ガバメントを持った少年

風忍

太田出版

 


 

 漫画の文脈を外れた枠線のひき方や、マンダラを思わせるシンメトリカルな画面構成。どことなく漂うバロック感(「音速のヘホというんだ〜!!」)。もろニューエイジ的な精神世界の描き方。そのほかそのほかで、どうしても宗教じみていると感じられそうな作品集ではある。それは半分は正しく、半分は間違っていると思う。

 作者がある宗教団体の活動に熱心に参加していたことは事実であるし、その影響の下で精神世界に対する探求を進めていった結果の作品であることは間違いない。が、そうして描かれた作品が、ある特定の宗教の教義を体現したものであったり、その宗教の布教のためのものであったりすることは決してない。特定の宗教のアイコンは現れないし、この作品集で描かれている精神世界や、宗教的世界は、一つの宗教の枠や、特定のニューエイジ的理論(トランスパーソナル心理学とか)の枠をすでに逸脱している。思うに、ここで描かれているのは、多くの宗教が普遍的に持つ「崇高さ」なのではないだろうか。特定の宗教の枠組みから一段階上にあるものを描いているのではないだろうか。だから、風忍の作品は、その様式性もあいまって、普遍性を獲得するのである。欧米で受け入れられる要因もここにある。

 

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