「わかってまんがな」 たなかじゅん
Jun Tanaka

「わかってまんがな」
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 そんなにすごくはないんだけど、妙に心にひっかかる、気に入ってしまう。いろいろと読んでいると、そういう作品が出てくることがある。この「わかってまんがな」は俺にとって「そういう」作品だ。連載当時から気に入ってはいたのだが、古本屋で改めて購入して読んでみたら、やっぱり愛すべき作品であったのでここに紹介することにする。

「わかってまんがな」の舞台は1990年代頭の大阪。大学受験に失敗し、浪人生活を送る大黒くんの一年を描く。ヤングサンデーは伝統的に浪人生モノが得意な雑誌だが、これもまたその一つ。大学を落ちた大黒くんは失意の中、予備校通いを始める。そんな折、高校時代から自分のことが好きだったという後輩で妹の友達の早紀ちゃんと喫茶店で知り合い、中学校時代に同級生だった高野さんと予備校で再会することになる。この二人の女の子と大黒くんの三角関係が物語の軸である。
 なんで俺がこのお話を好きかというと、この二人の女の子たちが非常にけなげでかわいいから、というのがデカい。女の子たちはスラッとしているというよりも、肉付きがよく見ていると妙にホッとするタイプ。早紀ちゃんはおそらく高岡早紀をモデルにしているんではないかと思われる。二人が顔をつき合わせるってことはほとんどなく、それだけに激しいつばぜりあいなんてものはない。あくまで適度な距離を持ったままお話は推移する。

 この三角関係に象徴されるように、作品には居心地のよい、ぬるま湯的温度の空気が横溢している。関西弁の柔らかな語感がさらに居心地の良さに拍車をかける。絵もこれまた、垢抜けないけれども温かみがある。激することなく、のんびりとした雰囲気の中にちょっとしたトキメキをちりばめお話は進む。ものすごく角が丸い。
 大きな展開のあるお話じゃないし、最先端の息吹など薬にしたくともない。でも、読むと和む。ちょっとトキめく。気持ちがいい。今では古本屋でないと手に入らないと思うが、まあ気が向いたら読んでみてもいいかも。無理に探してまで読むほどではないのだけど、なんとなく愛しい一冊。