アフタヌーン 99年10月号

暁の息子

樹なつみ
吉本 高河ゆんをはじめとして、アフタヌーンは少女系で活躍した作家をよく使う。「少女系でウケるのなら青年にも受けるであろう」という読みか。だが少女系の文脈と青年漫画の文脈はかなり異なっており、注意深く「移植」しないと単に違和感をもたらすだけの結果になる。「妖精事件」がかなりそうであったように。アフタヌーンではないが、ほかの例としてはブレイク・エイジが挙げられよう。
この作品において樹はかなり青年寄りに描写しようと心がけているように見受けられる。その点は評価できるのだが、そこここにすでに無理矢理接合したが故の違和感が見え隠れしている。是非とも踏みとどまってほしいところ。
久遠 さすがだね。でも何故アフタヌーンで?
音羽 絵にあまり動きが感じられないな〜。構成もイマイチだし、こういった内容はむいてないんじゃないかな〜。かなり先行き不安だな・・・
ヨコハマ買い出し紀行

芦奈野ひとし
吉本 やっぱりこの世界は少しずつ終わってゆくのだ。家と店がなくなる、という描写はまさに世界の終末を意味する。もちろん今日明日に終わる世界ではないのだが、緩慢にではあるが着実に世界は終了してゆく。そしてその「逃れようのなさ」にポエジイが生じるのだ。むろん、「それでも人は生きてゆく」ゆえに、そのポエジイは美しくなるのだが。
久遠 なんか、2日目の事を思い出すのですが。
音羽 アルファの店って以外にヤワなつくりだったんだね・・・ 
BLAME!

二瓶勉
吉本 うむ。確実に盛り上がっている。シボの脱落、明かされるキリイの謎、そして先鋭的なサイバースペースの描写。このところ一番盛り上がっているSF系作品かもしれない。
久遠 ああ、シボさんが死んでしまった。ってゆうか、展開がわかりやすすぎ。
音羽 あら?シボは死んでしまうのかな?う〜ん・・・もったいないな〜。
ああっ女神さまっ

藤島康介
吉本 舞台が動かず、ずっと家の中なのでどうにもタルい。もうちょっと動きがあればまだ読めるのだが。
久遠 ・・・狙いすぎですね。マンネリには新キャラを出して対処ですか。
音羽 次回はウルドの母が登場か〜。面白い展開になると良いな〜。
そんな奴ぁいねえ!!

駒井悠
吉本 すっかりワンパなので、新しい発見もなければ、面白みもない。何とかならないものか。かといってこれ以上キャラクタを増やしても混乱が深まるばかり。やれやれ。
久遠 ああ、もう駄目だね。
音羽 小悪魔もいいが悪魔も良いな〜〜。
無限の住人

沙村広明
吉本 万次の本格的な活躍が見られるのは嬉しいところ。そしてまさに自らを削り、万次に当たる尸良の姿もかっこいい。互いに諒解しあった男同士の殺し合いのイキなこと!負けてませんなぁ!
久遠 いぎゃあああ、見てるだけで痛くなる。
音羽 なんだか凄いことになってるな〜。まともな剣術使いっていないのかいな?
EDEN

遠藤浩輝
吉本 ようやくアンデス越えも終わり、新たな展開となるか。一時はかなり危惧していたが、さすが遠藤、長編におけるドラマトゥルギーの形成の方法を学び取ったようで、非常に深く、かつ見逃せないオハナシの進行になっている。次の展開が楽しみ。
久遠 テンション高いなあ。次からどうなるんだろう。
音羽 テールローターの無いヘリって上手く飛べるのかな?かなり無理があるような気もするな〜。なにはともあれ、一段落ついたね。次回からどんな展開になるのか楽しみだね。
ディスコミュニケーション

