オス単:2003年8月の日記より


 このページは、「OHPの日記から、その月に読んだ単行本の中でオススメのものをピックアップする」というコーナーです。

 日記形式だと、どうしても日にちが過ぎてしまうと大量の過去ログの中に個々の作品が埋もれてしまうため、このコーナーではダイジェスト的にまとめてみました。文章の中身は、すべて日記からのコピー&ぺーストです。加筆・改稿等は原則としてしませんので、普段日記を読んでくださっている方にとっては読む意味がないかもしれません。手抜きといえば手抜きなんですが、まあその点はご容赦ください。

 なお、ここで取り上げる単行本は「その月の日記で取り上げたもの」です。「その月に発売されたもの」ではありません。だから古い本でもどんどん入れていきます。ピックアップした単行本は多少分類してますが、これはあくまでページを見やすくするための便宜上の分類です。かなり適当に割り振ってますのであんまり気にしないでください。あとシリーズものの途中の巻は、わりと省略しがちです。


▼強くオススメ

【単行本】「フリージア」1〜2巻 松本次郎 小学館 B6 [bk1][Amzn:1巻/2巻

 月刊IKKIで連載中の近未来バイオレンスアクション。「敵討ち法」と呼ばれる、凶悪犯罪者に対する報復を許容する法案が制定された日本で、敵討ちを代行する業者。そこにスカウトされた叶という青年の生活を描いていく。叶は、人混みの中で完全に自分の存在を周囲に紛れさせてしまう能力を身につけているが、家には気のふれた母親を抱え、思念の中で作り出した女性を話し相手とする空虚さを内に抱えている。そういう人間だからこそできる人殺しもある。というわけでクール、かつハードボイルドにお話は展開。松本次郎ならではの、細密に描かれていつつも非常に混沌とした画風も奏効して、緊張感のある作品になっている。絵と物語の刃は鋭く、どこか官能的でもある。何より冷酷なメガネ君である主人公の叶がカッコイイではありませんか。メガネ君萌えな女子にとっては、けっこう萌えキャラなのではとも思う。

【単行本】「ラヴ・バズ」1巻 志村貴子 少年画報社 B6 [bk1][Amzn]

 志村貴子の作風は、基本的にキャラクターの「生態観察」だと思っているし、ここでもときどき書いている。そしてこの作品の観察対象は女子プロレスラーだ。かつて男を作って逃げ出した、人気はあるけど実力は?な感じの藤かおるが、何を思ったか子供を連れてかつて所属していた団体に戻ってくるというところからお話は始まる。そんな彼女の、子育てをしながら女子プロレスラーを続ける生活が、淡々と描かれていく。まあ世間を揺るがすような事件は、いつもながら起きない。これからも藤かおるがレスラーとしてムチャクチャ強くなったりチャンピオンになったり、はたまたプロレスでの人気を生かして国会議員に出馬するなんてことは、たぶんないでしょう。そんな弾けたところは全然ないのに、これが面白いんだよねえ。独自のテンポできっちり味のある作品を構成している。

 思うにこの人は、各話の始め方と締め方がうまい。その節目節目がきちんとしているので、途中は淡々と進んでも、1話ごとにちゃんと「読んだ」って感じがする。もちろん途中の部分も過剰な描き込みがなく、整理されていて読みやすいってのはあるんだけど。一つの話の中で大小のリズムを刻んで、楽しく読ませてくれます。こういう自分ならではのリズムの持ち主だから、何を描いてもきっと独自の味が出せるんじゃないかと思う。

【単行本】「プラレスラーVAN」1巻 作:牛次郎+画:神矢みのる 秋田書店 B6 [bk1][Amzn]

