DAPHNIA作品リスト

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 最初に断っておくけど、エロ漫画である。
 DAPHNIAの魅力はなんといっても、その妖美な絵柄にあると思う。表紙を見た時点で分かると思うが、一昔前の少女漫画のキャラクターみたいに大げさなまつげ、パッチリと大きく見開かれた目、細い手足や首、独特の髪型そしてリボン、どこを取っても滲み出る濃厚な少女趣味。そしてさらにフリフリのフリルが盛大に付いた衣服がそれに拍車をかける。
 この少女趣味の徹底ぶりは見事。手のひらを外側に向けたなよなよの少女走りをしながら、「うふふ、つかまえてごらんなさいな」「ようし、つかまえてやるぞう」などと草原で追っかけっこでもしていそうなキャラクターたちの造形は非常に特殊で耽美的。

 そんないでたちの可憐な少女たちが、凌辱されたりしながら、涙を流し顔を真っ赤にしながらむせび泣いたりする姿が、DAPHNIAの漫画の特徴。まるで人形のような姿形をした少女たちの持つ妖しい色気が実にたまらない。
 アクの強い絵柄でもあるので、ヒットする人はすごくヒットするだろうし、ヒットしない人にとってはヘタすると気持ち悪く感じられるかもしれない。でも、ここには好きな人にとってはたまらない、完成されたDAPHNIAワールドがある。確固たる世界を持っている人だけに、何を描いてもDAPHNIA味になってしまう。だから好きな人にとっては眺めているだけでも楽しめる。
黒とピンクの極彩色と薄絹の白色という「瞳水晶」の表紙の配色が、非常によくDAPHNIAワールドの雰囲気を表している。黒魔術的雰囲気がよく似合う、中毒性のある妖しくて美しい世界。まさに「秘密の花園」といえる。食わず嫌いをしがちな作風だけど、勇気を持って一歩踏み出してみるといい。こっちの水は甘い、のだ。

 なお、DAPHNIAは「多田克己」という別名でも活躍している。といっても漫画家としてではなくて「妖怪博士」としてだ。京極夏彦の小説(「塗仏の宴〜宴の支度〜」)の参考文献紹介で名前が出てきたし、小説にも彼をモデルにしたと思われる人物(「多々良」という妖怪研究家)も登場する。さらに角川書店から出ている、季刊「怪」という雑誌にも論文を寄稿しているくらいの博学である。やっぱり濃い人ってのはどこまで行っても濃い。

「秘密の花園」
「秘密の花園」表紙 出版社:一水社  シリーズ:いずみコミックス40
ISBN:ISBN4-87076-340-0 C9979  本体価格:819円
初版発行:98/05/27  判型:A5

 執筆時点(98年5月)におけるDAPHNIAの最新刊。
 注目作品はまず「リンク」。フィギュアスケートの選手である姉が、弟に豊胸手術を受けさせて女の子のフリをさせ、弟を女の子と思って油断したライバルたちを犯させるというもの。なんといってもフィギュアスケートのぴっちりとした(そしていうまでもなくDAPHNIA独特のフリルがフリフリした)ウェアを着て、身体をピンと伸ばした少年、そして少女が異常なまでに妖しく美しい。
 それから「裏切」もいい。変態の兄に散々身体を貪られ続けた少女の中に少しずつ狂気が蓄積されていって……って感じのお話。鬼気迫る妹の表情にゾクッとする色気がある。
 また、「薔薇のマリオネット」は実にDAPHNIAらしいお話。大きなお屋敷に住むナゾの少女、リリーに魂を奪われた少年アダムのお話。リリーは人形のように無表情で、何に対してもまったく反応せずしゃべることすらしない。そして天使もしくは悪魔のような美しさを持つ。大きなお屋敷、オカルト的要素、お嬢さま、フリル。DAPHNIA的要素がぎっちり詰まった短編。

