◆ 1999年1月下旬 ◆

1/21〜31
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1/31(日)……寝るイオンちゃん

 2月のお買い物予定は以下のような感じ。このうち丸尾末広「DDT」はすでに発売されている。青林工藝舎がいろいろ出す予定になっているが、予定通り行くのかどうかが注目。

タイトル作者出版社
DDT丸尾末広青林工藝舎
05あめかすり作品集あめかすりふゅーじょんぷろだくと
05キャンディ=ヒロイン佐野タカシコアマガジン
05殺し屋1(3)山本英夫小学館
05デカスロン(20)山田芳裕小学館
05カケル(7)竹下堅次朗小学館
05虹色魔術探偵団山田章博日本エディターズ
05めぐりくるはる(2)OKAMAワニマガジン社
05でんせつの乙女こがわみさき光文社
08イケてる2人(5)佐野タカシ少年画報社
10零式東京三世社
10エースネクスト角川書店
12ビッグコミックオリジナル増刊号小学館
15新マグナム増刊講談社
19Comicアリスくらぶ(10)アンソロジーコアマガジン
19親愛なるMへ(1)六田登集英社
19天然コケッコー(10)くらもちふさこ集英社
20紫姫の千の鶴奈知未佐子小学館
20あぶない令子先生(3)桃山ジロウ蒼竜社
20ねこぢるうどん(2)ねこぢる文藝春秋
22ヤングサンデー大漫王小学館
22黒鉄(4)冬目景講談社
22犬神(6)外薗昌也講談社
22ヨコハマ買い出し紀行(6)芦奈野ひとし講談社
25ふしぎなジジガール榎本ナリコ集英社
25すがわらくにゆきの日記マンガ集すがわらくにゆき新声社
26COLORFUL萬福星ビブロス
26頼りにしてます。神尾龍/中原裕小学館
26まちこSHINING(2)藤野美奈子小学館
26今日のだいちゃん(2)太陽星太郎小学館
ないしょのおんなのこ井ノ本リカ子一水社
アックス(7)つげ忠男/宮西計三他青林工藝舎
労働2号(仮)花くまゆうさく青林工藝舎
月喰ウ蟲大越孝太郎青林工藝舎

【雑誌】デラックスマーガレット 3月号 集英社 B5平
 あんまり面白い作品がなかった。岩田江利子「ウルフ物語」くらいかなー。ナレーションでのツッコミが少し野暮なような気もするが。あとは神田みらの「純愛ゲーム」が、ガチャガチャとした楽しさがあってわりと楽しいかなという程度。

【雑誌】コミック・ピット 3月号 光文社 B5平
 今号はこがわみさきが載っていないので残念。でも上のお買い物リストにもあるとおり、2月5日に単行本「でんせつの乙女」が出るようなのでそれは楽しみ。わたなべちひろ「イオン・チャンネル」は最終回。人間の細胞を一部活用することによって、感情を持ってしまった人型ロボット・ナナと、彼女を作り出した博士と、いたずら娘うみの物語。ナナが感情を持ったことは世間に公表され問題となるが、ナナ自身は栄養と電気の補給を自らストップすることによって消え去っていく道を選ぶ。滅びを前にしながら、テクテクと夜の街を散歩し、博士と朝日を見つめるナナの姿が、安らかだけど切なくていい感じだった。くりくりした目つきのキャラクターたちとオシャレな絵柄がなかなかいい。
 巻末、いしかわじゅんの漫画書評コラム「いしかわじゅんの漫画大好き!」では架月弥を取り上げている。さすが。いしかわじゅんは数いる漫画評者の中でも最も幅広く読んでいる人の一人だと思うが、なかなかくさいところをついてくるのでいつも感心している。ただ、今回の原稿で「『チョコの歌』以外の単行本はまだ一冊しかない」みたいな記述があったのだが、「狼になりたい!」のほかに「泣かせやがってこの野郎」全3巻(角川書店)もあるはずなので、いしかわじゅんのホームページ経由でメールを出してお知らせしておく。そうしたら10分以内に返事のメールが返ってきてすごくびっくり。

【単行本】宇宙喜劇M774」 ほりのぶゆき アスペクト A5
 宇宙、21世紀、ロボットといった未来的なモノをネタにナンセンスなギャグを展開する作品集。21世紀に対する、今考えると馬鹿馬鹿しい空想をいろいろネタにしてあって面白い。例えば透明なパイプの中を走るエアーカー、銀色の服を着た未来人などなど。しかも、それぞれのヒネリ具合が絶妙。下らなく情けなく、身もふたもない展開と腰砕けなオチがたまらない。最近のほりのぶゆき作品の中ではかなり面白い部類。竹書房のまんがくらぶで連載された作品だが、アスペクトからの発行。


1/30(土)……センチメートルの季節

【雑誌】ヤングキングアワーズ 3月号 少年画報社 B5中
 今月号は猫玄が登場。タイトルは「元気出してね。」。声優とアニメーターのヌルいラブコメ。この人もなかなかこの雑誌が似合っている。うまいこと、エロ漫画雑誌の上品どころを捕まえてくるなあ。大石まさる「鳥人」は、鳥人間コンテストのように自分で翼を作って飛ぶことに執心している、学校の名物教師の姿を新任の女教師の目を通して語るという物語。コメディタッチで軽く楽しいお話。馬鹿馬鹿しい研究に自分の人生を賭けるまっすぐさは見ていて気持ちがいい。大石まさるは今回は巻頭のポスターも描いているので、彼の絵が好きな人は要チェック。佐野タカシ「うさぎちゃんでCue!」は休載。

【単行本】「センチメントの季節」3巻 榎本ナリコ 小学館 A5
 今回の収録作品では第七話「落ちていた男」が良かった。自宅の窓から下の空き地に転落した男が、転落のダメージで身動きできなくなっているところを女子高生に発見される。女子高生はそれを通報したりせず、身動きできない男に水や食料を与え、下の世話などをしてそこでそのまま男を飼い続ける。大の男が身動きをとれず、赤児のように小娘のなすがままにされる様子が、ゾクリとする怖さをはらみつつ何やらゆりかごのようなやすらかさもあって趣を感じる。絵もうまいし、細い線がエロチックだし、一編一編よくできていると思う。理詰めで描かれているような冷たさ、作為は少々鼻につくところもあるが、これだけ読ませてくれるのだから良しとしたい。巻末の作者の後書きはちょっと余計な感じもするが。作品以外の部分で読後感が変わってしまうというのは、俺としてはすごく嫌いなのだ。夾雑物は一切なしで、作品は作品としてそれだけで楽しみたい。

【単行本】「ギャラリーフェイク」15巻 細野不二彦 小学館 B6
 ほどほどの力でそれなりの作品を生み出してくるコンスタントさが相変わらずすごい。どのお話も、ちょっぴり安っぽさはなきにしもあらずだが、それぞれうんちくあり、教訓ありでうまくまとめあげている。魂を揺さぶるってほどではないけど、それぞれのお話で一定の満足が得られる。その鮮やかな手際はまさに職人芸。


1/29(金)……バリバリツ伝説

 細野不二彦「Blow Up!」が表紙と判型を変えて再版されている。細野不二彦作品の中でも最もオススメ度の高い作品なので、未読の人はこの機会にぜひ!

