくファッキンだ。作:TKD+画:竹谷州史「皆殺しのマリア」。気ままな天才に魅了され巻き込まれていく平凡な人間の憂鬱。マリアははた迷惑で危険ではあろうけれども、それだけに人を惹きつけるものがあるなあ。カッコイイ。柳澤一明「真・女神転生カーン」は最終回。金平守人「カネヒラデスカ?」は、毎回いろいろ仕掛けてきて楽しいけれども、逆に「金平守人だけにどうせ何かやるんだろう」と思われちゃってるのもツラいような気はする。一度何も仕掛けない作品をやるというのも、かえって意表を衝かれていいかもしれない。

 なお、次号からは岩原裕二の新連載「いばらの王」が始まるのだが、定期購読のおまけとしてその設定資料が一部公開されている。という具合に素敵なオプションもあるので、みんなビームを定期購読しよう。


2002年8月号

収録作品
作者タイトル備考
カネコアツシ表紙
カネコアツシBAMBi alternative最終回・含4C
森薫エマ
作:TKD+画:竹谷州史皆殺しのマリア
うすね正俊砂ぼうず
須藤真澄おさんぽ大王
柳澤一明真・女神転生カーン
タイム涼介あしたの弱音
福島聡少年少女含4C
鈴木マサカズブルー・ドッグ・ブルース新連載
水野純子ファンシージゴロ▽ペル
千田悟志Winter Cicada
竹本泉よみきり▽もの あなとかいろいろ
羽生生純青 オールー
肉柱ミゲル100万円!ベガスくん
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
安永知澄脱皮
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
作:ダークマスター+画:泉晴紀オトナの漫画
須田信太郎ウルティモ・スーパースター
新谷明弘期末試験前也最終回
金平守人カネヒラデスカ?

 今号の定期購読のおまけは肉柱ミゲルが読者コーナーでやってる4コマ漫画、「ホイきた!森のティンポック」の単行本。といってもA3の紙1枚に4コマが6本と表紙がカラーコピーされてて、あとは自分で折り畳んで製本してねーというミニコピー紙的なものだけど。でもこういうのはチープなわりに作る楽しみとかあってて面白い。というわけでこういうステキなおまけが欲しい人は、ぜひコミックビームを定期購読しよう。ビームサポーターしばたが強くオススメします。

 カネコアツシ「BAMBi alternative」はこれで最終回で、バンビがらみのお話もこれで最後になる模様。終わりが始まりで始まりが終わりという感じで、きれいなケリの付け方だったと思う。新谷明弘「期末試験前也」も今回、全11話にてシリーズ最終回。淡々と期末試験勉強をし続ける主人公の部屋の机から繰り返し現れてはまた戻っていく異世界の女戦士。それを繰り返すうちに、主人公と女戦士の間に親愛の情が芽生えていく。途中までの展開はかなりシュールだが、最後は心暖まる。それにしても新谷明弘ってめがねが好きなんだなあ。新連載、鈴木マサカズ「ブルードッグ・ブルース」は、金なし運なしの男二人組が、ちょっとした間違いで人を殺してしまい逃げ回る道中を描いていく青春絵巻といった感じの出だし。いきなり煮詰まった状態で今後どうなっちゃうんだろうと思わせる。「サルぽんち」では、最初ギャグっぽく始まりながら思いのほかすごい深いテーマに踏み込んでいって感動させてくれた鈴木マサカズだけに、今回の作品も楽しみだ。

 読切「Winter Cicada」は以前「雪のマフ」(2001年9月号掲載)で、第3回ファミ通エンタテインメント大賞コミック部門を受賞した千田悟志の2作目。軽いノリのバンド少年と、住んでいるところでもうすぐ道路工事が行われ羽化できそうにないけど歌はどうしても歌いたくて、冬だというのに外に出てきた蝉のお話。蝉の命同様、作品自体も短いけれども、まっすぐな気持ちが伝わってきて好感の持てる作品。絵柄も素直で良い。安永知澄「脱皮」は、クラスの男の子が突然わけもなく好きになっちゃった女の子のホロ苦い失恋模様を描いた作品。少女の感情を追っていく丁寧なお話作りと飾り気のない作画はかなり好み。

