エロマラエロマラ

やまだないと

イースト・プレス


 

 やまだないとの作品のうち、セクシュアルなものを中心に集めている。ページ数は多くないが、内容は深く、濃い。特に後半部分を占める「エロマラ」は、多少つながりがよくなかったり、出来過ぎ君的な部分もありはするが、非常に考えさせられるものを持っている。セックスによって感染する致命的な病気、そしてそれによってゆっくりと滅んでいく今の人類、そしてスターチャイルド、という図式は、さまざまな読みを可能にするであろうし、我々の現在のセックスとその身体性をも考えさせる。果たして我々のセックスはリアルなのか?という問いが発せられているのだ。あるいはセックスするしかないほど、我々の心には空虚が広まっているのかもしれない、という読みも出来る。確かにセックスは高度のコミュニケーションではあるが、最大の男女間のディスコミュニケーションでもある。心とからだが一つになったような瞬間を持てはするが、男女の違いをまざまざと見せ付けられる場でもある。また、心を通わせなくてもセックスは可能だし、セックスすらリアルを喚起させるものではなくなっている人もいる(JGBとかね)。人間の根源的な部分でさえ、もはや心とからだの同一性をつなぐものではなくなっている。その点で人間は「壊れた」動物なのだろう。そうしたことを、この漫画は考えさせられる。おもしろいのは、滅びによってはじめて人間はふれあいを持てる、というくだり。ひょっとしたらそうなのかもしれない。

 

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