町田ひらく

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■作家名:町田ひらく(まちだ・ひらく)
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▼更新情報
2003/03/06 「ANNE FRIENDS」追加
2002/04/20 「町田ホテル」追加

 最近は寡作であるが、マニア筋では注目度の非常に高いエロ漫画家。話作りも絵もうまい。町田ひらくの魅力を一言で語るのは難しいが、特徴として真っ先に挙がってくるのが、世の中に絶望しきっているかのような、極端に人を突き放した視点だろう。倦怠と絶望と怠惰と暴力、どうしようもなく閉塞しきった世界観がそこにはある。

 人形のように可憐な少女たちは、男たちに情け容赦なく蹂躙されていく。そこには愛情もなければ快感ももちろんない。自分の欲望を吐き出した男たちも、それによって何かを得るというわけでもない。普通のH漫画だと、1回SEXしたらそれであとは万事オッケーとなってしまうところだが、町田ひらくの漫画ではそんなご都合主義な展開は絶対に許されない。男も女も業の鎖で、このどうしようもなく行き場のない世界につなぎとめられているかのようだ。単純なロリコン漫画とは一味違った苦みと緊張感のある世界を堪能していただきたい。


▼コミックスリスト

「あじあの貢ぎもの」 一水社 A5 [Amzn]

「あじあの貢ぎもの」 シリーズ:いずみコミックス66
ISBNコード:ISBN4-87076-566-7
価格:860円(本体819円)円
初版年月日:2004/06/23
収録作品:「半仏半獣」「piano man」「201X」「国立人喰い動物園」「夫婦善罪」「電波精子」「オニゲノム」「03年代動乱」

 久々のような気がしたのだが、「ANNE FRIENDS」[bk1][Amzn]が2003年3月だから、1年ちょいぶりということになる。「ANNE FRIENDS」はヨーロッパ系の少女が主に描かれていたが、今回はタイトルからも分かるとおり和が中心。

 掲載作品の中では、代々幼女趣味の男たちを生み出してきた家族の物語である「オニゲノム」が個人的には好きだ。爺さんは戦時中に中国で姑娘を凌辱、老父は服役中、自分自身にもその趣味がある。そんな男に娘ができ、自らと、きっとその手の趣味に目覚めるであろう自分の息子の行動を憂慮するというストーリーは苦みと甘みが同居した面白い構図となっている。警察の留置所でロリータ漫画家が自分の趣味についてとつとつと語る「03年代動乱」なんかも赤裸々で味がある。とあるピアノを通じその持ち主たちの物語を描く「piano man」、少女とのエロ写真メールをやりとりしていた携帯電話をお話の中心に据えた「電波精子」と、モノを媒介として人間ドラマを紡いでいくお話も面白い。皮肉の利いたビターな味わいのお話が揃っていて、揺るぎない高品質。硬質な線によって描かれた少女たちもますます美しい。やっぱりいい。
(2004/05/16)

「ANNE FRIENDS」 コアマガジン A5 [bk1][Amzn]

「ANNE FRIENDS」 シリーズ:ホットミルクコミックス156
ISBNコード:ISBN4-87734-619-8 C0979
価格:本体1000円
初版年月日:2003/03/19

 約1年ぶりの単行本。成年マーク付きだけど珍しくbk1でも取り扱っている。まあ確かに、外国の絵本の表紙か何かのような性的なものを感じさせない表紙は成年コミックっぽくない。女性に人気があるみたいな話を聞いたことがあるけどそれも頷ける。実際内容のほうも、通常の美少女漫画とは一線を画している。

 今回収録されたのは短編が10本。いかにも町田ひらくらしい、大人の男たちもしくはその他の要因によってもたらされた過酷な運命の中で生きる少女たちの姿を描いた物語が揃う。シニカルで、よもぎのような苦い味を残す作風は、甘いラブコメやストレートなハードコアエロスが主流を占める美少女漫画界において、強烈な異彩を放っている。そういえば出てくる人物たちが、全員日本人ではないというのも最近の町田ひらく漫画の特徴なところ。舶来品の人形のような気高さ、美しさを独特の硬質な線で描き出している。