 森薫「エマ」。ぼっちゃんとエマの仲がより親密に。そして時がすこやかに暖める愛。うーん、いいムード。二人ともいい人なので幸せになっていただきたいけれども、暗雲が漂いまくりでさてどうなるかといったところ。とかいいつつ新キャラのおぜうさまもけっこうかわいいなとか思ったり。作:TKD+画:竹谷州史「皆殺しのマリア」は2回め。今回は演奏シーンはないのだけれど、マリアの激情あふれるキャラはやはり強烈。メリハリがビンビン利いてて面白い。今後の展開にもすごく期待している。福島聡「少年少女」は、コンサートの途中で倒れてしまったアイドルを襲った業病と、彼女のファンだった少年の時をまたいだ物語。カラーページの使い方が非常に印象的。カラーページで描かれるこのアイドルの女の子のまなざしに思わずドキッとした。言葉はないけれども、目がいろいろな思いを語っている。


2002年7月号

収録作品
作者タイトル備考
竹谷州史表紙
作:TKD+画:竹谷州史皆殺しのマリア含4C・新連載
志村貴子敷居の住人最終回
うすね正俊砂ぼうず
須藤真澄おさんぽ大王
肉柱ミゲル100万円!ベガスくん
森薫エマ
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
水野純子ファンシージゴロ▽ペル含4C・新連載
竹本泉よみきり▽もの わきあがる想い
カネコアツシBAMBi alternative
羽生生純青 オールー
小林哲也デンドロ・ロリータ
タイム涼介あしたの弱音
福島聡少年少女
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
作:ダークマスター+画:泉晴紀オトナの漫画
須田信太郎ウルティモ・スーパースター
鮪オーケストラトニーの背骨はよく曲がる。最終回
いましろたかし釣れんボーイ最終回
金平守人カネヒラデスカ?

 今月は最終回と新連載が多し。志村貴子「敷居の住人」。なんだかいつものぺースでしめやかにおしまい。この作品の場合は、激しく盛り上がって終わりというのも違う感じがするし、似つかわしいラストだったような気がする。美形ではあるもののさほど珍しくもない少年少女の日常を描写しているだけなのに、非常に鮮やかで楽しめる作品だった。この独特の力加減、テンポは志村貴子独自のもの。たいへん面白かった。いましろたかし「釣れんボーイ」もおしまい。最後まで淡々、飄々とした境地を確立していて素晴らしかった。そしてついに念願の単行本が7月31日に発売決定。最終回も一つ、鮪オーケストラ「トニーの背骨はよく曲がる。」。これは激しかった。最後まで。血みどろだし全裸だし皆殺しだし。こういうダイナミックでアクの強い作品を描ける人ってのは大好き。単行本2巻は出るかなあ。出るといいけど。

 新連載、作:TKD+画:竹谷州史「皆殺しのマリア」。今回はいつも退屈な周囲にイライラしている女性ボーカルを主人公としたロックバンド漫画。いきなり激しいテンションで音の奔流を描き出す描写に圧倒される。前作「LAZREZ」は最初のうち多少錯綜気味なところがあったが、このコンビの連載もこれで2作目。かなり息が合って漫画的にもこなれてきてる。面白くなりそうだ。それからこれはちょっと意外な起用だった、水野純子「ファンシージゴロ ペル」もスタート。世にもカワイイ桃色惑星「姫コトブキ」出身のモコモコしたヘンな生物が地球に来て活躍するというお話になるのかな。とりあえず水野純子らしいちょっとグロなところが隠し味的に作用したキュートな作品。この人の長編はわりとスペクタクルなものになることが多いので、今後の展開としてもいろいろありそう。

 福島聡「少年少女」は2001年12月号で描かれた第1回めの少年少女たちが再登場。遊んでいる最中に、相手の少年が井戸に落ちて死亡してしまい、その負い目を背負いながら生きる少女、それから転落した少年の弟のエピソード。この二人の関係も子供らしくて微笑ましいし、少年が怪我して入院した先で出会ったおっちゃんとの触れ合いは大人の世界の薄汚さをかいま見せつつもそれだけじゃないよなあと思わせるものあり。福島聡ってやっぱり漫画うまいなー。森薫「エマ」。ウィリアムぼっちゃんの恋に思わぬ強敵が出現。エマに背中で微妙な感情を語らすあたりがうまい。


