吉田戦車 書籍リスト

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「吉田自転車」 講談社 四六判 [Amzn]

「吉田自転車」 ■巻数:全1巻
■本体価格:1400円
■初版:2002/07/10
■ISBN:ISBN4-06-330163-X C0979

 吉田戦車が2001年9月12日から2002年2月11日にかけて、Web現代で連載したイラスト&写真入りエッセイをまとめたもの。内容は主に、吉田戦車が自転車に乗って、近所や、やや遠いところまで行ったりする日常を淡々と語っている。吉田戦車の言葉遣いのセンスについてはいつも感心しているし、けして小さくない影響を受けている俺だが(←ちなみにこういうときに「俺」という一人称を使うのも、吉田戦車の文章の影響が多少ある)、今回の単行本についてもしみじみいいなと思った。一般的に見て美文といえるかどうかはよく分からないけれども、吉田戦車の文章はやっぱり味がある。なんでもない日常的なことを書いてるのに、けっしてベタベタしたりジメジメしたりせず、なんかほのかに楽しくなってくるおかしさが漂っているのがいい。あと食い物の描写とかも好きで、立ち食いそばだのうどんだの、別段グルメってわけでもない日常的なちょっとしたうまさとかが思い浮かべられる。地味に面白い一冊。
(2002/07/15)


「たのもしき日本語」 角川書店 四六判 [bk1][Amzn]

「たのもしき日本語」 ■出版社:角川書店
■初版発行:94/01/31
■ISBN:ISBN4-04-883357-X C0095
■価格:1600円(1994年1月現在)
■判型:四六版・モノクロのみ

 川崎ぶらと組んでいろいろトークするというコラム連載。毎回毎回一つの語を取り上げ、日本語、さらにはロシア語やフランス語などのたのもしさを確認しあうというもの。取り上げられる語は日本語編ではアイウエオ順で進んでいったが、外国語編になってからは思いついたものを採用という感じになっている。
 この本を読むと、吉田戦車の言語感覚の鋭さが伺いしれる。そして、この二人の軽妙な語り口がたまらない。例えばこんな感じだ。

戦車●ほほう、膝を打たせてもらうよ。
ぶら■ああ、ポンと打ってくれ。
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ぶら■(中略)実際にお便りが来たかどうかは訊かないでくれよ。
戦車●ああ、訊くまいよ。
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ぶら■今回は熱を帯びた話がいつもの倍ほど続いた気がするな。
戦車●質、量ともにな。ここちよい疲れは終わりのない歌を歌った後のようさ。
ぶら■終わりのない歌の後か。次回もひとつ歌うとしよう。
戦車●永久に続く散文詩のようにな。

 そして、言葉のセレクションも実に味わいがある。吉田戦車の気になる言葉のセレクションには前から注目していた。「なんとか・ド・なんとか」の「ド」とか、当たり前に使っているのだけど、復唱してみるとなんとなくヘンな感じがする語の見つけ方がうまい。「おてんば」という語の語源がオランダ語の「オンテムバール」だというのを読んだときはなかなかショックだった。


「失敗成功中ぐらい」 角川書店 四六判 [bk1][Amzn]

「失敗成功中くらい」 ■出版社:角川書店 ■初版発行:96/10/31
■ISBN:ISBN4-04-883457-X C0095
■価格:1500円(1996年10月現在)
■判型:四六版(127×188mm)・モノクロのみ

 「たのもしき日本語」の続編的な作品だが、前作よりもパワーが落ちている感じがする。その主たる原因は、なんといってもコンセプトの不明瞭さにある。さまざまな成功と失敗と中ぐらいについて語っていくわけだが、「たのもしき日本語」では「言葉」というコアがあったのに対し、こちらではコンセプトがあいまいになってしまっている。川崎ぶら、吉田戦車も本の中でいっているが、「たのもしき日本語」ほど話が盛り上がらず、そのためこの二人のトークの特徴である軽妙さもイマイチすべり気味になっている。

 ところで、これは「たのもしき日本語」でも同様なのだが、本文中に差し挟まれる、吉田戦車のラフスケッチというか話しながら描いた落書きがなんだか実に味があって見ていて楽しい。