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「ぶっせん」

「ぶっせん」 ■三宅乱丈 (みやけ・らんじょう)
■出版社:講談社
■巻数:全6巻
■シリーズ:ワイドKC モーニング
■判型:A5
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 この作品を簡単に要約してしまうと、貧乏寺である「仏物専寺」が寺を建て直すため起死回生の一作として始めた仏教専門学校「ぶっせん」を舞台として繰り広げられるギャグ漫画、といったところだろうか。学校という名前につられて入ってきた生徒たちは、実際には頭を丸め「授業」と称して坊主としての修行をすることになり、この動きを警戒した近くの金持ち寺「金々腹寺」が送り込んできた純真かつ頭の悪い坊主・正助も生徒として加わり、ぶっせんの日常が営まれていく。

 三宅乱丈の作画はちょっと独特。筆ペンか何かかなと思われる描線は、一見むわっとくる骨太な感じなのだが、不思議と飄々と洒脱な風情である。実際のお話のほうもそのタッチと同様に、暑苦しいようでいて軽やかで、素直に愉快。

 とにかくこの作品の登場人物はみんなやたらと個性的で、かつどこか抜けている。主役である正助の同級生は、元パンク野郎、女なのに男と偽って入学してきた者、食い意地の張りまくったボンなどなど非常に個性的。さらには先生(というか指導僧)たちも、どんぐりみたいに頭がトンガッたカタブツの雲信、豪快な容貌とは裏腹に女好きな丸慶など一癖も二癖もあるメンツばかり。で、どのキャラにも共通しているのが、なんだかんだいってみんな人がいいこと。計算高いのもいるしヘンなのもいるんだけど、トータルで見るとおおむねスコーンと間が抜けている。そうして、揃いも揃って邪気のない気持ちのいい連中の、どうにも楽しい日常を見続けているうちに、どんどんこいつらのことが好きになっている自分に気づく。

 物語はおおむね地味ながらじんわりとした味のあるギャグとして進むけれど、最後、ぶっせんが解散に向かっていくまでのエピソードは、笑わせつつも爽やかに泣かせてもくれる。馬鹿なことばかりやっていた生徒たちが、それぞれの道を見出し晴れやかに歩んでいくさまは、最後までつきあった読者としてはすごくうれしかった。ぶっせんという場は、外界とはあんまり縁のない特殊な環境で成立した一種の楽園みたいなものだったのかもしれない。一つの立派な学園青春モノであり、ナンセンスで愉快なギャグであり、気が利いた良作であります。
(2001/08/24)

ISBNコード価格
14-06-337432-7581円
24-06-337443-2581円
34-06-337454-8600円
44-06-337461-0600円
54-06-337466-1600円
64-06-337473-4619円