 舞台としてはヨーロッパ系が中心だが、いくつかの作品ではその他の国籍の少女たちも描かれる。とくに印象的なのは「スケアクロウ」。ベトナム戦争中の出来事を描いた物語で、米国の負傷兵を助けた現地の少女を描いた作品。町田ひらく作品では運命に打ちひしがれている少女が描かれることが多いが、ここに登場するファンという少女は、若いながらも水田を自分で守り、時には銃をとり狙撃もする。大柄な米兵がこの少女に助けられ、守られるということの喜びを体験するというエピソードはなかなかに興味深い。また「Chocolate Adam」は、南の島の、褐色の肌を持つ少年少女の物語。少女は少年を慕うが、彼は肌の白い人魚に憧れ、そこから悲劇が生まれる。このほかの作品も完成度が高く、鋭利に研ぎ澄まされた語り口が絶妙な冴えを見せている。非常にクールな作風だが、例えば天文描写など、ロマンチックな事物が必ずひそめられているのも少女たちの可憐さを際立たせる要因になっていると思う。
(2003/03/06)

収録作品初出
Love and PeaceComicぷちみるくVol.5
ナタリア天文台ComicアリスコレクションVol.1
ネネによる福音書漫画ばんがいち2000年8月号
ヘルツォークの林檎ComicぷちみるくVol.3
スケアクロウComicアリス倶楽部
約束の血ComicぷちみるくVol.2
空飛ぶ円盤に恋人と乗ったよMANGA EROTICS 2002年夏号
Chocolate Adam(前編)コミックメガキューブVol.1
Chocolate Adam(後編)コミックメガキューブVol.2
アルマゲストComicアリスくらぶVol.9

「町田ホテル」 太田出版 A5 [Amzn]

「町田ホテル」 シリーズ:F×COMICS
ISBNコード:ISBN4-87233-641-0 C0979
価格:本体952円
初版年月日:2002/05/03

 2000年末に発行された「11.1」以来、ひっさびさの単行本。今回はエクストラビージャン、漫画アクション、エロティクス&F、クイックジャパンと、いろいろなところに掲載された短編を収録した作品集となっている。それにしても今回の表紙はまたキュートでPOPだなあ。

 どの短編も町田ひらくらしく、どの作品にも皮肉でクールな仕掛けが施してあり、少女嗜好という甘いファンタジーに対して苦い現実をつきつけてくる。その甘さと苦さの対比、落差でもって、少女という果実をより印象的に浮かび上がらせている。今回の収録作品の中では、珍しく熟女のお話である「めすいぬのむすめ」に引かれる。長年自作の挿絵を担当してくれていた挿絵作家と肉体関係を持ってしまい、しかもそれが実は処女喪失であった女性童話作家が主人公。二人とも、昔読んだ童話で今も泣けるという共通点があり、年は成人ではあるものの精神的には少年少女なままである人間の物語にしているのが興味深い。こういうのをサラリと強調しすぎるでなく描けるってのはやっぱりかっこいいことだなあと思う。それぞれのキャラクターをつっぱなして、ある程度距離を置いて見つめている感じが独特。

収録作品初出
「正直者の誕生日」エクストラビージャン 2000年9/30号
「少女法」マンガ・エロティクス 2000年春号
「町田ホテル」マンガ・エロティクス 2001年冬号
「めすいぬのむすめ」エクストラビージャン 2001年1/5号
「腐蝕の典」マンガ・エロティクス VOL.3
「股正宗」マンガ・エロティクス VOL.1
「回天」マンガ・エロティクスF 2001年2月号
「青銅の味」週刊漫画アクション 1999年No.52
「義勇軍エウロパ」マンガ・エロティクスF 2001年 VOL.4
「虹蟲」エクストラビージャン 1999年10/30号
「ミルク・シェイキ」マンガ・エロティクス VOL.2
「MOUSE TROUBLE BLUES」マンガ・エロティクス VOL.2
「ランちゃんヴォイスで囁いて」クイック・ジャパン VOL.32