収録作品
撮ってもステキな▽ 私はエンジェル   リンク       セラフィタ    
虫媒花の逆襲    裏切        ABCは知ってても▽ 薔薇のマリオネット


「緋色の月」
「緋色の月」表紙 出版社:一水社  シリーズ:いずみコミックス89
ISBN:ISBN4-87076-089-4 C9979  本体価格:806円
初版発行:95/06/05  判型:A5

 どの作品もハイレベルでまとまっているが、俺が一番好きなのは「姉」。実の弟を愛し、肉体関係を持ってしまったことを苦に自殺した姉を思いながら、追憶に浸り続ける弟のお話。姉の服を着て自慰に耽る少年の姿が非常にクる。DAPHNIAの描くキャラクターは少年までが少女的なのだ。
 近親相姦ものでは「兄」もあるが、こちらは可憐な妹が兄になぶられる。兄が遊びであると知りつつ慕わずにはいられない健気さが哀れを誘う。
 人形のクララが意思を持ち、1週間一人で留守番をしているお嬢さま・エミィを慰めるという短編「もう1人のエミィ」、そしてホムンクルスものの「魔法の人形」。DAPHNIAの描く無機質で記号的な少女たちは、人形やホムンクルスといった人工物的な雰囲気を漂わせている。そういった意味で非常にDAPHNIA色の濃い作品に仕上がっている。

収録作品
兄        放課後の悪夢   龍        姉        裏路の怪    
SMイラスト    悪の花園     もう一人のエミイ 黒いエンジェル  魔法の人形   


「瞳水晶」
「瞳水晶」表紙 出版社:一水社  シリーズ:いずみコミックス20
ISBN:ISBN4-87076-020-7 C0079  本体価格:806円
初版発行:93/05/20  判型:A5

 DAPHNIA初の単行本。少女趣味、妖精、近親相姦などなど、この時期からすでにDAPHNIAの世界は完成されていたことが分かる。この作品集ではわりとレズものが多く、男はほとんど出てこない。それだけにより少女的なものが濃密に香る。
「不思議の国の…」は「不思議の国のアリス」をモチーフにした作品で、アリスがメルヘン世界でウサギに犯される……という話。あの例のアリスのぴらぴらしたフリルが付いた、実に少女的な服装。これがDAPHNIA少女の原点かなーとも思える。
「放課後」は由美と同性愛関係にあり、彼女を狂おしく見つめる少女の視点から語られる物語。本当に野原で追いかけっこしたりして、実に濃密な甘い空気が充満している作品。
「二人だけの渚」もレズもの。途中まで無声で進む物語。潮風に揺れるフリル付きワンピース、そして麦わら帽子。足元を流れていく波引き際の砂。見つめる先には愛しい人。素晴らしい。
「最後のプレゼント」は、女教師と深い愛を結んだ女学生の話。卒業後、両親とともに海外に住むことになってしまった少女は、「昨年先生に選んでいただいたフリルの白いワンピースで」、処女を最後のプレゼントして先生に捧げるのである。ああ、もう甘すぎる。濃密すぎる。最高。
「縄」は悪夢の中で漂う少女の話。こちらはサイケデリックな感じでゾクリとする短編。
「水虎様」は少女が河童のような妖怪と一時交わるという話だが、ここらへんはDAPHNIAの妖怪博士としての側面も垣間見させる。この作品も含めてDAPHNIAの持つ、少女趣味、妖怪趣味などたっぷり詰まっていて最もDAPHNIAらしい作品集。イラストも非常に濃い。初めて読む人はまずこれから入ることを勧める。これが合うようだったら、ほかの2冊も迷わずチャレンジするべし。

収録作品
不思議の国の…      放課後          お茶をどうぞ       夢魔          
二人だけの渚       由美の秘密        FAIRIES〜illustration〜 エルフィン       
最後のプレゼント     縄            水虎様          〜illustrations〜   


※▽はハートマークの代用