アダルト・キッズ

玄田生
ワニマガジン


 

 「青年の性的闘争」「天使の暴走」に続く、玄田生名義での3冊目の単行本。なぜか青年指定ではないが、内容は俗にいう「エロ」もの。「エロトピア」に掲載された作品が中心。

 この人の作品の偉いところは、世間一般の「エロ漫画」のフォーマットに安易に引き込まれることなく、男女(そうとも限らない場合もあるが…)間のこころの惹かれあい、または反発しあいを描いていることである。現実にはありえない、「こんなのありかよ」というシチュエーションは、漫画だからこそ許される表現であるがゆえに、あまり否定するつもりはない。超ロリロリとか、ってのもまた然り。しかし、そうしたものが、一つのジャンルになってしまって、一般性から遊離してしまっているのもまた事実であろう。特にアニメアニメした絵柄のものが。玄田生の漫画は、そうした要素もないわけではないが、惹かれあいとその結果としてのセックス(またはその逆のセックス)を描いているため、一つのジャンルに自閉することのない、開かれたものになっている。そしてそれは人間のファンダメンタルな部分に訴えかけるため、エロ漫画のフォーマットや読み方を知らない人に対しても、強い感動を与えるものとなっている(または、凄く嫌な感じを与えるものと)。現在着々と増えている、人間存在そのものに訴えかける漫画と、同じ文脈で語ることができる、または、その文脈で語らなければならない漫画が、玄田生の漫画なのである。

 セックスとは惹かれあいなのである、ということを再確認できるという点だけでも、この本は素晴らしい。

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