オス単:2007年5月の日記より


 このページは、「OHPの日記から、その月に読んだ単行本の中でオススメのものをピックアップする」というコーナーです。文章の中身は、すべて日記からのコピー&ぺーストです。加筆・改稿等は原則として行っていません

 なお、ここで取り上げる単行本は「その月の日記で取り上げたもの」です。「その月に発売されたもの」ではありません。だから古い本でも入ってくることがあります。ピックアップした単行本は多少分類してますが、これはあくまでページを見やすくするための便宜上の分類です。かなり適当に割り振ってますのであんまり気にしないでください。あとシリーズものの途中の巻は、取り上げないことが多いです。


▼強くオススメ

【単行本】「まんが極道」1巻 唐沢なをき エンターブレイン B6 [bk1][Amzn]

 にゅーあきば.comでも紹介しましたが、これは面白かった。さまざまな漫画家およびその周辺の人たちの赤裸々な生き様を、ギャグにして笑い倒してしまおうという作品。「新興宗教にハマっちゃった少女漫画家」だの、「下書き状態を載っけちゃう人気作家」だの、業界的にヤバげなネタ、イタいキャラを使っていながらも、それが嫌味にならず、カラッと笑えるギャグになっているというのは素晴らしい。唐沢なをき自身が厳しいギャグ漫画の世界で20年以上バリバリやってきた凄い人なので、「この人がいうならしゃーない」っていうのもあるし、唐沢なをきの中で漫画家ネタがしっかりギャグとして昇華できてるっていうのも大きい。

 余談だけど、唐沢なをきがこれだけ長年、枯れることなくギャグ漫画の第一線にいられるっていうのは、発想力が素晴らしいってのもあるけど、それと同時にギャグの基本である「繰り返し」をしっかり身につけてるってのもあるでしょうな。昔ながらの唐沢ファンにとっては、けっこうおなじみの使い回しネタもあったりはするけど、毎回ちょっとずつ新味は加えているし、執拗な繰り返しで笑わせることもできる。まさに職人。うまいよなあ。

【単行本】「白いバラの乙女」 江平洋巳 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 これは面白かった。フラワーズで連載された、二人の女子の絆を美しく描いた女学園モノ。主人公の浜口美子はミッション系のお嬢様学校に通う高校3年生。作家志望であり周囲の女子を退屈な存在とみなしていた彼女だが、ある日、閉鎖中の旧講堂にて、学園の女王的存在である美少女・高宮月子と出会う。美子は月子に惹かれていくが、月子はそんな美子を突き放し、晒し者に仕立て上げて傷つけるという裏切り行為に出る。しかし美子は月子と関わろうとするのをやめず、また月子も美子によって鉄壁であるかのように思えた守りを突き崩されていく……。

 というわけで少女同士の青春物語が展開されていくわけだけど、その模様にピンと張り詰めたような雰囲気があってスリリングで面白い。美子もプライドが高いけど、月子はそれに輪をかけて高飛車。それに見合うだけの高貴な美しさも持っている。そんな二人がときに寄り添い、ときに反発し、お互いの心の繊細な部分に触れていく様子の緊張感にゾクゾクさせられる。とくに月子の、美しいけど冷酷でしたたかな振る舞いには目が吸い寄せられる。

 江平洋巳の、上品で清潔な絵柄も、女学園モノにすごく良く合っている。ストレートに「百合」というわけではないけれども、お互いを意識し合う二人の様子にそういうものを読み取ってしまう人も多いだろう。むしろストレートにお互いが好き合うよりも、緊張感あふれる対決の構図に、百合的要素を色濃く感じる人もいるかもしれない。なんといっても扉がページからして、二人が芝生の上で寄り添っているという構図だし。個人的には今までの江平洋巳作品の中ではこれが一番好き。


▼一般

【単行本】「えんまちゃん」 かがみふみを 双葉社 A5 [bk1][Amzn]

 人間界にやってきた閻魔大王の娘・えんまちゃんと、そのおともだちになった小学生の女の子・静ちゃんの仲良し物語。最初のうちは非常にほのぼの感たっぷりの小学生女子友情ストーリーとして進むが、お話が進むにつれ、えんまちゃんが任務を追えたら人間の記憶を消して帰らなくてはならないと判明し、だんだんお話は切なくなっていく。でもかがみふみをのかわいくてやさしい絵柄、お話作りもあって、最後は後味良くきれいに締めくくり。微笑ましくてちょっぴり泣かせる、いいお話に仕上がってると思います。この人はやっぱいいですね。

