地下沢中也
Chuuya Chikazawa

チューリップティーズ

全1巻 講談社・ヤンマガKC 733
ISBN:ISBN4-06-336733-9 C9979 本体価格:505円
初版発行:98/04/06 判型:B6

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「パパと踊ろう」の地下沢中也の作品。掲載はヤングマガジン。
「パパと踊ろう」も同様だが、この作品も魅力はキャラクターたちのどうしようもない暴走。といっても飛んだり跳ねたりといったものすごいことをするわけではなくて、非常に情けない身もフタもないような行動に溺れていくさまが素晴らしいのだ。さながら嘘に嘘を塗り固めていき、どうしようもない状況にはまり込むかのように、ナンセンスの泥濘に沈んでいく。そしてそれはファンタジーやアクションなど心踊るものは何もない、みみっちい境地だったりするのだ。

「チューリップティーズ」は主人公の少女・ネリが中学校の入試を受けるところから始まる。ネリは中学生になろうというのに、自分が「魔女っ娘」と信じて疑わない、ナチュラル・ハイな幸福の国の住人。彼女がその「魔力」で念を送った鉛筆転がしにより、中学校に見事合格してよく分からないことをしていく。
 ネリはその圧倒的なまでの馬鹿さ加減で次第に舎弟(?)を増やしていく。まず、一見ジャニーズ風のヤスタク。こいつはかっちょいいくせに露出マニア。学校の階段の陰で裸になったり、下半身すっぽんぽんの状態で窓から顔を出し、女の子に手を振ったりして露出の快感を味わっているという変態野郎。こんなのが連載第4回めにして早くも登場という、なかなかに煮詰まった展開。
 そしてネリに恋し、ねばっこい視線と異常なラブレターを送るフジマキ。その思いのたけを漫画で伝えよ、とネリはフジマキに指令を出す。こやつのポエジックな思考がまた気持ち悪くてナイス。
 さらにはこの二人プラスその他二人を集めて、「秘密のマン」、略してHNMという正義を行う戦隊を形成するにいたってはもう正気の沙汰ではない。しかも新メンバーの、クラスで目立たない女の子に「死体」というあだ名をつけるアナーキーさ。

 どうしようもない下らなさが非常に素敵な逸品。呆気にとられるような煮詰まった展開が最高。これも万人向けじゃないけど、俺としては強くオススメする。