フラグメンツの表紙だよん 山本直樹

フラグメンツ

小学館 1〜4巻

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 表題作「フラグメンツ」は親の借金のため、とある町の町長のところに売られた女子高生のお話。その家で町長のメイドをしながら、町長とセックスしたり、その息子を誘惑してみたり。いろいろなことが起こりながらも、日常はどこか遠いところで過ぎていく。何が面白いのか、というと語りにくい。この淡々と、いやらしく、どこか静かに狂った感じで進んでいくストーリーの中に身を任せて読むといいのではないだろうか。

 また同時収録作品も面白い。
 1巻収録の「夕方のおともだち」は、どんなプレイでもOKな超人的なM(マゾ)男が主役。ちんちんをカミソリで切ったり、口の中でガラスをかみ砕いたり、石抱きしてみたりと本当に痛そうで豪快なほどのプレイがすさまじい。2巻収録の「世界最後の日々」は、1997年7月「世界がもうすぐ滅亡する」とカミサマが目の前に出てきて語りかけるのを「見えるようになってしまった」少年が、「それなら自分の好きなように生きる」と決め、好きな女の子をさらってどこかへ行こうとする。後がないもんだから、邪魔な人間も容赦なく殺す。でも少年は、そのカミサマなどが自分の妄想の産物なのか、現実なのかがよく分からなくなってくる。というか元から分かっていないのだけど。現実と非現実の境目で読者を幻惑する作品だ。

●第3巻(98/08/30)
 3巻ではすでに初期の登場人物である、町長一家と妾は登場せず、「山本直樹がスピリッツ系の雑誌で発表した短編を集めたもの」という色彩がさらに強くなっている(っていうかもともとそういうコンセプトのシリーズなのだろうけど)。
 感心するのは、これだけの人でありながら、さらにまた絵がうまくなっていること。線がますます細く、余分なものを削ぎ落としたスタイリッシュなものになっていること。このシリーズは全体にそうだが、装丁も非常にオシャレだが、表紙のイラストもむちゃくちゃかっこいい。
 収録作品に関しては、今回はわりと地味。ズガーンと派手なことをやっている作品はなく、力をぬいてゆらゆらと漂っているような味わいがある。熟練の味という感じ。このけだるさに身をまかせて、ふわふわしているとなんだか非常に気持ちがいい。

●第4巻(2003/06/15)
 内容のほうはいつもの山本直樹節。現実と非現実の境界線をあいまいにするような、ゆらゆらとした雰囲気の短編がまとめられている。とてもクールな山本直樹ならではの作風には毎度のことながら惚れ惚れ。作品のありようがたいへん美しい。それにしても山本直樹の描く女性はスタイルがいいなあ。キュッと細くて、胴回りとかがすごくきれい。身体のしなやかなラインとか本当に色っぽいし、立ち姿も凜としてカッコイイ。本来は乳の大きめな肉感的な女性が好みな私ではありますが、山本直樹の描く女性を見ると「こういうのもまたオツなものですな」などと思わせられる。たとえだらしない姿を描いてもそのだらしのなさが絵になってる。怠惰でだらだらした日常のほかの行為との境目がどろどろに溶けてしまったようなセックスシーンを描かせたら日本一。やはり異能の作家だなあと痛感する。まあそろそろまたこういう洗練された作品だけでなく、暴れん坊な作品も読みたいところではあるけれども。


第1巻
ISBN:ISBN4-09-179281-2 C0079 価格:本体1200円
初版発行:97/03/20 判型:A5 モノクロのみ

●収録
タイトル初出
フラグメンツ
 雪子さん1996年ビッグスピリッツ2月増刊(2月8日号)
 夕ごはんから朝ごはんまで1996年ビッグスピリッツ4月増刊(4月11日号)
 料理屋の息子 前編1996年ビッグスピリッツ5月増刊(5月25日号)
 料理屋の息子 後編1996年ビッグスピリッツ7月増刊(7月11日号)
夕方のおともだち
 前編1995年ビッグスピリッツ10月増刊(10月12日号)
 中編1995年ビッグスピリッツ11月増刊(11月9日号)
 後編1995年ビッグスピリッツ12月増刊(12月14日号)

第2巻
ISBN:ISBN4-09-179282-0 C0079 価格:本体1200円
初版発行:97/09/20 判型:A5 モノクロのみ

●収録
タイトル初出
フラグメンツ
 アナログ温泉1996年ビッグスピリッツ1月増刊(1月3日号)
 肉彦くんとせんせい1996年ビッグスピリッツ13号(3月18日号)
 隣町から来たスパイ1996年ビッグスピリッツ11月増刊(11月24日号)
世界最後の日々
 出発1996年ビッグスピリッツ10号(2月24日号)
 コンビニ1996年ビッグスピリッツ11号(3月3日号)
 川1996年ビッグスピリッツ12号(3月10日号)
 パーティー1996年ビッグスピリッツ13号(3月17日号)
 世界最後の日1996年ビッグスピリッツ14号(3月24日号)

第3巻
ISBN:ISBN4-09-179283-9 C0079 価格:本体1200円
初版発行:98/09/20 判型:A5 モノクロのみ

●収録
タイトル初出
この町にはあまり行くところがない1997年ビッグスピリッツ4月増刊(4月27日号)
小指の思い出1997年ビッグスピリッツ34号(8月11日号)
ASPHYXIA1997年ビッグスピリッツ41号(9月29日号)
みはり塔1997年ビッグスピリッツ46号(11月3日号)
奥さん、いいじゃないですか1998年ビッグスピリッツ11号(3月2日号)
ぽつん1998年ビッグスピリッツ18号(4月20日号)

第4巻
ISBN:ISBN4-09-179284-7 C0079 価格:本体1300円
初版発行:2003/07/01 判型:A5 モノクロのみ

●収録
タイトル初出
悪霊のすべて1996年ビッグコミックスピリッツ21(9月5日号)
日々の泡1998年ビッグコミックスピリッツ(4/27 No.19)
FINE GIRL ファインガール1998年ビッグコミックスピリッツ増刊Manpuku(6月1号)
ビデオを見る1998年ビッグコミックスピリッツ(6/22 No.27)
夜組み NIGHT SHIFT1998年ビッグコミックスピリッツ増刊Manpuku(9月17日号)
1999年ビッグコミックスピリッツ増刊Manpuku(1月14日号)
明日また電話するよ2000年ビッグコミックスピリッツ増刊Manpuku(6月1日号)
田園2001年ビッグコミックスピリッツ増刊 山田3号(9月1日号)
Cl22002年ビッグコミックスピリッツ増刊 山田4号(1月17日号)
渚のアルバム2002年ビッグコミックスピリッツ増刊 山田5号(6月7日号)