 15年の時を経て、「プラレス3四郎」の続編が登場。というわけで舞台を現代に移してまたプラレスラーによるバトルがスタート。今回の主人公はプラレス大好き少年の雄二、通称VANと、旧作の主役プラレスラーである柔王丸と同タイプな明王丸。まあ彼らが旧作同様にバトルするわけだけど、これが何気にちゃんと面白い。神矢みのるは漫画家としてのブランクはけっこうあったはずなのだが、腕はまったく衰えていない。ていうかあんまりにも昔のまんまなので正直ちょっと驚いたりもした。んでもってお話もけっこうワクワクするものはある。模型に熱中し、そこに独自の工夫でメカを盛り込み、そしてできたプラレスラー同士を戦わせる……という筋立ては、少年魂をくすぐるものがある。

 とはいえこのようなストーリーが、やはり懐かしいものに感じられてしまうのも事実。実際のところ、ここで出てくるようなことは、15年前よりも今のほうがより現実に近くなってはいる。だからといってこの主人公のような、テクノロジーを信じてそれに熱中する少年が増えているかといえばそういうわけでもなく。そういうところはちょっと寂しい感じもしなくはない。まあこれが懐かしいモノに感じられてしまうのは絵柄の問題もあろうとは思うけれども。例えば似たような題材を扱っていても、CLAMPの「エンジェリック・レイヤー」は十分現代的であったわけだしね。


▼一般

【単行本】「ころころころもちゃん」 むっく メディアワークス A5 [bk1][Amzn]

 コスプレ大好き女の子・ころもちゃんとその仲間たちが繰り広げるドタバタした日常を描いた4コマ漫画。作者のむっくは、コミックとらのあなの宣伝漫画「とらのあなの美虎ちゃん」の人。漫画雑誌をよく読む人なら裏表紙広告でおなじみなはずだけど、この単行本もだいたいあんな感じの明るく楽しいノリ。この人の作品はあっけらかんとしていて、適度に勢いがあっていい。なんか萌え系の漫画の一般的なレベルより、微妙に健康的な気もします。

【単行本】「万祝」1巻 望月峯太郎 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 「ドラゴンヘッド」「座敷女」「バタアシ金魚」などで知られる望月峯太郎の最新作。漁師だった祖父を持ち、母の強く生きろとの遺言を胸に、ムチャクチャ格闘技の強い15歳に育った少女・鮒子が主人公。現在は海辺の町に住む彼女の家に謎の下宿人がやってきたのをきっかけに、鮒子は秘密の島と海賊たちをめぐるゴタゴタに巻き込まれていく……という感じかな。1巻の段階では物語はまだ導入部という感じで方向性は見えていないけれど、強く美しくのびのびと生きている鮒子や、アクの強そうな脇役キャラが動き回る姿は、今後面白いことが起きそうだな〜と思わせるモノがある。「ドラゴンヘッド」あたりは重めな作品だったけど、今回のは健康的でカラッと明るい。

【単行本】「水野純子の四畳半妖精図鑑」 水野純子 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 最初パラパラーっとめくってみて、「イラスト+ちょっとしたコメントの本なのかな?」とか思ってガッカリしかかったんだけど、ちゃんと読んでみたらそうじゃなかった。これは面白いです。内容的には4ページがひとまとまり。まずは浪人生活ののち東京に出てきて一人暮らしを始めた大学生、はじめのむさ苦しくわびしい日常が2ページで描かれる。実ははじめは気がつかないけど、彼が住むジメジメした四畳半のアパートの一室にはけっこうな数の妖精がいて、その妖精たちのイラスト+解説が次の2ページで描かれる。それを繰り返していく……という構成。

 妖精たちは水野純子らしい、キュートで色っぽいデザインの女性型のものが揃っていて華やか。それからはじめのわびしい生活を見ているうちに、どんどん親近感が沸いてくる。そして物語のラストでは、都会の厳しさを味わったはじめが出くわした光景が描かれる。一定のパターンをずっと繰り返し続けながらも、はじめの不器用で優しい人格はじょじょに伝わってきて、最後の展開でジーンと感動さえさせてくれる。ヤングマガジンUppersのホームページで月イチ連載された作品らしいけど、こうやってまとめて読めて良かったと思った。

