アフタヌーン 98年10月号

<総評>

●吉本 今回も新人の作品が非常にひっかかる。「ランデブーポイント」は、直接的な描写を避けていることで逆に少女の追いつめられた心を効果的に描いているし、「まんぐり返され人生」は精神的自由の問題を上手く描いている。さすがに余裕のある出版社は違う。
●久遠 この頃は、ディスコミが飛び抜けていて、後がこぢんまりとまとまっている感じがする。悪かぁないんだけどね。なるたるとか。
●音羽 今月も新たに新連載が始まったが・・・何か物足りなさを感じるな。もっと、アフタヌーンらしい濃い作品の連載をしてほしいな〜。特に、SFやホラー系で、こいつはマニアだな!!って思わせるくらい、濃いのが欲しいな〜。

 

  吉本松明 久遠永遠 音羽平八
Les Reparateurs

Moebius

8 改めてバンデシネと日本の漫画の文脈の違いに驚く。違っていて当然なのだが、深い感慨を覚えずにはいられない。日本の漫画があまりにも説明過剰になっていることがよく分かってくる。比較文化論はここでも重要だ。 7 「君は、大友の影響を受けているねえ。」「いえ、僕のはメビウスです。」 5 絵として見ればなかなか良いと思えるコマも有るのだが 漫画としてはイマイチ好きになれないな〜。文化の違いなのかな?
風林火嶄

小川雅司

6 きわめてアニメ・オリエンティッドな絵柄とオハナシ。ゲームの影響アリアリの展開。とにもかくにもイマ風である。この手の作品は得てして世界が限定され、その中のみの閉じた(=つまらない)展開になりがちである。オハナシ的にも絵的にも。なので基本的に私はこの手の作品をあまり評価しないのであるが、この作品はそうした限定要因を超えた要素を持っているように思う。オハナシはオヤクソクの固まりであるが、絵に華があり、線に伸びがある。平野耕太と同じ「一般に訴える力」を持っているのだ。今後に注目。 4 速攻生徒会とどう違うねん。 6 いかにも狙ってますって感じだな〜。まるで、どっかの格闘ゲームみたいだな〜。
そんな奴ぁいねえ!!

駒井悠

5   5 そういやあ、マグナム増刊のやつも、全く同じノリだなあ。 6 恐るべし・・・王様ゲーム・・・
神・風

士貴智志

4.5 思い通りの展開。ただ、やや展開が早すぎるような。敵のキャラクタの描き込みが足りず、キャラクタの動きが読めないのだ。もう少し丁寧に描くとより面白くなると思う。 4 いやあ、毎号毎号綺麗な絵だなあ。 6 ようやく石神が活躍だね♪ところで、おつわ様はどうしたんだろ?もう、出てこないのかな?
勇午

真刈信二/赤名修

5 カーストの問題は安っぽい西欧近代ヒューマニズムで語れるものではない。文化人類学をもっと学ぶべきだ。 6 ええい、この根性なしめっ。でもまあ、もうすぐ拷問だね。 5 この先、どんな展開でニルーファの涙にたどり着くんだろ?それにしても勇午も気がきかんな〜。クールに決めないで読者サービスすりゃいいのに〜。
地雷震

高橋ツトム

7 君の立場でいえば君は正しい。僕の立場でいえば僕は正しい。ボブ・ディランはそういった。ずっこけの前回をカバーするかのような緊張感が快い。 7 うむ、物事を一面だけ見て判断するんだね。 7 坂崎って順調に洗脳されてるな〜。それにしても、どうやって社会的に抹殺しようとするのかな〜?今後の展開に期待したいな。
EDEN

遠藤浩輝

6 緊迫感は高まってきているが、やはり戦闘シーンに時間をかけ過ぎのような気がする。もう少し急いでも良いのでは。 7 うわーい。すこーぷどっぐ、すこーぷどっぐ。左肩は赤くないのか? 6 アーマードトルーパー・・・あれじゃ、「宇宙の戦士」のパワードスーツ、そのまんまって感じだな〜。次回、どんな感じに戦闘が展開してくんだろ?楽しみだな♪
ああっ女神さまっ

