オス単:2006年7月の日記より


 このページは、「OHPの日記から、その月に読んだ単行本の中でオススメのものをピックアップする」というコーナーです。文章の中身は、すべて日記からのコピー&ぺーストです。加筆・改稿等は原則として行っていません

 なお、ここで取り上げる単行本は「その月の日記で取り上げたもの」です。「その月に発売されたもの」ではありません。だから古い本でも入ってくることがあります。ピックアップした単行本は多少分類してますが、これはあくまでページを見やすくするための便宜上の分類です。かなり適当に割り振ってますのであんまり気にしないでください。あとシリーズものの途中の巻は、取り上げないことが多いです。


▼強くオススメ

【単行本】「水惑星年代記」 大石まさる 少年画報社 A5 [bk1][Amzn]

 にゅーあきば.comのレビューでも取り上げましたが、これはとても良いです。お話の舞台は、軌道エレベーターができて、距離が縮まった宇宙と地球。その時代に暮らす普通の人たちの青春、恋愛を実に優しく爽やかに、そしてときに甘ったるく描いた素敵な物語。作品を通しての主人公とかはおらず、読切連作形式のエピソードが続いていく。

 大石まさるといえば、ちょっと前はわりとカッチリしたコミカルなタッチの作画が多かったけど、このシリーズではカケアミを多用した、暖かくて柔らかい絵柄にガラッと変えてきた。鶴田謙二に近いテイスト。お話のほうもまたその画風を生かした、しっとりと情感的で優しい感じのものが多い。そしてその中に、大石まさるらしい魅力的な女性描写をたっぷりと盛り込んでいる。ハツラツとした元気娘から、色っぽさのある妙齢の女性、同級生……と、それぞれに魅力的。色っぽいおねーさんの描写とかもこれまた良し。いずれも伸びやかで気持ちいいし、作者が本当に楽しんで描いてるなーって感じがひしひし伝わってくる。また、見せ場シーンの風景描写なんかも丁寧で美しい。

 読切形式なんで、各エピソードごとにキャラやストーリーは異なり、ほのぼの暖かかったりラブラブだったり甘酸っぱかったりいろいろだけど、どれを読んでも暖かい読後感は共通。作画・お話ともきっちり作り込まれてて、しみじみいいなあと思える作品。大石まさるがもともと持っていた資質ではあるけれども、このモデルチェンジは吉と出た。すごく好調だと思う。


▼一般

【単行本】「水の色 銀の月」1〜2巻 吉田基已 講談社 B6 [bk1][Amzn:1巻/2巻

 「恋風」の吉田基已の最新作。延々大学で留年を続けている阿藤と、彼と偶然出会ったちびっちゃい高校1年生の女の子・星くん。9歳も年が違う二人がお互いに引かれ合って恋に落ちていく様子、それから阿藤&星周辺の人々それぞれの恋する気持ちを描き綴っていく青春物語。本作は2000年7月に単行本が発売された「水と銀」の続編となっていて、第1巻は「水と銀」をそのまま収録するという形になっている。「水と銀」は阿藤と星が中心のエピソードが続くが、新シリーズの「水の色 銀の月」は彼らの周辺の人たちの物語をメインに、連作形式で進行する。

 吉田基已は出てきたころから叙情的なタッチに心惹かれるものがあり、マニア筋では評価が高かったけど、「恋風」の連載を経て作画的にもググッと洗練された。というわけで今見ると「水と銀」のころの絵と、「水の色 銀の月」になってからの絵はずいぶん違います。まあどっちが好きかは人それぞれでしょうけど。

 お話のほうはかなり青さ、若さのにじみ出た恋模様を描いてて切なく暖かいものとなっている。三枚目タイプだけどやけに女にモテる阿藤にちょいとムカついたりもしますが、星くんはやたらちんまりしててかわいらしい。あとはやっぱ阿藤界隈の周辺の人物たちがそれぞれ一生懸命で好感が持てる。甘くてほろ苦い青春ストーリーだけど、「恋風」同様、案外生臭い部分にまで突っ込んでしまうところはこの人の業みたいなもんですかね。あまり連載ぺースの早い作品ではないけど、その作画力の高さ、繊細な心情描写はやはり注目に値すると思うんで、今後もちょくちょく描いていってほしい。