 最近、とくに1999年に入ってから、どうも精神的に不調で胆力が不足気味(要するにヴァイタリティとかパワーがどうもこう……という感じ)で文章もイマイチ出来が悪いと思っていたのだが、それに引きずられるように体調まで悪くなってしまった。この冬二度目の風邪ひきである。なんかこの1年くらい風邪をひくことが多くなったのは、やはり不規則な生活が一番デカいのだろう。午前になってから家に帰ってきて、漫画読んでホームページ作って朝6時か7時くらいに就寝といった生活を続けているのでまあしょうがない。ときどき「そんなこと続けてると身体壊すよ」と忠告されることはあるのだが、でも無理できるのは若いうちだけだとか思うと焦燥感に駆られまくってしまう。だから申しわけないが、今は他人の忠告は聞かない。まだまだ俺は自分が納得できる地点まで来ていない。とりあえず、自分が納得できるところまでやるだけやって、あとはそれから考えよう。……いうことだけは威勢がいいのだけど。

【雑誌】快楽天 3月号 ワニマガジン B5中
 かるま龍狼「ゴローダイナマイ!」が巻頭カラーで新連載。いやらしいことに興味津々な少年・吾朗が、町中で自分にそっくりな少年・太郎に激突。太郎と間違えられて、太郎の姉、妹につかまり家にひきずり込まれる。この家族は近親相姦変態家族だった模様で、吾朗は太郎の母親とセックスすることに……という展開。ギャグを織り混ぜながらテンポ良くストーリーを進め、エロシーンもきっちり実用的に描き上げる実力はいつもながらに大したもの。見せ所がキッチリ分かっている感じだ。クッキリした線で描かれたキャラクターたちがイキイキしているのもいい。ギャグとエロの配合のバランスなどに高いセンスを感じる。
 画:加藤礼次朗+作:中野貴雄「男根平次」の新シリーズ、「吉原編」スタート。さまざまな「不健全」なものを一か所に押し込むことによって肥え太った町、吉原で花魁と妖剣を巡る事件が始まる。いつにも増してシリアスな展開。男根平次は相変わらずすごい形をしているのだが、なんだかハードボイルドでかっこよく見えてしまうから不思議だ。YUG「ぎんいろの休日」。柔らかく暖かく、丸っこくて異様にかわいらしい。しかもスッキリとしていて、嫌味にならない画風にもうトロトロ。見ているとなんとも幸せな気分になってしまう爽やかな甘さがある。素晴らしい。

【雑誌】パイク 如月 No.17 ふゅーじょんぷろだくと A5平
 天真楼亮一「勝手にインタラプト」。内容はともかく最初のページの「前回までのあらすじ」が笑った。一発ネタなんで内容はバラさないでおく。美女木ジャンクション「ラブ ロック」はお話としてはそれほど面白くはないのだけど、だぷんだぷんの乳と多めの体液で今日もパワフルにいやらしい。

【雑誌】コミックRX Vol.1 宙出版 B5平
 新創刊のエロ漫画雑誌。「恋愛白書パステル3月号増刊」らしいが、そっちのほうは読んだことがないなあ。
 執筆陣は、猫玄、破軍星、G.B小野寺、田中かずひと、Maruto!、みずきひとし、広川犬介、麗亜、彩樹衛生、チャーリーにしなか、水田恐竜、ゆき やなぎ、あとかわ れん、はやぶさ(は)。「はやぶさ(は)」の「(は)」は、本当は○の中に「は」である。第一号めは統一テーマとして「眼鏡っ娘」が設定されているようで、イラストおよび漫画は半分くらい眼鏡っ娘を扱っている。ところでちと思ったのだが、眼鏡っ娘のゴールデンパターンとして「それまでブスだったのが眼鏡をとると美人になる」というのがあるが、それって裏っかえせば「美人なんだけど眼鏡をつけるとブスになる」ということになる。眼鏡をとると美人になる女の子はいそうな感じもするが、眼鏡をつけるとブスになる美人はいそうにない感じがしてしまう。なんとなくだけど。内容に関しては、凡庸な雑誌というのが第一印象。どの作品もそこそこではあるが、飛び抜けたものを感じさせてくれる作品はなかった。
 破軍星「大井河原君の悩める日々」では、主人公の少年が「バリツを習っていた」というセリフがさりげなく出てくる(バリツ自体の描写はないが)。バリツとは、コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」でホームズが谷底に転落していったん最終回を迎えたときに、読者の要望に押されてホームズを復活させることになったのだが、ホームズが死ななかったことへの言い訳として使われていた謎の武術だ。「武術」という言葉を聞き違えて、「バリツ」になったという話を聞いている(うろ覚えだけど)。そういう細かいところが妙にヒットしてしまった。麗亜「ふたりっ子」は、女の子の描き方がぽてっとしていて、行儀の良い絵柄。とんがっていない画風がホッとする。

【雑誌】ヤングジャンプ 2/11 No.9 集英社 B5中
 先日、人生の先輩に「しばたくんがヤンジャンについて書いているときって、いつも『電車の中か駅のゴミ箱で拾った』『読むとこがない』っていうよね」といわれた。図星なのでギクッと来たが、実は今回も駅のゴミ箱から拾ったのである。そしてまた今回も気になる作品はあまりなかった。しかし。次号からはちゃんと買うかもしれない。アフタヌーンで「地雷震」を描いている高橋ツトムが、「ALIVE」というタイトルの新連載を始めるのだ。
 で、今号では作:夢枕獏+画:くつぎけんいち「怪男児」(脚本:生田正)がわりと良かった。ガッチリと、それでいながらシャープな絵が目を引く。

【単行本】「ナイーヴ」2巻 二宮ひかる 白泉社 B6
 2巻では田崎がいったん麻衣子とうまくいかなくなり浮気をしてしまう。そして、さまざまなすれ違いのあと田崎が開き直り、またよりを戻す。雨降って地固まる展開。女性キャラクターがたいへん魅力的。スラリとした体つき、そっけなさげだが端々に艶のある表情、ほのかに匂い立ってくるエロス。色白な肌が、しだいにポッと染まってくるような、しっとりとしたHさがいい。実用的なエロスではなく、絹のような手触りのきめ細かいエロスである。

【単行本】「ゲームびと公式ガイド」 上野顕太郎 アスペクト A5
 架空のゲームの攻略本を装った形式の単行本。ゲームや、他人の漫画のパロディを織り混ぜながら、仕掛けたっぷりに遊び倒した一冊。上野顕太郎らしく各所に仕掛けがほどこしてあるのだが、元ネタのゲームを知らないのと、凝りまくっているため一見開きあたりの情報量が多すぎていまいち細かく読む気になれない。ヒマなときに精読するとより楽しめそうな一冊。漫画のパロディは唐沢なをきや「魔太郎が来る」、桜玉吉などを取り上げており、それぞれに雰囲気はつかんでいる。さすがに器用だ。


1/28(木)……若きペンギンの悩み

【雑誌】週刊少年チャンピオン 2/11 No.10 秋田書店 B5平
 橋本俊二「麻雀鬼ウキョウ」。やはり相手のイカサマは児戯に等しかった。このレベルの低さはなんとなく心が和む。田口雅之「バロン・ゴング・バトル」は、ゴードンとバロンの闘いが決着しそうな気配。毎度のことだが、バロンって意外に小技がうまい。能田達規「おまかせ!ピース電器店」は、木っ端ずかしいケンタローと桃子の愛のメモリーがいい感じ。そこかしこで幸せな気持ちにさせてくれる。

【雑誌】ヤングサンデー 2/11 No.9 小学館 B5中
 新井英樹「ザ・ワールド・イズ・マイン」。いやー、スゲエ。ヒグマドンが破壊の限りを尽す中、人間の思惑など関係なく「平等に」あっけなく無価値に人が死んでいく。破壊される小学校、空から降ってくる小学生。そして記者魂を取り戻そうとする記者・星野にも、読者の思い入れにまったく関係なく災厄が降りかかる。圧倒的な力、迫力。すごく面白い。阿部潤「the山田家」は今回増ページ。いつもよりクッキリした描線にタッチを変えてきてるが、なんか意味があるんだろうか。キャラクターたちのすごい表情とか、唐突な展開はいつも通りだけど。山田玲司「アガペイズ」は、ユリを救うためウズメが陸中蛇を九星高校に誘おうとするが、高校野球って転校してすぐ選手登録ってできるんだっけか?たしかできないような気がするんだけど……。