藤島康介

4 デウス・エクス・マキナ/またはドラえもんとしてのベルダンティー。雰囲気重視に変わってきているのは好ましく思えるが、まだまだベルダンティーが都合のよい存在であり過ぎるように思える。世界の構造上、当然といえば当然なのだが。 5 しかし、何故に皆マルチなのか?(しかも今更)俺様ちゃんは綾香様のほうがいいなあ。 6 人間をパイロンとして使うとは・・・
スカタン天国

北道正幸

6 フォロワの方が本家より原理主義になることはよくあることです。例:朝鮮・李朝、クメール・ルージュ。 6 相も変わらず馬鹿だけど、今回は先月の影響かちょっと抑え目だにゃあ。 7 ミイラ取りがミイラになってるな・・・
仮面天使

若菜将平

6 最近数回は特に「戦う相手」の造形が類型化し過ぎのきらいがある。その点は大きく減点だが、狙っているところは実に骨太。自分らしく生きるとは何か。本音を通すとは何か。この方向性が変わらないことを望む。8マイナス2点。 6 いい加減抗争の構図がワンパターンで飽きてきたでし。まあ、一番簡単な敵なんだけどね。 8 いつもながら、見栄や建前に生きる大人と本音で生きる子供の対比が鮮やかで面白いな〜。
なるたる

鬼頭莫宏

8 オハナシが動いた!絵とオハナシとが高度に合一した独特の世界、ちりばめられた謎。これに注目せずに何を注目するというのか。空飛ぶ女の子、という宮崎駿の嗜好との符合がやや…気になるが。宮崎駿と同じ地平にいると勘違いすると、この作品を本当に楽しむことはできないだろう。 8 うをををっ、さーびす、さーびすっ。扉と違ってハードな内容だ。 8 おおおおお!!扉絵が〜!!水着じゃ〜!!できる事ならカラーにして欲しかったぞ〜!!
ヨコハマ買い出し紀行

芦奈野ひとし

7 滅びゆく世界でも人は生きてゆく。最近は特に「滅び」を事実として受け入れた描き方が増えて切ない。透明な悲しみ。また、下手に「強く生きる」=西洋近代的に滅びを克服する試みをしないのもよい。ひょっとするとこの作品は今行き詰まりを見せてやまない「近代」へのレクイエムなのかも知れない。しりあがり寿の諸作品同様。ところでそうなんじゃないの?>右。 7 ぢつは、アルファさんは指先がマシンガンになっていたり、左手でスパスパ物が切れたり、膝からミサイルが出たり、身体にヒロシマ型原爆が内蔵されていたりする、というのはどうでしょう。 6 ミサゴもアンドロイドなのかな?
砲神エグザクソン

園田健一

3.5 現在の文脈から見ると、メカがかっこ悪いことこの上ない。どいつもこいつも鈍重でださい。しかしそこは評価できるような気がする。あえてメカを丸っこく、かっこ悪くするところに作者のフェティシズムが感じられてよい。 3 そうか、出てくる地球人は既知外の人しかおらへんのやね。 3 また、変なのが出てきたな〜。メカデザイン、もう少し何とかならんのかな。
喫茶店

好山チュウ

6 悪意の固まり。ここまで日常と世界に対する悪意に満ちあふれた作品は最近とんと見たことがない。きっとこの人はおかず(後述)が欲しくてたまらないんだろうなぁ。悪意を相対化できるとよいのだが。下手に悪意の暗闇に陥らないことを望む。 5 きっと、作者は、本物だね。 2 ううむ・・・何と言えばよいのやら・・・
まんぐり返され成人

新田瀕死

7 著されているのは日常の閉塞感。ひとはそれを解決するために戦いの場に赴く。望むは自由。「ホステス!」「フリーダム!」一見ギャグでありひねった漫画のように見えるが、内実は非常にまっとう・ストレート。「喫茶店」に比べてこちらは読後感は非常にさわやか。 6 俺様ちゃんは、喫茶店よりこっちの方が好きやわあ。 1 これってギャグなの?
無限の住人