植芝利一
吉本 本格的に思いこみ世界の力強さを語るか、植芝よ。思いこみは両刃の剣である。一方で行動の原動力ともなるが、もう一方で地に足のつかない行動を惹起する。だからカンタンな思いこみの描写は浅いものになりやすい(猫玄の漫画を思い出せ)。なのに植芝はあえて思いこみに強力な重点付けを行う。この確信に満ちた行為は注目せられなければならない。なぜならその背後には、人間に対するつよい確信があるのだから。
久遠 やぱりホソノが好きなのね。
音羽 良いね〜。怪しげな像もまたまた出てきたし、なかなか面白そうな流れじゃないか〜。
黄色い本

高野文子
吉本 10 今年最大の問題作。一見するときわめてわかりづらい作品だ。まず下敷きとなっている「チボー家の人々」を知らないと、オハナシの進行さえわからないであろう。また舞台となっている、高野の出身地新潟県新津市の状況を知らないとこれまた描写がよくわからない。独特の蒲原弁、そして地場産業のニット(メリヤス)製品。インターナショナルの舞台に躍り出ず、都会にも出ず、雪深い地の地元企業に就職する(せざるを得ない)という状況を理解できないと、この作品を味わうことさえできないであろう。
しかしそうした状況をふまえて読むと、この作品は非常に深い味わいを持っていることがわかる。これについては別の原稿で詳しく述べるつもりなのでここでは書かないが、その描写の複雑性、重層性、そしてもたらされる感動はもの凄いものがある。さすがは高野文子。
98年3月の「コミックP!」以来であるから、約1年半ぶりの作品である。年を食ってもなおこれだけの仕事ができるのだ。もっと仕事をしてほしいものだと切に、切に思う。
久遠 いにゃーん。難しいです。ってゆうか、新潟弁が懐かしすぎ。
音羽 う〜む・・・なんなんだろね〜・・・何が主張したいのかわからないのだが・・・
セラフィック・フェザー

武田/うたたね
吉本 オハナシが動きはじめて、面白くなりそうなのだが、いかんせん場所が悪い。高野の後じゃなあ…。ちと可哀相か。
久遠 デジ・キャラットちゃんDEATH−CAR?
音羽 毎度のことだが、ページ少なすぎ。何とかしてくれ。
ハトのおよめさん

ハグキ
吉本 何にもないからこそウケるのです。思想性も、メッセージ性も、参照の「枝」も。私以上の世代ではこれは空虚以外の何ものでもない。ニヒリズムの極致。文化的には弾圧されるべきものである。文化の敵である。しかし今の若い世代にとってはこの作品はそうした性質を帯びはしないだろう。ある意味「ハイエンド」なのだ、この作品は。
久遠 こんなのがねえ。
音羽 なんだか毎回同じ様な終わり方してないかい?
幻蔵人形夜話

高田裕三
吉本 少しづつ幻蔵の過去が明かされ、オハナシに深みが増している。ただオハナシの展開が文字通りのデウス・エクス・マキナじゃあねぇ…。あんまり回数は使えませんよ!?このネタ!?
久遠 死んだ嫁さんというのもこの頃の流行ですか?
音羽 これで、幻蔵も少しは生き方がかわるのかな?ところで、サキってなんで死んだんだろ?そのへんのエピソードとかも出てこないかな〜。
なるたる

鬼頭莫宏
吉本 激しくなる戦闘の中、少しづつ明かされる「竜の子」の「性能」。さりげない描写のなかで、人間にとって敵か味方か分からない竜の子の不気味さがより強調されている。「ベターマン」と同じ手法だ。ええ、盛り上がってますな。ところでA-10は性能の低さから生産が打ち切られたと聞くが?
久遠 絶対この扉も単行本には載りませんね。ってゆうか、もうなるたるなしのアフタヌーンは考えられませんね。
音羽 おお!!A-10が出てきた〜。この機体、好きなんだよな〜。それにしても、毒ガス攻撃か〜。あれだけの効果を出すにはかなりの量を生成しなきゃならないんじゃないかな〜。
G組のG