「11.1」 一水社 A5

「11.1」 ISBNコード:ISBN4-87076-441-5
価格:860円(本体819円)
初版年月日:2000/12/15

 町田ひらく久々の単行本。「green-out」以来実に2年ぶりだ。しかし、その描写はまた鋭さを増し、クールに澄み渡っている。この単行本では少女だけでなく「勇者のはつ恋」などで大人の女性を描いているものの、基本的なテイストは変わらない。町田ひらくの作品には、安易なごまかし、癒し、救いがない。その分、これまたドラマチックに修飾された悲劇もない。退屈な日常の中の、苦く夢のない絶望がひたひたと迫る。それはいかにも手の届くところに存在しそうなものだ。だからこそ絵空事ではあっても、読む者に後味の悪さを与えてくれる。

 今回の収録作品を見ると、「とくにコレ」ってものがない。といってもいい作品がないってわけではもちろんなくて、どの作品も実に町田ひらくらしくて、クオリティが高いからだ。それぞれのあらすじを説明する必要もとくに感じない。それはどんな話であっても、絵と語り口でもって町田ひらくらしいモノにできてしまっているからだ。表現の美しさは今さらいうに及ばない。一つの光景を、印象的に切り出す構図取りや突き放したような作画は冴え冴えとして、まるで冬の空気のようなピリピリとした緊張感を持っている。少女たちを美しく気高く描けるからこそ、それが穢されたときの絶望感も身に迫る。他に媚びることなく、凜とした作風は、凡百の漫画とはやはり一線も二線も画する。頭悪い書き方で申しわけないのだがカッチョいいのである。

▼収録作品
「凪さかり」
「悪戯狐」
「Happy Birth」
「family noise」前後編
「メビウス光学」
「勇者のはつ恋」
「HELLO鬼帝」
「綺麗になりたい」


「green-out」 一水社 A5

「green-out」 一水社・いずみコミックス50
初版発行:1998/09/09
ISBN:ISBN4-87076-245-5 C9979
価格:860円(本体:819円)
判型:A5

 見てのとおり、なんとも意表をつくライトでポップな表紙。成年コミックマークが付いていなかったら、この表紙を見てエロ漫画だとはとても思えないだろう。今回は町田ひらくの単行本としては初めて、町田ひらくによる自作解説が付いている。これを余計と見るか、うれしいおまけと見るかは人それぞれだと思うけど、「阿修羅満開」の解説で、姪に電話口で「いちねんせいになったら」を歌ってもらったというのはいい話だなーと。あと、後書きにも出てくる、この姪とのお話もなかなかジンとくる。

 今回の単行本の核になっているのは、全4話収録の「お花ばたけ王朝紀」。母親とその情夫が毎日毎日繰り広げる浅ましい情事を見せつけられながら日々を過ごす少女・千秋。その醜さを嫌悪しつつも、淫らな想念は千秋に植え付けられていく。情夫(ちんぽのでかい醜悪なオヤジ)は千秋にも手を出そうとするが、まだ性器の小さい千秋はなかなかオヤジのデカチンポを受け容れることができない。その千秋の親友の窓花は恵まれた家に育ち、優しい婚約者までいた。窓花の清らかさ・幸福さに触れるにつけ、自分のみじめな境遇を振り返ってしまう千秋は、窓花を穢そうとする……って感じのあらすじ。
 今回の収録作品の中ではやっぱりこの作品が一番。悲惨な状況にある少女に対して、入れ込むでもなく突き放すでもなく、「ただそこにある絶望」を淡々と細かく描いていくさまはさすが。町田ひらくの特徴である、「乾いた絵」「映画的な視点」はもちろん健在。