沙村広明

7 「男に必要なものッ!それは「血のにじみ」と「歯の食いしばり」だッ!」…とまあ、アツい血の滾りは必要なものです。 6 今回は短いと思ったら、どっかのエロ本に描いているんだね。 6 腕利きの門弟に可愛い嫁さんまで手に入るのに何をためらってるのかな〜。
セラフィック・フェザー

武田俊也/うたたねひろゆき

- 月刊の細切れ連載では真意が掴めぬと理解。 3 相も変わらず、短く、白いマンガだ。 1 話がよくわからん上に男が男おそってど〜すんだ!どーせ描くなら、読者サービスするなり、メカ描くなりしてくれないかな〜。
電夢時空2 RUNNER

高山和雅

4 やっぱり、という展開なれど、題材を上手く料理し、謎をつないでゆく方法は評価できる。しかしいかんせん絵が切ない。また創造力の点で辛いのも相変わらず。…長くないかも知れぬ。 3 そうか、何か足りないと思っていたら、「動き」がまったくないんだ。 5 やっぱり実包入りの銃が出てきたか・・・
犬神

外薗昌也

5 これも展開が遅いように思える。

6

アンヌ隊員はどうなったのだ?黒髪ストレートロングヘアー美少女が出てこないのは許せないなあ。 4 美伽を尋問した警官の気持ちもちょっと解るが、今時、あんなしゃべり方する女子高生いるんか?
五年生

木尾士目

6 よくもまあ次から次へと逆境が訪れること。ここには当然漫画的ツクリがあるが、それに対する対応は矢張り真摯極まりない。人間の嫉妬や不安に正直で、それが静かに魂を揺さぶる。 5 戦え、何を?人生を。駄目なヤツは、駄目だよう。 7 遠距離恋愛といえば、浮気がつきものだよな〜。早くトラブルに巻き込まれないかな〜
RENDEZVOUS POINT

虎哉考征

8 自らの存在をアピールせんと自傷行為=毎日20キロの自転車通学にふける女子高生。「そうしてしまわざるを得ない」きわめてヒリヒリした感覚。頼りない描線。リアルの欠落した世界では、自分の肉体をいじめ抜くしか方法はないのか。精神の無限地獄(陥っているときは無限に感じる)をうまく描いた力作。ややほかの四季賞に比べると弱い点があるが、優れた漫画であることには変わりない。 7 嫌いじゃない。いや、どちらかというと、好きな部類だ。だが、だがしかし、四季賞という目で見ると、何か物足りなく感じる。 5 イマイチ話の流れがスムーズじゃないな〜。所々、 引っかかるような感じがするな〜。キャラクターの表情の作り方ももっと大げさにすればもっと感情の表現が上手くできるんじゃないかな?
ディスコミュニケーション

植芝理一

9 「今回のテーマは母性と…」なんてアオリは、逆にこの作品に込められている「深淵への志向」を弱めてしまうのではなかろうか。それだけこの作品が志向するところは深い。近代西欧的な理性では説明し得ぬ領域、強いてそちらの言葉でいえばデュオニュソス的領域にアプローチしつつある。「還元され得ぬ何か」へと。今もっとも旬であるといえよう。見逃すな!! 9 すげえなあ。この頃きれまくってるなあ。あらゆる面で、ノリにのってるんじゃないかなあ。 8 いつか終わりが来るからこそ、今という時を楽しめるのかも・・・
ワッハマン

あさりよしとお

6 主役不在は何を意味するのか。上手く生きてくれると良いのだが。 7 うーん畳んでる、畳んでる。広げた風呂敷を畳んでるねえ。 5 手軽に間接の位置が変えられるとは・・・非常に実用的な気もするが、現実的では無いよな〜。
いんちき

成人功

「今の人はご飯を食べずにおかずばかりを求めているのではないか。そこでわたしはご飯のような漫画を目指す」とある。ここでご飯=日常、おかず=非日常であるが、この姿勢に非常にわたしは共感する。まずはご飯を食べ、それを細かく味わうことから始めなくてはならない。思想9/漫画6 5 今月はちょっと面白いなあ。 2 何かが違う・・・
菫画報

