オス単:2002年5月の日記より


 このページは、「OHPの日記から、その月に読んだ単行本の中でオススメのものをピックアップする」というコーナーです。

 日記形式だと、どうしても日にちが過ぎてしまうと大量の過去ログの中に個々の作品が埋もれてしまうため、このコーナーではダイジェスト的にまとめてみました。文章の中身は、すべて日記からのコピー&ぺーストです。加筆・改稿等は原則としてしませんので、普段日記を読んでくださっている方にとっては読む意味がないかもしれません。手抜きといえば手抜きなんですが、まあその点はご容赦ください。

 なお、ここで取り上げる単行本は「その月の日記で取り上げたもの」です。「その月に発売されたもの」ではありません。だから古い本でもどんどん入れていきます。ピックアップした単行本は多少分類してますが、これはあくまでページを見やすくするための便宜上の分類です。かなり適当に割り振ってますのであんまり気にしないでください。あとシリーズものの途中の巻は、わりと省略しがちです。


【単行本】「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」1巻 安彦良和 角川書店 B6 [bk1][Amzn]

 そんなわけで安彦御大によるガンダムが単行本化。カバー見返し部分にある「『ガンダム』というのは、こういう物語です。想いだしながら、かみしめながら、描いています。」という作者コメントに思わず感動。ファンにとっては「ガンダム」はすでに一つの歴史であり、シャアやアムロ、ブライト、ギレンといった登場人物は、歴史上の人物、すなわち英雄であるわけだが、彼らがアニメで観た生のまんま、いやそれ以上に洗練された形で息づいているさまを見るとやはり感慨無量。昔、彼らの活躍に一喜一憂したのはけして若さゆえのあやまちではなかった。やっぱり面白い。また漫画ということで、週刊放送のアニメでは時間がなくて描けなかったディティールに関しても、気合い入れて描いているなあということが伝わってくる。このまま安彦良和ならではのパーフェクトガンダムの姿を堪能させていただきたいと思います(もちろん「プラモ狂四郎」のアレではなく)。

【単行本】「Dr.リアンが診てあげる」1巻 竹内元紀 角川書店 B6 [bk1][Amzn]

 下ネタ耐性はわりと高いほうではないかと思う俺ではありますが、この作品にはいい具合に笑わせていただいた。内容は平凡な男子学生・直人と、彼のガールフレンド岡崎さんが登校中に、ヘンテコな生き物を頭から生やした自称女医リアンが落っこちてきて、直人周辺にいついちゃうというところから始まる。あとはダラダラと日常が展開していくんだけど、その日常は下ネタの嵐。簡単にくくっちゃえば萌え系な絵柄であるにも関わらず、エロネタのオンパレードで、それを繰り出すテンポが非常にいい。思わぬところから鼠蹊部を刺激されるような感じで思わず声が出てしまう。でも露出はするわりに、不思議と下品な感じにならないのはその軽やかさゆえ。回数が多いだけに一つ一つの下ネタのウエートが軽くなっているのが良いのかもしれない。あと岡崎さんを始め、女の子が適度にカワイイのもよろしいんでないかと思う。

【単行本】「虫けら様」 秋山亜由子 青林工藝舎 A5 [bk1][Amzn]

 これはいいなあ。実に素晴らしい。基本的には短編集なのだけど、そのほとんどで虫たちをメインで扱っている。というと虫がうじゃうじゃーとかいうグロいものを想像する人もいそうだが、この本にはそういうグロさは全然ない。例えば「瓢箪虫」は、瓢箪のつるについた小さな実のような殻が弾けて出てきた虫が大瓢箪の中に住みつき、その中を部屋のように改装して暮らし始めたのを法師が発見。観察するという物語。この虫が小さいながら、法師にどんぐりの器をくれたり、法師が書いてくれたちっちゃな絵や書を瓢箪の部屋に飾るなどやることが非常に愛らしい。このほかの作品でも虫はいっぱい出てくるけど、いずれも愛敬がある。そういった虫たちを描く秋山亜由子の視点は、小さな者たちを慈しみしげしげと見つめる優しさに満ちている。絵も細かい線を重ねていい具合に和風情緒な味わいが出てるし、しみじみと面白かった。これは第一級のファンタジーだと思う。虫愛づる姫君やファーブルさんはもちろん、そうでない人にもオススメしたい良い本だ。