2002年6月号

収録作品
作者タイトル備考
須藤真澄表紙
須藤真澄おさんぽ大王含4C
カネコアツシBAMBi alternative
羽生生純青 オールー
おおひなたごうのもたろう
うすね正俊砂ぼうず
谷弘兒彼女
柳澤一明真・女神転生カーン
志村貴子敷居の住人
竹本泉よみきり▽もの さまよえる王様
森薫エマ
タイム涼介あしたの弱音
福島聡少年少女
肉柱ミゲル100万円!ベガスくん
小林哲也デンドロ・ロリータ
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
安永知澄待ち人
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
作:ダークマスター+画:泉晴紀オトナの漫画
鮪オーケストラトニーの背骨はよく曲がる。
須田信太郎ウルティモ・スーパースター
摩訶国彦驚異の旅
いましろたかし釣れんボーイ
金平守人カネヒラデスカ?

 今号の注目は安永知澄の最新作「待ち人」。都会に出ていった幼なじみの友達が帰省するのを楽しみに待っている女の子・君代が主人公。自分とは違うハキハキした性格のちよに対する憧れを描き、彼女との再会がきっかけで君代は新たな一歩を踏み出す勇気を得る。さっぱりとした絵柄もストーリーも青春モノらしくて非常に爽やか。青春好きの人には必ずやヒットするであろう作風。よくできている。この人の作品はこれまで2001年10月号掲載の「くそがき」、2002年1月号「ももこの禁止生活」があるが、いずれもハズレなく面白かった。もっとコンスタントに登場してくれるとうれしい。

 おおひなたごう「のもたろう」。顔に紙袋をかぶってビルの一室で寝ころび、それぞれの善行を報告しあう5人の男たち。相変わらずまったく揺らぐことのないマイペースでナンセンスな作品を描いている。森薫「エマ」は、ケリー奥様の病状が気掛かり。エマとウィリアムの関係もこの人あったればこそという名脇役であるだけに。志村貴子「敷居の住人」、鮪オーケストラ「トニーの背骨はよく曲がる。」は次号で最終回。んでもって次号ではTKD+竹谷州史の「LAZREZ」コンビの新連載「皆殺しのマリア」のほか、水野純子の「ファンシージゴロ♥ペル」がスタート予定。水野純子はかなり意外。32ページも描くらしいけど、そんなに描けるならCUEの連載やめることなかったじゃん……とか思ったりもした。


2002年5月号

収録作品
作者タイトル備考
森薫表紙
森薫エマ含4C
羽生生純青 オールー
カネコアツシBAMBi alternative
志村貴子敷居の住人
肉柱ミゲル100万円!ベガスくん
竹本泉よみきり▽もの 遠くの呼び声
福島聡少年少女
桜玉吉幽玄漫玉日記最終回・含4C
須藤真澄おさんぽ大王
柳澤一明真・女神転生カーン
鈴木みそオールナイトライブ最終回
うすね正俊砂ぼうず
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
いましろたかし釣れんボーイ
タイム涼介あしたの弱音
仲能健児西蔵童話
須田信太郎ウルティモ・スーパースター
作:ダークマスター+画:泉晴紀オトナの漫画
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
新谷明弘期末試験前也
鮪オーケストラトニーの背骨はよく曲がる。
作:TKD+画:竹谷州史LAZREZ最終回
金平守人カネヒラデスカ?

 今号は、桜玉吉「幽玄漫玉日記」、鈴木みそ「オールナイトライブ」、作:TKD+画:竹谷州史「LAZREZ」が最終回。「LAZREZ」のオチには参ったなあ。アハハ。でもラストもすごく良かった。最後に爆発するようなシーンをぶちかましてくれて、鳥肌が立った。「幽玄漫玉日記」も本当にご苦労さまでしたという感じ。けっこう身を削らないと描けない作品だったと思うけれども、それだけに凡百の日記漫画では描けない境地に達していた。「オールナイトライブ」は個人的に楽しめる回とそうでない回がけっこう激しかったのだが、読みやすかったし、やっぱり名残惜しい。

 森薫「エマ」は表紙&巻頭カラー。毎回きめ細やかでいい。なんというか「萌え〜」というがっついた感じではなく、しみじみよくできた落ち着いた感じが良いと思う。いい気持ち。志村貴子「敷居の住人」。ミドリちゃんとキクチナナコは良く似合っている。物語はいよいよ終わりが近いかな。肉柱ミゲル「100万円!ベガスくん」は、少年の股間に注目。キャー。竹本泉「よみきりもの 遠くの呼び声」は、耳そうじマニアな少女&少年のお話。何気にけっこうヤバい人たちという感じがした。でも面白いです。アニキ、俺も掘ってくれ!(耳を)という感じになりますな。今回これ読んだ後に耳かき取り出してきた人はかなり多いと見た(俺もやった)。

