高田靖彦
Yasuhiko Takata
演歌の達
全9巻 小学館・ビッグコミックス 判型:B6
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子供のころから歌好きな母親に育てられ、歌が好きでしょうがなくてレコード会社に入った演歌野郎、越川 達が主人公。今の若者には珍しく演歌が死ぬほど好きな達は、最初は営業畑に配属されるが、人事異動で念願の制作部へ。いつか「演歌の達」と呼ばれるような名ディレクターとなるための、長くて熱い道程が始まる。
……といった感じで始まる「演歌の達」は、達がさまざまな人々と組んで一つの音楽を作り上げていく成長物語だ。ストーリーは「演歌」というところからも想像がつくだろうが、ナニワ節的人情もの。こういってしまうと抵抗のある人もいるかもしれない。しかし、これが実に面白いのだ。
まず、何よりいいのが達のキャラクター。迷いながらも、常に自分と自分の愛した歌を信じて真っ向から相手に向かい合っていくさまが非常に気持ちいいのだ。泥臭い、でも決めるところは決める。突貫小僧という言葉が似つかわしい。
それから脇役である、達と組む歌い手や作曲・作詞家たち、達を見守り課題を出し続ける先輩たちの暖かい目、まさに義理と人情の世界である。だからといって扱う歌は演歌だけではない。時には声優アイドルとも組むし、演歌歌手の歌をロック歌手に作曲させたりする。しかし、そのどの仕事にも達は手を抜かず、体当たりして自分の納得のいくものを作りあげるべく奮闘する。その姿が実にアツイのだ。そして、脇役たちも達の情熱に触れてイキイキと輝き出す。とにかく一人一人のキャラクターが丁寧に作られているのだ。
絵は達のキャラクターはかなり脂っこいんだけど、清潔感があるスッキリとした画風。きっちり描き込まれた骨太の描線は力強さにあふれていて、これまた力強いストーリーをしっかりと受け止めている。また、回を経るごとに着実に描画技術もアップしていることが見て取れる。ストーリー運びも堂々としたもので、非常に読みごたえのある作品に仕上がっている。
「義理と人情」の世界はすでに古くさいかもしれないけれど、他人に無関心な今のこの世の中だからこそいっそうまぶしい輝きを放っている。古かろうが、泥臭かろうが、いいものはいいのだ。食わず嫌いで読まないのは実にもったいない作品。ぜひチャレンジしてもらいたい。
巻数 | ISBNコード | 初版発行 | 本体価格 |
1 | ISBN4-09-184491-X C9979 | 1997/07/01 | 486円 |
2 | ISBN4-09-184492-8 C9979 | 1997/11/01 | 486円 |
3 | ISBN4-09-184493-6 C9979 | 1998/05/01 | 486円 |
4 | ISBN4-09-184494-4 C9979 | 1998/08/01 | 486円 |
5 | ISBN4-09-184495-2 C9979 | 1998/12/01 | 505円 |
6 | ISBN4-09-184496-0 C9979 | 1999/06/01 | 505円 |
7 | ISBN4-09-184497-9 C9979 | 1999/11/01 | 505円 |
8 | ISBN4-09-184498-7 C9979 | 2000/03/01 | 505円 |
9 | ISBN4-09-184499-5 C9979 | 2000/07/01 | 505円 |