【単行本】「SS」9巻 東本昌平 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 これにて最終巻。とても良い作品でした。通常のクルマものといえば、むこうみずな若者たちがスピードを競って疾走する……みたいなものが多いけど、この作品の場合は自動車整備工のダイブツをはじめオヤジたちがメイン。彼らの胸に、埋み火のように眠っていた情熱が、車を転がすうちにどうしようもなく蘇ってくる。自分がこれまでたどってきた人生に対する追憶、後悔や諦め、現状肯定……その他もろもろすべてを呑み込んだうえで車を駆けさせ速度を楽しむダイブツの姿はなんともシブい。

 ちょっと違った話になるかもしれないけど、最近のヤンキー漫画はずいぶん家族やこれまでの人生を意識したものが増えてきている。例えば高橋ツトム「爆音列島」は80年代回顧だし、田中宏「莫逆家族」も家族を持ったヤンキーたちのお話だ。ここらへんはかつてヤンキーだった人たちが過去を振り返る年になったということと、ヤンキー時代が「振り返れば懐かしい青春」になったってことなんだろう。そのような空気は「SS」にも共通するものがある。ここに登場するオヤジたちは、人生を振り返る走り屋たちだ。ダイブツはもちろんのこと、自動車評論家として成功したダイブツの旧友・栗原、同じ整備工場で働く山ちゃん、チューンショップの経営難に苦しみつつも最速を夢見るブンブク。彼らの姿を見て、積み重ねてきたものについて想いを馳せると、何やらジーンとくるものがある。東本昌平の骨太で抑えの利いた、しかしときにセンチメンタルなところもある描写もいい。ダイブツが自分に対して発し続ける問い「僕は、頑張ったのでしょうか」。自分もそういうことを考えるような年齢になってきた。しみるなあ。

【単行本】「満腹ボクサー徳川。」1〜3巻 日高建男 新潮社 B6 [bk1][Amzn:1巻/2巻/3巻

 ウェルター級の元日本チャンピオンで、不世出の天才と目されていたボクサー・徳川貴一が、ある日突然ヘビー級への転向を宣言。食いまくって体を大きくし、ヘビー級のてっぺんを目指していくというボクシング漫画。もともと重量級は日本人には向かないといわれているが、それに加えてウェルター級だった体をヘビー級に作り換えるという困難に、徳川は緻密な計算と才能とど根性でぶつかっていく。現在コミックバンチで連載中の作品だが、最近のボクシング漫画の中でもかなり面白い部類に入ると思う。

 まずコンセプトが面白い。通常のボクシング漫画では減量の過酷さはよく描かれるけれども、増量の苦しさを描いたものは記憶にない。それからお話の進め方もうまい。普通だったら不可能なチャレンジではあるのだけど、筋肉を増やすための方法とか、いちいち理を呈示してくるので納得できる。そのおかげもあってぷくぷくした徳川というボクサーが、だんだんカッコ良く見えてきてしまう。拳闘シーンも力強いしオススメできる。ただ単行本の作りとしてはちと地味かなあ。帯なんかも「伝説はいつも、限界を超えた人間だけが作り出す!!」などという抽象的な文句ではなく、せっかくコンセプトが良い漫画なのだから、「ウェルター級のチャンピオンがヘビー級に肉体改造」とか、もっと作品の内容が分かりやすいものにしたほうが良かったと思う。

 ところでこの作品を読むと、徳川がいつも鍋を食っててなんかすごくうまそう。つい自分も食いたくなる。無理なく野菜をもりもり摂取できるので、身体を大きくしたい場合にはいいんでしょうな。

【単行本】「満腹ボクサー徳川。」4巻 日高建男 新潮社 B6 [bk1][Amzn]