【単行本】「Fine.」1巻 信濃川日出雄 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 最近ビッグコミックスピリッツでは花沢健吾が「ボーイズ・オン・ザ・ラン」でイタイ青春路線を描いているけど、こちらもまたイタくて苦い青春ストーリー。

 主人公の上杉は27歳でありながら大学時代の青臭さを引きずったまま。自分はアートをやりたいんだと言い張り、ずっと続けてきた絵も売れぬまま。個人でネットラジオをやったりして、日々の憂さを紛らわすという散々な日々。そんな彼の日常が、大学時代につき合っていた美大仲間の女の子・りおからルームシェアを持ちかけられたことをきっかけに動き出していく……というのが大ざっぱなあらすじ。

 先ほどイタイと書いたけど、主人公の上杉がかなり厳しい状況。商業主義に迎合することはできないでいるが、自分の才能には確信が持てず、実際描いている絵も蛍光色が奇抜なだけでどうもパッとしない。自分の道を貫こうとしているというわけではなく、ほかに道も見出せず仕方なくそうしているという、逃避まがいな部分も多い。そこらへんがどうにも透けて見えてしまってやりきれない。でも漫画としてはけっこう面白いと思う。なんだかんだでキャラの心情描写は丁寧だし、グッと身につまされたりはしながらも、少し上向きなエネルギーも感じたりはする。

 まあこれからの展開次第だとは思うけど、信濃川日出雄は読切でもけっこう面白い作品を描いてた人だし、読ませる力はあるので期待してます。今はどっちかというと「ボーイズ・オン・ザ・ラン」よりこっちのほうが楽しみなんだけど、同じ雑誌に載っちゃってるのは惜しいですなあ。やはり読者としては「またかよ」って目で見ちゃいがちだと思うので。

【単行本】「Dutch Doll」 松本充代 青林工藝舎 A5 [bk1][Amzn]

 コミックビーム初出「Dutch Doll」「眠る空」、PHRYNE初出「浮遊するからだ」、ビザールマガジン初出「深く薄い肉に宿る」、計8話分を収録した作品集。掲載時期は1995〜1998年あたりだが、今読んでもすごい。とくに表題作の「Dutch Doll」は怖い。この作品はダンサー志望の平凡な女性・美和子が、よくドーナツ屋で見かける不思議ちゃん的女性に興味を持って後をつけるが、それがきっかけで彼女につきまとわれることになる。この不思議ちゃん的女の子はアカネと名乗るが、話をしてみたところ、かなり頭がおかしい女性であることが判明。そして美和子はやがてアカネ、そしてアカネを調教している女王様的女性からストーキングされ、ついには監禁されてしまう。松本充代の絵柄自体はスタイリッシュで上品なんだけど、それだけに一見普通だけど狂気に蝕まれた人たちがじわじわ迫ってくる感じが出てて、たいへんにスリリング。また美和子が彼女たちに選ばれたこともさほど大した理由はなさそうで、その理不尽さが怖さ、薄気味悪さを増幅している。しっとりした情感のある雰囲気作りが、この場合またじわじわ効いてくる。読んでいる間中ゾクゾクさせられました。

【単行本】「Juku−私の実録新宿歌舞伎町」 清水おさむ 青林工藝舎 A5 [bk1][Amzn]

 漫画家・清水おさむの自伝的ストーリー。この人については「美しい人生」(感想は040307日記参照)まではほとんど知らなかったんだけど、一読するやとにかくその濃すぎる絵、お話に圧倒される。清水おさむ自身は漫画家になろうとして1970年に新宿に出てきたが、そこでヤクザにとっつかまったり、アニメーターをやったり、エロ劇画を描いてみたり……といった数奇な経歴を歩んで来ているのだが、その描写がいちいち強烈。ダーティ・松本「エロ魂!!」も凄かったけど、これもまたそれに負けず劣らずな抜群の濃さを誇る。基本的には事実を描いているのに、登場してくる人物たちがやたら濃いし、その激情あふれる描写は迫力ありまくり。また清水おさむ自身のさまざまな思い入れが誌面にこれでもかと満ちているのも凄い。パッと見は耽美的な感じもするけれど、その実はかなり泥臭いし脂っこくもある。読んでると濃厚さに酔っ払ったような感じになります。