【単行本】「ガタピシ車でいこう!!」1巻 山本マサユキ 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 いいねえ。面白い。旧車改造マニアの俺こと「山本」と、エロが大好きなエンスーの金田くんの男二人を中心とした、ほのぼの、かつけっこうムチャクチャな旧車ライフを描いていくという作品。バイク積むためにジープの天井を切ったり、ボロボロの車をテキトーにエポキシパテで補強して乗り回してみたりと、バリバリチューンとかではなく手作りで車をいじくり回すのを楽しんでいる感じがいい。別に速くなくたっていいから、とにかくいじりたいというええ大人の子供っぽさが楽しいのである。あと出てくる女の子が何気にけっこう可愛かったりして、車オタク的な話ばかりにもならないバランスをキープしているので、車には全然興味のない男子である俺のような人間でも面白く読める。あと読切の「FIATは元気?」「香奈ちゃんとFIAT500」あたりも、後味のいい魅力的な作品。ところで「ガタピシ車でいこう!!」は1巻が「風の巻」で、夏発売予定の2巻が「林の巻」ってことなんだけど、つまり4巻までは出ると考えていいってことだろうか。それはともかく、そのうち「六本木リサイクルショップシーサー」その田の短編も1冊にまとまるといいな。

【単行本】「フランス」上巻 タイム涼介 編:ZOP!/発行:株式会社零 A5 作者Web

 ヤングマガジンにて1995〜96年に連載された、タイム涼介の初連載作が単行本化。といってもこれは別に書店とかで売ってるわけじゃなくて作者Webの通販でしか手に入らない。3冊以上まとめ買いすると送料がタダになるというので、知り合いで共同購入者を募ってみたが、今のところ一人しか確保できず。しかし買ったのは5冊。いざとなったら作者に貢ぐぐらいの気持ちでいるのでまあ別にいいのだ。

 で、内容については作者Webの情報も参照してほしいが、タオルを駆使するフランスの格闘技「タオル」の道場をやっていた父が死に、母は入院、8歳ながら一人で暮らしていかなくてはならなくなってしまった小学校2年生の伊藤良平の日々を描くというもの。そんな良平のことを、タオルにおける父の弟子「ピンチ」が何くれとなく面倒を見ることになる。ピンチは20歳になっても高校に通い続け、仕事もしないで遊び回っているハズレ者で、最初は良平も反発するけれどもその仲間と過ごしているうちにだんだん心を開いていく。

 全体に地味といえば地味なのだけど、随所に「日直番長」で見せた詩心の片鱗を伺わせてくれる。マヌケな登場人物たちの行動の明るさと、ふと見せる哀愁のコントラストに強く惹かれる。なおヤンマガの月間新人賞に2作同時入選したデビュー作である「タオル」「おまえのそれは万引きとはいえない!!」も収録されている。タイム涼介のルーツを知りたい人にはぜひオススメしたい。

【単行本】「せんせい」 岸大武郎 新潮社 B6 [bk1][Amzn]

 北野武、山田太一、城山三郎、藤本義一の4人の、それぞれの人生に影響を与えた恩師とのエピソードを描いていく作品。一つひとつのエピソードが丁寧に描かれていて、泣ける物語に仕上がっている。この4人のインタビューも付いてるのだがそっちのほうでは各人わりと恩師の想い出をさらっと語っているところを見ると、漫画化に際してけっこう脚色を施しているのだろうなと思う。ここらへんは岸大武郎の演出力の高さを感じさせる。4話の中では、城山三郎と大学時代の恩師、それから藤本義一と川島雄三のエピソードが出色。

【単行本】「青春ヒヒヒ」上巻 清野とおる 集英社 B6 [bk1][Amzn]