 しっかり面白い。元ウェルター級の日本チャンピオンだったボクサー徳川が、綿密な計画に基づいたウエイトアップによりヘビー級転向を目指す。で、今度は国内のヘビー級ボクサーや、K-1みたいな格闘技イベントの強豪たちを集めたトーナメントに参加。いよいよヘビー級としての実力が試されていく。徳川の人を食ったような態度と胸のすくようなファイトっぷりが痛快。ウエイトアップのための理屈面もシッカリしてると感じられるし、強くなる過程に説得力がある。

【単行本】「ティーンズブルース」1〜4巻 コージィ城倉 小学館 B6 [bk1][Amzn:1巻/2巻/3巻/4巻

 コージィ先生はやり手だなあと強く思う作品。お話としては、要するに女子高生がホストにハマって転落していくさまを描いた作品。主人公の女子高生・久我アサミは母子家庭で貧乏。そのおかげで今どきのギャル的な遊びなどはまったく知らない女の子だったんだけど、実は磨けばすげー美人である素材を見込まれて、同級生の女の子に遊びに連れていかれる。そこで遭遇したホストクラブの楽しさが彼女をじょじょに夜の世界に引き込んでいく……という展開。

 実際のところストーリー展開自体はあんまり早くない。4巻が終わった段階でもアサミは処女のままだし、援交とかも「まとも」にはやってない。まあキャバクラでのバイトは始めてるけど、まだお試し段階。でもその間、彼女は絶えず転落している。浮上することはなく、一歩一歩、着実に夜の世界方面に向かって進んでいる。普通の漫画だと主人公がときどきいいところを見せたりしてカタルシスがあるもんだけど、この作品にはそういうのが全然ない。ゆっくりと転落しっぱなし。こういう作品もなかなか珍しい。手綱をゆるめることなく、でも急ぎすぎることもなく、お話にメリハリをつけながらじわりじわりとお話を進めていく。そのおかげで「この先、この娘さんはどうなってっちゃうんだろう……」という緊張感が常にある。こういう寝技的な呼吸がコージィ城倉は抜群にうまい。ストーリーだけみると、けっこうな嫌漫画なんだけど引き込まれちゃうしつい読んじゃう。スリリングで面白い。

 それにしてもこういう漫画を読むと、子供世界もつまるところお金で動いてるんだなあとか思う。今の世の中は金があればたいていの快楽は買えちゃうし、若者もそれは承知している。そして親を通さず、直接若年層から金を吸い取ろうとするビジネスモデルも増えた。昔は子供向けのおもちゃとかは親が買い与えるものだったので基本的に金は親の財布から出たんだけど、今の遊びはそうじゃないものが多い。プリクラにしろカラオケボックスとかにしろ、子供の財布を直接狙ってる。そりゃまあ欲しくなるよね、金。親のくれるおこづかいじゃ足りないもん。だから万引きだの援交だのがさかんになっちまったんでしょう。金がすべての世の中になって、男は盗人になり、女は売春婦になった。うーん世知辛いですのう。←えーと、このようなことを書いてますが、もちろんそういうイケちゃってる虚無的な方々は若い人の中でもごく一部で、たぶん非行少年少女率は今も昔もさほど変わるもんでもないんだろうなあということは承知しておりますんで。念のため。


▼エロ漫画

【単行本】「親愛なる大人たちへ」 みかん(R) コアマガジン A5 [Amzn]

 繊細で美しい線で、苦く痛い少女たちの物語を描き出すみかん(R)2冊目の単行本。1冊めの単行本「少女のままで。」[Amzn]の感想は2002年6月17日の日記を参照のこと。