【単行本】「愛しのかな」1巻 田中ユタカ 竹書房 B6 [bk1][Amzn]

 これは良いです。田中ユタカといえば「愛人−AIREN−」で全力を出しきって以降の作品は、なかなか昔の調子に戻りきらない感じがあったんだけど、これは完全復調といっていいんじゃないでしょうか。

 お話のほうは昔女の子が自殺して以来、廃墟状態になっていた古アパートに引っ越してきた、運のない青年・天野大吉が、幽霊少女のかなと出会って恋におちていく……という物語。かなは幽霊だけれども、なぜか大吉とは触れ合うことができる。最初は戸惑っていた二人だが、一緒に過ごし、肌を重ねるうちにどんどんお互いを愛しく想う気持ちは高まり、古アパートでの生活は愛にあふれたかけがえのないモノとなっていく。その様子が実に甘く、鮮烈に描かれてて素晴らしい。

 かなは幽霊であるだけに、いつ消えてしまうとも限らない。想いが募れば募るほど、彼女が消えてしまうかもしれないことへの不安も高まり、その切なさがより今の愛情を深いものとしていく。ここらへんは「愛人−AIREN−」にも共通する要素がある。田中ユタカの甘ずっぱさたっぷりの作画は相変わらず美しいし、今回は感情表現も秀逸。二人がお互いを大事にしあって暮らしていく様子は、微笑ましいと同時にほろりとさせられもする。これだけ「愛しい」って気持ちに正面からぶつかって、ストレートにそれを作品に出して来れるっていのは、やはり稀有な才能であると思う。今後の展開がどうなるかはまだ分からないけど、二人が幸せになれるといいなあと素直に思える。

【単行本】「虹ヶ原 ホログラフ」 浅野いにお 太田出版 B6 [bk1][Amzn]

 QuickJapanで連載されていた作品。虹ヶ原という町を舞台に、その地域の小学校にいた同級生たちの小学生時代、成長してから、また周囲の人々の行動を追っていく。彼らはそれぞれに複雑な想い、事情を抱えており、小学生時代の生活も息詰まるもので、大人になってからもそこから生じた苦悩などから解放されぬままに生きている。その一人ひとりの姿に迫りながら綴られていく、苦くて青くて息苦しい物語は力が入っててかなり読みごたえがありました。それぞれの制御できない厄介な感情を浮き彫りにし、醜いもの、汚いものも描きながら、全体としては美しくもある作品に仕上げているのは大したもの。なんかこの人はますます腕を上げてきてる感じがしますねえ。絵もうまくなってる。今度スピリッツで始まる新連載についても楽しみ。

【単行本】「日本沈没」1〜2巻 作:小松左京+画:一色登希彦 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 日本沈没漫画もう1本。こちらは現在、ビッグコミックスピリッツで連載中の「日本沈没」の漫画版。実は原作のほうを読んでないので、内容のほうについては詳しいことは知りません。ただ個人的にはけっこう面白く読んでます。科学的考証とか、ビジュアル化についてはSF畑の人とかから見るとツッコミどころは多いんだろうなーとは思いつつも、「得体の知れないすんごくスケールのデッカいタイヘンなことが起こっている」という感じがビンビン伝わってくるし、ハッタリの利いたドラマチックな作劇作画もスペクタクルで読みごたえがある。やっぱいい加減、原作も読んでみたほうがいいんでしょうな……。

【単行本】「モーティヴ −原動機−(0) リフュールド」 一色登希彦 少年画報社 B6 [bk1][Amzn]