 仲能健児「西蔵童話」。久々の第2回め。やっぱこの人はいいわ。あの頭の形が凸凹した主人公の朴訥とした振る舞いがとてもいい。須田信太郎「ウルティモ★スーパースター」。今回は終盤でなんだかジーンとさせられる。やっぱこの人、いい話を描くなあ。そろそろ初単行本を……。新谷明弘「期末試験前也 〜理想少女〜」は、ペットボトルの中でできる「プチ・ホムンクルス」とでもいうべき理想少女のお話。儚い存在だけれどもそこがいい。なんにせよ新谷的理想少女ってみんなメガネかけてるんですな。


2002年4月号

収録作品
作者タイトル備考
竹本泉表紙
桜玉吉幽玄漫玉日記含4C
須藤真澄おさんぽ大王
竹本泉よみきり▽もの おもいあし
志村貴子敷居の住人
羽生生純青 オールー
森薫エマ
うすね正俊砂ぼうず
タイム涼介あしたの弱音
柳澤一明真・女神転生カーン
肉柱ミゲル100万円!ベガスくん含4C
福島聡少年少女
小林哲也デンドロ・ロリータ
カネコアツシBAMBi alternative
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
鈴木みそオールナイトライブ
作:TKD+画:竹谷州史LAZREZ
須田信太郎ウルティモ・スーパースター
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
作:ダークマスター+画:泉晴紀オトナの漫画
鮪オーケストラトニーの背骨はよく曲がる。
金平守人カネヒラデスカ?

 今号の表紙は竹本泉なんだけど、デザインセンスがすごく良い。掲載作品の登場キャラを表紙に使う漫画雑誌の中で、ビームはセンスがピカイチだと思う。毎号楽しみ。

 桜玉吉「幽玄漫玉日記」と作:TKD+画:竹谷州史「LAZREZ」が次号最終回。今まで背負い続けてきた重荷から解放された「LAZREZ」の主人公・万尊のスッキリしたけど寂しげな表情が印象に残った。志村貴子「敷居の住人」。こちらも最終回が近いかな〜?という展開。やはりキクチナナコと本田くんは似合ってると思いますよ、うん。森薫「エマ」は、エマが尋常でなくモテモテ。19世紀の英国人(およびインド人)もメイドが好きでめがねっ娘が好きであると。とはいえ「萌え〜っ!!!」というふうではなくて、あくまで穏やかなタッチで語られるので、かえってエマの好ましいたたずまいがスゥッと染み入ってくる感じでたまらんです。

 肉柱ミゲル「100万円!ベガスくん」は連載再開。しかもカラー。またしても100万円が人心を揺るがす時がやってきたというわけだ。めでたいめでたい。こういうナンセンスな作品がぽこっと存在してくれるのは喜ばしい。福島聡「少年少女」は月刊連載化。わーい。今回は役に立たない車の改造ばかりしている男と、彼を子供のころから見つめ続ける一人の女性のエピソード。ストレートに語らず、恋心を切なく暖かく見せる腕前は見事なもんです。いい話だなあ。この人は本当に漫画がうまい。金平守人「カネヒラデスカ?」……というか「ようこそ!ときめきランドへ」。一大萌え萌えアミューズメントランドの実体を描く。本当にこういうのがあったら、さぞかしスゴイことになりそう。アキバの公営駐車場跡地にでも作ればいいのに。

2002年3月号

収録作品
作者タイトル備考
羽生生純表紙
羽生生純青 オールー新連載・含4C
吉田戦車象の怒り最終回
志村貴子敷居の住人
作:TKD+画:竹谷州史LAZREZ
カネコアツシBAMBi alternative
森薫エマ
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
柳澤一明真・女神転生カーン
桜玉吉幽玄漫玉日記含4C
須藤真澄おさんぽ大王
須田信太郎ウルティモ・スーパースター
うすね正俊砂ぼうず
谷弘兒knife
福島聡少年少女
竹本泉よみきり▽もの うざぎのお屋敷
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
鈴木みそオールナイトライブ
作:ダークマスター+画:泉晴紀オトナの漫画
タイム涼介あしたの弱音
市橋俊介グリグリ◎
鮪オーケストラトニーの背骨はよく曲がる。
小池桂一ウルトラヘヴン
いましろたかし釣れんボーイ
金平守人カネヒラデスカ?

