漫画の鬼アックス15号(2000年6月発売)
レヴュ担当 | 吉本松明 |
空を飛ぶ 西岡兄妹 |
吉本 | 7 | この作家は新しい段階に踏み込みつつある。かつてはかなり「難儀な人」であったと思っていたのだが、最近は明らかにそれを「飼い馴らしている」さまが見受けられる。インタビューでも明らかなことであるが、個人に限定された範囲での懊悩から、より一般的な悩みや苦しみの描写へと転換してきているように思う。しかも今回はラブストーリーではないですか。今後の「化け」が期待できる。 |
久遠 | |||
双子のオヤジ しりあがり寿 |
吉本 | 6 | 特に何もいうことはありません。 |
久遠 | |||
チェリーボーイズ 古泉智浩 |
吉本 | 8 |
うーん!やっぱりこの人はすごい! 何がいいかといえば、登場人物がみんな田舎に「とらわれている」ところ。25にもなって厳格な上下関係があり、それに従わねばならないゆえにみんな童貞とは。こうした不合理があるからこそ、逆に「自由」が見えてくるように思う。面白い! |
久遠 | |||
石鹸箱の女 まついたまき |
吉本 | 5 | 以前の作品と比べて、かなり読みやすく、分かりやすくなっているように思う。読みやすくしながらも、自分の求める道を行くという方法論がよいのだと思う。 |
久遠 | |||
獄衣着用次第 花輪和一 |
吉本 | 7 | ま、漫画を! |
久遠 | |||
玉姫様 菅野修 |
吉本 | 3 | 間があいてしまうと、テンションの高さが維持できなくなってしまい、作品全体のグルーヴ感も失われてしまう。だからといってこの作品が面白いと思うわけではないが。どうせやるなら駕籠なみに徹底的にやってほしいところ。大和民族絶滅計画でもよし。 |
久遠 | |||
家族の星 鷹羽正臣 |
吉本 | 6 | 何があっても自分の方法論を貫き通す姿勢はよし。オハナシもダメ駄目で素晴らしいこと。へっぽこな感覚を我が物とし、それを表現しつづけているのが面白いではないか。 |
久遠 | |||
引き潮 村田千峰 |
吉本 | 4 | 以前の「アックス」でも作品を発表しているが、それに比べるとやや散漫な印象が。それはおそらく枠線の外に描かれた曲線に由来するのであろう。散漫というより神経症的な印象ともいえるか。 |
久遠 | |||
グルグルグル 津川聡子 |
吉本 | 4 | 1ページ24コマのミニマル・漫画。読むのも大変、描くのも大変。 |
久遠 | |||
哀愁劇場 東陽片岡 |
吉本 | 6 | そうですか。アブフレックスは運動のきっかけになりますか。私も最近胴回りが気になってきたので、シェイプアップしなくちゃと思っていたのですよ。ちょっと買ってみようかな? |
久遠 | |||
生きるミレニアム 根本敬 |
吉本 | 6 | 森総理も石原慎太郎も出てきて、妙にポリティカルではあるものの、オハナシの構造は実に昔懐かしい「生きる」。途中で昔の原稿になってしまうのもなんだか微笑ましい。ずるいけど。 |
久遠 | |||
Gettin' Funky 緋山ハト子 |
吉本 | 4 | 田舎から出てきて、きわめて貧乏な兄妹を描く。クラブに行くことにするが、帰りの電車賃もない…。オハナシの構造自体はきわめてありきたりなもの。絵も魅力的で完成されてはいるが、逆に出来すぎのような気も。悪くはないがもう一味欲しい。 |
久遠 | |||
美しい友情 萩原利夫 |
吉本 | 5 | …どうしてこういう美意識を持てるのでしょうかね。なんとも無意識的に「行ってしまった耽美」に足を踏み入れているのが興味深い。やめて欲しいところではあるが、どんどん作品を発表して、イヤがられまくるのも面白いような気がする。 |
久遠 | |||
ラブレターフロム彼方 早見純 |
吉本 | 漫画6/姿勢2 | いや、作品自体はいいのだ。だがその背後にある力学が…。確かに「温故知新」を現実のものにするメディアがないのはわかるのだ。しかしエロ劇画家を取り上げることは、必然的に現在の「美少女漫画」に対するアンチテーゼとなる。意図しようとしまいと。もちろん緊張感を高めるために、こうしたアンチテーゼの存在は必要なのであるが、これはカンタンに「アンチテーゼのほうが貴い」という愚かな選民思想を生む。昨今のエロ劇画復刻はまさにそうした「サブカル至上主義」と同じ構造をもっているのだ。注意深くなって欲しいものだが、無理だろうなあ…。 |
久遠 | |||
喜劇・俺のドッペルゲンガー 河合克夫 |
吉本 | 7 | 氏神一番、殺す。 |
久遠 | |||
サマータイトル オカジマアヤコ |
吉本 | 6 | 魚喃キリコを思わせる線は変わってはいないが、次第に独自の切り口を持ってきているように思う。キューティーコミックやフィールヤングではすぐにでも活躍できそうに思うのだが。 |
久遠 |
<総評>
吉本 | 慎み深い特集のあり方は良いと思う。身の丈に合わせている一方で、必要な情報は揃っている。こういう形の特集なら歓迎。 漫画のほうは、ちょっと新人が小粒だったり、サブカル臭が鼻につくところもあるが、古泉智浩や河合克夫など、きちんと読ませる作品があるので安心できる。目先の利益や流行に動かされて、方向を失って欲しくないと思う。 |
久遠 |
<ベスト>
吉本 | 北陸の「あの日本海」が雄弁に描かれている「チェリーボーイズ」にしよう。日本海側って本当に暗いんだから。 |
久遠 |
Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:15:53 JST