【雑誌】ヤングペンギン VOL.1 辰巳出版 B5中
 新創刊。雑誌名から分かる通り、ペンギンクラブの辰巳出版が青年誌に進出。青年誌側が美少女系を取り込むとか、いつの間にか青年誌からエロ漫画雑誌になっていたという例はよくあるが、エロ漫画系から青年誌系に進出したというのは珍しい。実は、最初はエロ漫画雑誌だと思って読み進めていたのだが、途中で一般青年誌路線を狙っているのだなーと気づいた。なんとなくだが表紙とか誌面の雰囲気は、ヤングキング系の雑誌を思い出す。後書きの編集長の言葉で「ちょっと濃いおじさんのための雑誌を目指している」みたいなことが書かれていたが、おじさんに受けるかなあ? よく分からない。ちなみに表紙はうたたねひろゆき。パッと見たときはうたたねひろゆきだと気づかなかった、というより意識しなかった。最近、オタク系で絵のうまい人って山のようにいるので、うたたねひろゆきの絵を見ても特別な感じがしなくなっちゃったのかも。
 巻頭カラーは山本貴嗣「弾AMMO」。時は近未来、抜群の射撃の腕を誇る女警察官・天羽(アモウ)が主人公。麻薬取締を担当している彼女が売人の監視で張り込んでいたところ、売人とヤクザの間でトラブルが起こる。現場に駆けつける天羽だが……。というのが第1話のストーリー。強力な催淫効果のあるラブドラッグ、そして謎の組織と、怪しげな雰囲気が漂う。これからの展開もまあ期待できそう。飛龍乱「いずみメモリーズ」。東京で働く男のもとへ、幼馴染みで現在人妻になっているはずの女性が、連絡もなしに押しかけてきて……という話。手堅くうまい。キャリアはわりと長い人だが、お話や絵の洗練度も着実に上がっている。コンスタントにいい仕事しているなあと思う。
 橘セブン「DOLL LOVER」。宇宙で単身赴任している男の元に、ある日恋人とそっくりな姿をしたアンドロイドが送られてくる。本当の感情は持っていないはずのアンドロイドは、男と出会って涙を流し「愛している」という。なかなか切なくファンタジックなお話で面白かった。橘セブンは絵はわりと好きなんだけど、話はピンとこないものが多かったのだが、これはけっこう良かった。

【雑誌】モーニング 2/11 No.9 講談社 B5中
 王欣太「蒼天航路」は、このところまただいぶ面白くなってきた。曹操の奔放さが爆発し、いい意味で予想を裏切ってくれてきている。歴史モノだけに、実際の歴史を裏切るのは難しいのだけど、局面局面の見せ方はやっぱりかっこいいのだ。高梨みどりのシリーズ連載「Order-Made」第3話が掲載。実家の洋服屋を継いで背広の仕立屋修行を続ける女性・花梨が主人公。高梨みどりってあんまりパッとしない人っていう印象があるんだが、最近絵の洗練が進んできてけっこう面白い。
 それから「えの素」「一生!」「大使閣下の料理人」「奈津の蔵」は休載。最近あちこちの雑誌で休載作品が目立つが、風邪なのかなあ。

【雑誌】コーラス 3月号 集英社 B5平
 今月はくらもちふさこ「天然コケッコー」がお休み。
 よしまさこ「うてなの結婚」が毎回いい感じ。絵柄が軽くて、肩が凝らない。気軽に楽しめる。そのだつくし「女の花道」。キャラクターの崩れっぷりが楽しいお話。サバサバとした読み心地が気持ちよい。吉田まゆみのおんな演歌歌手の物語、「くしゃみ3回」は絵柄といいお話といい、地に足の着いたしっかりとした面白さがある。それでいて雰囲気は軽やかでうまい。

【単行本】「デメキング」 いましろたかし KKベストセラーズ A5
 1991年、ビジネスジャンプに連載された作品。今まで単行本化されておらず、知る人ぞ知るという作品だった。最近、KKベストセラーズはこういった単行本未収録だった味のある作品を次々と刊行しており非常にありがたい。……などといっている俺も、正直なところ連載当時はあんまりきちんと読んでいなかったのだが、こうやってまとめて読んでみるとすごく面白く、当時の不明を恥ずかしく思ったりもする。
 物語は昭和44年、瀬戸内海の小さな町から始まる。主人公の蜂矢は当時高校3年生。とくに将来の計画もなく、ただ「なんかすごいことをやりたい」という漠然とした思いを胸に秘めながら、どうってこともない日常を淡々と過ごしている。そんな彼も一つの秘密を持っていた。子供のころ海岸で見つけた巨大な半紙に記された足跡。それは怪獣デメキングのものだという。いずれ来る平成の世に地球に襲来する謎の怪獣。デメキングが来たときには何かやってやる、そんなことを信じ続けて彼は生きる。しかし、やっていることといったらちょっと頭が弱めで近所の小学生を組織して少年探偵団ごっこをやっていた亀岡に、一方的に自分の思いを綴った手紙を送りつけるとか、町中で意味のない演説を延々しまくるとかその程度。亀岡ふぜいにも心の中ではあざ笑われ、定職にもつかず町の片隅で生きていくその姿は情けなくもなんとなく楽天的な気分に満ちている。
 必死でもないし、かっこよくもないし、頑張るわけでもなければ上を目指すわけでもない。デメキングは現れない。いつかなんてときは来ない。でも、日々は淡々と過ぎるし彼らはとくに成長しないでも存在はできている。ラストはあっけなく端折るように終わる。それも彼らの情けない人生には似つかわしい。
 いましろたかしは現在コミックビームで、やる気なさげな生活をこれでもかと描きまくった「釣れんボーイ」を連載中だが、現在よりも昔のほうが絵はだいぶ暑苦しい。なんとなく「ガニマタ」な絵だ。表紙を書店で見ても、あんまり魅力的には映らないとは思うが興味を持った人は読んでもらいたい。実に味わい深い作品なのだ。
 それにしても単行本化されていない作品でも、こういう埋もれた傑作というのはいくつも存在する。そういった作品をチェックするためには、やっぱりマメに雑誌をチェックするしかない。面倒くさいことだし、効率だってあんまり良くはない。でも、やるんだよ(根本敬調)。


1/27(水)……ほえほえクジラ軍団

 家にいるときより会社にいるときのほうが短時間でホームページを作成できることに最近気づいた。そのほか、仕事に関係ない入力作業なども会社にいるときのほうが効率的である。仕事から現実逃避しているときはかなり一直線にその逃避先に集中してしまうのだが、家だとゲームやったりマシンいじくったりと、そのほかにも誘惑があったりして、なかなか一点集中ができないのだ。逆に会社の仕事である原稿整理などは、家のほうが一人になれるので能率が上がったりしてしまう。なんか間違ってる俺だ。

【雑誌】プチフラワー 3月号 小学館 B5平
 う〜ん、この雑誌すごく面白いなあ。1冊通して捨て所がほとんどない。今風のネタを扱った作品はないんだけど、みっちりと詰まった底力を感じる。
 まずなんといっても良かったのが、下村富美「仏師」最終回だ。細い描線で描かれた、リアルで繊細で、かつ骨太な画風には前(といってもここ1年くらいだが)から注目していたが、今回はとくに良かった。戦乱で荒れた世の中に仏師として生きる一人の男と、貧しき少女、そして孤独な姫君の想いが交錯する物語。人の生と死、憎しみ、幸福に鮮やかに切り込んでいく。完成度の高い絵柄と描写力、演出力、ストーリーが見事にマッチしたラストだった。単行本出たら絶対買い。下村富美はほかに「首」という単行本(小学館・プチフラワーコミックス)が出ているが、この「仏師」のほうが面白かった。覚えておいて損はない名前。
 それから波津彬子「異国の花守シリーズ 花笑みの庭」も最終回。日本美術研究のために金沢に住んでいる英国人アレックスと、茶道教授の大伯母と暮らす雛子の物語も大団円。アレックスと触れ合うことにより、自分の姿、自然を見つめて成長していく雛子の姿が頼もしい。描写は静かだが、落ち着いた面白さがある。萩尾望都「残酷な神が支配する」は、過去をイアンに告白したジェルミが苦しみの迷宮に逆戻りする。深い闇の巣くう絶望的な展開。ハードだ。竹宮恵子「平安情瑠璃物語 二藍」。源平時代の末期、零落してまったく力を持たぬ美しき若君と、下僕が二人旅を続ける。下僕に組み敷かれたのをきっかけにサディスティックな悦楽に目覚めた若君と、若君の美しい身体に対する妄念を振り払えない下僕が、ズブズブと肉欲の世界に溺れていく。なんとも妖美でエロティックな世界。竹宮恵子はヤワじゃない。

