◆ 1997年俺的漫画総括・雑誌編 ◆


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 今年俺がコンスタントに面白く読んだ雑誌としては「アフタヌーン」「コミックビーム」「ヤングサンデー」「モーニング」「ヤングマガジン」といったあたりが挙げられる。このほかにも面白い雑誌はいろいろとあったのだが、安定して面白かったのはこの五つ。それでは、ジャンル別に振り返って行ってみよう。
 なお、少女漫画については俺は守備範囲外なので触れない。あしからず。

●少年誌

 売上部数からいえばジャンプの凋落とマガジンの躍進が目立った。しかし、そんなことは実は俺にとってはどうでも良かったりする。俺は読者だから、雑誌が売れるか売れないかよりも面白いか面白くないかのほうが重要なのだ。
 今年、俺的に面白かった少年誌はサンデーとチャンピオン。

 サンデーはどの作品もコンスタントに面白くて粒揃い。ただし、長期連載が多いため新規読者は獲得しにくいだろうと思う。また、雑誌チェックをしなくても単行本チェックで足りてしまう作品が多いというのも売上が伸びない要因だろう。しかし、それが悪いことかといえば、最近そんな感じがしなくなってきた。
 出版社にとって、漫画雑誌は単価が安くてあまりもうけにならないというのは、わりとよく知られた事実である。そう考えると雑誌をいくら売ってもあんまりおいしくない。むしろ単行本を売ったり、メディアミックスをしたほうが出版社にとってはおいしい。それを考えれば、サンデーって実は成功してるんじゃないかと思う。「名探偵コナン」(青山剛昌)を筆頭に単行本は常に売上上位に入ってくるし、アニメ化作品も多い。雑誌の売上で考えると低迷しているように見えなくもないが、出版社の立場から見ると実は成功なのではないだろうか。ちなみに、これも読者である俺にとっては実はどうでもいいことなのではあるが。

 チャンピオンはちょっと前よりはテンションが落ちているが、「鉄鍋のジャン」(西条真二)、「悟空道」(山口貴由)、「バロン・ゴング・バトル」(田口雅之)、「ジャンジャンバリバリ」(石山東吉)といったあたり、けっこう楽しめた。俺は格闘技はあんまり興味がないが、好きな人は「グラップラー刃牙」(板垣恵介)も楽しめたことだろう。相変わらず濃い陣容だ。

 逆にジャンプとマガジンは意外と読むところが少ない。ジャンプは「世紀末リーダー伝たけし!」(島袋光年)と「I''s」(桂正和)、「ONE PIECE」(尾田栄一郎)が俺的にはヒット。マガジンでは、「コレ」という作品がなかった。「はじめの一歩」が安定して面白かったくらいだろうか。雑誌全体としては攻めの姿勢を感じられるのだが、どれか一つといわれると挙がってこない。

 なんにせよ、週刊少年誌というのは、今や厳しい形態なのかもしれない。ジャンプを初めとして「作家を使いつぶす」「制約がキツイ」というイメージが広く浸透してしまったため、新人がデビューの場として嫌う場所になってしまったような気がする。さらにH漫画をはじめとする、マイナー雑誌や同人誌の収入でもそこそこ食えてしまう現状が、さらに少年誌に有望新人が現れにくくしている。俺が97年、少年誌でこりゃいいと思った新人は「世紀末リーダ伝たけし!」の島袋光年くらいだった。
 キャプテンの撤退も話題になった。売上はどうか知らないが、内容的には長期低落傾向が続くのではないだろうか。

●青年誌

 ヤングサンデーとモーニング、ヤングマガジンが良かった。
 ヤングサンデーは「マイナス」(沖さやか)や「花マル伝」(岩重孝)、「デカスロン」(山田芳裕)などなど連載陣がコンスタントに面白かったのに加えて、ギャグ方面も安定していた。「the山田家」(阿部潤)、「青春くん」(とがしやすたか)といったあたりに加えて、ギャグとはいいにくいかもしれないが「今日のだいちゃん」(太陽星太郎)もあった。こういう一話完結形式のものが充実していると新規読者も入っていきやすい。
 このほか「The World Is Mine」(新井英樹)、「愛米」(コージィ城倉)、「よいこの星!」(柏木ハルコ)なども力作。面白かった。