 アクが強いけどすごく好きなんだ! お話を要約すると、引越により日日日中学校に転校してきた少年・岩清水君が、奇矯な行動をとり続けるクラスメートたちに翻弄され続けるといった感じの学園ギャグ漫画という感じ。作画技術についてはうまいほうではないんだけど、とにかく味が濃い。ヘンなクセがありまくり。とくにクラスメートたちの造形はかなりスゴい。全裸の奴はいるわ、いつもノーパンで首を絞めたりなどの攻撃をしかけてくる女はいるわ。でもお話はあくまでナンセンス。端々でクラスメートが天井に張り付いてたり、わけのわからん細かいギャグがちりばめられているのもなんだか気にかかる。「面白いか?」と問われれば「面白い!」と答えるけれども、「他人に薦めるか?」といわれると「相手による」としかいえない。それから併録されている読切短編「坂本龍馬に憧れて…」「もんもんばあとオレ」もこれまた怪作。そういえばおまけ漫画に別冊ヤンマガでこの前連載を始めた押切蓮介と友達とあったけど、なるほどと思った。両方ともクセが非常に強い。

【単行本】「東京家族」1巻 山崎さやか 双葉社 B6 [bk1][Amzn]

 売れっ子小説家・原田壮に、ある日突然12人の妹が……ではなく6人の子供ができる。といってもいちおう血のつながりはあって(怪しいのもいるけど)、それぞれ原田がかつてつき合っていた女性が、彼との間にできた子供だと主張し、彼に押しつけていった子供たちである。6人は年齢もバラバラで、大学受験を控えた息子もいれば、小学生もいるといった具合。そんなこんなでいきなりお父さんになってしまった原田、それから子供たちのドタバタした日常を描いていくホームドラマ。

 これまで女性を主体にした物語が多かった山崎さやかだが、今回の主役はお父さん。どんなものになるかなと思っていたがこれがなかなか面白い。いろいろ事件はありつつも原田はいいお父さんぶりを発揮しているし、日常は賑やかで楽しそうでもある。最近では家庭における父親不在がいわれているけれども、そういう世の中だけに「頼れるいいお父さん」がいるという状況は非常に好ましく映る。まあお父さんが小説家だからいつも家にいるとか、金銭的に裕福だとか、ルックスもかっこいいだとか、ちょっと条件的に揃いすぎてるところはあるけれどもお話として面白く仕上がっているのでそこはまあオッケー。そういう条件が整ってないとそんなにモテないだろうからそんなあちこちで子供を作ることもできなかろうし、また元恋人たちも子供を押しつけてはいかないだろうし。

【単行本】「リアル・サマー」 山崎さやか 河出書房新社 A5 [bk1][Amzn]

 短編集。「HOUSE」「リアル・サマー」「間宮という女」「しょぼテン」「妹よ」の5作品を収録。5本で1000円というのはちと高めな気もするけど、いずれの話もソツなく楽しんで読める。1994年初出の古い作品もあれば、ごく最近のもあり、山崎さやか(沖さやか)という作家の変遷も感じる。この人は女を描くのがすごくうまい人だが、この本にも各作品で印象的な女の子が出てきてて、読者をお話に引き込むいい材料となっている。

【単行本】「カリクラ」下巻 華倫変 太田出版 A5 [bk1][Amzn]

 太田出版からの復刻版の下巻。復刻版では「フルカワとウサギ」が初収録された。で、また読み返してみたがやっぱり面白い。華倫変のアヤしいけれどもなぜか妙にサバサバとした読後感を残してくれる作風は、読んでて不思議な気持ち良さがある。この世で居心地悪そうにしている人たちの、諦めつつも生きてくしかない生と、その中にある「花」みたいなものやら「どうでもいいもの」やらをすごく趣深く描写してると思う。

 とくに江戸の商人だかなんだかが開拓している作業現場の町のはずれで、大きな桶の中で春をひさいでいる遊女の姿を描いた「桶の女」は再読してみてもじーんとくる作品。破戒僧に性病をうつされ、一人死を迎えていく中で、桶の天井に張った花を見ながら何もかも許すような気持ちになっていく姿は切なく哀しく暖かい。あと個人的には、気弱な教師に対し、イカれた男が拳法のススメを一方的に説く「大林寺先生」なんかも好き。男はかなりヤバいが、全体としてはなんだかどうにも平和な感じがする飄々とした描き方がいい。まあ何はともあれ、これだけの変則派な作家さんも珍しいので、今まで読んだことのなかった人も復刊を機にチャレンジしていただきたいものだ、とオモッタ。

