しろみかずひさ
Kazuhisa Shiromi

アルコールラムプの銀河鉄道(上)

−プリオシン海岸の情景−


全1巻 三和出版

 ジャンルでいうと「SF+SM」系といった感じになるだろうか。非常に独特な画風・描線を持つ漫画家、しろみかずひさの初単行本。お勧めはなんといっても「ピアスの記憶」。ギリギリまで研ぎ澄まされた緊張感と全体を覆う悲しみ、そしてこれ以上ないくらいピュアな愛。素直に感動してしまう。エロ漫画に分類される作品の中で、これだけ泣けた作品は初めてだ。現在ではすでに手に入りにくくなっているかもしれないが、専門店に行ってでも入手することを強くお勧めする。

◆「ピアスの記憶」あらすじ
 時は2094年。
 幼馴染みで恋人同士で、Mの麻理果とSの淳一、二人は深く愛し合っていた。麻理果の誕生日に淳一は求婚する。幸せに包まれる二人だが、婚約を交わした次の日、突如として二人を不幸が襲う。市役所に婚約届を取りにいった帰りに麻理果が交通事故に遭ってしまったのだ。全身を複雑骨折した麻理果を救う道はアンドロイド変換手術しか残されていなかったが、その手術は結果としてロボトミー手術をも伴うものだった。

 アンドロイドとなった麻理果は脳こそ元のままであるものの、ロボトミー手術の結果、淳一のこと、自分の状況、身体感覚、すべてが彼方にあった。手術後3ヶ月、何をしても自分のことを認識しない麻理果に絶望した淳一はある日、麻理果を捨てて逃げることを決意する。そして、別れの日、最後のSMプレイとして淳一が麻理果の身体にピアッシングをした瞬間、麻理果の口から「じゅ…ンい…チ」という言葉が漏れた。麻理果が外部を認識できるのは、痛みによる刺激を受けたときだけだったのだ。

 それからというもの淳一は麻理果の身体に痛みを与え続けた。痛みを与えるたびに甦る麻理果の記憶と感覚。だが、それも長くは続かない。麻理果の脳自体が痛みによる刺激になれてきてしまったのだ。これ以上、記憶を保つためにはさらなる痛みを与えるしかない。しかし、それは脳に過度の負担を与えることになり、脳が限界を超えることはすなわち麻理果の死を意味していた。お互いを感じることもできずに生きる生に何の意味があるのか? そして、二人は最後の決断をする。

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シリーズ:SANWA COMICS83
初版発行:1997年1月20日
ISBN:ISBN4−88356−003−1 C9979
価格:¥900(1997年1月現在)
判型:A5・4色カラー含む

●収録
タイトル初出担当編集
アルコールラムプの銀河鉄道 前編:プリオシン海岸の情景描き下ろし
ピアスの記憶 prologue(オリジナル)スーパーロリポップ第2号 1994年3月25日発行松永宏樹
(リメイク)コミックフラミンゴ 1995年3月号東本 満
ピアスの記憶 intermezzoコミックフラミンゴ 1995年4月号東本 満
ピアスの記憶 epilogueコミックフラミンゴ 1995年6月号東本 満
TOILETGals Dee 1994年11月号中山亜希子
リボンピアス・ドール 1995年12月刊行小柴正史
SECRET MARRIAGE奇妙な恋人 1996年12月号池本浩一
MASTERコミックフラミンゴ 1995年12月号東本 満
時間を止めて漫画エロトピア 1994年7月21日号近藤英明
ZOOM−BONDAGE?しろみかずひさ個人誌(4) 同人誌 1996年8月4日限定50部
ICARUS DREAM 2099BIZARRE MAGAZINE 1995年5月号中山亜希子