蜈蚣Melibe
Mukade Melibe

「バージェスの乙女たち」シリーズ

三和出版 SANWA COMICS

1998/06/17……「ワイワクシアの章」「ディノミスクスの章」をアップ
1999/03/14……「〜アノマロカリスの章(1)〜」を追加

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ワイワクシアの章
「ワイワクシアの章」表紙
ISBN:ISBN4-88356-012-0 C9979
本体価格:933円(定価980円)
初版発行:97/08/20
判型:A5

収録初出
HOPE描き下ろし
幸福な人形フラミンゴ漫画大賞作品集
ディムロイド・アノマロカリスフラミンゴ96年6月号
真珠の哀しみフラミンゴ97年1月号
ディムロイド・ワイワクシアフラミンゴ97年4月号・6月号
思春期ベアーズクラブ91年7月号


ディノミスクスの章
「ディノミスクスの章」表紙
ISBN:ISBN4-88356-021-X C9979
本体価格:933円(定価:980円)
初版発行:98/05/15
判型:A5

収録初出
双子のカナリヤ描き下ろし
狼になりたいフラミンゴ98年4月号
豚嬢スージーフラミンゴ97年2月号、7月号
深海の人魚姫フラミンゴ97年10月号
仮面のナターシャフラミンゴ98年2月号、3月号
ディムロイド・ディノミスクスフラミンゴ97年11月号、12月号
 これまた濃いシリーズ。分類するとなるとエロ漫画に入るのだが、普通のエロ漫画と思って読むと裏切られること請け合い。

 蜈蚣Melibeはの特徴はまずなんといっても絵だ。磁器作りのフランス人形を思わせるような、可憐な中にグロテスクさを含んだ、キャラクターたちの表情。ガラス玉のような目。手足がひょろりと長く伸びた、アンバランスな造形の肉体。フリルや花、リボンなど装飾たっぷりの、ピンクハウス系を思わす過剰なドレス。作者自身は美しさを追求して描いたのであろうし、実際にこれはこれで美しくもあるのだが、それでいながらごく自然にバランスが崩れていて、見る者にグロテスクな印象を与える。

 そして話の特徴としては肉体改造が挙げられる。2冊の単行本のメインとなっているのは、人間の遺伝子を改良して作られた「有機人形」(オルガ・ドール)たちが主人公のシリーズ。その中で中心的な存在が、ディムロイドのアノマロカリスとワイワクシアだ。ディムロイドとは口と女性器の位置を逆にする改造が施されたオルガ・ドールである。顔の下の部分に縦方向の裂け目があり、その周りに陰毛が生えているさまは、命名どおりアノマロカリス(カンブリア期に存在したとされる生物)を思い起こさせる。彼女たちは普段は性器を隠すために縦方向のマスクをしている。それがまた、実に病的で異様な印象を読者に与える。

 このほかにもほっぺたから触肢を生やした者、ツノが生えている者、本当の人魚である者、胸の谷間に性器がある者など、珍妙な改造人形がゾロゾロ出てくる。ディノミスクスの章では、男根と口の位置を入れ換えた「ディノミスクス」も登場し、ディムロイドとセックス(普通の人間がキスをしているように見える)をしたりする。
 こんな珍妙で畸形なキャラクターたちを操って、あるときはハードSEXをしたり、あるときは少女趣味的でセンチメンタルな恋愛モノをやってみたり、ほのぼの4コマをやったりするといった、ナチュラルなズレっぷりを見せる。

 オルガ・ドールシリーズ以外の作品も異常に濃い。
「ワイワクシアの章」では、フェラチオ専用の人形になるために、歯を抜き、目と性器を縫い合わせ、四肢を切り落とした少女が出てくる「幸福な人形」、目には大粒の黒真珠、乳首にコンクパール、歯を全部抜いてそこにも真珠、さらには性器の中にも真珠を埋め込んだ究極の改造真珠有機人形を描いた「真珠の哀しみ」(ワイワクシアの章収録)などが注目。

「ディノミスクスの章」でも、ご主人様の精液を飲まないと顔が豚になるように改造された美少女の話「豚嬢スージー」、男と駆け落ちしようとした罰として四肢を切断され、顔や身体の顔を剥がれそこに不気味なマスクを付けられ、歯を抜かれ、代わりに男根を食いちぎるギロチンを取りつけら「生きた去勢機」に改造された後宮の少女の話「仮面のナターシャ」といった、ドギツイ作品が収録されている。

 そして作者自身も濃い。自身がフリルびらびらの服を着てアノマロカリスのコスプレをした写真を掲載するなど、なかなか常人とは思えない。
 それなりの覚悟を持たないと読むのがつらいかもしれないが、ヒットする人にはデッカい衝撃を与えてくれるだろう。濃いって本当に素晴らしい!どちらかというと「ワイワクシア」のほうが病んでいる度合いが強いのでオススメ。

アノマロカリスの章

「アノマロカリスの章(1)」 「アノマロカリスの章(1)」
 いよいよこのシリーズもクライマックス突入である。今まで、究極の有機人形として存在していたがほかのキャラクターにメインの座を奪われがちだったアノマロカリス、そして彼らの産みの親(育ての親というべきかもしれない)であるDr.バージェスにスポットライトが当てられている。この巻は今までの単行本と違って、「バージェスの乙女たち」以外の短編は収録されていない。それだけにみっちりとこの世界観が掘り下げられている。

 グロテスクさ、濃厚さという面では前2巻のほうが上かもしれないが、キャラクターたちの心理描写に関してはより深みが増している。キャラクターは異形であっても、その心根は普通の人間以上に情が深いし、それを描く作者の筆致も至って真摯である。今回のシリーズではバージェスがアノマロカリスを手放し、彼女には史上空前の値段がつけられる。自分の気持ちになかなか素直になれなかったバージェス、ドクターのために心ならぬ相手にも懸命に奉仕するアノマロカリスの姿が、深い愛をもって語られるのである。
 周到に構築された世界観にも厚みがあり、その業の深さには圧倒されるばかり。アノマロカリスのコスプレをした「アノラー」など、ところどころにちりばめられた遊びも濃厚でありつつ楽しい。物語にますます奥行きが出てきて読みごたえがある。2巻が今から楽しみだ。

タイトル初出
シュレーディンガーの人形描き下ろし
なごり雪フラミンゴ1998年5月号
塔の中の姫君フラミンゴ1998年8月号
ある高級有機人形の半生フラミンゴ1998年9月号
スーパースターフラミンゴ1998年11月号
バージェス立つフラミンゴ1998年10月号
会議は踊るフラミンゴ1998年12月号
大きなトネリコの下でフラミンゴ1999年1月号
ホームレスの王様フラミンゴ1999年2月号

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