 この単行本で描かれるのは、心に傷を持った少女たちばかり。「親愛なる」そして酷薄な大人たちや同年代の少年たちに性を貪られる彼女たちの姿は、なんとも痛々しい。みかん(R)の白黒のコントラストの利いた画面作り、気品のある細い描線は独特の存在感があり、少女たちの傷を読む者に生々しくつきつけてくる。その最たる作品が「KISS Me」。ノイローゼ気味の父親から性的虐待を受け、煙草の火でつけられた傷で身体中がボロボロになっている少女。同級生のボーイフレンドにすがろうとするも、その身体のあまりの惨状は彼の拒絶を招き、少女は一人泣き崩れる。可憐であるがゆえに、悪意をもひきつけてしまう。美少女は哀しからずや。そういった悪意についてもごまかさずに、真っ正面から描ききる作風は、しんどいけれども読みごたえあり。痛い話が多いだけに、最後に収録された、ほのぼのとした雰囲気がちょっとある「きみがいいの」あたりでずいぶんホッとした気持ちになる。少女、そして少女を愛してしまう男たちの業を背負った作品集。苦くて痛くて重く、読むさいにはある程度の覚悟はいるだろうけれども、読むべき価値は確かにある一冊。

【単行本】「瓦敬助作品集 九十九織」 瓦敬助 コアマガジン B5 [bk1][Amzn]

 「菜々子さん的な日常」などでおなじみ、瓦敬助の画集+漫画本という感じの豪家本。表紙はハードカバーとかではないものの、印刷自体はきれいです。この本の中では、個人的にすごく気に入っていた読切「きらめき」が収録されたのがとてもうれしかった。これは廃校が決定した木造の校舎の中学校を舞台とした、優しい追憶に満ちた物語。文化祭で上演する劇の脚本を任された少年が、図書室で出会った不思議な少女の持っていたノートを記された学校の一風景を、劇の脚本にする。途中でこの少女とのセックスシーンは出てくるものの、それがなかったとしても成立したであろう、しみじみ感動できるお話。そのほかのイラストなどもカラーが多く、むっちりとしていながら健康的な、瓦敬助イラストの魅力が堪能できる。しかし久しぶりに見ても菜々子さんはいいなあ。

【単行本】「座敷娘」 國津武士 茜新社 A5 [Amzn]

 キュートでロリロリ〜な作風が特徴の國津武士2冊めの単行本。ちなみに1冊めは「天然少女児童会」(オークラ出版)[eS]。「座敷娘」は、前半が「ひな缶」に連載された「座敷娘」シリーズ6話(プラス前振り1話)、残りが短編5話という構成。その中ではやはり表題作がとても良い。とある男が、部屋に住みついたちっちゃな女の子の姿をした神様を座敷わらしだと信じ込んで契約するも、実は彼女は貧乏神で、アンラッキーライフが始まってしまうのでしたというお話。お話が進むうちに男と貧乏神ちゃんのラブラブ度が増していきそれが甘くて気持ち良い上に、死神ちゃんや福の神ちゃんもやってきてたいへん賑やかな状況に。頭身の低いロリ娘たちがたいへん愛くるしく、お話のほうも罪がなく茶目っ気があっていい。ちなみに作者ホームページはhttp://www4.gateway.ne.jp/~noriharu/houboku.htm(近日移転予定/音楽が流れます)。絵柄については実際に見て判断していただいたほうが早いと思うのでリンクしときます。

【単行本】「純情痴体」 高橋くるみ メディアックス A5 [Amzn]

 絵柄からしてまず間違いなくジェームスほたて、あるいは小暮マリコと同一人物であろうと思われる、高橋くるみの初単行本。最近あちこちで描いてて精力的に仕事してるな〜と思う。実際エロ漫画雑誌の場合、こういう人は一人いるとすごく重宝しそう。基本的には明るくてキュートな絵柄で、内容的にもラブコメベースで罪がない。ダークなものもときには描く。美少女エロ漫画雑誌に求められる要素をだいたい過不足なく備えているように思う。昔は「ごく普通の美少女漫画」というイメージが強くて目立つ人ではなかったんだけど、最近は絵の密度が増してむちむち汁気たっぷりになり、だいぶ実用性が増して良くなった。まあお話としては他愛なくて後々まで心に残るというタイプではないのだけど、それだけにクセはなく、汎用性が高い。明るめな作風のエロ漫画で、後腐れなくさっくり抜きたい巨乳志向なユーザーにオススメ。この単行本では、人間型抱き枕の女の子が家にやってくる「ピローガール」シリーズ全3話が目立つ。メインの抱き枕ちゃんが「ちょびっツ」のちぃに似てるな〜とか。