【雑誌】週刊少年マガジン 2/10 No.9 講談社 B5平
「スーパードクターK」の真船一雄が、今号と次号、「大洋ホエールズ優勝物語」前後編で登場。三原監督に率いられた昭和35年の、奇跡の、そして大洋ホエールズとしては唯一の優勝の模様を描く作品。俺も大洋、横浜とファンをやってきたのだが、その過程で何度もこの年の話は耳にしている。優勝が1回しかなかった大洋のファンにとっては、唯一といっていいくらいの語り草の年だったからだ。で、聞けば聞くほどこの年の優勝は奇跡としか思えない。6年連続で最下位だったチームが突如として、チーム打率はリーグ最低なのに優勝。しかも、次の年はまた最下位。その次の年はあと1勝すれば優勝というところまで迫りながら連敗して2位という、ちょっと普通では考えられないような足跡を残している。それだけにここらへんのドラマは面白かったりするのだ。ほかのチームの優勝でこれだけ語り草になっている年というのは、俺はちょっと知らない。代打のスペシャリストとか、職人的な選手も多く、エピソードに事欠かないので漫画のほうもわりと面白かった。大洋ファンのひいき目かもしらんけど。
 森川ジョージ「はじめの一歩」。一歩に特訓の効果が現れる。努力、根性、勝利と古いパターンでありながら、一瞬一瞬の描写の力強さ、迫力、カタルシスは大したもの。そういえば「将太の寿司」「BOYS BE…」「ラブひな」の3作品は休載。

【雑誌】週刊少年サンデー 2/10 No.9 小学館 B5平
 石渡治「LOVe」。洋平とラブの試合は意外とアッサリ終了。もう少しこの二人の試合を観たかったような気もする。そして次回は最終回。作:森末慎二+画:菊田洋之「ガンバ!Fly High」は内田が鉄棒の演技を始める。天才の力を知りつつも、自分なりに追いつき追い越そうとする姿がなかなかかっこいい。男の意地、である。

【雑誌】近代麻雀ゴールド 3月号 竹書房 B5中
 一條裕子、岡田ユキオ、そして「唇にパンク」の笠原倫などが描いていたので気になって購入。岡田ユキオは読切で登場。タイトルは「WHITE AND RED」。麻雀はわりとオマケ的な要素。一度別れた男女が再会し、男が改めて自分の短所を女に指摘され、人間的な成長を遂げるという話。話としては少し安い。女は色っぽくていいんだけど。

【雑誌】激漫 Vol.18 ワニマガジン社 B5中
 氷室芹夏「水の誘惑」。かずやの優柔不断さのため、碧、そして高志が深く静かに傷ついていく。なんかいつの間にかあずみも少し大人びてきた。ツッパっているが、内面は寂しそうで素直に甘えられない碧がなんともいい。そろそろラストが近づきつつある感じがする。天竺浪人「たからもの」後編。後味爽やかに、ちょっとあっけなく終わる。昔からうまかった心理描写に加えて、最近では実用度も増して頼もしいかぎり。桐生知彦「TWIN SPARK GIRLS」はテンポの良さと、かっこよく決まった絵がいい。馬場康士「LIZARD KING」は、ザビタンの高校が甲子園の決勝に進出する。でも、やっぱり相手はまともでなく、乱闘と殺戮が吹き荒れる。エロを入れようなんて気は微塵もない開き直りっぷりが痛快。十羽織ましゅまろ「血みどろっチャオちゃん」。かなりベタベタなストーリーでノリが良く、展開はハイスピード。主人公のチャオちゃんが酔っ払って、町で暴淫の限りを尽す。パワフルで楽しい。MARO「ABILITY」では、巳月竜司についにライバル的人間が現れ(といっても実の兄だが)、ようやくまともなストーリーらしきものが。でも下手に整合性があるより、ムチャクチャなほうがこの作品は面白いので、どんどんブッ壊れた展開にしていってもらえるとうれしい。

【雑誌】スーパージャンプ 2/10 No.4 集英社 B5中
 寺沢武一の新連載が始まる。タイトルは「GUN DRAGON Σ」。ヒロインは実写であとの部分はすべてCGという形式なのだが……。構図やヒロインのファッション、ポーズは寺沢武一だけど、彼の絵のタッチがほとんど出ていないこの漫画を喜ぶ人ってどのくらいいるのだろうか。面白ければいいんだけど、全然面白くない。第一、ヒロインがあんまり魅力的でない。フキダシとかも浮いているし、アクションも静止しているみたいで迫力がない。ここらへんはCGがマイナスに作用している点だ。CGのテクニックは確かにすごいけど、俺はCGが見たいんじゃなくて面白い漫画が読みたいのだ。最近の寺沢武一って、面白い作品を描くためにCGを使っているというより、CGを使うために作品を描いている感じさえしてしまう。
 本当はあんまりネガティヴなことっていいたくないんだけど、意味を感じられない(つまり、作品の質の向上に役立っていない)CGの使い方をしている漫画は前から気になっていたので、ついその気持ちが出てしまったのだ。あと、CGというのを漫画の売り文句にするのもどうかと思う。今のところはしょせん画材でしかないんだから。「フルCG」とかいうのって、スクリーントーンが一般的でなかった時代に、漫画のアオリ文句で「フルページスクリーントーン使用!」とかいってるのと大して変わらないと思うのだが、それってけっこうマヌケではなかろうか。
 徳弘正也「狂四郎2030」は、最も虐げられ辺境で労働させられている囚人たちの前で、八木に犯され続ける。いやらしくてたいへんよろしい。


1/26(火)……急病にて9秒で窮乏ですよ

【雑誌】コミックバーズ 3月号 スコラ B5平
 掲載作品リストはコミックバーズのページ参照。表紙には山田章博「BEAST of EAST」が出ているが、またしても急病のため不掲載。要注意。
 吉田戦車「スカートさん」。久しぶりにみっちゃんのママ登場。なんかおばさんっぽくなったなあ。時の流れを感じる。でもみっちゃんは見たところ、あんまり変わってないみたいだけど。奥瀬サキ「FLOWERS」。相変わらず、すごくうまい絵。クールでハードな描写がとてもかっこいい。。話はすごく分かりにくいけど。こういうのは単行本でまとめて読みたい、と思っていたらなんか3月に第1巻が発売されるらしい。これで少しは話がつかめそうな気がする。西岡秀樹「夕焼けコロクプル」は、2000年に一度、母なるコロクプルの木から実となって生まれ落ちる虫のような妖精のような存在、コロクプルの物語。彼らはコロクプルの木から生まれ落ちると、すぐいずこかへ向かって走りに走る。そして行き着いた場所にコロクプルの種を植えて土へと帰っていく。2000年後に自分たちの仲間が生まれてくることを信じて。誰も知らない、はかなくもユーモラスな連中の姿を、コミカルな筆致で描いている。不思議な雰囲気のある作品で個性的。読んでいて心が和む楽しさがある。

【雑誌】ヤングチャンピオン 2/9 No.4 秋田書店 B5中
 岡田和人「教科書にないッ!」は新任の女教師の本性が明らかに。馬鹿馬鹿しく、かつ色っぽい。サービスたっぷり。仕事してるなあ。富沢ひとし「エイリアン9」は、どんどんハードな展開になってきている。川村さんの負傷がここまでとは。毎回意表を衝いてきて、なかなか先が読めない。この人の絵って、表情のバリエーションはさほど多くなく、まだまだなところはある。でも、この絵はたしかに魅力的で人を惹きつける。そしてそれは漫画家にとって非常に重要なことだと思うのだ。

【雑誌】別冊YOUNG YOU 2/28 集英社 B5平
 別冊YOUNG YOUは、読むたびに本誌のほうがはるかに面白いなあと思う。今回も強く印象に残る作品はとくになかった。緒形もり「うちのうめは今日もげんき」の最終回くらいかなあ。しかし、ペットのアライグマの死に2週間で200通の応援FAX&レターが来たっていうのはなんかすごい。ペット漫画って食いつきがいいようだ。長期連載だったってのももちろんあるんだろうけど。読者全体のペット的存在だったわけだな。次号の別冊YOUNG YOUには、坂井久仁絵「約束の家」の最終回100ページが掲載されるようなので、それは楽しみ。