真右衛門
吉本 「まんくら」に載っているものの方が面白いです。
久遠 カリオストロ公国ですか。
音羽 バイオハザードやりたいな〜。買ってこようかな〜。
勇午

真刈/赤名
吉本 映画「キリング・フィールド」参照。ちと年代が合わないのではないか?サイゴン陥落とポル・ポト政権成立の間にはややタイムラグがあるはずだが。まあそれは良いとして、展開のご都合には正直閉口しますな。そうしないとオハナシがつながらないので仕方ないところなのだが。取材した場所(または行ったことのある場所)への思いいれが先行しすぎてしまっているのではなかろうか?あるいはオリエンタリズム?
久遠 きっとネゴシエーター仙人がでてきてクローンを作ってくれるんだよ。でも後で仙人はもう殺していたことに気付いて愕然とするんだよ。
音羽 あらら・・・意外な展開になってきたな〜。でも、結局は、最後のおいしいところになってから、勇午が出てきて解決ってことになるのかな〜。
地雷震

高橋ツトム
吉本 さあ。ギャグが更に強化されています。臓器移植で提供者の記憶が移動すると来ましたか。オカルトも大概にして欲しいですな。なまじ絵に説得力があるように見えてしまうので問題の根は深い。真面目にやってくれよう!最終章がこれかよう!
久遠 詰め込みすぎ。
音羽 なるほど〜。そういう繋がりになるわけだな。良い感じじゃないか〜。期待はずれな終わり方にならないように頑張って欲しいね〜。
神・風

士貴智志
吉本 バクチク、ですか。彼らも息が長いですなあ。で、その程度で満足していられるのですか。底の浅さは、参照するもののレベルが低いことに由来する。テクニックだけが凄くても、オハナシがついてこないことには人の心に訴えることはできない。
久遠 嫌な女だね。
音羽 水の民って他にはいないのかな?次回は、みさをとかえでの派手なバトルかな?楽しみにしてるぞ〜。
犬神

外薗昌也
吉本 4連発、ですか。
久遠 最後はやはり友情パワーですか。
音羽 そろそろ潮時では?下手に引き延ばしてパワープレイな漫画になるより、このあたりで上手くまとめて終わらせた方が良いと思うぞ。
よしえサン

須賀原洋行
吉本 5連発、ですか。
久遠 早く死なないかなあ。
音羽 BSと地上波がどのくらいづれてるんだろ?こんど実際に比べてみよかな〜。
ニライカナイ

岡田芽武
吉本 密度が濃すぎて見づらい画面だが、オハナシは着着と進んでいる。クトゥルフまでも加わるのDeathか!傍目で見れば荒唐無稽極まりないのであるが、岡田は怖じることなく世界を「構築」する。覚悟が見られるのが良いではないか。自ら政治的存在となることを受け入れつつ、あえて「逆コース」の側に身を投じるのであるから。大胆な画面構成とタイポグラフィの使用も新鮮で良い。
久遠 Kキャラクターズに影技があったような気がするのですが、あれって角川なんじゃないの?
音羽 う〜む・・・なるほど。なんとなく世界が見えてきたかもな〜。
宇宙家族カールビンソン

あさりよしとお
吉本 着眼点は悪くないのだが、ルーティン・ワークじゃあねぇ…。「なつのロケット」に全力投球中なのか?
久遠 早いトコキャラクターを揃えるべきじゃないのか?
音羽 今年の夏は祭りにも行かなかったな〜・・・花火も見てないし・・・なんだかな〜。
仮面天使

若菜将平
吉本 どんどんおとなへと成長して行く加利奈のさま(もちろん意図的だ)は、見ていてはっとする。終わりに向かってまとめに入っているのだね。他愛無いオハナシなれど、きっとこの一話が後で大きく「効いて」来るであろう。
久遠 もう終わりだね。うん。
音羽 友達とは良いものだな・・・
風林火嶄