【単行本】「北極警備隊」 三宅乱丈 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 「ぶっせん」の三宅乱丈の最新単行本。戦争に行くのがイヤで逃亡した兵士がたどり着いた北極の地。そこで彼はしろくまさんたちを惨殺したりしている北極警備隊の面々に拾われ、そのペースに巻き込まれていく。別に北極警備っつってもなんかたいそうなことをするわけではないけど、その生活はなんかよう分からない馬鹿っぽさがあって、見てて素直に楽しい。1冊で完結するし、気楽に読める小粋な作品。

【単行本】「LAZREZ」3巻 作:TKD+画:竹谷州史 エンターブレイン A5 [bk1][Amzn]

 これにて最終巻。いやはや面白かった! 正直なところ音楽がらみの知識は全然ないし、そういう語彙にも親しんでないから会話の端々の面白みとかを十分にキャッチしきれてないのではないかと思うけれども、迫力ある画面から、音楽のもたらす快感を十分、かどうかはよく分からないけれども、感じさせてくれた。腹の下のあたりからズンズン響いてくるような、土性骨の据わった力強さがあった。終盤の盛り上がりについては官能的でさえある。「LAZREZ」のスペル間違えの件も、なんかいかにもありそうな気の利いたエピソードに見えてしまう。物語的にまとまりを欠く部分はあったかもしれないが、それを補って余りあるだけの快楽を与えてくれる作品だった。


▼女性向け

【単行本】「水蜜桃の夜」 ジョージ朝倉 講談社 新書判 [bk1][Amzn]

 今年はジョージ朝倉大ブレークの年なのかー!? というわけで「カラオケバカ一代」「ハッピーエンド」に続いて、早くも今年3冊めの単行本。さらに7月にはZipper comicでやってる「ハートを打ちのめせ」も単行本化されるという。今、ジョージ戦線に異状あり。

 で、この単行本は「水蜜桃の夜」「失踪日和」「紅いソーダ水」「カラフル・フレーバー」「愛の暴走」の5本を収録した短編。うーん、こりゃ面白いわ。「水蜜桃の夜」が、親の再婚の連れ子同士な義兄妹のもどかしい恋心を描いたセンチメンタルなお話になっていると思えば、「愛の暴走」は同棲している彼氏のことを考えると頭がパーになって、彼の会社に潜入してお茶汲みしてしまったりと突飛なことを繰り返す女の子のパワフルなバカップルラブストーリーになっている。でも馬鹿やってもピュアなラブストーリーやっても、なんだかこの人の作風には得も言われぬ強さがある。爆発力がある。さらにうまくのし上がっていけば、安野モヨコクラスにまで行けちゃう人かもな〜と思えるエネルギーを感じる。とりあえず今まで読んだ作品についてはみなハズレなしだった。どの単行本読んでも楽しめると思う。多分少女漫画系の人でなくてもオッケー。

【単行本】「クール・パイン」 南Q太 祥伝社 A5 [bk1][Amzn]

 「クール・パイン」はZipper comicで連載された作品で、自分勝手でSEXばかりしようとする男の先輩と付き合い出した少女の葛藤を描いた物語となっている。彼女は最初、そんな先輩の態度にどうも納得がいかなかったが、しだいに彼への執着を強めていく。反発しつつもやはり惹かれてしまう、その微妙な距離感の描き方が非常にうまい。肉体をくっつけ合うことの心地よさみたいなものもしっかり伝わってくる。最近、南Q太にはちょっと飽きてきたかなーとか思っていたのだけれども、やっぱりちゃんとまとまった形で読んでみるとしっかり面白い。さすが鮮やか。

【単行本】「恋愛レシピ」1巻 池部ハナ子 竹書房 A5 [bk1][Amzn]

 すごく久しぶりの単行本は、恋愛+料理という以外な路線。いや、最近の傾向からいえば恋愛のほうは至極当然なんだけれども、料理を必ず組み合わせてレシピ紹介までやるというのが意外だった。その料理もカボチャのガーリックステーキとか、はちみつをかけるハニーやきそばとか、なんか非常に甘そう。しかもそれが恋愛にごく自然にからんでいるのが面白い。恋愛自体は紆余曲折ありなんだけど、料理レシピとかが入ることによってそれをうまいことまーるい雰囲気にしてくれている。狙いがけっこう面白いし、お話としても後味良く楽しめた。