 ヤングジャンプ、ヤングキング、ヤングサンデーに掲載された読切版「モーティヴ」を収録して、描き下ろしを加えた完全版。今回は単行本未収録分も含まれており、ちょっと厚めの本となっている。この作品では、バイクにいろいろな想いを寄せる人たちのドラマが描かれているけど、どれも熱がこもってて面白いなあ。同級生のバイク少女のことが好きになった少年、プロのレーサー、プロを諦めて趣味でバイクを選んだ男、神戸大震災のボランティアにバイクで駆けつけた男……と、いろんな人々の物語が綴られる。そのどれもが情熱的に描かれていて、なんだかとてもグッと来る。エンジンの振動が身体を通じて魂を揺さぶってくる、ワクワクするような、いたたまれないような、衝き動かされるような、独特の興奮が沸き上がってくる。一色登希彦の作品は、ちょいとラフな作画といい、なんともいえないアツさがあっていいです。

【単行本】「Bless You!聖使徒学園喫茶部活動日誌」 竹下堅次朗 コスミックインターナショナル A5 [bk1][Amzn]

 なんか単行本までけっこう時間かかっちゃいましたなあ。ヤングアニマル2002年No.11〜18で掲載された「Bless You!」シリーズと、九龍2003年Vol.4掲載「少女幻想」を収録した単行本。で、表題どおりメインは「Bless You!」のほう。この作品はかなりアホらしくて好きだった。

 お話のほうは、ミッション系の女子校の喫茶部が運営するカフェレストラン「リトル・エンジェル」で働いている女生徒たちの物語。ここは学校の部が運営してるんだけど、外部のお客さんも利用可。で、女の子はメイド服みたいなのを着用という、なんだかタイヘンな場所となっている。そして働いている女の子も基本的には萌えっ娘ばかりなのだが、中でも主人公の野々村苺は、胸がドキドキするとそれに合わせて実際におっぱいもぴょんぴょん飛び跳ねるという、おかしな体質の持ち主。イヤなお客さんが登場したときに、その心をその振動胸で和ませたりと、なんかもう展開がたいへん頭悪い。このほかの女生徒さんたちも、三歩でモノを忘れちゃうようなチビ巨乳めがねっ娘とか、緊張すると母乳が出てくる外人娘とか、どうにも困った娘さんたちばかり。ストーリー的にはしっちゃかめっちゃかだが、その割り切ったバカっぷりは清々しくもあり。竹下堅次朗バカマンガバージョンを読みたい人には良いんではないかと思います。

【単行本】「説得ゲーム」 戸田誠二 宙出版 A5 [bk1][Amzn]

 戸田誠二の最新刊。Webコミックから出てきたことで話題になった作家さんだけど、気がつけば単行本もけっこうな冊数になってきましたな。この巻も基本的には短編ベースで、「キオリ」「タイムマシン」「NOBODY」「説得ゲーム「クバード・シンドローム」の5本を収録。一見素朴な絵柄だけど、人間の心情の機微を丁寧に浮き彫りにしていく作風は独特で、しっかり読ませるドラマを作っている。ちょっとほろっと来るようなイイ話も多く、お話作りがうまいなーと感心させられる。

【単行本】「しゅごキャラ!」1巻 PEACH-PIT 講談社 新書判 [bk1][Amzn]

 パッと見はすごいクールに見える超美少女の日奈森あむちゃんが、彼女を「こうありたい」っていう姿に変身させる力を持つ「しゅごキャラ」を宿した三つの卵を生んじゃって、そのキャラの力で変身して大活躍……という変身ヒロインもの的な作品。「なかよし」でやってるだけあって、お話やキャラ造形はだいぶ女児向けに、かわいくかわいく作り込んである。どのくらい女児に受けるのかはよく分からないけど、さすがにPEACH-PITだけに絵はすごくうまいし、ドタバタあわただしいストーリーもちゃんと楽しい。

【単行本】「カラクリオデット」1巻 鈴木ジュリエッタ 白泉社 新書判 [bk1][Amzn]

