「ムカデ戦旗」 森秀樹
Hideki Mori

ムカデ戦旗

1〜5巻 小学館・ビッグコミックス 判型:B6

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 時は戦国時代、場所は甲斐の国。平地が少なく民衆からの徴税では限りのある武田家は、金山から掘り出される金によって軍資金を得ていた。「ムカデ戦旗」は、その金掘りのプロフェッショナルである「金掘り衆」の物語である。
 金掘り衆は武田家の家来ではなく、金を差し出す代わりに自由を保証されていた職人集団だ。しかし、長い戦乱の間に金掘り衆は甲斐の山の金をあらかた掘り尽くしていた。金掘り衆も今までのように、ただ山に入り金を掘っているだけでは生きていけぬ世の中が来ようとしていた。多難な時代を前に、金掘り衆の頭目(代々「ムカデ」と呼ばれている)は、次の頭目に自分の息子の金蔵ではなく、坑道を探るために他国から送り込まれるスパイを抹殺する「金縛り」の任に就いていた佐吉を指名する。佐吉の、そして金掘り衆の進む道は−?

 ストーリーは以上のような感じ。森秀樹はもともとは少年ビッグ出身の作家だが、昔はわりとコミカルな作品を多く描いていた。そのころからストーリーメイクのうまさや、画面構成力には非凡なものがあったが、それが少年サンデーで連載されたゴルフ漫画「青空しょって」あたりから骨太でリアルな劇画調の絵に変わっていき、現在に至っている。

 前作「墨攻」(原作:酒見賢一)でも、力強く精緻に描かれた画風は、歴史モノに対する適性を見せていたが、この「ムカデ戦旗」でもそれはますます際だっている。武将たちや主要登場人物の威厳ある容貌はもちろん、雑兵たちや金掘り衆の埃や泥にまみれた姿なども均等にしっかりと描いているあたりが、ストーリーの幅を広げ説得力を強めている。爆発するような力強さではなく、しっかりとした足腰を持ち一歩一歩迫ってくるような力強さだ。
 キャラクターでは、頭目となった佐吉に仕える女間諜「てん」の存在が、ストーリーに一点の潤いを与えている。佐吉を一途に慕い影となって働くてんの姿は、しなやかで芯が強く、可憐でいじらしい。

 金掘り衆という、歴史上には現れてこない人々にスポットライトを当て、史実に照らし合わせながら、しっかりと着実にストーリーを作り上げている。どっしりとして非常に読みごたえのある物語で、歴史モノ好き以外の人にも広くオススメしたい。

●単行本データ
価格:
 1〜3巻:本体486円(定価510円)
 4巻〜:本体505円(定価530円)

巻数ISBNコード初版年月日
1ISBN4-09-184501-0 C997997/07/01
2ISBN4-09-184502-9 C997997/12/01
3ISBN4-09-184503-7 C997998/08/01
4ISBN4-09-184504-5 C997999/01/01
5ISBN4-09-184505-3 C997999/05/01