【単行本】「学園創世 猫天! 」1〜2巻 岩原裕二 秋田書店 B6 [bk1][Amzn]

 主人公・早川ユミは、私立叉美学園の新入生。この学校は全寮制だけど、入寮するときに猫を1匹連れてきていいといういっぷう変わった制度があり、ユミは愛猫の勘助と共に学校にやってきたのだが……といったところからお話は始まる。叉美学園の地には不思議な力が宿っており、その力を受けたユミと勘助は変身したりして、同じような力を持つ生徒会の面々&猫と一緒に、迫り来る敵と戦っていく。まあそんなわけで美少女+猫による、学園伝奇バトルアクションといった感じのお話。

 岩原裕二の絵柄は相変わらずキレが良くて力強さもあり見映えがする。アクションシーンもダイナミックで上々。まあ「普通の学園異能力モノ」とはいえるんだけど、キャラもかわいいし、カッコイイ味方&敵キャラもでてきてて、なかなか面白いしよくできてる。前作の「いばらの王」は、背景の描き込みが不足しがちで、舞台となる古城の構造が分かりにくくなったり、臨場感に欠けてしまった部分がけっこう見受けられたけれども、今回は学園モノなので校庭や図書館など、説明をあまり必要としない場所が多い。その点ではこちらのほうが単純明解で、分かりやすく展開していけそうな感じがする。

【単行本】「パパイヤ軍団★」 青木光恵 太田出版 A5 [bk1][Amzn]

 キャバクラ「パパイヤ」で働く女の子たちの生態を、楽しく描いたお話。一つ店で働いているけど、女の子によって性格や嗜好はさまざまで、百合系だったり、腐女子だったり、お母さん気質だったり。青木光恵の描く女の子のかわいさは定評があるところだけど、この作品でもいろんなタイプの女の子を、非常に楽しそうに描いている。あんまり泥臭くなることなく、明るく楽しく色気はあって、きっちり面白く読ませる作品に仕上がっている。出てくるキャラでは、フェロモン出しまくりで天然モテ系キャバ嬢のちえりと、ちえりにベタボレのツンデレ百合系キャバ嬢・美果のコンビが、見ていて面白かった。ちえりと二人のときの、美果のデレっぷりがカワイイ。

【単行本】「乙女学園血風録」1巻 小野寺浩二 少年画報社 B6 [bk1][Amzn]

 女学校に赴任してきたばかりの新任教師が、とにかく戦いまくりでムチャクチャな、理想とは激しく異なる学園生活を目撃していくというギャグ漫画。基本的に登場する女子はだいたいカワイイのだが、小野寺浩二らしく、ベタベタした恋愛モノやぐにゃぐにゃな萌え漫画とかにはならず、勢いで突っ走る痛快ドタバタ劇を展開する。メイン女子であることりは、最初っからビルの屋上から飛び降りてくるけどなんともないような頑丈キャラだし、そのライバルたちも人間離れ。お嬢様キャラも尋常でない札束攻撃を繰り広げてくるし、けたたましくお話は展開。まあいつもの小野寺浩二ペースではあるけど、女子ばかりということで画面はたいへん華やか。萌え系は意識しつつも、ヘンに物事を斜めに見たりせず、ニッチなオタクネタに走ることのない、正々堂々とした威勢のいいギャグは、相変わらずスカッとするものがあって気持ちいいです。

【単行本】「MONOクロ」 糸杉柾宏 秋田書店 B6 [bk1][Amzn]

 エロエロ系青春ストーリー。もともと存在感が薄かった少年・日下部九郎が、ある日、モノ(無機物)に乗り移ることができる能力を身につけてしまう。そしてその能力によって女の子たちのエッチなシーンを目撃してしまうのだが……というお話。「主人公が他人に意識されずにエッチなところを目撃しちゃう」という筋立ては、「Oh!透明人間」のような透明人間モノと共通しているが、モノにのり移った後は主人公は能動的に動けないというのが透明人間とは異なる点。とはいえだんだん乗り移る対象がただのモノではなくなっていくので、自分から動くシーンも増えたりはしますが。

 糸杉柾宏はエロ漫画も描いていた人だけあって、エッチなシーンの描写はさすがに慣れたもの。華やかな絵柄だし萌えもちゃんとある。一般誌としては露出度が相当高めで、十二分にエッチな部類の作品といえる。まあそんなわけでサービスたっぷりで、スケベ男子にはしっかり楽しめる。あとラストのちょいシリアスなストーリー展開もまずまずの盛り上がりを見せていて、全1巻でよくまとめてあると思う。


