天竺浪人
「NIGHT GALLERY」
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「NIGHT GALLERY I 桜色の肖像」
- 出版社:コアマガジン
- シリーズ:HOT MILK COMICS 115
- 判型:A5
- ISBN:ISBN4-87734-351-2 C0979
- 価格:本体1000円+税
- 初版発行:2000/04/17
- 収録……( )内初出
- 「桜の木の下で」前編/中編/後編(ホットミルク 1994年5〜7月号)
- 「夜の絵」前後編(ホットミルク 1995年5〜6月号)
- 「誘い」(描き下ろし)
- 「LONG COLD WINTER」前後編(ホットミルク 1993年3〜4月号)
- 「雨の朝」(ホットミルク 1996年4月号)
1994〜1996年発表のタイトルを収録した作品集。
この中での注目は、全3話の「桜の木の下で」。魂を抜かれたようなありさまで桜をみつめている青年が、盲目の画家に呼び止められ、彼の身の上を語るところから物語は始まる。この青年は、以前、桜咲く季節に公園で全裸で倒れていた少女を拾う。彼女を自分のアパートに連れて帰った彼は、その少女の美しさに魅了され、献身的に彼女の世話をするようになる。ミステリアスな少女に心奪われた彼は、彼女を手離すことに耐えられなくなっていく……といった感じでお話は進む。散る桜のごとき妖艶な少女の美しさと、男の妄執が、鮮やかなコントラストをもって描かれる佳作である。
「LONG COLD WINTER」は、とある男と付き合うようになった沢口瞳という少女、そして「薊の子ら」でもけっこう味のある脇役として登場していたツッパリ少女の松本理奈の、消えない古傷を描く。これを読むと「薊の子ら」における松本の行動についての理解も深まるはず。
そのほかでは「雨の朝」の陰鬱で、終わりのない息苦しさも、深い苦悩が渦巻いていて読みごたえあり。
今回収録された作品群は、今まで待ち望まれつつも単行本化されていなかったあたりなので、これでだいぶ喉のつかえが取れたような気分である。
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