1/25(月)……ガロは二度死ぬ

 このホームページに対するリンクについて、これまで「張ったときはどこから張ったか教えてくれるとうれしいです」みたいなことをいっていたが、今日から「連絡不要」と明記することにした。……ていうか、「リンク張りました」というメールをいただいておきながら、俺の怠慢によりお返しリンクを張れてなくて非常に申しわけなく思っていたので、いっそのこと無断でやっちゃってもらったほうがスッキリするかなーとかそういう感じだったわけだ。もちろん連絡いただいてもそれはそれで全然かまわないしうれしいんだけど……。まあ、そこらへんは適当にやってくださいましな。それに合わせて、「俺とOHPについて」のページも少しだけ文言変更。「好きなサッカーチーム:横浜フリューゲルス」を泣く泣く「好きだったサッカーチーム」に変更したりもする。

【雑誌】アフタヌーン 3月号 講談社 B5平
 まず注目は四季大賞受賞作、漆原友紀「蟲師」。光が当たると目が痛むという病を患った少女・スイが、親戚で同じくらいの歳の少年・ビキの家に預けられる。ビキの家には光が届きにくい、大きな蔵があったからだ。その暗闇の中でスイとビキはいろいろな話をしたり遊んだりする。スイが言うには、まぶたを閉じても、目はまだそのまぶたの裏を見ていて本当には閉じていない。本当の真っ暗闇が欲しいときには、その奥のもう一つの目を閉じなくてはならないそうなのだ。しかし、その本当の闇には普通の人間には害となるものが存在する。そして、それを払う力を持つ男「蟲師」が彼らの前に現れる……といったお話。絵には薄暗い陰りがあって、冬目景をちょっと思い起こさせる。冬目景のようなつややかな黒ではなく、乾いた感じの描線ではあるのだが。蟲師の存在が少し唐突な感じだが、蔵の中で過ごす二人の雰囲気や、暗闇の奥の暗闇といった発想など、なかなかにいいものを持っている。絵柄もカケアミ系で俺好み。やはり四季賞はレベルが高い。そのほかの受賞作品でも、読んでみたい作品がけっこうあった。とくに森川未知留「幸福の記憶」は気になる。
 外薗昌也「犬神」は、傷ついた23をかばって擬態タイプ犬神の前に史樹が立ちはだかる。いつになく男らしい史樹がかっこよかった。鬼頭莫宏「なるたる」は2話掲載だが、1話が短いので2話に分ける必要があるのかなあという感じもする。「BLAME!」の弐瓶勉は青山ブックセンターで1月28日(六本木店)と30日(新宿ルミネ2店)にサイン会をやるとのこと。各店で「BLAME!」2巻を買った人のみ、先着で28日は150名、30日は200名。植芝理一「ディスコミュニケーション」は、松笛がいない間に、戸川と昔付き合っていた香坂が戸川への想いにケリをつけに来る。ラストで松笛が戻ってくるシーンが非常に良かった。このエピソードは最終回にとっておいても良かったかな〜と思ったほど。小原愼司「菫画報」は今回も力が抜けていて、それでいながら鮮やかに決める。うまい。
 木村紺「神戸在住」は、阪神大震災を通じて一つ成長した女の子、和歌ちゃんのお話。震災の直後の話だけに、やはりヘビーな展開。コマとコマの間に挟まれるナレーションが、緊張感があっていい感じ。今まではピンと来ないところもあったが、今回はストレートに切々としていて良かった。あさりよしとお「WAHHAMAN」はクライマックス。いよいよパパとの対決も決着しようとしている。追い詰められた、緊迫感のある展開がかっこいい。木尾士目「五年生」は、最近説教臭くないので読みやすくなってきて、わりといける。石坂和道「とらわれの恋の話」。この人の民話調ながら、ハードで妄執のこもった絵柄はアクが強いが、異様な迫力を感じて見るたびに圧倒される。絵だけでなんか怖い。垣野内成美「午後3時の魔法」は今回で最終回。今までの話をきちんとつかんでないんでなんともいえないが、まとめて読むとかなり面白そう。

【雑誌】コミックピンキィ 3月号 オークラ出版 B5中
 舞登志郎「メジャーデビューへの道」。前号は載っていなかったが、今号はちゃんと掲載。ただ、前々号で予告していた持ち込み作品全掲載は見送られた模様。今回はまいとが角川書店に持ち込み。肉太で暑苦しい絵柄なんだけど、細部の描線は細くてシャープ。なかなかかっこいい絵である。そしてお話は、馬鹿馬鹿しくて大仰で青臭い。なんだか裏技的な漫画ではあるのだが、漫画に賭けるほとばしる情熱は感じる。次回は秋田書店からお呼びがかかるみたいなことが書いてあるが……。さて、まいとはメジャーデビューできるのか。楽しみだなあ。
 深田拓士「愁」はネットリとしてハードな人妻籠絡モノ。この人の絵は少し泥臭いところはあるが、お話にエロ小説ノリのいやらしさがある。それから今号のもりしげの作品は、いつもながらに悪意タップリ。なんといってもタイトルが「馬鹿が嬲られにやって来る。」だ。内容も好きな男にダマされた少女が調教され、公衆便所で見知らぬ男に身体を売らされるというもの。そして、最後のページのアオリがまた身もフタもない。非常に強烈な後味の悪さが好きだ。

【雑誌】ヤングキング 2/15 No.4 少年画報社 B5中
 佐野タカシ「イケてる2人」は連載50回で、新キャラクター登場。佐次の思い出の女の子がかわいく成長して戻ってきた。さらにドタバタが加速しそう。好調だなあ。宮尾岳「並木橋通りアオバ自転車店」がシリーズ連載開始。第一話は、亡父がコツコツと集めた自転車のパーツを息子が自転車店に持ち込み、父の夢であった理想の自転車を完成させるというお話。ハートフルでさわやかな読み口で、なかなか面白かった。それから吉田聡「荒くれKNIGHT」もやはり手堅く面白い。この人の漫画はあんまりハズレがない。このコンスタントさは大したものだと思う。

【雑誌】美少女達人 VOL.26 司書房 B5中
 ドルフィンの増刊。本誌同様、実用重視な誌面。
 まずはKASHIみちのく「ロイヤルマンボー」。2色ページあり。今回はわりとストレートな女教師やりまくり漫画。いつもほどのノリの良さはないけど、オチは相変わらず馬鹿馬鹿しくプロレスネタ。この人はだらしなげな乳の描き方もいいが、ぷるぷるした舌の描き方も陽気な感じでけっこう好き。ドリルムラタ「白衣天獄」。巨乳ナースものなのだが、それにしてもデカい。頭より大きなくらいのものが二つブラ下がっている。上杉秀彦改めトウタ「LOVE JUNKIES」。オシャレな絵柄が、ちょっと米倉けんごに似ている。構図とか表情もかなり影響を感じるのだが。新人のL.C.「FUCKIN' SHOW」は、ルーズに一日中セックスし続けている恋人たちの話。しながら飯を食い、とにかく入れたままの状態で話がずっと続く。だらしない日常をテンポ良く見せる腕前はなかなか。絵のキャラクターはまだちょっと弱いが、うまく行くとけっこう伸びそう。

