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「串やきP」 メディアファクトリー A5

「串やきP」  コミックフラッパー(メディアファクトリー)掲載作品。

 新たな安住の地を求めて、家族の待つ北極を離れ、海へ出ようとしたオオウミガラス。だが海は甘くなく、シャチに追われた彼は、ほうほうのていで日本のどことも知れぬ岸辺に流れ着く。その後、アワビ密猟帰りのあやしい人間の女に囚われたオオウミガラスは、羽の部分にペンギンの剥製の羽を装着され、「変なペンギン」として生きていけといわれる。オオウミガラスとしてのアイデンティティを失い、家族のもとへは帰れない。失意の彼は、やがて動物好きな兄妹に拾われ、「串P」という名前をつけられペンギンとして暮らしていくようになる……。

 とか書いちゃうとタダのかわいそうなペンギンの話みたいなんだけどね。これがまたやっぱりフツーのお話に終わらるわきゃないのがSABEってもんで。オオウミガラスとして生きることができなくなった串Pは、生きていくうえでの目標を失い、ただ闘うことのみに生きがいを見出す者へと変貌していく。んでもって、付近のペットたちを植えつけられた羽で斬殺する、破壊者となっていくのだ。デパートの屋上のオーストラリア展で日本に連れられてきたカンガルーとの息を飲む凄絶なバトル。なんとまあ、これがどうやら動物格闘モノとして進んでいってしまうのだ。

 この作品において特筆すべきは串Pの目。いかにもペンギンでございといったかわいらしさはなく、光を失い常に血を求めてギョロギョロしている。ペットのくせにこれだけテンパッてるっていうのはかなりな迫力だ。それから最初に出てきた密猟女。これもかなり動物に対して歪んだ感情を抱いているようで、串Pが戦闘マシンとして目覚めていくのをうれしそうに見つめる目つきはかなりヤバい。ちなみに串Pの飼い主である兄妹もそれぞれにヘンで、とくに兄のテンションの高さはかなり異様である。

 これ書いている時点ではまだ1巻段階なのだが、これからどんなふうに串Pは闘っていくのか、そして異様な世界を見せてくれるのか。とても楽しみである。

ISBN初版年月日価格購入
1ISBN4-88991-767-5 C99792000/12/01762円+税[bk1][Amzn]
2ISBN4-88991-799-3 C99792001/09/30762円+税[bk1][Amzn]