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「エリートヤンキー三郎」

「エリートヤンキー三郎」 ■著者名:阿部秀司 (あべ・しゅうじ)
■出版社:講談社
■シリーズ:ヤンマガKC
■判型:B6
■オンライン書店bk1で購入する場合はこちら

 ヤンマガといえばヤンキー。それがいいことなんだか悪いことなんだかはよく知らないが、そういうイメージが定着している。ヤンマガではかねてから、きうちかずひろ、もりやまつる、ハロルド作石といった面々がヤンキー漫画の系譜を築き上げてきたが、「エリートヤンキー三郎」は長年にわたって煮詰められてきたエキスを存分に受け継ぎ、より馬鹿馬鹿しさを増したといった趣の作品である。阿部秀司は「エリートヤンキー三郎」の第1巻が初単行本なのだが、のっけからここまで煮詰まっているってのはちょっとスゴイ。

 さて、ヤンキー漫画といえば、大きく分けてバリバリの番長抗争モノとウダウダ日常モノの二つがある。この作品は、どちらかといえば後者に属する。しかもただダラダラしているだけでなく、かなりイッちゃった日常だ。

 物語の主人公は、伝説的なほどの凶暴さで近隣を牛耳ってきた不良兄弟、大河内一郎/二郎の弟である三郎。一郎二郎はまったく容赦を知らない凶暴な野獣のような男たちなのだが、三郎は実際は気の弱い普通の高校生男子に過ぎない。しかし、一郎二郎が退学になった学校で、「あの大河内兄弟の弟なのだから人間離れした強さであるに違いない」という誤解によって塗り固められたありもしない最強伝説のもと、三郎は学園のドンにされていってしまう。普通の高校生活を送りたい三郎が、無数のイカれたヤンキーどもによって否応なくまつりあげられて迷惑を被るところがこの作品のキモだ。

 三郎も実は、生命の危険を感じて小便を洩らすと三兄弟中最強の男に変身するのだが、そういった力の裏づけは別に彼にとって役立つのではなく、心ならずも新たな不良伝説の礎となってしまうのだった。そうこうするうちに、勝手に三郎軍団などというものを構築し、副総長を名乗り始めた河井によって三郎の意思はねじ曲がって伝えられ、さらにカリスマを増す要因となっていく。そして三郎軍団の基盤はまたしても磐石になっていくのだった。

 この作品のキャラで特筆すべきなのはもちろん三郎を利用して軍団の副総長にのし上がっていく河井なのだが、周りのヤンキーどものバカっぷりがまたスバラシイ。野蛮で妙に気合いが入っているわりに実は流されやすくて、たいへんに頭が悪い。彼らがこの物語のベストキャラの一人、河井の根拠のないこじつけや強引な話術に乗せられていくさまはやたらとこっけいだ。ヤンキーという種類の人々の、存在感、暑苦しさ、おしまい感などをこれでもかと煮詰めたような描写が最高。三郎を見つめる彼らの目つきは陶酔者のソレであり、貼りついたような晴れやかさがある。怒ったりスゴんだりしているときよりもなんだか怖い。

 あれよあれよという間に、後戻りできないにっちもさっちも行かない頭悪げなオーラに満ちた、シンナー臭クラクラの爆濃ダサヤンキー空間に取り込まれていく三郎の姿は、ふびんだけれど実にユーモラスだ。いつまで経っても三郎自身は軍団になじまず、ただただ自分の状況を嘆き続けているだけという情けない姿もいい。物語が進むに従って定着していくやたら豪快な鼻血噴出のリアクションなど、ビジュアル的にも派手。暑苦しくアクの強い絵柄も手伝って、得もいわれぬナイススメルをぷんぷん発散しまくっている。今、エリートヤンキーがスゴイ。エリートヤンキーがアツイ。

ISBN初版価格
1ISBN4-06-336885-8 C99792000/07/06本体505円+税
2ISBN4-06-336903-X C99792000/10/06本体505円+税
3ISBN4-06-336915-3 C99792000/12/06本体505円+税
4ISBN4-06-336935-8 C99792001/03/06本体505円+税
5ISBN4-06-336949-8 C99792001/05/01本体505円+税
6ISBN4-06-336966-8 C99792001/08/06本体505円+税
7ISBN4-06-336992-7 C99792001/11/06本体505円+税
8ISBN4-06-361013-6 C99792002/01/05本体505円+税
9ISBN4-06-361027-6 C99792002/03/06本体505円+税
10ISBN4-06-361036-5 C99792002/05/02本体505円+税
11ISBN4-06-361061-6 C99792002/08/05本体505円+税
12ISBN4-06-361074-8 C99792002/10/04本体514円+税
13ISBN4-06-361092-6 C99792002/12/06本体514円+税
14ISBN4-06-361111-6 C99792003/03/06本体514円+税


【関連本】「エリートヤンキー三郎爆笑バカ百連発 一年生編」 阿部秀司 講談社 B6 [bk1]
2002/01/05初版 作:『アホたちの博覧会』制作委員会

【関連本】「エリートヤンキー三郎お遊びBOOK」 阿部秀司 講談社 B6 [bk1]
2002/01/05初版 WORKS:松本圭司

 三郎関連本2冊。「バカ百連発」のほうは謎本に近いというか、ガイドブックみたいな感じなので、これまで単行本で読んでた人はあんまり読む必要ないかも。名ゼリフ集とかキャラクター紹介とかそういうものが掲載されてて漫画自体はとくになし。「お遊びBOOK」のほうはわりと面白いかも。三郎軍団団印象とかピンバッジとか、「河井利己主義 出世すごろく」とか、いろいろなアイテムがてんこ盛りになっている。三郎軍団員としての道を極めたい方はぜひ。