【雑誌】ヤングマガジン 2/8 No.8 講談社 B5中
 山崎さやか「フローズン」。桃花にも理解可能な、それまで学校に来ていなかったちょいと変わり者のやりたがりの女の子、自称ミンミンが登場。性格的には「マザー・ルーシー」のルーシーに近いかもしれぬ。福本伸行「カイジ」はEカード編決着。当然のごとき結論ではあるのだが、それでも決めのシーンのカタルシスはさすがである。こしばてつや「天然少女萬」はたいへん濃厚で邪悪な展開で面白い。先が読めないが、さてこの後どうなるのやら。小田原ドラゴン「おやすみなさい。」は、今回は鉄郎の超人的なアイドル雑誌鑑定眼が生きる。すごいのだけど、みっともないところがいいなあ。鉄郎が人々に指示をする場面も、なんだか芸が細かくていい。平本アキラ「アゴなしゲンとオレ物語」は、ゲンさんvs.ダッチワイフの押し売り。ゲンさんの暴力的理不尽さと、押し売りの異常さのハーモニーが非常に素敵である。イジメられっ子で社会のクズだけど、自分より下と見るや途端にカサにかかって責め立ててくるあたりの描写がすごくいい。前川かずお「DEI48」。SPEEDもどきのアイドルグループ「ミミガーズ」の、「だからステージ前にオナニーしとけって言ったんだッ」と叫んだりする下らないセリフ、それからひっきりなしに続けるよく分からないアクション、ギタリストの鉄郎Tシャツなど、ヘンなアイテムがてんこ盛り。毎度、馬鹿で楽しいなあ。それにしてもミミガーズっていい名前だ。
 それから次号ではMEEくんが登場とのこと。

【雑誌】週刊少年ジャンプ 2/8 No.9 集英社 B5平
 作:ほったゆみ+画:小畑健「ヒカルの碁」。囲碁漫画ってことで最初はどうなるかと思ったが、案外と面白い。とくに石を打つときのアクションが、ビシッと力強くてかっこいいなあと思う。本格的に囲碁をやっている人は、石で爪が変色するくらいまで練習するのだと友達に聞いたことがあるが、たしかにちゃんとやっている人って手つきもかっこいいんだよなー。

【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 2/8 No.8 小学館 B5中
 吉田戦車「学活!!つやつや担任」が新連載。犬や、壺に取りついた議論好きの幽霊を生徒として抱える、つやつやした先生の奇妙な教育物語であるようだ。コマ割りは4コマ漫画と同様で、4コマで一話でなく、一番下のコマに行ったら次の列の一番上へというふうに話が続く形式。連載一回目はまだあんまり面白くないが、まあこれからだ。ちなみに今回の第1ページめを印刷したテレカやTシャツのプレゼントもあるので、欲しい人は応募するべし。こういうのは案外当たるのだ。俺も前に「ぷりぷり県」の県ずきんを当てたことあるし。伊藤潤二「うずまき」。今回は、台風のため家が倒壊し、空き家だった家に住まうことになった桐絵一家の遭遇した災難。別に怖くはないのだが、その奇想が毎度楽しい。

【単行本】「潜む声 鏡の中の遺書 その他の短編」 松本充代 アスペクト A5
 ガロがいったん休刊し、それから復刊したことに関してはマスコミでもかなり取り上げられたので知っている人も多いと思うが、それがさらに休刊していたことに気づいている人は案外と少ないんじゃないだろうか。そう、ガロは現在発行されていないのだ。
 一度休刊した後、二度目の死を迎えるまでの復刊ガロに掲載された松本充代の作品を集めた単行本がこの「潜む声 鏡の中の遺書 その他の短編」だ。スッキリとした一見可愛らしい画風でありながら、そのトーンは暗く寒々としている。そして怖い。人間の暗部、業の深さ、狂気を、とことん冷淡に突き放して描き出してくる作風は、ヘタなホラー漫画よりもよっぽど恐ろしい。
「潜む声」は自分に厳しく弟には甘い母の愛を得ようとして、自分の感情を押し殺しそれを狂気にまで登り詰めさせていく女性のお話。この女性は外から見れば文句のない優等生なのだが、その内面は実に歪んでいる。泣き叫んだり取り乱すわけでもなく、その想いを誰にも吐露せず「母に気に入られるように、母に嫌われないように」と自分を追い詰めていく過程は、ものすごいいたたまれなさがある。「鏡の中の遺書」もハードな話だ。太っていてかわいくないがゆえに自分に自信が持てない少女と、かわいいがゆえに人々から遠ざけられる少女の、友情が壊れていく様を冷酷に描いた作品。ピンクパンチ(宙出版)に掲載された「Weed of the Shallows」のみは救いがあるが、そのほかの作品は寒気がするほどに救いがなく陰々滅々とした気分になる。甘えがまったく許されない世界である。
 この絵でこの後味の悪さ。読後の衝撃。こういうヘビーな話でも掲載してくれる雑誌ってあまりないだけに、ガロの休刊はやはり惜しまれる。


1/24(日)……消毒したい

 1/20のウルトラジャンプの項で、藤原カムイ「福神町綺譚」に俺がモデルのキャラクターが出てくると書いたけど、それは「む〜ん」といっている奴(p.263)ではなく、p.244の3コマめで憶測屋にツッコミを入れている奴だった模様。む〜ん。どちらにしても目が細いのが特徴。藤原カムイさんは「うろおぼえで描いた」とおっしゃっていたが、だいたい似ていると思う。たいていの人に覚えやすい顔だといわれるが、描きやすい顔でもある。絵のほうは実物より細面で、髪の毛が現在よりもだいぶ長いけど。

【雑誌】きみとぼく 3月号 ソニー・マガジンズ B5平
 藤原薫「おまえが世界をこわしたいなら」。現代に生きる吸血鬼の話だが、血が通っていないような冷たい絵柄が魅力。ほろびの予感をはらむ陰鬱な雰囲気がなかなかいい。架月弥「チョコの歌」は、バレンタイン・デーを巡る圭都と忍のドタバタ。やっと忍の圭都に対する想いもハッキリする。この人の絵って、かなり雑っぽくいい加減に描かれたところも多いのだけど、それがまた味である。植木家朗「南北高校番長部」は、前後編の前編が掲載。南校舎と北校舎で仲が悪い学校の、それぞれの校舎に独立して存在する応援団の団長同士がことあるごとに反発し争うドタバタコメディ。植木家朗の下らないギャグと、スッキリとした絵には前からセンスを感じている。そんなわけで後編も楽しみ。

【雑誌】コミッククリムゾン 3/2 No.6 創美社 B5平
 TONO「ダスクストーリィ」がやっぱりいい。今回は、主人公のタクトが「フレッカ」という女の子の夢の中に巻き込まれ、有名人や近隣の人気者たちだけが招かれた偽物のパーティに出る。その中でストーリーが展開する。春の日射しのような柔らかい暖かみがある、内側から淡く光っているような感じのする画風だ。青木光恵は風邪だそうで「となりの芝生は」は今回お休み。なんかパソコンに関するエッセイが3ページほど。さいきなおこ「Thorn〜いばら〜」は、このデッサンの狂ったアンバランスでベタな絵柄と、これまたベタなストーリーがなんか惹かれてしまうものがある。怖いもの見たさに近い。

【単行本】「超劇画 聖徳太子」 作:滝沢解+画:ふくしま政美 太田出版 A5
「聖マッスル」「女犯坊」の滝沢、ふくしまコンビの作品。二十年前に死んだはずの聖徳太子が、蘇我一族に対する怨念により蘇り現世に波乱を起こそうとするが、それを危惧した獄界のものに拉致される。しかし、閻魔大王に気に入られた聖徳太子はその絶大な霊力で地獄でも大暴れ。まず圧倒的なのが、聖徳太子の魁偉な容貌。筋肉ムキムキで猛々しいヒゲを生やし、邪悪な光を目に宿したその姿は女犯坊を思い起こさせる(同じ作者なので当然といえば当然だが)。原稿用紙に叩きつけたような、強力すぎるくらい強力な描線も大迫力である。それからぶっとく荒唐無稽なストーリー展開もすごい。地獄ではシャカの一族が地獄解放軍を作って、ゾウ型巨大ロボットやらミサイルを製造してたりするし、地獄の獄卒たちもパンチテープをはじき出す怪しげなコンピュータを操る。ここまで器の大きな逸脱を見せる作品は、現在の漫画界では見ない。小手先ではなく、根本的な部分がネジ曲がっていて、それを異様な気迫で描き上げてくる。そのエネルギーのほとばしりは、ヤワな人間では受け止めがたいほど。そして、この作品は未完である。なんかすごい展開になってきて「さてどうなるのだろうか」と思っているところで、目に飛び込んでくる神々しいまでの未完の文字。男らしすぎる。生原稿は燃やしてしまうというふくしま政美の豪気ぶりにも唖然としてしまう。そのため、この単行本は雑誌が底本になったようで、印刷はあまりきれいでない。その点はそういうものだと思って諦めるしかない。
 で、すごい作品ではあるが、こういう作品って基本的に一度読んだらそれでオッケーというものでもある。再読するかといわれると、たぶんしないだろうなあと思う。

