「要塞学園」表紙 作:鳴海丈+画:ヒロモト森一
Story:Takeshi Narumi+Art:Shinichi Hiromoto

要塞学園

全7巻 講談社・アフタヌーンKC 判型:B6

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 アフタヌーンで連載されていた作品。特徴はなんといってもかすれたような独特の描線で描かれる、荒々しくかつ重厚感を持った迫力のある画風だ。ヒロモト森一の独特の画風には前から注目していたのだが、一人で描いているとどうにも話が一人よがりな感じになってしまう傾向があった。しかし、「要塞学園」では原作がついたことによって、勢いのある画風がうまくストーリーに溶け込み面白い作品に仕上がっている。

「要塞学園」の舞台である要塞学園の本来の名前は「旭日学園」。長野県と山梨県の県境にあるこの学園は、教育の荒廃を憂慮した日本政府が設置した「教育管理省」が直轄していて、全国の高校からほうり出された札付きのワルが最後の行き場として押し込められる場所だ。学園の周りは密林に囲まれ、そこには数々の猛獣が放し飼いにされている。学園の職員はライフルやマシンガンを携帯しており、生徒が逆らおうものなら射殺することも許可されている。一度入れられたら最後、絶対に脱出ができないまさに「要塞」。生徒たちも札付きのワル揃いで、学園内は力が支配する世界だ。
 この要塞学園に新たに送り込まれてきた生徒、多岐澤樹(たきざわ・いつき)、升田弦太郎(ますだ・げんたろう)、真藤明(まとう・めい)の3人を中心に話は展開する。この中でイツキは、この学園に送り込まれ音信不通になっていた兄を探すため男に変装して潜り込んでいる。実はイツキの兄の失踪は学園の重大な秘密に関わっていた。弦太郎と明は、その秘密を探るイツキの手助けをする。そして明は生命の危険が迫ると、恐竜か何かのように変化する肉体の持ち主だった。自分の肉体がなぜそのようになっているのか、自分に関する記憶を持たない明。明の身体の秘密、イツキの兄の失踪、学園長の奇妙な研究、そういった数々の謎が絡み合いながらストーリーは進んでいく。

 圧倒的に迫力のある描写、真藤明の禍々しいまでの変化・哀しい宿命、退廃的な世界感。描画はもちろんだが、ストーリー展開、舞台設定、とにかく大げさでかっこいいのである。女性の描き方も非常に独特で、身体のラインなど妙にいやらしかったりして俺は非常に好きだ。キャラクターもそれぞれにかっこいい。最初はタダの軽薄野郎って感じだった弦太郎もどんどんかっこよくなっていく。男気を感じる。敵たちも非常に残虐で凶悪。とくに好きなのは、校紀粛正委員会の緑川絵麻。真籐明と同じく変化する(彼女の形態は人魚状)身体を持つ彼女は、美しく残酷で、そして哀しい。
 ラストは正直いって、尻すぼみな感は否めないところがある。しかし、そこまでの巻が進むにつれてテンションがどんどん高まっていくストーリー展開はそれを補って余りある。作品的には、あんまり「ラストがどうこう」などというタイプじゃない。むしろアクションシーンやセリフまわしなど、その迫力のある描写・ストーリー展開に身を任せて読んでいくのが吉だ。とりあえず読んでみてほしい。あれこれいうのはそれからだ。

巻数ISBNコード初版発行本体価格
1ISBN4-06-314103-9 C997995/01/23505円
2ISBN4-06-314117-9 C997995/07/21505円
3ISBN4-06-314127-6 C997996/01/23505円
4ISBN4-06-314134-4 C997996/06/21505円
5ISBN4-06-314144-6 C997996/12/17505円
6ISBN4-06-314156-X C997997/06/23505円
7ISBN4-06-314160-8 C997997/07/23505円