 モーニングは「ブル田さん」(作:高橋三千綱+画:きくち正太)がなんといっても良かった。さらに「ヨリが跳ぶ」(ヒラマツ・ミノル)、「内線893」(山本康人)、「天才柳沢教授の生活」(山下和美)、「蒼天航路」(作:李學仁+画:王欣太)といったあたりも安定して力を発揮していた。
 そして、「変體累ヶ淵NAKED」(作:杉元伶一+画:米餅昭彦)。タダでさえ濃い「モーニング」を、さらに輪をかけて脂っこくしてくれた。
 シリーズ連載では「メロドラマ」(村上もとか)も評価が高い。
 ヤングマガジンは混沌とした味が魅力。増刊も含めて、絵がヘタでもパワーがあれば載っけてしまう猥雑さが素敵。そんな中「ストッパー毒島」(ハロルド作石)、「カイジ」(福本伸行)あたりが安定して楽しめた。さらに「チューリップティーズ」(地下沢中也)、「日直番長」(タイム涼介)あたりが素晴らしかった。

 このほかに常に購入していたのはスピリッツ。よくできてはいるのだが、良くも悪くも優等生的。圧倒的なパワーには欠ける。「ピンポン」(松本大洋)が終わってから、ちょっと寂しかった。
 青年誌は集英社系は俺としてはあんまり読むところがない。このほか、増刊系で面白いのがけっこうあった。双葉社・アクション2、講談社・ヤンマガエグザクタ/赤BUTAといったあたり。こういう増刊は読切作品が多いので、買っておかないと後で後悔する。
 このほかの雑誌に関しては、継続的には読んでいなかったので総括はできないが、印象に残る作品はいくつかあった。青年誌は現在でも十分すそ野が広いが、98年もその状況は対して変わらないと思う。俺的に面白い作品が主に出てくるのもこのあたりだろう。98年も要チェックだ。

●その他

 志の高い雑誌がつぶれていくケースが目立った。トム、アレ!など。ビンゴなんかはよくもったなという感じ。中でも一部の人にとって衝撃的だったのはやっぱりガロだろう。二つに分裂してどうなるかなと思ったが、まあなんとかなりそうな気もする。とくに青林堂「ガロ」のほうは、漫画のページが増えたので俺としては歓迎。
 アフタヌーンのリニューアルもびっくりはした。リニューアルに伴って、いくつかの作品は消えていったが、現在もおおむね面白いことに変わりはない。この雑誌は四季賞がしっかりしていてくれさえすれば、って感じはする。
 昨年に引き続き、コミックビームはクサイところをついていた。仲能健児、園山二美、羽生生純といった特殊な人たちがしっかり載っていて非常にいい。新谷明弘、金平守人といった若手も順調に伸びている。来年も楽しみ。

●エロ系

 B5平とじでボリュームのある雑誌が流行。そんな中、A5中とじの雄だった、ホットミルクがB5中とじになるという象徴的な出来事も。ショタ系が現在は流行のようだが、俺としてはあんまり興味がない。
 激漫、快楽天といったワニマガ系が調子良かったが、今までは大切な要素だった実用性よりも、漫画としての完成度を目指す雑誌が増えてきたような気がする。激漫、快楽天はその代表的な存在だ。また、フラミンゴのようにSMに徹した雑誌や、アンソロジー系が増えてきたような気もする。これはエロ漫画雑誌のすそ野の広がりが原因だと思う。これからもエロ系雑誌の多様化は進むのではなかろうか。
 いまや、エロ系雑誌はマイナーというくくりでは語れなくなってきている。もう、すでにエロはエロで、その中で作家を育て売り出していくジャンルへと独立した。わざわざ制約のキツイ少年誌なんぞに出ていくより、自由にやれるエロでずっとやっていくのを選ぶ人も多いだろう。
 また、エロ系の中でうまいからといって、ほかのジャンルでもうまいかっていうとけしてそうじゃない。例えば、うたたねひろゆきなんて、エロの中では圧倒的な画力を持っているが、アフタヌーンの中に混じるとタダのアニメ絵に見えてしまう。大暮維人なんかも同様だ。鶏口となるも牛後となるなかれ、だ。逆に今まで「メジャー」と呼ばれるほうにいた人がエロ系に来たとしても、そう簡単に通用しない。エロ系にはエロ系の文法がすでに成立しているのだ。

●総括

 97年はジャンプの低落など、漫画界に元気がなくなってきたみたいなことがいわれた。また、「エヴァ」「もののけ」「ポケモン」と、アニメが当たり年だったため、それに食われてしまった感がなきにしもあらず。
 98年はもうちょっとドラスティックな雑誌の統廃合、構造変化が起きるかもしれない。ただ、それでもやっぱり面白い漫画はいっぱい出てきている。単行本が出しにくいという状況は続くと思うので、これは、と思う漫画に関しては雑誌チェックがさらに重要になってくるだろう。読者である俺としては、面白い漫画がいっぱい出てきてそれを楽しめる環境さえあればいい。そんなわけで98年もいっぱい読むぞ。