【単行本】「どす恋ジゴロ」2巻 平松伸二 集英社 B6
「男芸者」の異名どおり、艶を売りとし夜の土俵も本気でつとめあげるジゴロ力士、恋吹雪が主役。恋吹雪の色気にさまざまな女が群がってくるのだが、そのドラマが脂っこい絵のわりになんとも馬鹿馬鹿しく安いのが楽しい。そして毎回の締めは相撲甚句。これがまたいい味を出している。は〜、どす恋どす恋。ちなみに今回はあの「リッキー台風」のリッキー大和まで出てくるというサービスぶり。読んでて腰がヘナヘナしてくる作品。


1/23(土)……クビダイ・ハーン

【雑誌】フラミンゴ 3月号 三和出版 A5平
 巻頭カラー、鰤てり「猫−前編−」は、なんの前触れも説明もなく凌辱シーンからスタート。あんまり面白くないかな、と思っていたら冒頭で凌辱されてたねーちゃんが変わり果てた姿で再登場。後編はかなり鬼畜な内容になりそうな気配。シャレにならないくらい激しい肉体改造希望。こういう漫画って絵がうまくなかったり、バランスを欠いていたりするほうが逆に怖かったりもする。白井薫範「みちこ 前編:LIGHT SIDE」はタイトルにあるとおり、白井薫範にしてはちょっと軽め。しかし、わざわざ「LIGHT SIDE」とうたっているということは次回は「HEAVY SIDE」なのか? 蜈蚣Melibe「がんばれ!!ロ○コン」は、タイトルから分かるようにロボコンのパロディ。……なのだが、キャラクターは全部「バージェスの乙女たち」そのまんま。彼らがボディペインティングしたり、コスプレしたりして、ロボコンキャラをやっているのだ。ストーリーの展開もかなり馬鹿馬鹿しく、なんだかものすごく楽しそう。両方の作品のキャラクターそれぞれに対する深い愛を感じる。天竺浪人「黒日夢」。今回は読切での登場だが、相変わらずうまい。現実と非現実の境目を揺るがす不思議な雰囲気の漂う物語は、山本直樹を少し思い出す。しかもけっこう力が抜けてて、静かなおかしさもあったりする。

【雑誌】CUTiE comic 3月号 宝島社 B5平
 この雑誌はやはり粒揃いで面白い。あんまり捨てどころがない充実ぶり。
 巻頭で篠有紀子が読切を描いている。タイトルは「夢の中に現れた彼女の手」。オールカラーで8ページ。詩的なお話。安野モヨコ「ラブ・マスターX」は、この前出てきたかっこいい男が大方の予想どおり例の宙に浮くイジメられっ子であったことが判明。当たり前のことのように、スパッと非日常を混ぜ込んでくるあたりはうまいなあ。三原ミツカズの新作「キューティ・ビースト」は、天使の外見に小悪魔の心のきなこと、キッツイ外見にオドオドした小娘の心の倫子の、二人の女友達の話。なんとなく連載向きの話にも見えるが読切なのだろうか。三原ミツカズの絵自体が硬質でシャープなため、きなこの外見はあんまり天使っぽくないんだがまあそれはご愛敬。オシャレな絵でラストまできれいにまとめる構成力はさすがだ。
 魚喃キリコ「南瓜とマヨネーズ」は連載再開。もう前の話を半分忘れかけているが、何やら同棲している男女の仲がだいぶ気まずくなってきた。単純な中に愁いを含んだ描線がやはりかっこいい。南Q太「夢の温度」。全体の雰囲気が実にクールだ。激しい動きがまったくなくがらんとしている。表情の一つ一つ、コマの一つ一つがなんだかすごく意味ありげに見えてしまう。スッキリとした画面、会話の間、ゆったりしたコマ割り。そのどれもが効果的に機能している、ように思える。そういうふうに読者に思わせてしまうだけでもこれはすごいことだ。とてもうまい。

【雑誌】LaLa 3月号 白泉社 B5平
 津田雅美「彼氏彼女の事情」。幸せな雰囲気でお話が進むかと思いきや、だいぶハードな展開に。自分の中に潜む暗い独占欲に苛まれる有馬。宮沢の側にいる男に対する冷たい視線が怖い。宮沢はいたって呑気だが。米沢りか「こっぱみじんの恋」。今回も激しくこっぱずかしくていい。この脳天気さはかなりのものだ。LaLaの中では一番好き。「ジェットコースターってすげえな。満面の笑みを作っちゃうんだから!!」「好きな人の満面の笑みが見れちゃうんだもんな!!」。きしぇー、こっぱずかし〜。このくらい馬鹿っぽいとうれしいぞ。

【単行本】「新首代引受人」1巻 平田弘史 講談社 A5
 戦国時代の合戦において、金と引き換えに命を助けてもらう「首代」。その取り立てを代理で行うのが「首代引受人」である。老境の漫画家が一念発起、Macでの作画に挑戦して話題になった作品だが、パソコンで描かれていようが筆で描かれていようが面白いかどうかが読者にとっては一番大切だ。そしてこの作品は見事に面白い。緻密でありながら力強く骨太な画風と、それに負けないガッシリとしたストーリー。ときに侍社会の無常さを感じさせ、ときに善き行いの強さを描く。これでもかというくらいの力強さでえいやっとばかりに気合いの入った筆致でありながら、作品全体としてはどこか飄々と肩の力が抜けているように感じられるのはベテランならではの懐の深さといえるかもしれない。地に足の着いた、どっしりとした強さのある作品だ。インタビューによれば、紙の原稿だと細部を見るのが老眼のためつらくなってきていたがパソコンだと拡大縮小が思いのままなのでいい、というようなことをインタビューで語っていた。山本直樹が省力化のためにパソコンを導入したのと同じように、これもまたパソコンを画材として効果的に使った例だと思う。


1/22(金)……美味しさの秘密はなるたるソース

 丸尾末広「DDT」(青林工藝舎)と町野変丸「まるまる変丸ショウ」(イースト・プレス)が、それぞれ新装版で発売されていたのでいちおう購入しておく。「DDT」はとくに入手が難しい単行本だっただけにうれしいところデスネー(青林堂版も兄貴が持っているはずなのだけれどもサ)。

【雑誌】ヤングアニマル 2/12 No.3 白泉社 B5中
 二宮ひかる「ナイーヴ」が巻頭カラー。物語内では一年の月日が過ぎ、例の二人もずいぶん幸せな雰囲気が漂う。扉のところに「あれから1年……」となっていて、どの時点から一年が過ぎたのかはよく分からないのだけど。三浦建太郎「ベルセルク」。モロにサディストなモズグスもいいのだが、罪もない人々が拷問されるところを見て昂ぶってしまうファルネーゼに危ういものを感じる。見つめる表情が妙になまめかしいのだ。少年チャンピオンで「大介ゴール!」をやっていた馬場民雄が初登場。タイトルは「ご馳走さま!」。なんかラーメン漫画の模様だが。展開的には少々お安い。柴田ヨクサル「エアマスター」。マキと金次郎の戦いに決着がついた気配。最後、ノンストップで攻撃を連続させ相手をしとめるところの描写が大迫力。かっこいい。中田ゆみが久しぶりに登場。タイトルは「フラチなフタリ」。他人の子供を育てつつシスターになったヤンキー娘のお話なのだが、出来としては可もなく不可もなし。高橋雄一郎「EKIDEN野郎!!」はわりと盛り上がってて面白くなってきたと思ったら、次号で最終回らしい。ちょっと残念。

【雑誌】ドルフィン 3月号 司書房 B5中
 うむ。どの作品も乳がデカめで、ヌかせようという心意気にあふれている。立派。マーシーラビット「プリズナー☆アイドル」はとくにそれを強く感じる。アイドルが囚われてペットとして飼われるという話なのだが、ほとんどすべてのページに必ず一つはサービスカットがあり、それでいながら絵や話の雰囲気は軽く、さらにSEXはハード。プロのお仕事。草津てるにょ「降神祭」は借金から逃げて神社に転がりこんだ女が、賽銭と引き換えに参拝客にさんざん犯されるという話。この人の描く女性は肌がツヤツヤしてていやらしい。みやびつづる「慰安課の女たち」は再録なのだが、原稿落としたのかなあ。
 あと、Dr.モローが死んだという噂の真偽を知りたい人はこの雑誌を読もう。しかしその噂、どこが出どころなんだろう?