小川雅史
吉本 センス良くまとまっているのだが、いかんせん全体的なポテンシャルが下がっているように見受けられる。「とんち番長」末期の、いくらテコ入れしてもダメ、という状況をなんとなく思い出す。うーむ。
久遠 熱血カウンターとかはないんですか?愛と友情のツープラトンとか。
音羽 なるほど・・・武田で、風林火山ってわけだったのか〜。んで、上杉に北条か〜。ほかにもいろいろ出て来るのかな〜。
五年生

木尾士目
吉本 あえて、あえて駄目になるようにオハナシを作って行く姿勢には、強く強く共感する。どっちにしたって女性の視点から描くような器用な真似はできないのだ、この人は。だからこそ徹底的に駄目にする。この姿勢は極めて真摯である、と評価できよう。
久遠 俺様ちゃんのガンプラ体験は、買ってきた「マラサイ」をかってに作られちゃったことくらいです。
音羽 結局は惰性で流されてるのかな?
なげやり

桜玉吉
吉本 ぺそみちゃんは空想の産物なのではなかろうか。鬱に入りまくっている「漫玉」からみずからを引き離すための。きわめて理念的な存在であることからもそれは伺える。
久遠 恐山=寺山だよね。やっぱり。
音羽 今回はゲームのタイトルそのままって感じだな〜。それにしても、ぺそみちゃんて・・・なんかいいかも・・・
アナホルヒトビト

クリハラタカシ
吉本 太陽に呪われたがために、延々と穴を掘り続けなければならない人々。人は穴の中で生まれ、育ち、大きくなったら穴を掘る。主人公はそうした生活に疑問を抱くが…というオハナシ。「大砲の町」との類似点を指摘する人は多いであろう。隔絶された異世界で、現在の我々から見れば不可解な行動が社会の基本理念になっているのであるから。それはそれとして、この作品の魅力の大きな部分を占めているのは間違いない。しかしもう一つ忘れてはならない要素がある。逆柱いみり、である。日の射さない地下世界を歩き回る主人公の少年が出くわす情景は、なめくじ猫が通り抜ける情景と酷似してやいないだろうか。その点この作品はロードムービー的な要素も強く持っているといえる。
久遠 火の鳥の太陽編だったかな?あの上下編っだったやつ、を思い出しました。
音羽 面白いじゃないか・・・世界観も良い感じだし、続編でもでないかな?
スズキ

安井雄一
吉本 そうですか。
久遠 ああ、見逃すところだったよ。
音羽 中央線ってよくとまるんだよな〜・・・

<総評>

吉本 今回は高野文子とクリハラタカシにすべて食われてしまった印象。鳴り物入りの新連載も、盛り上がっている連載作品も、みーんな霞んでしまっているようだ。それだけこの二つが強力なのだが。
別冊を作ることによって本格的に「売れる」誌面作りを目指して行くようだ。優れてはいるが売れそうにない作品は、別冊の方に移されるのであろう。樹なつみの起用はまさに「売れ線」を狙ったものだ。四季賞系を救済してくれるのは流石太っ腹であるが、アフタヌーンが「売れ線」志向になるのはやや寂しい気もする。
久遠 最近力の落ち込みが激しいか?増刊に期待。
音羽 漫画雑誌として、確かに面白いのだが、こぎれいにまとまりすぎてるような気もするな〜。安定しすぎじゃないのだろうか?もっと大暴れしてくれるパワーのある新連載が欲しいな。それと、いい加減切った方が良いのもいくつかあると思うのだが・・・

<ベスト>

吉本 99年のベストになるかもしれない高野文子「黄色い本」にしよう。11月のティアで分析本を作って売ろうかな、と思っております。
久遠 ここはやはり、新潟を思い出す黄色い本に。
音羽 地雷震やBLAMEもよかったのだが、今後の期待もこめて「アナホルヒトビト」にしよう。

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