▼エロ漫画

【単行本】「大妹」 和六里ハル コアマガジン A5 [Amzn]

 にゅーあきば.comのレビューでも紹介したとおり、これはオススメ。表題作の「大妹」シリーズ全6話と短編を4本収録した作品集だが、とくに「大妹」は良い。体のあちこちがででーんと育っちゃった妹が、ちっちゃくてかわいいお兄ちゃんに欲情しまくって、エロいことをしかけまくるという内容のドタバタエロコメディ。お話がカラッと明るくて楽しいだけでなく、甘ったるくラブラブでもあり、エロエロでもあるという充実した一品。

 大妹シリーズでは、まず最初は妹のほうがえらく積極的。普段からお兄ちゃんをオカズにオナニーし、彼が入浴すると聞いてよだれを流して欲情、風呂場に乱入して兄をかわいがりまくりヌキまくる。そこから堰を切ったように毎日やりまくっていく様子が描かれていくのだが、その日々がドタバタ感に満ちていてとても楽しい。またエロシーンも濃い。ページ数のかなりの部分がエロシーンに費やされており、大妹の肉体の豊満さもあいまって、ボリューム感満点。

 エロシーンは、配分が多すぎるとお話のほうがおざなりになりがちではあるけど、この作品についてはお話のほうもすごい動きがあるわけではないながらもちゃんと楽しめるように作ってある。後半に行くに従って、兄が妹への愛を開けっぴろげにするようになり、攻守逆転とまでは行かないまでも、ガンガン責めるようになっていく様子も良い。ラストシーンの甘ったるい〆といい、ラブラブで後味が良い。作者あとがきによると「男性キャラ受け」は苦手らしいんだけど、なかなかどうして、いい作品に仕上がってると思います。

 あと短編4本もそれぞれ楽しめる。とくにかわいい少年がSっ気のある彼女によって女装を強いられ、町中を引き回されてエロいことされるという「女の子男のコ」なんか、キャラがかわいくて華があってたいへん良い。この人は絵がかわいくて遊び心もあり、エロもきちんと濃厚に展開している。エロくてキュートでエンターテインメント性も高い。本当によくできてるなと思う。そういえばこの単行本でちょっと驚いたのが、カバーめくった中表紙もカラーなんですよね。コアマガジン系の単行本は装丁凝ってるのが多いけど、これも頑張ってるなあ。売れるわけです。

【単行本】「たくらまかん展覧会」 田倉まひろ ヒット出版社 A5 [Amzn]

 阿ウンで活躍中の田倉まひろの初単行本。この人は雑誌掲載時からけっこういいな〜と思っていたが、まとめて読んでみてもやっぱり面白かった。ドタバタした雰囲気で明るくお話を進めて、きっちりエロに落とし込む手際はなかなかのもの。テンション高めなギャグをこなしつつも、エロ度も両立できているのが良い。絵柄的には、作者は三白眼娘が好きらしいけど、それ以外の娘さんたちも問題なくかわいい。ぐりぐりした目つきの娘さんたちはカワイイし、ちょいとオーバーなくらいの赤面の表情がまた良い。

 お話的には一番気に入ってるのは、プライドの高いお嬢様がわりと良くツルんでる男子の部屋に押しかけ女房的にやってきては、マズい料理を食わせまくるというドタバタコメディ「お嬢様3分クッキング」。お話のテンポが良く、絵に描いたツンデレなお嬢様のキャラも賑やかで良い。エロシーンについても、デコなめ→パイズリ→セックスとさほどページ数は長くないながら、きちんとバリエーションを設けている。あと最後のオチもベタながら、主人公のコミカルな表情で笑わせる。ここらへんの笑いのセンスは良いと思う。

 「すきスキSCREAM SHOW」は、やたらめったら愛の告白をしてくる幼なじみ男子と、それに照れまくっているちびっ娘女子のラブラブH漫画。こちらもベタベタ甘ったるい味付けがなかなか。巻頭の「Open Success」はちょいぶっとび系作品。ヒロインがものすごく恥ずかしがり屋なんだけど実は……ってな感じで、意外すぎる真相が飛び出てくるという漫画。ヒロインの派手な羞恥の表情がええです。そのほかの作品も良い出来で、けっこう気に入りました。

