山本直樹
ありがとう
小学館 全4巻
価格:
本体485円
判型:
B6
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巻数
ISBNコード
初版発行
1
ISBN4-09-183501-5 C9979
94/12/01
2
ISBN4-09-183502-3 C9979
95/02/01
3
ISBN4-09-183503-1 C9979
95/05/01
4
ISBN4-09-183504-X C9979
95/08/01
まずはここに貼った画像を見てほしい。トップページでちょっと述べた、同じような無機質な家がダーッと並んでいるというのの一例がこの表紙である。このCGを使った手法は本編でも各所で使われていて、効果的な役目を果たしている。
ストーリーとしては以下のような感じ。 母、姉、妹の3人が暮らす家庭を不良が占領し、一日中姉を凌辱し続けている。母はその現実のすべてに心を閉ざすように何ごとにも無反応、妹は我関せずという冷たい目でそれを横目に見ている。そこに、単身赴任で長らく不在だった父が帰宅する。いろいろあって、なんとか不良を撃退する父だったが、長らく父不在だった家庭には外敵以上の深い病根が巣くっていた……。
この「ありがとう」はビッグコミックスピリッツで連載された作品で、始まってしばらくどんどんハイテンションで飛ばしていって、「この先どうなってしまうのだろう」とドキドキしたものだ。導入部、いきなり凌辱されまくっている姉、不良たちやそれを撃退しようとする父の容赦ない暴力。どこまでエスカレートするか、って感じだった。
その嵐が過ぎた後、物語は表面的には静かになるが、家庭はじょじょに崩壊していく。家庭内のお互いの感情の行き違いが頂点に達したとき、父はついに家庭解散を宣言し、家族はそれぞれに別の道を歩んでいく。
父親不在、見せかけの団らんといったことが象徴する、現代社会における家庭の問題を描いた……などというと陳腐なになってしまうが、そんなことは置いといてもまあ楽しめる。
とくにラストシーン、父の臨終シーンは泣ける。最後の数ページは小津安二郎の映画からセリフを借りてきている。これを安易と取る人もいるかもしれないが、感動的だったという面において効果はあった。そして、効果があるのならなんでもありだ、と俺は思うのだ。