漫画の鬼アックス12号
きみの横顔。 オカジマアヤコ |
吉本 | 7 | うむ。キリコにインスパイアされたであろう系列の漫画。際立ってフェミニン/女子高生的な感じ。キリコのデビュー作も思えばこんな感じであった。入選作品なのにアタマにあるところに注目する必要がある。次も期待したいところ。 |
久遠 | |||
気になる風景 川崎ゆきお |
吉本 | 7 | ゆきお先生は次第に妖怪、またはもののけへと変化しつつある。水木翁がそうであるように。生活がまったく成り立っていなさそうなのに、マイペースの作品を発表しつづけるのが良いではないか。内容もなんだか現実から遊離してしまっているし。その一方でデジタルを積極的に導入しているのが興味深いところ。 |
久遠 | |||
須磨で 赤塚フジヨ |
吉本 | 3 | そう。ここに居るのは鈴木翁二ではなく、赤塚フジヨという名の別の漫画家。そう思うと腹も立たない。呆れるほどのオヤジ趣味には閉口するが、それも突き抜けそうなので面白い。この作家を持ち上げようとする編集方針には相変わらず異議を唱えたいが。編集で持ち上げてどうするの。作品の面白さで人気は出るのじゃないか? |
久遠 | |||
双子のオヤジ しりあがり寿 |
吉本 | 6 | 「瀕死のエッセイスト」「弥次喜多 in DEEP」と異なり、のびのびさらさらと描いているところが良い。 |
久遠 | |||
息子はイヌ 花くまゆうさく |
吉本 | 7 | 「IQゼロ漫画」とあるが、結構考えてるんじゃないの。問答無用でイヌの子を産んでしまう女。その発想の方法自体が人を食っていてよろしい。 |
久遠 | |||
ジンバルロック 古泉智浩 |
吉本 | 7 | UFOはいると信じているオヤジ。まわりに認められずにスナックでクダを巻くっちゅうところが実に田舎っぽくってイイではないですか。この作品に共通する徳目は、その「田舎っぽさ」にあると思う。和菓子屋を継ぎながら漫画を描いているそのリアリティに感動しますな。 |
久遠 | |||
モウカル・ハナシ 福満しげゆき |
吉本 | 6 | いつもの神経症的なオハナシではなく、随分と漫画として完成されたオハナシ。講談社で鍛えられたのか?「コミック・エデン」に載った、神経を逆撫でするような漫画も読みたかったところではあるが、これはこれで良いのかもしれない。 |
久遠 | |||
だから私は犬が嫌いだ 鷹羽正臣 |
吉本 | 5 | おんなじ方法論を使いながらも、なかなか飽きないところが面白い。無声映画の方法論と同じなのだな。それをきちんと認識した上で意図的に使っているのがよい。 |
久遠 | |||
くるくるきいきい キクチヒロノリ |
吉本 | 6 | ワケわかんないです。まさにそこにこそ良さがある。 |
久遠 | |||
ワイルドマウンテンライフ 本秀康 |
吉本 | 7 | 背後では大きなオハナシが進行しているのに、主人公のスガは個人的な事情に没頭する。このパターンが本の作品の大きな魅力。いかにも現実にありそうな展開であるところが良い。「現実感覚」に酔う。 |
久遠 | |||
CHIL DOG 津川聡子 |
吉本 | 5 | いかにもオナゴげな可愛い漫画。これはこれで良いのではないかと思う。「AX」に描けていた女性的繊細さが現れているのだから。 |
久遠 | |||
Billy & Jinny Kawai Cartoo-O |
吉本 | 8 | …「電脳なをさん」みたいな漫画だこと。表現の幅を広げようとする試みは非常によろしい。 |
久遠 | |||
玉姫様 菅野修 |
吉本 | 5 | 日本人はアメリカナイゼーションされて、民族の誇りを失っている、と。漫画としてはしょーもなくて結構面白いのだが、二つの点で苛立ちを覚える。ひとつは「切実さが足りない」こと。あびゅうきょ先生のようなひりひりするような絶望感がなく、どこか手抜きが見られるのだ。その辺のオヤジが自分の印象を勝手にわめいている印象。アメリカが嫌いだったらもっと真剣に憎めよ。もうひとつはやはり編集方針。 |
久遠 | |||
シカゴ・ブルースのブルース 東陽片岡 |
吉本 | 6 | 外人がみなカタカナでしゃべっているのが良い。 |
久遠 | |||
亀の市の事件簿 根本敬 |
吉本 | 5 | 短いその分うまくまとまっている。 |
久遠 | |||
美しい人生 清水おさむ |
吉本 | 6 | 漫画そのものはメチャクチャな展開、誇張が効いて迫力のある絵、漫画的な記号の多用、その使い方の上手さという点でかなり楽しめる。いやあベタベタでええわ。しかし、あまりにも、い・か・に・もな人選。サブカル文脈で注目されるようになった人をタイムリーにとりあげることで、サブカル世界の主導権を握ろうとしているように見える。たしかにそれはずっと「AX」で一貫してきたことだが、やはり小癪である。 |
久遠 |
<総評>
吉本 | 女性的繊細さを取り入れようとしているところが良い。まだまだサブカルのリーダーになろうという意図が見え隠れするが、良い漫画が載っていれば文句はない。「ガロ」に比べれば、ではあるのだが…。 |
久遠 |
<ベスト>
吉本 | ファンタジイと田舎のしょうもない現実を上手く組み合わせた「ジンバルロック」にしよう。「ワイルドマウンテンライフ」も捨てがたいところだが。 |
久遠 |