 最近の花とゆめではけっこう気に入ってる作品。アンドロイド少女のオデットが、人間に近づきたいと学校に通い始め、友達と触れ合いながら少しずつ成長していくという物語。姿形は人間と変わるところはないが、ロボットなのでまったく同じようには振る舞えない。でも自分のできる範囲で少しずつ適応していこうとするオデットの健気さ、優しさがとても好ましい。一見そっけなさそうな外見だけど、人間以上にたいへん良い娘さんに描けている。友情物語にもちょっとほろっとさせらりたりして、気持ち良く楽しめる一作。

【単行本】「平成COMPLEX」1巻 小だまたけし 少年画報社 B6 [bk1][Amzn]

 日本が第二次世界に参戦せず、大東亜共栄圏を維持したまま平成まで行っちゃったら……という架空世界を舞台にしたお話。主役格の女の子・戸原軍曹(後に曹長に昇進)は、広島で地で憲兵をやっていて、そこに赴任してきた少尉・平 成太朗の下に配属される。平はなんだかつかみどころがないようでいながら、「今日(いま)のらくろ」と異名をとる人物で、赴任するやいきなりテロリストを撃退したりするなど、優男的外見からは予想もつかない凄腕ぶりを見せつける。んでもって戸原はわけが分かんないながらも、そのぺースに巻き込まれていくのだった……という感じ。

 まあそんなわけで作者の趣味が濃厚に出た軍人もののストーリーを展開。といっても小だまたけしらしくは、ノリはわりと軽い感じで、作画も独特のこなれた柔らかさがあって華がある。ただ正直なところ、思わせぶりというか、情報が小出し小出しでしか提示してこないのでお話の全体像がいくぶんつかみづらい。またキャラや舞台設定などの説明を必要とする構成要素も多く、ゴチャゴチャした印象ではある。でもまあそこらへんはこの人の持ち味って感じもするので、合うか合わないかで評価が分れそう。個人的には絵柄と雰囲気は好き、こなれすぎたノリにはちょっと合わない部分もあり、ってとこでしょうか。ともあれ動向が気になる作品、作家ではあります。

【単行本】「無敵看板娘N」1巻 佐渡川準 秋田書店 新書判 [bk1][Amzn]

 アニメ放映開始に合わせてリニューアル。Nは「ナパーム」の略。無印版とはちょっとキャラクターも変え、近所にできたスーパーの看板娘である伊原カンナも加えて、見た目がより賑やかに。個人的には無印版で出てきたキャラに愛着があったので、茅原先生とか出てこなくなったのはちと寂しい部分はあるものの、まあ続けていけば新キャラにも愛着が沸いてくることでしょう。相変わらず激しくアクションしつつ、カラッと明るくギャグをやってて、安定した楽しさを発揮してると思います。

【単行本】「スワンパン」 一條裕子 小学館 A5 [bk1][Amzn]

 スワンパンとは「算盤」、すなわちソロバンのこと。ソロバンを正義の味方が使う武器かなんかと勘違いしてしまった少年が、ソロバン塾に通い始めるというところから始まって、彼とその周辺の人々の日常が飄々と描かれていく。別に「ソロバン格闘術」みたいなものが編み出されたりすることはなく、日常はひたすら地味に展開していく。その日常模様は平凡といえば平凡なんだけど、どこか持って回ったようなノリが独特の味を出してて、楽しく眺めていくことができる。一條裕子らしい作品だなあと思いました。


▼エロ漫画

【単行本】「はえてる女の子」 掘骨砕三 三和出版 A5 [Amzn]

 いやー三和出版で描くときの堀骨砕三は輝いてますな! 今回の単行本は読切短編集なわけだけど、それぞれキュートな絵柄だけど畸形かつ変態チックなテイスト満載の作品に仕上がってて、たいへん刺激的でした。なんといっても冒頭の「ダイスキナニオイ」からしてスカトロものでうんこもりもり。さらに女の子の片方はちんこも生やしてるし。「ぞろぞろどろどろ」ではどんどん増えるちんこ虫たちがざわざわ蠢き大活躍。単行本タイトルどおり、ちんこの生えた女子ネタも多く、それが異様であるだけでなくかわいくもある。今回の収録作品は、「下水街が間に合わない」という理由で描かれた作品も多かったみたいだけど、その分発想が奔放というか好きにやってる部分もあって個人的には面白く読めた。