 このほかの短編では「深海人魚」が、町田ひらくにはめずらしいホモショタもの。いつもの作品と雰囲気はあんまり変わらないけど。
 あとは「青空の十三回忌」も町田ひらくらしい作品。主人公の厚志は現在、教育実習生をしている。そして、その教え子の少女が自分を慕ってきているのだが、彼にとって「12歳の少女」には複雑な想いがあった。10歳のころ、近所の2歳年上の少女が変態にさらわれて暴行されたらしいがその後遺体が見つからずという事件があった。「まだ生きているかもしれない」「でもたぶん死んでいるだろう」。そんな想いの間で彼は13年間揺られ続けていた。そして今、彼女と同い年の少女を前にしている。ラストの皮肉な結論、それから過去をオーバーラップさせながら進めていく話の構成はいつもながら見事。

※初版本では58ページと59ページの内容が入れ替わっているので注意。

▼収録作品
「GUNと標的」
「青空の十三回忌」
「お花ばたけ王朝紀」全4話
「深海人魚」
「阿修羅満開」


「Alice Brand」 コアマガジン A5

「Alice Brand」 シリーズ:ホットミルクコミックス92
初版発行:98/11/16
ISBN:ISBN4-87734-220-6 C0979
価格:本体1000円+税

 コアマガジンからは初の単行本。ロリ系のアンソロジーである「アリスの城」「マシュマロくらぶ」「アリスくらぶ」に掲載された作品を中心に収録されている。この単行本に掲載された作品で共通しているのは、「夏の栞」を除いてヒロインの少女が外国人(日本人から見て)であること。町田ひらくの描く少女はもともと非常に素っ気ない目つきをした、人形のような硬質な美しさを持っているが、それだけに外人さんがピッタリとハマる。エキゾチックな魅力をたたえている。表紙はますますエロ漫画っぽくないシックなものになっている。裏表紙も非常に上品。

 今回掲載の作品は町田ひらくらしい抑えた表現の中に、ちょっぴりの皮肉、ユーモア、諦念、ロマン、夢、不安、悪意といったたくさんの要素が、それぞれ少しずつ詰まっている。その中のどれかに偏るのではなく、いくつもの要素が絡み合って高いレベルで結実しているのが町田ひらくの非凡さの一つである。

 どの作品がとくにいいかというとセレクトに困る。どの作品もそれなりによくできているのだ。以下にいくつか気に入ったものを挙げるが、どれを読んでもそれなりに楽しめると思う。

 自分の娘が姦淫されているところをスケッチして裏の画壇の寵児となった男が、死の間際に自分の娘の絵を完成させる「Requiem White」。絵で身を立てるために自分の娘を売り、結局は自分の破滅を招いた画家の業が深くていい。ラストにもたらされるほんの少しの救いが時すでに遅しという無常感を感じさせる。
「アンフェール藝術院」では、伏し目であらぬところを見つめる少女の絵を見ていた少女が、その絵の奇妙さを指摘する。彼女は実はタチの悪い男によって犯され、その様子を東洋人向けの少女ポルノに撮影されている。彼女が指摘した絵から、ルネサンス時代の暗部にも思いをはせる陰鬱な雰囲気ある作品。
 男を拒むアリスと汚れたピーターの物語「Shelter "pure"」は舞台仕立ての構成。セリフの小気味良さ、くるりくるりと話を転がすテンポの良さなど、町田ひらくの技巧を感じさせる逸品。
 1900年代初頭、チベットに探検に出かけた文豪のアイザックの死に対する嫌疑で逮捕され獄死した同行の出版業者・オスカーの子孫が、その事件の真相を確かめんとしてチベットを行く「高原天上楽」は、オリエンタルな魅力を持つ少女が美しく、また因果応報を感じさせるストーリーが秀逸。

タイトル初出
「Requiem White」'96・10 マシュマロくらぶ vol.2
「ASKARIAN」'96・6 アリスの城 vol.5
「Fairy's tale」'97・9 ホットミルク
「ROSWELL ANGEL」'96・12 マシュマロくらぶ vol.3
「アンフェール藝術院」COMICアリスくらぶ vol.5
「Shelter "pure"」COMICアリスくらぶ vol.1
「small small lady」'95・9 アリスの城 vol.1
「アンネリーゼの水晶球」'96・2 アリスの城 vol.3
「光の王国」COMICアリスくらぶ vol.3
「Cyanos Fortress」COMICアリスくらぶ vol.4
「A Water Girl」COMICアリスくらぶ vol.6
「高原天上楽」COMICアリスくらぶ vol.7
「夏の栞」'96・11 ホットミルク


