漫画の鬼アックス14号(2000年4月発売)
レヴュ担当 | 吉本松明 |
真夜中の聖火ランナー 古泉智浩 |
吉本 | 8 | 手違いで消えてしまったオリンピックの聖火の悲しみを誰が知ろう?一生懸命やった結果がへっぽこだったことの切なさを誰が知ろう?この作品はその切なさをビビッドに描き出す。最初から失敗だった試み。分かってはいたもののせざるを得ないオートマティズム。 |
久遠 | |||
エンリケ小林のエルドラド 島田虎之介 |
吉本 | 7 | 長い。長いんだけれどほのぼのしていてよろしい。もっとコンパクトにまとめるとよかったのではなかろうか。 |
久遠 | |||
小林加代子 こんどうあきの |
吉本 | 3 | すいません。はっきりいってよくわかりません。ていうかこういった作品を選んでしまうのは何故?次以降で真価がわかるであろう。 |
久遠 | |||
父は、もぐら 花くまゆうさく |
吉本 | 8 | 「IQゼロ」と銘打っているものの、結構良く考えているじゃないの…って、何度いったことやたら。何が面白いかというと、いままでの「IQゼロ」シリーズと同様、計算にならないところを描いているところ。そうした方向性に向かおうとしているところ、花くまの侮れないところ。是非次をお願いしますわ。 |
久遠 | |||
蔵の中の女 河井克夫 |
吉本 | 6 | 「アックス」の魅力がもうひとつあるとすれば、この人を定期的に載せるところだろうか。この「怪談もの」とでもいったシリーズは、いかにも近くに妖怪がいそうな感じがしてとてもよろしい。 |
久遠 | |||
食い改め候 泉昌之 |
吉本 | 7 | 69衛門(ムッツリ衛門)のシリーズとは。そして問答無用で現代に侍(浪人)を持ってくるとは。そしてそれが世界の中にぴったりはまっているのだから無上に可笑しい。 |
久遠 | |||
赤岩 秋山亜由子 |
吉本 | 7 | いつもの虫が出てこないので少々とまどうが、漫画としての構造は非常にしっかりしている。こういうのもできる人なのですね。 |
久遠 | |||
眠るおねえさん
松井雪子 |
吉本 | 6 | 10円はげのはっちゃんのシリーズ。最近のこのシリーズは性的メタファにあふれていて、どうも「満たされない欲望」を感じる。今回のこれも、突出する岩、達せられない目的と、欲求不満のアイコンが頻出。気持ちのいいセックスやってますか?と余計な心配もしてしまうが、それが危うさとなって読者に訴えかけてくる。この調子で続けて欲しいもの。 |
久遠 | |||
須磨で 茎薫 |
吉本 | 4 | すっかりオッサンになってしまった者が語りうるものは何か。かつて、若さを象徴するような存在として扱われていた人が、老いたときできることは何か。鈴木翁二のこのシリーズは、そうした苦闘の結果なのであるとようやく理解。切ない退却戦である。 |
久遠 | |||
つー訳ですこぶる困っております。 東陽片岡 |
吉本 | 6 | そうですか。 |
久遠 | |||
大つごもり 根本敬 |
吉本 | 7 | ずいぶん長い時間をかけて完成させた作品だそうだが、さもありなんという出来。いいオハナシじゃあないですか。エンゲル係数が非常に高い場所においても、ポエジイは成立するし、人間はそれを忘れることもない。崇高な作品である。 |
久遠 | |||
むしょのしょくどう 花輪和一 |
吉本 | 8 | 絵本形式になっているところが毒のあるところ。むしょでさらに内面の毒を増したようで、読者としてはうれしい限り。次はいつものマンガをお願いしたいところ。あるいはこの絵本シリーズで、まとまった枚数にするのも良し。 |
久遠 | |||
双子のオヤジ しりあがり寿 |
吉本 | 6 | そうですか。 |
久遠 |
<総評>
吉本 | 特集は賛否両論あるところだろうが、今回のようなやり方はいいのではないか。なぜなら古泉の場合は、かれの郷土の新潟という場所と、ドラマトゥルギーが密接に結びついているのだから。 新人漫画は正直なところ小粒な印象。だが島田は本秀康のようなノホホンとした作家に育つ可能性があるので、定期的に作品を呼んでみたいところ。 全体的にはすっかり安定したようで、安心して読める。漫画の質も悪くないところだし。この調子で行ってほしいところ。 |
久遠 |
<ベスト>
吉本 | 久しぶりの泉昌之コンビがうれしい『食い改め候』にしよう。 |
久遠 |
Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:15:53 JST