 こんな奇想があふれ、グロさとかわいさが共存し、なおかつラブラブであったりする作品を描ける人は、ほかにはちょっといない。それだけにこの人がブレーキ踏まないで描ける「フラミンゴR」がなくなっちゃったのは改めて惜しい。なんか作者あとがきに、フラミンゴは「一年なりニ年なり間を置いて復活させるつもりらしい」とあるけど、ホント、うまくコトが進んでほしいもんです。

【単行本】「視力矯正少女恋愛學」 へかとん 晋遊舎 A5 [Amzn]

 あー、へかとんの絵はいいなー。今回もヒロインさんは全部めがねっ娘で楽しいラブコメH漫画を展開。この人の特徴はやっぱ絵柄ですな。ライトでコミカルなタッチで、線が洗練されててすごくカワイイ。萌え系なんだけどベタベタしたところがないし、かといってオシャレすぎたりもせず暖かみがある。頭身縮めたチビキャラっぽく描くシーンもカワイイしー。なんかとてもセンスのいい絵柄だと思うんざんすよ。

 お話のほうも基本的には元気で明るく、さらに甘ったるくてラブラブなのが多い。その甘さが濃厚なんだけど後味は爽やか。エロシーンもライトな絵柄のわりにはちゃんとエッチ。淫靡って感じではないけど、ちゃんと勃つくらいのレベルは確保していると思う。個人的にはヌケるってほどではないんだけど、人によっては十分イケると思う。ツンデレ委員長女子、おっとりお姉さん、女性上司、妹系キャラ、看護婦さんなどなど、いずれもいい感じでかわいいですのう。なんとも見てて心地よい、好みな絵柄です。

【単行本】「もえねえ」 BENNY’S 晋遊舎 A5 [Amzn]

 「××ねえ」シリーズ第3弾。タイトルどおり、今やBENNY’Sが大得意とする年上のおねいさんものを揃えている。どの作品も安定してクオリティが高くていいです。おねいさんがさんざん年下男子に優しくしてくれる様子は、甘えたい願望を充足してくれるし、エッチシーンもしっかり。ふよふよしたましまろのごときおっぱい、ふくよかな尻、口の形をへろへろにして顔を真っ赤に染めた喘ぎ顔など、いずれも良い。あー、あとこの人の作品でいいのは、おねいさんたちの笑顔ですね。相手を包み込むような、いとおしさと慈愛に満ちててなんとも癒されます。

【単行本】「ES」 ICHI コアマガジン A5 [Amzn]

 絵がとてもエロいです。登場する女の子のうるんだ目つき、ぽっと染まったほっぺた、しっとり貼り付いてくるようなもちもちした肌の質感、肌をつたう汗……と、女体描写のクオリティの高さは初単行本とは思えないほどの達者さ。基本的には巨乳な女子が多めで、熱く火照った吸いつくような絵柄がエロ心をそそります。ストーリー面は弱いと思うんだけど、絵のエロっちさだけでも十分勝負できるものがあり。ちょっと長めの作品もやってみてほしい。

【単行本】「みにみみ」 LEE 茜新社 A5 [Amzn]

 ねこみみ、いぬみみ、ひつじみみ……と、みみの生えた女の子さんが出てくるロリ漫画にこだわるLEEの初単行本。作画はとてもぷにぷに感があって線もきれいで、女の子たちがすごくかわいいのが特徴。丸いつぶらな瞳も良いけど、甘えた感じの小さなおくち、無邪気なふるまいも見てて楽しく、この手のちんまりぷにぷに系のエロとしてはたいへんに完成度が高い。実用的かといえば自分は使わないですけど、こういう娘さんが好きな人だったら、あのちっこい口でぺろぺろされたり甘えられたりしてみてえ!と妄想を膨らませられるんじゃないでしょうか。なんかおうちに一人欲しくなるようなかわいらしさでございます。


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