【単行本】「けっこう好きかも」 イソラシ コアマガジン A5 [Amzn]

 目の描き方がくりっとした絵柄が特徴的なイソラシの初単行本。明るめなハッキリした絵柄で、パッと目を引く華やかさがある。お話のほうはドタバタギャグあり、ロリあり、ショタありだけど、基本的には十代から二十代くらいがヒロインで、極端なロリとか、熟女系とかは少なめ。個人的には何かと張り合う双子エロ看護婦がヒロインの「ツインズ・パニック!!」あたりが気に入った。ヌキ系という意味ではちと弱いかと思うけど、作風は明るくカラッとしてて、鬼畜な話とかはなく、楽しんで読んでいける1冊といえる。

【単行本】「突撃となりのお兄ちゃん」 LEE 茜新社 A5 [Amzn]

 COMIC RINで活躍中のロリ系作家、LEEの2冊め。この単行本はちょっと昔の作品が中心。最近は、口のあたりを中心に絵柄がより小動物っぽくなってきているけど、このころはまだそこらへんは顕著になっていない。でもまあ丸っこい顔つきのぷにぷにくりくりした幼女さんたちはこのころから申し分なく可愛く、殺伐としたところのないほのぼのエッチストーリーは安心感もある。今回の収録作品の中では、表題作「突撃となりのお兄ちゃん」の八重歯少女がとくにかわいいなーと思った。

【単行本】「だいすき!ご主人様」 犬星 ヒット出版社 A5 [Amzn]

 華のあるキュートなロリ絵が特徴。わりと猫耳娘が多めでまとまりの良いロリエロ漫画を展開している。お話的な濃さはさほどではないものの、きっちりまとまってて楽しく読んでいける。基本的にはラブラブなお話が多いけど、しつこくなりすぎずスッキリ感があるのは美点。少女さんたちにあんまりキッツい行為を課したりしないのも安心して読めるポイント。あと、ごりごり描き込むわけではないものの、ちんこさんの形もつるんとしたフォルムからまずまずエロさを発揮しており上々。自分のヌキのツボとは外れるんだけど、よくできてると思います。

【単行本】「初犬2」 犬 一水社 A5 [Amzn]

 昨年エロ漫画好きの間で好評を博した「初犬」の第2弾。というか「ストレンジ・カインド・オブ・ウーマン」シリーズの続き。前単行本ではお話が途中で終わり、残りはその他の短篇が収録という、ちょっと不完全燃焼な内容だったが、今回はまるまる「ストレンジ・カインド・オブ・ウーマン」と、その続編の「ストレンジ・カインド・オブ・ウーマンズ」。ただ途中までしか収録されていないというのは前単行本と同様。

 で、お話のほうを改めて説明すると、無口で何もいわないけど実はエッチな娘である藤乃さんと、そのクラスメート男子である深谷君のラブラブエッチ物語。最初は電車内での痴漢もどきプレイから始まった二人だが、体を重ね合ううちに、その距離をどんどん縮めていく。でも藤乃さんは全然口をきかないので何を考えてるかよく分からず。そこに深谷の昔の彼女であるマッド・サイエンティスト娘の三田さんもからんできて、三角関係バトルロイヤル……という感じになる。

 とにかくこのシリーズの肝はヒロインである藤乃のキャラ。無口だけどキュートですごくエッチ。ぷにぷに柔らかそうな肉体を駆使して激しく執り行われるエッチシーンはかなり汁気たっぷりで、とても気持ち良さげ。ちんこがじゅるじゅるした暖かげな液体に包み込まれ、もちもちした肉が吸い付いてくるようなエロシーンはなかなかのもの。また藤乃さんはエロシーン、普段シーンともに表情がたいへんかわいらしい。まあ異論はあるかもしれませんが、「涼宮ハルヒ」シリーズの長門さんを、乳デカくしてエロくしたみたいな感じもするキャラですな。藤乃はあっちよりもっと喋らないけど。

 たいへん絵柄がキャッチーで確かにこれは売れるだろうというのはよく分かる作品。ただストーリー面の構成については、正直なところちょいと弱いかなあという気はしてしまう。途中までしか収録されてないので尻切れとんぼ気味に見えるというのもあるけれど、三田さんのキャラも藤乃に比べるとやはりちょっと弱いし、深谷にももう少し物語を引っ張っていく力は欲しい。要するにこの作品は、「藤乃というキャラを作った」というのが成功の要因なんだけど、それ以外のプラスアルファがまだあまり出て来ていない。連載を続けていくならば、もう一段、ロケットを噴かしてほしいところではある。

