緋村まさる
Masaru Himura

「月下輪舞」シリーズ
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「月下輪舞」

「月下輪舞」表紙 判型:A5
ISBN:ISBN4-7659-0477-6 C0979
価格:860円(本体835円)
初版発行:96/10/25
「月下輪舞 ルナの夏盛り」

「月下輪舞 ルナの夏盛り」表紙 ISBN:ISBN4-7659-0477-6 C0979
価格:860円(本体835円)
初版発行:98/01/25

 最初に断っておくけど、かなり強烈に悪意のこもった変態的エロ漫画なので、耐性のない人にはオススメしない。耐性のない人は以下の文章も読まないほうがいいだろう。かなり下品なので。

「月下輪舞」シリーズのヒロインは三流私立高校の生物教師であるルナ先生。現在の教え子に織田裕一という少年がいるのだが、彼はルナ先生が大学時代にさんざん遊んだ男の腹違いの弟だった。彼は大学時代のルナ先生の恥ずかしいビデオテープを所持していて、それをネタに彼は肉体関係を迫ってくる。そして、そのままズルズルとルナ先生は性の奴隷として、織田やその友達の不良どもに凌辱され続ける……というのが大ざっぱなストーリーだ。
 正直言ってストーリーはこれだけである。というとタダの女教師凌辱モノのように感じられるかもしれない。ところがこの作品はそんなレベルをはるかに越えている。とにかくルナ先生のご乱行ぶりがハンパでないのだ。それはもう狂気の域にまで達しているといっていい。
 ルナ先生はとにかく人間としてのプライドをバッサリ捨てきっている。普通のエロ漫画ならば淫乱ぶりを少しはいやらしく描こうものだが、この作品ではそれをことさら間抜けに描写する。そのあたりがこの作品のキモだ。ぶちキレて羞恥心なんぞこれっぽっちもないような狂女のごとき振る舞いと、それをとことんマヌケに描写する底意地の悪さ。全編から、淫乱女に対する嘲笑が響き渡ってくるかのようだ。

 ルナ先生のポーズはたいていガニ股だし、SEXシーンも引いた視点でそのぶかっこうなありさまを延々と描き続ける。しかも、ルナ先生は始終、まるで三流企業の広告みたいに貼り付いたような笑みを浮かべている。身体もセルロイドの人形か何かのような、ギクシャクとして表面はツルツルした質感を持っている。人によって個人差はあるだろうが、俺にとっては全然色っぽくない。そして色っぽく描写することなんて、作者自身もまったく念頭にないかのようにさえ見える。

「月下輪舞」シリーズは現在のところ、「月下輪舞」と「月下輪舞 ルナの夏盛り」(以下「ルナの夏盛り」)の2冊の単行本が出ている。
 まず「月下輪舞」である。ルナ先生は冒頭から、生徒たちとハイキングに行って屋外ですっぱだかになり、しかもその格好で相撲の四股を踏み、蹲踞の姿勢を取る。四股を踏むときの足の揚げっぷりは、野茂英雄や沢村栄治もかくやと思わせるほどの豪快さである。自ら乳首を引っ張って、ヘンテコなポーズを取り「こんなのどーかしら」「びよーん」などという、その異様な状況を完全に受け容れ率先して楽しんでいる姿勢は恐ろしくさえある。SEXの途中でも、「気持ちいいかい?」と聞かれて「ピースピース」とピースサインで応える馬鹿っぷり。しかも、生徒に「中出しして子供ができないか」と聞かれても「もう三ヶ月だから」などと平然として答える。
「月下輪舞」のラストは生徒たちに乳首をつままれて、そこを支点に引っ張りまわされてグラウンドを走って横断し(もちろん全裸である)、最後は体育館でディスコダンスを披露するというもの。そのときのルナ先生の嬉しそうな顔といったらない。「男たちのこの欲情した顔が私を興奮させる…」「これこそ私の生きがい!」というモノローグも入る。ごりっぱである。

 そして「ルナの夏盛り」では、恐ろしいことにさらにそれがエスカレートしてしまうのである。「月下輪舞」のころのような、ルナ先生を堕とすまでのまだるっこしい描写なんぞはなく、最初っからルナ先生はメス奴隷であり、バリバリのハイテンションだ。
 不良グループのたまり場である相撲部の顧問に立候補し、ヒモのごときふんどしをつけて(当然全裸)またしても四股を踏み土俵入り。そのたびに無機的にペチンペチンと揺れる乳がこれまたマヌケである。ルナ先生が「そういう人」だと知らない新入部員に「股から毛が出ている」と指摘されても、平気の平佐で「ああまん毛ね」「別に問題ないわよ」と応える。フンドシがとれても「裸を気にしてちゃ相撲はとれないわ」などと実に豪放なご発言。休憩時間に不良に「穴ァ借せや(原文ママ)」と言われると、ぺっぺっと自分で手に唾を吐きかけて陰部にこすりつけ、「どうぞ」といいながら床にひっくり返る。みんなで海にいったときもいうまでもなく全裸。そのかっこうでプロレスごっこをしたりとまったく屈託がない。
 この巻のクライマックスは夏祭り。森の繁みで「ちゃんかちゃんかちゃんか」と自分で口ずさみつつ阿波踊りを踊りながら(当たり前だが全裸)、男たちと何発もやりまくる。そしてラストは全裸+ひょっとこのお面、両手にうちわを持った姿で盆踊り会場に乱入し、踊り狂った後、たいこやぐらに登りその頂上から群衆に向かって立ち小便をするのである。しかも恍惚の表情で、だ。

 正直いって、ここまでくるともう淫乱とかいうレベルは通り越しているような気がしてならない。ほぼキチガイといって間違いない。こういうのに慣れていない人にとっては劇薬である。逆に好事家にとっては非常な珍味なので、好きそうな人はぜひチャレンジしてみてもらいたい。2冊いっぺんに揃えるのは今は難しいかもしれないが、片方ずつ読んでも話自体は十分理解できると思う(っていうか理解しなきゃならないような筋なんてないんだけど)。