 桜玉吉「幽玄漫玉日記」はやけにダークな出だしだと思ったら、あと2回で最終回だそうな。残念ではあるけれど、確かに身を削らなければ描けなさそうな作風だしなあ。しばらくリハビリした後、また復帰してもらいたいところだが。羽生生純の新連載「青 オールー」が巻頭カラー。ヒット作を飛ばした後、突如引退してしまった人気漫画家を追っかけて、一人の雑誌編集者が沖縄入り。しかし作家のほうにはからっきし描く気がなく、来訪は空振りに終わりそうになる。ヤケになった編集者と酒につき合わされた漫画家が、飲みに行った先の酒場でヤクザにとっつかまり思いもよらぬ事件に巻き込まれていく……という感じのお話。例によって羽生生純らしくインパクトは強烈。でもどんな作品になるんだかはまったく予想がつかない。まずは次回を待つ。吉田戦車「象の怒り」は飄々と最終回。シュールな展開でけっこう好きだった。

 森薫「エマ」。今回分かったことは、インド人は象に乗ることと、インド人もメイドとめがねっ娘は好きらしいということだ。好調好調。こういう上品な萌えってのもいいもんです。須田信太郎「ウルティモ★スーパースター」は第2回め。ガムシャラなパワーがあって面白くなっていきそうだなあ。谷弘兒は前号に引き続き、幻想的な読切「(knife)」で再登場。このまま定着してちょくちょく描いてくれるとうれしい。竹本泉「よみきりもの うさぎのお屋敷」。背がちっちゃくて狭いところがお好みな娘さんが主人公。ちんまりした様子がすごく微笑ましい。毎回思うけどうまいよなあ、この人。

2002年2月号

収録作品
作者タイトル備考
カネコアツシ表紙
カネコアツシBAMBi alternative新連載・含4C
作:TKD+画:竹谷州史LAZREZ
吉田戦車象の怒り
志村貴子敷居の住人
竹本泉よみきり▽もの 目も流れるみたいな
森薫エマ
タイム涼介あしたの弱音
須田信太郎ウルティモ・スーパースター
うすね正俊砂ぼうず
谷弘兒
桜玉吉幽玄漫玉日記含4C
須藤真澄おさんぽ大王
柳澤一明真・女神転生カーン
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
鈴木みそオールナイトライブ
小林哲也デンドロ・ロリータ
肉柱ミゲル100万円!ベガスくん
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
市橋俊介グリグリ◎
作:ダークマスター+画:泉晴紀オトナの漫画
中嶋教介トレーディング番長
新谷明弘期末試験前也〜われらの護り神〜
鮪オーケストラトニーの背骨はよく曲がる。
いましろたかし釣れんボーイ
金平守人カネヒラデスカ?

 谷弘兒か! びっくり。読切「鏡」が掲載。安宿に置かれた鏡が覗き込んだ者だちの思いを伝えていく……といった筋立ての幻想的なお話。とりあえずちょくちょく再登場してもらいたいもの。それから須田信太郎の新連載「ウルティモ・スーパースター」がスタート。学校にやってきて、元プロレスラーだったらしい先生を呼び出すプロレス団体の車。その楽しげな様子に触発された男子生徒が、このプロレス団体に転がり込み、巡業の旅に出るという第1話。泥臭くてガムシャラな青春模様が展開されそうでこれから楽しみ。この人の単行本もいい加減、なんか出てくれるといいんだけどなあ。カネコアツシの新連載もスタート。「BAMBi alternative」は、「BAMBi」のバンビが出てくるけれども、バンビではなくそれに関わってしまった人たちのほうが中心で、外伝的な物語といった感じ。ショートストーリー連作みたいになるのかな?