【雑誌】漫画サンデーフォアマン 2/12 No.3 実業之日本社 B5中
 作:田中誠一+画:秋月めぐる「清志朗の蹴り!」。ショボくれたサラリーマンがムエタイと出会い、少しずつ変わり始める。秋月めぐるの乾いた、ちょっと太めの線を寄り合わせた画風は好きなのだ。骨太な漫画を描ける人だけに、もっともっと作品を見たい。できればサッカー漫画を。カサギヒロシ「クマロボ」。この人の「バイソン」はけっこう好きだったのだが、グチャグチャな事態へとあれよあれよと言う間になだれ込むストーリーのテンポの良さは「クマロボ」でも変わらない。女の子がけっこう色っぽいのもいい。東陽片岡「こんなの捨てちゃイヤ」。しみったれたオヤジたちが町の片隅でおもちゃだか本物だか分からないピストルを何挺も拾うのだが、現状肯定で別に志もなんにも持ってない彼らはそれを利用しようともせずただ売っ払うのみ。これはこれで「別に上を向く必要なんかないんだよ」って感じの幸せさがあって、読んでて心が和む。

【単行本】「なるたる」2巻 鬼頭莫宏 講談社 B6
 怪しい雲行きになりつつある第2巻。シイナの与かり知らぬところで世界は動き、その波は確実にシイナに押し寄せてくる。ナイフの少年、竜の子、そして父に迫る危機と緊迫感のあふれる展開。空を飛ぶ竜の子たちの卓抜したデザイン、そして気持ちのいい浮遊感。動きの速度の緩急のつけかたもうまい。磁器の人形のような、硬質な美しさを感じる。

【単行本】「蒼天航路」15巻 王欣太 講談社 B6
 曹操 vs.袁紹の戦いは大きなうねりに向けてふつふつと煮立ち始めたという段階。次巻以降、お話は大きく動き出す。途中ちとマンネリ気味かと思われたこの作品だが、やはり一つひとつの山における見せ方は痛快で抜群にかっこいい。長期連載は節目節目さえビシッと決めれば物語全体がきちんと引き締まるものだが、そこらへんをキッチリ押さえているのがこの作品の強みだ。一話につき一回くらいは見せ場が必ずある。


1/21(木)……カラーマンボウ

 会社までの6ヶ月定期を買う。片道1時間半かけて通勤している俺の定期代はかなりの額に達する。ここ何ヶ月かで一番大きな買物だ。それにしても6ヶ月定期を買うときってなんだか敗北感を感じる。これからまた6ヶ月、社畜として暮らす生活に甘んじることを自ら認めてしまったような気がして。でも、ウチの会社は交通費は1ヶ月ずつ支給されるから、定期はまとめて買っちゃったほうが差額の分トクになるのだ。それを考えると会社から金をふんだくってるわけで、勝利のような気がしなくもないのだけど。

【雑誌】週刊少年チャンピオン 2/4 No.9 秋田書店 B5平
 浜岡賢次「浦安鉄筋家族」では、クラスに板垣恵介的「人類最強の鼻タレ小僧」が転校してくる。チョークで黒板を破壊してしまうなど、馬鹿馬鹿しい展開が楽しかった。橋本俊二「麻雀鬼ウキョウ」は相変わらずイカサマが低レベル。これだけやるならもっともっと下らなくしてほしいところ。田口雅之「バロン・ゴング・バトル」はなんか殴り合いで決着をつけるとかいってたのに、飛び道具使ってるような。いいのか?いいんだろうけど。

【雑誌】モーニング 2/4 No.8 講談社 B5中
 井上雄彦「バガボンド」。一生懸命なんだけど、なんかズレてる感じのおつうの行動がかわいらしくていい。会話の間のとり方とか本当にうまいなと思う。画:的場健+作:亜樹直「サイコドクター」は新シリーズスタート。最初の4色ページはCGのようだが、ちょっと平板な感じがしてしまう。モノクロのほうが画面の感じが好きだ。守村大「考える犬」はさゆりちゃんがたいへん色っぽい。この人はやはり手堅く読ませる漫画を描いてくる。森田信吾「駅前の歩き方」は、人気作家が取材先の町で、名物料理に目もくれず大衆食堂で地元の人々の生活を観察しながら、ちょっと怪しげなローカル料理をがっつく。谷口ジローの「孤独のグルメ」とかをちょっと思い出す、B級グルメ的料理漫画。高級料理ではもちろんないのだけど、お腹にたまりそうでおいしそうだ。またそのうちやってほしいシリーズ。

【雑誌】ヤングサンデー 2/4 No.8 小学館 B5中
 佐藤秀峰「海猿」。熱いのは男だけでなく女もだ。記者のおねーちゃんが涙と鼻水垂らしながら叫ぶシーンとかは迫力がある。あと、密航者の美花が細面で色っぽくていいなあ。岩田やすてる「球魂」。相手方がこてんぱんにやられているのだが、「球に触れた」といってなんかうかれるところとか、いちいち脂っこくて奇妙なノリがいい。岩田やすてるの漫画はやはりどこかヘンだ。山本英夫「殺し屋-1-」では垣原が絶好調。ピアスだらけのチンポとか、なんだかものすごく邪悪でキャラが立ちまくり。新井英樹「ザ・ワールド・イズ・マイン」は連載再開。ヒグマドンが破壊の限りを尽くす間も、テレビは呑気にコマーシャルを流し続ける。人がコロコロ死んでいる間も、ほかの場所ではそんなことまったく気にしない人々の日常は動き続けているというシニカルな視点。こういったさりげない演出がすごくうまいなーと思う。あと、いきなり入るモンちゃんの原風景?のシーンもなかなかに思わせぶり。やっぱり面白い〜。

【雑誌】花とゆめ 2/5 No.4 白泉社 B5平
 羅川真理茂「しゃにむにGO」。なんかわりと泥臭くテニス漫画をしている。でもスポーツシーンの描き方はいまいち迫力が足らないかなーとも思う。スポーツよりもむしろキャラクターがメイン。望月花梨「笑えない理由」は今号から4号連続掲載。ちょっと絵が荒れ気味かなあ。なんか望月花梨にしてはわりと普通のラブコメになってしまっているような。そういう真っ向勝負な土俵に登ってしまうと、この人の場合ちとつらいかも。

【単行本】「カラーメイル」 藤原カムイ エニックス A5
 オールカラーの単行本なのだが、その凝りっぷりがすごい。物語の第1話で世界からすべての色が盗まれてしまう。色を失って人々が石となってしまう中で、一人だけ石とならなかった人間、主人公のアイが、色の神官アッシュ・グレイに導かれ、人間の姿となった動物たちの力を借りて色を取り戻すべく冒険の旅に出る。で、一つの冒険(一話)ごとに一色ずつ色を取り戻していくのだが、それに従って漫画のほうも一色ずつ使われる色が増えていく。どんどん色が増えていって華やかになっていく画面と、ドタバタコメディで進むアイたちの冒険の様子がコミカルですごく楽しい。単行本の表紙も、物語の登場キャラクターや出来事をまるで交通標識みたいに図案化した、シャレたデザイン。目次の記号もイカしている。藤原カムイの遊び心がふんだんに発揮された一品。福神町もそうだけど、藤原カムイに時間を与えるとこういうとんでもなく凝り凝りの作品を描いていてくる。今さらいうまでもないことなのだが、藤原カムイはタダモノではない。


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