天竺浪人
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■作家名:天竺浪人(てんじくろうにん) ■作家名でオンライン書店を検索: Amazon.co.jp
「LOVE BITES」 全1巻 三和出版 A5 [Amzn]
初版発行:2002/08/10
ISBN:ISBN4-88356-128-3
価格:1143円+税
収録:「裏口」全10話(初出:アイラ vol.8、10〜15、17〜19/2001年6月〜2002年5月発行)
これはすごく面白かった。ひとことでいえば、愛と肉欲のアンバランスが生み出した、いびつに歪んだ家族のドラマということになる。若くて美人の母・美咲は、双子の息子の片方キヨシは普通の恵まれた少年として育て、もう一人であるツヨシを小学生ながら自分のアナルを掘らせるための肉人形として仕込み、彼は自分のアナルから生まれてきた息子として貶めながら育てている。自分をメスブタと罵らせスパンキングをさせ、それが満足にできないようなら容赦なく殴る蹴るといった虐待を加える。彼女をそのような行いに走らせたのは、学生時代に同級生から肉便所として扱われていた経験と、勃起不全の夫の存在だった。
過去の記憶を嫌悪しつつも、熟れた身体はその刺激が忘れられない。しかもそうやって虐待されていた環境に救いの手を差し伸べてくれた夫への愛は存在し、欲情との間で板挟みとなった彼女は、自分の想念の中で「自分を思うさま蹂躙するもう一人の夫」を作り上げてしまう。そして夫のほうも妻の肉体を満足させられないことで、自分を苛み続けている。そんな状態で虐待されている息子・ツヨシは肉棒で母の尻を征服することを共用され、父母は愛し合いながらも狂気の度合いを強めていく。むしろかやの外に置かれているのは、健全に育てられているはずのキヨシともいえる。
まずはツヨシとキヨシという双子の少年が恐ろしく対照的に扱われる序盤のインパクトは強烈だし、美咲のエキセントリックな行いを見せつけたうえで、その奥に潜むものを徐々に解き明かしていく展開は読む者を物語にぐいぐい引き込んでいく。最初は影が薄いかなーと思われていた夫の存在もだんだん重要性が増していき、愛と狂気が重なって悲劇的で刺激的な物語を構成している。関わった者たちを暗闇の中に引きずり込むかのような満たされない虚無って感じの雰囲気作りは見事だし、全10話の各話にそれぞれインパクトがあって読みごたえバッチリ。重さ、暗さ、妖しさを湛えた天竺浪人らしい一作。
(2002/06/30)