高見まこ
Mako Takami
ロマンス
全9巻(集英社)。スーパージャンプ掲載作品
2000/03/06……9巻データ追加
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スーパージャンプで連載中の作品。高見まこは地味ながらも、コンスタントにいい仕事をしている漫画家の一人だ。ごく自然な感じの、柔らかい描線が特徴。ねっとりとした絵も、崩した感じのコミカルな絵も両方うまい。俺としては最近注目の作家の一人である。
この「ロマンス」は浪漫の時代、明治が舞台。ちなみに俺はこの浪漫な時代が非常に好きで、この年代が舞台の話にはけっこう弱い。なんか華やかで、上品で、それでいながら熱くて、非常にかっこいい。実際の人たちがそんなにステキだったのかはともかくとして、日本中が無理してかっこよくあろうとしていたみたいなところがすごく好きだ。
竹久夢二をモデルにイメージを膨らませ、高見まこ流に味付けをして浪漫の人を描き出そうとしている作品なのだそうだ。そんなわけで主人公の吾郎は、絵画に非常に豊かな才能を持っている。物語は彼の誕生から始まる。身を焦がすような炎をその内に秘めた吾郎と交わる女性たちは、その炎に照らし出されて美しく輝いていく。高見まこの絵柄は、こぎれいで上品な絵柄の中にねっとりとした色気がある。とくにこの作品ではその時代性もあって、女性たちの純粋さ、可憐さが相まってそのいやらしさがより際だっている。そして、浪漫の時代の熱く華麗なトキメキがあって非常に面白いのだ。
高見まこはわりと一回読んだらそれでいいというタイプの作家で、固定ファンはつきにくいと思うが、いつも安定していい仕事しているので、ぜひ読んでみてほしい。常に安定しているが、固定ファンはつきにくいという意味では、この人もごはん系の作家の一人といえる。
- 1巻
仲睦まじく育った、吾郎と姉史香との愛、そして別れがまず語られる。傷心の吾郎の前に現れる女教師小春。彼女が吾郎を絵画の道へと導く。小春にほのかな憧れを抱くようになる吾郎だが、小春は吾郎の父と愛人関係になってしまう、といったところまでが第1巻で語られる。
第1巻では、小春先生が実にいい。表面的には抗いつつも、しだいしだいに吾郎の父に惹かれていく。そして愛欲に溺れるようになっていく。実際のSEXシーン自体は少ないものの、それがなんだか非常にねっちりしてて実に艶めかしい。あと、姉の史香もかわいくて意地らしくて。なにやら胸のトキメクものを感じてしまう。
- 2巻
吾郎が実家を離れて絵の勉強のため神戸に留学する。神戸の下宿先で、吾郎は恋に身を焦がす青春を送る。下宿先の女中の光乃、そして令嬢の可也子。暖かく吾郎を包み込む光乃に対して、高飛車だが次第に吾郎に惹かれていく御上さあの可也子。両方とも非常に美しく魅力的。
- 3巻
吾郎の父親が小春先生をみごもらしてしまい、それを機に田舎で村八分にされ没落する。そのため、留学先から急遽呼び戻され、光乃や可也子にも別れを告げることになる。吾郎の一家は結局、村から夜逃げすることになるが、姉の助力により吾郎は東京へ単身向かうことに。その途中列車の中で出会った銀行の重役の奥様に拾われ、書生をすることに……といったところまで。芸者あがりの奥様が妖艶な魅力があって、これからの展開を期待させる。
- 4巻
4巻では、3巻に出てきた奥様を吾郎がたらし込む。それまでは夫が妾ばかりを寵愛するため女としての輝きを失いつつあった奥様だが、吾郎と触れ合うことによってその炎が燃え移り、女として再び、いや、前よりいっそう匂い立つような魅力を発散し出す。妻の不貞に薄々感づいている夫は、しかし吾郎の前でも自信のゆらぎをまったく見せない。結局は自立していない自分の弱さを思い知り、吾郎は自活の道を模索し始める。この巻ではなんといっても奥様が色っぽくて非常にHくさい。上品でありながら、触れると火傷しそうな熱をはらんだ描写がとてもいい。
