朝行ったときにはまだあった「一」を買いのがしたことにとても後悔。非常に達者な線と巧みな人物描写。トーンを使わない画面。非常に優れた出来の本となっている。
中心になっているのは、いつも無表情で、「能面」と呼ばれているOL、「のの」のオハナシ。ののは(当然彼氏なんかいないから)若いOLに仕事を押しつけられっぱなし。それから逃れるために彼女は、その辺にいた男をむりやりひっかける。その男もまんざらでもない様子で、彼女は幸せな気分にひたる。ところがその彼は突如父親が倒れたとのことで、帰省せざるを得なくなる。ののは出たばかりのボーナスを袋ごと彼にあげてしまう…
とまあこう書くと、実に殺伐としたお話であるかのように見受けられるが、実際はこうの史代の達者でのほほんとした絵とオハナシ運びにより、何というか、ほっとするようなイイ話にまとまっているのだ。作られた、ドラマチックな話ではないものの、どこにでもあるような話であるまさにそれゆえに、訴えかけるものを持っている。そして読後には、「人生ってまだ捨てたものじゃないよなあ」というふんわりした感覚が訪れる。
メジャーでもちょっとした四コマなどを描いているようだが、四コマだけってのはじつにもったいない。絵も、オハナシ運びも、演出も、独特さも、非常に優れている。多くの人に読まれてほしいと切に思える大きな才能である。