 肉柱ミゲル「100万円!ベガスくん」は久々の復活。今回も100まん100まんいうとります。ヘンな漫画だけにコンスタントに継続するのは難しいかもしれないけど、これからもときどきは登場してほしい。「テルオとマサル」の市橋俊介による前後編読切「グリグリ◎」は、ちょっと知恵が足りなめな少年と、飲んだくれで社会の落後者っぽい近所のおっさんの日常を描くといったところ。新谷明弘「期末試験前也」第9弾。今回は人々の細胞を集めて作られている「護り神」に、自分のどの細胞を差し出すか悩んでいるいつもの少年。不思議な感じのお話だなーと思ったら、オチがさりげなくベタで笑った。

 作:TKD+画:竹谷州史「LAZREZ」。うーむカッコイイ。エモーショナール。森薫「エマ」。2回めもいい感じに上品で心地よし。いましろたかし「釣れんボーイ」。スゴいと思えるくらい淡々としている。ものすごく無為だ。素晴らしい。あと、しりあがり寿「弥次喜多 in DEEP」はまたしてもタイヘンなことになっている。ちなみに今回が50話め。なお、しりあがり寿は1月19日〜2月18日に渋谷パルコでイベントをやるとのこと。詳しくはparco-art.comのSQUARE7の項を参照。

2002年1月号

収録作品
作者タイトル備考
桜玉吉表紙
桜玉吉幽玄漫玉日記含4C
須藤真澄おさんぽ大王
志村貴子敷居の住人
竹本泉よみきり▽もの あっちのやねこっちのやね
吉田戦車象の怒り
うすね正俊砂ぼうず
高岡洋介サビシイ夜目次漏れ
福島聡少年少女
森薫エマ新連載/含4C
作:TKD+画:竹谷州史LAZREZ
柳澤一明真・女神転生カーン
鈴木みそオールナイトライブ
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
深谷陽午後のチャンティック
タイム涼介あしたの弱音
作:ダークマスター+画:泉晴紀オトナの漫画
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
小池桂一ウルトラヘヴン
安永知澄ももこの禁止生活
鮪オーケストラトニーの背骨はよく曲がる。
いましろたかし釣れんボーイ
林光默(構成協力:崔成賢)橋無醫院連載終了
金平守人カネヒラデスカ?

すごいインパクトのある表紙だ。そして中身も。

 まずは新連載、森薫「エマ」。同人誌でメイドものの良作を描いている「Lady Maid」の県文緒であるらしい。今回の「エマ」では、昔厳格な教師だった老婦人に使えるメイドさんのエマが主人公。この老婦人の教え子だったウィリアムがエマのことを気に入り、そこからお話が展開していく……という感じ。まだお話としては出だしも出だしなんだけど、整った優しい絵柄と柔らかな雰囲気が非常に気持ち良く、第一話めから作者の持ち味が十二分に発揮されている。また一つ楽しみな連載が増えた。それから福島聡「少年少女」はさっそく隔月連載化が決定。今回は終戦後のドイツが舞台。学校嫌いのトマスと世話焼きな女の子カーチャの物語。二人のそれぞれの転機が描かれる微笑ましい物語。この人の最近の作品はけっこうシビアなものが多かったが、今回のはわりとお話として丸い。作画力、演出力、表現力といった漫画的基礎体力の豊かはいわずもがな。2か月にいっぺんではあるけれど、定期的に福島聡の作品が読めるというのはうれしい限り。

 「ももこの禁止生活」は、2001年10月号に「くそがき」が掲載された安永知澄の新作。ではあるのだが、絵柄が「くそがき」のときと全然違う、図案化されたかなりシンプルなモノになってて驚かされた。お話としては不器用で思い込みが激しい少女が、自分に自信を持つために生活の余剰を省く「禁止生活」に挑戦する。食品も買わず娯楽も全部捨てたストイックな生活は彼女を衰弱させていくのだが、意外と彼女はくじけることがない。なんともいえない不思議な雰囲気を持った作品。「くそがき」の次がコレということは、この人かなり作風は幅広いのかもしれない。今後も要注目。高岡洋介「サビシイ夜」。酔っ払った男があるサビシイ夜に出会った不思議な出来事。なんだか陽気でパワーを感じるショート・ストーリー。今度はもっと長尺のお話も読んでみたいところ。それから読切はもう一本。深谷陽「午後のチャンティック」。お得意のバリ島モノ。わりとのんびりした雰囲気で楽しい作品。

 とまあこのように初登場や読切の作品がすごく充実していたうえに、連載陣も相変わらず強力。桜玉吉「幽玄漫玉日記」のしみじみした濃さ、志村貴子「敷居の住人」の鮮やかさ、いましろたかし「釣れんボーイ」の枯れまくった魅力などなど、いやーもう面白くてたまらない。この内容だったら2倍くらい金出しても惜しくないな。

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