天竺浪人

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■作家名:天竺浪人(てんじくろうにん)
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【単行本】「BLIND」 天竺浪人 ワニマガジン A5 [Amzn]

「BLIND」表紙 シリーズ:WANI MAGAZINE COMICS SPECIAL
初版発行:2002/09/15
ISBN:ISBN4-89829-476-6
価格:905円+税

 激漫および商業誌未発表作品を収録した短中編集。これはかなりいい。一本一本のページ数が短編というには多めなのでかなりボリューム感があるし、内容も天竺浪人らしさが遺憾なく発揮されたダークなものとなっていてかなり楽しめた。

 例えば、さまざまな男とつき合って飽き果てた女が不細工な男とある日突然結婚し、その中で目隠しをした状態でのSEXの魔力にズルズルと引き込まれていく「BLIND」なんかは、視覚情報が閉ざされ周囲の状況が曖昧になっていく過程の描写がとても巧み。そして今描かれていることが現実なのか、主人公の女性の妄想なのか、彼女を抱いているのは果たして誰なのか、だんだん判然としなくなっていく様子はエロチックでもありミステリアスでもある。

 また自宅にクラスメートから送られてくるエロビデオにより、イジメられっ子が追い詰められていく様子を描いた「END」なんかも緊張感にあふれた秀作だ。最初はあまり彼に関係ないクラスメートの凌辱シーンから始まり、担任の先生、そして彼が好きだった女の子……とエスカレートしていく様子は真綿で首を絞めるようだし、輪姦している側もクラスメート男子であり彼はその仲間からは外されているという状況によりイジメられっ子の孤立感を際立たせていくという手法もねちっこい。しかもビデオの中で散々馬鹿にされながらも、それを見てヌイてしまうという屈辱。「無修正エロビデオ、しかも超ハードなものが送られてくる」という本来なら嬉しいはずの状況を、人間を追い詰めるためのアイテムとして使っちゃうという発想は面白いしそのアイデアの調理の仕方も非常にうまい。

 一本ごとのボリュームもあってお話としても読みごたえ十分だし、意外と高い実用性、ダークな読後感なども刺激があって良い。天竺浪人の技量の高さを再確認させてくれる1冊。
(2002/09/06)

▼収録作品……( )内初出
「BEHIND」 (単行本用描き下ろし)
「BLIND」 (激漫 2000年 Vol.25)
「SPELLBOUND」 (激漫 2000年 Vol.26 / 旧題「疵−きず−」)
「RED」 (激漫 2000年 Vol.27)
「END」 (商業誌未発表作)
「笹暮草」 (激漫 2000年 Vol.25〜27)