「幻覚小節」 一水社 A5

「幻覚小節」表紙 シリーズ:いずみコミックス19
初版発行:1997/09/30
ISBN:ISBN4-87076-317-6 C9979
価格:860円(1997年9月現在)

 短編集。表紙がなんだかH漫画っぽくない。近藤ようことかそこらへんみたいな感じでかっこいい。
 この中での注目は「惑星間夜想曲」。公園でガラの悪いチンピラどもに凌辱された少女。現実に耐えきれなくなった少女は星の世界に意識を逃避させる。チンピラがいなくなった後、近寄ってきた浮浪者を火星人だと思い込み、火星の話をねだる。この世界の何もかもがイヤになり、どこか違う場所へと行きたい、でも行けない。最後のページの満天の星空が、哀切感があって心にしみる。
 収録されたどの作品にも共通して、色濃い退廃と絶望と閉塞が漂っている。

▼収録作品
「惑星間夜想曲」
「美女とのけもの・前」
「美女とのけもの・後」
「地上無限階美少女売場」
「蜃気楼回線・前」
「蜃気楼回線・後」
「狂乱搾餌」
「Rabbit Burst」


「卒業式は裸で」 一水社 A5

「卒業式は裸で」表紙 シリーズ:いずみコミックス09
初版発行:1997/06/25
ISBN:ISBN4-87076-309-9 C9979
価格:920(1996年07月現在)

 町田ひらくにしては珍しく、わりとストレートなH漫画。
 マンツーマン指導の家庭教師(というか塾)をしている、内藤という青年が自分の塾にくる少女たちを次々とその毒牙にかける。ただし、この内藤という男の指導は正確で、いい成績を取らせることなどは当たり前の有能な教師だったりする。内藤にとって少女たちとの性行為とは、少女たちへの従属であり、義務でもあった。その理屈は、俺にはよく分からないものだけど、なんとなく崇高な感じもするから不思議だ。

▼収録作品
「卒業式は裸で」Study1〜6


「きんしされたあそび」 一水社 A5

「きんしされたあそび」表紙 シリーズ:いずみコミックス45
初版発行:1996/07/30
ISBN:ISBN4-87076-245-5 C9979
価格:830円(1996年07月現在)

 町田ひらく初の単行本。非常に出来のいい短編集だ。どの作品もレベルが高く、この単行本を見て「ああ、町田ひらくってこんなにすごかったんだ」と痛く感心した覚えがある。この中でとくにお勧めを挙げるとしたら俺的には「さよならお陽さま」。社長令嬢だった少女が、父の自殺と一家の離散を機に秘密クラブに売られていくという話。その秘密クラブには、もと少女の家の主治医だった医者や執事なども参加しており……というもの。

 ただ、最も町田ひらくらしい作品というと「日、没する地方の天使」「西大泉名画座」あたりだろうか。「日、没する地方の天使」はクラスの中で一番美人で優等生だった少女、磯貝あすみがクラスメイトにさんざんに凌辱されるという話。まるで意味もなく、ただクラスで目立つからというだけで犯されるという理不尽さ、そしてあすみを犯すクラスメイトたちのレベルの低い会話。どうにも救いがない。
 「西大泉名画座」はクラスメイトの少女が「自分は映画に出ている」と言い張るのだが、クラスのほかの男子には信じてもらえない。ただ一人、主人公だけはその話を信じるのだが、彼らには別れが待っていた。それから10数年経ち、主人公は彼女の出演していた映画が実は少女ポルノ映画だったと知る、というもの。こちらは町田ひらくらしい、若者らしいというかそういうお話。青臭さと無力感がいい感じだ。

▼収録作品
「スタジオ”A”によろしく」
「腹切少女」
「日、没する地方の天使」
「秋に 雲雀は囀るか」
「西大泉名画座」
「太陽賛歌」
「ワイルド グッピー」
「さようならお陽さま」