【単行本】「しちゃう?」 DISTANCE ジェーシー出版 A5 [Amzn]

 DISTANCEを単行本で読むのは久しぶりかな。主な活動場所が自分の購入雑誌から外れていたこともあり、実力ある人だとは分かっていつつも、あんまり購入には至っていなかった作家さん。お話的にもものすごく面白いモノがあるというタイプでもないし。ただその巨乳がぶるんぶるん揺れるエロシーンのボリューム感は素晴らしく、実用度は折り紙付き。乳揺れシーンの迫力、躍動感は相当なモンです。これだけデカい乳ぶらさげてるわりに、意外とパイズリシーンなどが少なめなのは個人的にはちと残念なところではあるけれども、巨乳でスカッとヌキたいって人にはたいへん使い勝手が良い。あとラブコメの腕前も上々で、毎度クオリティが安定しているのも美点。

【単行本】「生ママしぼり」 内々けやき 富士美出版 A5 [Amzn]

 パロディ系でないエロ漫画単行本はこれが初でしたっけか。ちょいと大石まさるに似た感じのタッチで、なかなか艶っぽい作品を描く人。最近は巨乳人妻系、年上系な作品が多いけど、肉感たっぷりなタッチと描くキャラが良くマッチしていて、エロっぽい雰囲気を醸し出している。乳のフォルムは、よく見ると意外と線が固いかなとは思うものの、全体が前述したように大石まさるに似た、暖かみがあってボリューム感のあるタッチなので、全体的にはかなり見映えがする。女性キャラのほてったあえぎ顔も上々な色っぽさ。

 ストーリー的には人妻輪姦や、スワッピング、兄妹など、ハード系からコメディっぽいのまでいろいろ。パロディものでも単行本を出していただけあって、いろんなパターンに対応できる器用さは感じる。それだけに、叙情系でいくのか、実用系でいくのか、ドタバタ系でいくのか、路線に悩むところではあるかもしれない。

【単行本】「笑って♥ぶたぱん」 白井薫範 桃園書房 A5 [Amzn]

 なんでこれが今ごろ単行本化されるんだろう……という作品ではあるけれど、今改めて読んでみてもすげー。連載されたのは1998年、コミックフラミンゴ。と書いただけで分かる人には分かるだろうけど、このころはフラミンゴがスカトロ、ボンデージ、調教など、物凄い勢いで突っ走っていた時期。その中でもこれはかなりの存在感のある作品だった。「現在この作品を載っけられる雑誌ってあるかな……」とちょっと考えてみたが、正直全然思い浮かばなかった。あの時期のフラミンゴだったからこそ出てきた作品といえる。

 お話のほうは、デブい女子高生が、サディスティックな年下のお嬢さんに豚として調教されるというもの。もう第1話のタイトルページからして、主人公・下端木双乃が、雪の日に野外で排尿&脱糞している見開きからスタート。双乃は毎晩人が寝静まったころ、半裸になって額に自ら「牛」と書き、オナニーするという性癖があったのだが、そのような奴隷気質に目をつけた女の子・きつねが、双乃を自分のものとして調教を開始する。

 その調教もまあ実にヒドくてですな、肉ビラにハートマークの穴を開けてそこに錠前をハメられたり、おしっこ呑まされたり、うんこ食わされたりとベリーハード。でもこの作品の凄いところは、双乃さんが本当になんでもありで、そういう扱いを嬉々として受け入れてしまうこと。その恍惚とした表情は本当にゾクッとくる凄みがある。あと躾は厳しいながらも、御主人様であるきつねにちゃんと愛があるのも素晴らしい。別に憎いからイジめてるわけではなく、趣味が似通っていて、需要と供給がピッタリ合致しているからこその行為なんですよね。最後のほうは奇妙な形ではあるものの、二人は案外ラブラブなようでもあったりして、「すごい世界だ……」と感動さえしてしまう。

 白井薫範の絵柄は最近の美少女漫画的ではないものの、独自のスタイルがものすごくしっかり確立した人なので、今読んでみても古さは感じない。改めて自分の日記とか見直してみて、「そういえば10年近く前だったんだ」と思ったくらい。まあとにかくアクはものすごく強くて、読む人を強烈に選びまくる作品なので、耐性のある人にだけオススメします。とりあえずうんこくわえるでぶ女の図が大丈夫な人だけ読んでみてください。


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