漫画の鬼アックス16号(2000年8月末発売)
レヴュ担当 | 吉本松明 |
猟奇王この世の果て 川崎ゆきお |
吉本 | 9 | 「大阪ダンジョン」もかなり危険な領域に入っているが、この作品もまた。「首領 来月の食料がありません」「夢の中から食料を調達できぬか」だから。これ以上の名台詞があったであろうか?今回は少年犯罪をモチーフにしているが(時事ネタ?)、そこは猟さん、例のロマンで丸め込む。「その余地があると申しておるだけじゃ」…泣ける。 |
久遠 | |||
チェリーボーイズ 古泉智浩 |
吉本 | 7 | 田舎のもうひとつの問題は徹底的にコミュニケーションの範囲が「閉じて」いることなのであって。それを知っている身としてはかなりやりきれないものがあるが、古泉はそれを軽妙なギャグへと転化する。つよい視点である。 |
久遠 | |||
しあわせ せんべい 河井克夫 |
吉本 | 7 | 世の中には誰からも必要とされないし、誰からも目を止められない人もいる。そうした人を食った達観した視点が心地よい。そしておそらくこき下ろしているのは宗教。このタイプの淡々とした作品もよいものですなあ。 |
久遠 | |||
迷い家 秋山亜由子 |
吉本 | 6 | 秋山一流の繊細さが感じられて良い。昆虫ネタから伝承ネタへの移行もまた必然か。幅を広げたのは喜ばしい限りなので、ぜひ生産力を上げて欲しいもの。 |
久遠 | |||
ヨダレくん 本秀康 |
吉本 | 6 | 本らしいホノボノした感じがよろしい。実はモテモテのヨダレくん、という設定も、本の作品の背後に流れる「やさしさ」を感じさせる。 |
久遠 | |||
蛇女 西岡兄妹 |
吉本 | 8 | おお、今回も正統派のラブストーリーじゃないか。最初はギャグまんがに進出か?とも思ったが、それを静かな、静かにならざるを得ない状況へ結び付けている。絵のよさに加え、最近はオハナシも洗練・整理されてきているのが興味深い。これも量産をお願いしたいところ。 |
久遠 | |||
玉姫様 菅野修 |
吉本 | 3 | 一応クライマックスへと向かっている展開。だがやはりオヤジが酒場で盛り上がる時事寸評という印象が否めないのがなんとも。もちろんこれこそがこの人の味なのだが、「根っこ」がねえ… |
久遠 | |||
TAKOあり ハッシャバイ シーガル 花くまゆうさく |
吉本 | 7 | このタイトルの巧みさたるや。80年代に優れたものがあったとすれば、それはアンダーグラウンドな要素をもったものにおいて。「探偵物語」などはその好例。そこには特有の美意識、飾らない「かっこよさ」があった。それに引っかからない人を取り上げながらも、花くまは最終的にはあの、懐かしい「かっこよさ」へと到達しようとしているようだ。そこに花くまの魅力があるのだろう。 |
久遠 | |||
順風 三本美治 |
吉本 | 4 | 今度は「ドイツ三本」名で漫画を描いて欲しいもの。「いいオハナシ」では食い足りない。 |
久遠 | |||
金魚の飼い方 鷹羽正臣 |
吉本 | 7 | …すぐに飽きるかと思ったら、思ったよりそうでもないようで。秘密は「頑固さ」にあるように思う。どう見ても尋常ではない信条を「これが正しいのだ」と貫徹するところ、そこにおかしみが生まれるのだ。 |
久遠 | |||
C-28 豊原二三夫 |
吉本 | 5 | 一見じつに少年漫画。それがどう「アックス」らしく展開していくのか。後編を待ちたい。 |
久遠 | |||
ワオンアパート 中野シズカ |
吉本 | 8 | 可愛い描線。トーンを重ねた立体感のある画面。これは面白い。特にトーンの使い方は今までのどの作家とも異なっている。逆転の発想といおうか。ただひとつ難をいうならソドミネタが(これをやりたかったのであろうが)余計。画竜点睛を欠く感があるがいい感じなのは間違いない。今後に注目したい。 |
久遠 | |||
須磨で 東洋作画会 |
吉本 | 6 | だんだんこの作品の読み方が分かってきた。それとともに感じるのはつよい痛み。絶対少年を描きつづけてきた作家は、すでに少年ではなくなってしまった。だが純粋に清らかなところにだけ透明通信が存在するわけではない。汚辱の果てにある逆転した清らかさの境地にも、透明通信は存在しうる。それを狙っての下品さなのであろう。だからノスタルジーや悔恨の情が必然的に関与してくる。…切ないことである。 |
久遠 | |||
哀愁劇場 東陽片岡 |
吉本 | 6 | 納税の義務があるのは理解しているが、時折その税額の高さに驚愕することがある。私も分割払いで20数万円を払った記憶がある。最近は所得税はなし、住民税も均等割りだけであるが。 |
久遠 | |||
黒寿司十八番 根本敬 |
吉本 | 3 | ちゃんとした漫画がたまには読みたいですなあ…。 |
久遠 | |||
双子のオヤジ しりあがり寿 |
吉本 | 6 | 「弥次喜多」が盛り上がっている一方で、こちらもじわじわと観念的になってきている。 |
久遠 |
<総評>
吉本 | 今回も好調。レギュラー陣がきちんと面白い作品を描いているのに加えて、楽しみな新人が現れている。 |
久遠 |
<ベスト>
吉本 | もうダメ、という感じの猟さんもいいが、ここは将来性を見込んで「ワオンアパート」にしよう。か、可愛い!ダジャレネタが多いのが気にはなるが。 |
久遠 |
Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:15:53 JST