小原慎司

7 ちょっと「何じゃそりゃ」的なオチではあるが、高校時代何にでもわくわくする感覚がよく描かれていて甘酸っぱい気分になる。 7 いいなあ、上小路。こういうキャラ、好きだなあ。 7 美術部にたのんでフェイスペイントするより、演劇部にでもたのんでカツラと衣装借りた方がはやくないか?
妖精事件

高河ゆん

5 今回から評価を改めることに決定。相変わらず自分の身勝手さに無意識で嬉しくさえなる。身勝手さも徹底的に突き詰めれば何らかの崇高さを帯びてくる。この作品はその境地に達しつつあるといえよう。無意識の勝利。 2 なんだ。また、なるたるだったら良かったのに。 6 王子を抱えて窓から飛び出すとは・・・恋する乙女は強いね〜。
愛天明王物語

見田竜介

4 極楽蜻蛉を悪意の渦に取り込もうという試みはよい。ハッピー・エンドと安易な解決は禁止!悪意と善意のせめぎあいの中にこそ、真に見いだすべき何かがあるのだから。 3 ああ、なつかしいなあ。宇宙皇子か。 2 はあ〜・・・まだ続くのか・・・
やす子の太陽

山浦章

3 最後まで泥臭い。下手に引き伸ばすよりはよかったのではないか。昔の漫画のテイストを持ち続けているのは面白かったのだが。 4 よくぞお約束だけでここまで保ったなあ。 2 終わったか・・・最後まで理解に苦しんだな・・・
スズキ

安井雄一

4   2 うむ。 1 ・・・・わからん・・・・
午後3時の魔法

垣野内成美

6 人は誰しも一瞬の心の安らぎを求める。やすらぎをもたらす天使なぞいないと知ってはいても、なおもそれを求めずにはいられない。この作品はそうした願望の「ひねりなき顕れ」であるため、嫌味さはない。女性原理的であることもそれを強化している。 5 懐かしいなあ。前の話はどういう話だったかなあ。 9 いいね〜。ありきたりな感じの話ではあるが、逆に読み終わった時にホッとさせてくれるな〜。黒と白の使い方も凄くいいね!!キャラクターの心の動きが表情だけじゃなくて、コマの明るさや暗さからも伝わって来るよな〜。さらに、エピソードが何回かに分けての連載じゃなくて、一回で完結してるのがいいね♪
よしえサン

須賀原洋行

1 日本は幸せな国だ。 1 いい仕事?貴様ごときがいい仕事だと?はは、わらかしよる。 2 もう少し面白いネタ考えるなり脚色するなりして欲しいな。
G組のG

真右衛門

4 …やはり大コマで見るよりちまちましているほうがしっくり来る。 -   3 う〜む・・・イマイチ・・・

<ベスト>

●吉本 難しいところ。「ランデブーポイント」は頼りない線や切迫感が非常によいし、「ディスコミ」はさらに深い探究をしている。どちらも読んでいてうならされる名作。だがここはあえて「まんぐり返され人生」にしよう。合言葉は自由。精神のコルスンポケット*から抜け出すのだ!
●久遠 どうしようかなあ、うーん、当たり前で申し訳ないが、ディスコミかなあ。
●音羽 「午後3時の魔法」に勝るものなし!!

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*コルスンポケット…1944年2月、ソ連軍の攻勢により、SS装甲師団「ヴィーキング」を主体とするドイツ軍5個師団余、5万6千名がコルスン近郊で包囲された。直ちに救出作戦が展開され、独ソ戦の中でも有数の激しい戦いの後、包囲軍は脱出に成功した。そのときの作戦名・合言葉が「自由(Flei)」であった。非常に厳重であった包囲を脱出したことは奇跡的なことであったが、損害も多かった。突破に成功したのは3万5千人に過ぎなかったのだ。このことは戦闘単位としては存在しなくなったことを意味し、全滅と同義である。この戦いはチェルカッスィの戦いという名でも知られている。