【単行本】「はじらいピンク」 星逢ひろ 晋遊舎 A5 [Amzn]

 まとまりが良く、クセのない絵がとってもキュート。ボーイズラブ系の作品も描く人だけに、女の子よりもむしろ男の子のほうがかわいいってくらい。一見普通にかわいらしい絵柄なんだけど、意外と女の子のおっぱいも大きめで、実用的にもピピッとくるものはある。ラブラブHものもちょいと鬼畜系なものも描ける人だが、今回はわりとラブラブ系、もしくはセンチメンタルなお話が多め。たいへん完成度が高いと思います。毎度いい仕事。

【単行本】「禁断の林檎」 おがわ甘藍 松文館 A5 [Amzn]

 最近の少女ロリ系ではとてもよろしいのではないかと。あどけない顔つきの少女たちがとてもかわいい。この人の描く女の子は、腰が細くて手足がすらりとながく、お尻も小さくい。なんかすごく可憐なんだよね。それが穢されるにせよ、興味津々でHしたがったりするにせよ、普段の様子との落差がたいへんいやらしい。胴回りの細さ、胸からお腹にかけての曲線のしなやかさなどソソられる要素は十分。今回の作品の中ではイギリスだかなんだかの貴族の子女が通う学校にやってきたJAPANESEの少女が、差別意識満タンの教師によって衆人監視の中で犯される「絵麻・ネルソンと禁断の林檎」がいいと思った。キリスト教的なワードを織り交ぜ、ちょいと冒涜的な雰囲気を出しているところが、少女の可憐さを引き立てている。あと、エロ外人のスティーブン・エドウィンが日本の少女たちに悪戯をしかける「妖精ハンター」が、なんかギャグタッチでけっこう笑えてしまった。絵柄は全般的にやわらかくなって、こなれてきているような気がいたします。内容も以前よりは若干マイルドになってるかな。

【単行本】「長瀬愛物語」 原案:長瀬愛+画:近石雅史 マガジン・マガジン A5 [bk1][Amzn]

 あ、これ意外と面白い。人からもらった本で、タイトルからしてどんなもんじゃろうとか思っていたのだけど、読んでみたらけっこう楽しめてしまった。内容は100本だが150本だかのアダルトビデオに出演したカリスマAV女優(←陳腐な書き方で申し訳ない)・長瀬愛の一代記。というとイロモノ的な作品に思われるかもしれないけど、よく週刊少年マガジンとかでやってたようなアイドル漫画の系譜をきっちり受け継いだ作品となっている。

 最初は就職活動に行き詰まってキャバクラ嬢をやっていた長瀬愛が、男を相手にすると輝きを増すという特性を見出されてスカウトされ、そのキャラクター性と独特の騎乗位を武器にのし上がっていく過程、それから親バレとAV女優としての挫折を経て成長していく様子が描かれる。さらには無理な騎乗位がたたって腰を痛めるが、ファンの励ましと必死のリハビリ……とかもあって、展開がドラマチック。なんかアイドルもののスタンダードをすごくしっかり押さえてるな〜と感心した。あと近石雅史の手堅い仕事っぷりも素晴らしい。この人はどの雑誌で描いても、その雑誌のカラーに合わせた作品を作ってくる。こういう職人的なモノを感じさせてくれる作家さんはけっこう好き。


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