- 5巻
5巻では、金持ちの若奥様の元にいて何不自由なく暮らしていた吾郎が、あまりにも至れり尽せりであるがゆえに絵を描く衝動を失っていた自分に気づく。そして、若奥様の元を飛び出す。しかし、生活する術を持たない吾郎は、医者になるという夢のために金持ちの妾をして学費を稼いでいる女性の元に居候として転がり込む。そこでもまたその女性との愛欲の日々に溺れていく吾郎だが、絵に対する情熱は取り戻していく。5巻の終わりでは、吾郎をその後導いていく運命の女性が登場し、次巻へと続く……といった展開。
この巻では、吾郎の環境がコロコロと目まぐるしく変わる。そして、いろいろな女性と交わるたびに吾郎は鋭い色気を増していく。体内の火を抑えられず、愛欲に溺れていく女性たちと吾郎の姿がなんともいやらしい。それでいて下品にはならないところが、高見まこのうまさでもある。
- 6巻
吾郎が運命の女・玉緒に出会い結婚する。玉緒は東京に働きに出てきた未亡人なのだが、そのとき社会主義者の運動に与していた吾郎は、チラリと見かけたその姿にたちまち恋をする。情熱的な吾郎のアタックに玉緒もしだいに心惹かれていくが、一つところに居ついてはおれない吾郎の性に不安な予感もよぎる……といった展開。燃え盛る火のように、次々と女性の心に火をつけ相手を燃やし尽くし、そしてほかの女性へと移り火していく吾郎の熱と危うさ。その熱に溶け出す女性の姿がなんとも色っぽい。下品にならずなおかつ扇情的。
- 7巻
前巻で熱に浮かされたように玉緒との結婚を決めた吾郎だが、画業がうまくいかないせいもあって玉緒につらく当たるようになり、夫婦仲も怪しくなっていく。子供もできるが、吾郎は自分の子である実感が持てない。そして結局、玉緒に離縁されることになる。情熱に火がつくとあっという間に燃え盛るが、恋多く同じところに居つくことのできない吾郎の性質がやはりマイナスに出てしまう。吾郎はこれからもこうやって、さまざまな人の許を渡り歩き、さすらっていくことになるのであろう。
- 8巻
挿絵画家として当代きっての売れっ子となった吾郎。元妻の玉緒とヨリを戻しかけるが、今度は吾郎に憧れるおきゃんな女学生の登場でまたしても心は揺れる。吾郎の移り気っぷりはどんどん加速。品の良い絵柄ながら、情熱的で淫らでもある。色っぽいですなあ、男女とも。
- 9巻
この巻でいちおう終了。吾郎と、新しい想い人の逃避行は悲劇的な結末に。うーん中途半端な終わり方になってしまった。巻末に「ロマンス」のエッセンスを凝縮した、ダイジェスト版的な読切「夢旅人」が掲載されていて、いちおう結末らしきものを呈示しているけれども、やはり本編をきっちり最後までやってほしかった。とくに「ロマンス」の初期、吾郎少年時代あたりは浪漫的雰囲気があふれていてすごく良かっただけに残念。
巻数 | ISBNコード | 初版発行 | 価格 |
1 | ISBN4-08-858227-6 C9979 | 1997/07/04 | 505円 |
2 | ISBN4-08-858228-4 C9979 | 1997/12/09 | 505円 |
3 | ISBN4-08-859013-9 C9979 | 1998/04/08 | 505円 |
4 | ISBN4-08-859037-6 C9979 | 1998/09/07 | 505円 |
5 | ISBN4-08-859052-X C9979 | 1999/01/13 | 505円 |
6 | ISBN4-08-859074-0 C9979 | 1999/05/05 | 505円 |
7 | ISBN4-08-859087-2 C9979 | 1999/09/08 | 505円 |
8 | ISBN4-08-859104-6 C9979 | 2000/01/12 | 505円 |
9 | ISBN4-08-859111-9 C9979 | 2000/03/08 | 505円 |