【単行本】「オススメボーイフレンド」 いくえみ綾 集英社 新書判 [bk1][Amzn]

 「オススメボーイフレンド」「頼ちゃんは叶わぬ恋をしている」と、描き下ろしのペット漫画ショートを収録。どれもしっかり面白い! とくに「オススメボーイフレンド」がいいなあ。女子高生のラブストーリーという、少女漫画のこれ以上ないってくらいの王道路線を行きながら、凡百の作家とは一線を画するキレ味を見せる。懐に余裕を持って描いている感じで、力の抜き入れのタイミングが絶妙。それに非常にスルスルと読み進めていける、抜群の読みやすさもさすが。


▼エロ漫画

【単行本】「カムカム雲雀荘」 EB110SS メディアックス A5 [Amzn]

 ロリ系ではたいへんひいきにしているEB110SSの3冊め。これまでの2冊と違って今回はロリオンリー。その分濃い内容となっている。とくに表題作の「カムカム雲雀荘」は、実母に代わってアパートの管理人をすることになった男が、その入居者の女の子とねんごろになるお話で、ロリ者の妄想が爆発した作品となっている。その娘さんのおうちは、元々父ちゃんが娘のロリ裏ビデオを撮っているようなちょい壊れた家庭なのだが、娘とばっかりやるのにちょいと飽き気味なお父ちゃんは、主人公に対し撮影に協力し家賃を値引く代わりに娘さんを差し出してくる。というとものすごく陰惨な話みたいなのだが、実際の作風としてはみんなしてセックスを楽しんでてけっこう明るい。何より女の子の表情がすごく良いのだ。あどけなくて柔らかくて。んでもってエッチシーンも充実してるしサービスたっぷり。今回は単行本のカバーイラストからしてロリ全開だけれども、個人的にはこの人は、モノクロページのほうが味があると思う。だからジャケットでビビッと来た人は、そのままの勢いで買っちゃえば、中身見てさらに満足……という具合に行くんではないかと。

【単行本】「下水街」 掘骨砕三 三和出版 A5 [Amzn]

 掘骨砕三のちょいと昔めの作品を集めた単行本。このころの作品は今のようにスタイリッシュな絵ではなく、むしろよくあるタイプの美少女漫画絵という感じ。よくここからあんだけ洗練されたもんだなーと驚かされる。お話作りの面白さは変わっていない。下水の街に住む人々の物語を描いているのだが、芋虫少女と機械娘の愛情あふれる生活だとか、座れるたびに乳が巨大になっていく娘の話だとか、グロテスク極まりないけれどもキュートという、ギリギリのラインを突っ走っている。複乳もあれば複男根もありその内容はびっくりどっきり。最近ではグロ+キュートが、どちらも極限まで磨きがかかってきている感があるのだけど、アイラの休刊が決まった今、この人が本当に描きたいような作品を載っけられる雑誌ってどこがあるかなーと心配になってしまう。この稀有な才能を生かし続けるためにも、三和出版はフラミンゴ→アイラ路線を継続してほしいものだが。

 ところで今回の単行本のあとがきにより、「掘骨砕三=小瀬秋葉=鉈川紘」が公式な確定情報に。鉈川紘は単行本あとがきでインタビューの聞き役を担当している沢村三菱との合体ペンネームっぽい。というわけで掘骨砕三ページにちょっとデータ追加。

【単行本】「アリス狩り」 中村みずも 久保書店 A5 [Amzn]

 この人は近年すっごく良くなったなあと思う。正直いってそれまではあんまり注目してなかったんだけど、鉛筆描きにしてからロリ方面でメキメキ頭角を現わしてきた感がある。作者Webの単行本情報のページ見ると、この単行本とそれまでの本では違う人が描いてるんじゃないかと思っちゃうくらい印象が違う。この単行本では鉛筆描きのタッチに高級感があるし、少女の男を誘うような目つきがエロチックでたいへんよかったり、とても充実している。いやあ化けましたなあ。


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