漫画の鬼アックス6号
杉並探偵局 本秀康 |
吉本 | 7 | 本ワールド炸裂の作品。ちょっとしたところに目をむける、いや向けてしまわざるを得ない人間的な「小ささ」(別に悪い意味ではない)が実に微笑ましい。 |
久遠 | |||
ワイルドマウンテンライフ 本秀康 |
吉本 | 6 | こちらも同じ路線なのがよいが、町長のドス黒い欲望が見え隠れしてまたオハナシに深みが加わっている。 |
久遠 | |||
ジンバルロック 古泉智浩 |
吉本 | 7 | ダメ人間を描かせたらピカイチだね、この人は。それも日常に対する肯定的な視線があるからであろう。この視線を守り続けて欲しいものだ。特にこの雑誌では。 |
久遠 | |||
双子のオヤジ しりあがり寿 |
吉本 | 7 | ちとテンションが下がったか。実存を考える際にカミサマはちと余計だ。 |
久遠 | |||
東京ゾンビ 花くまゆうさく |
吉本 | 6 | もう少しオハナシを急いでもいいかもしれない。 |
久遠 | |||
新幹線一番! とんだばやし |
吉本 | 0 | この雑誌最大の問題作。はっきり私は言おう、こんなクソ作品載せてはならぬと。70〜80年代のガロのテイストを強くもっている作品であるが、今やそうしたテイストは時代遅れになりきっている。思うに当時ですら時代と絡むものではなかったのではなかろうか。その理由は簡単だ。自己満足に過ぎないからだ。罪は二重である。まずはこうした作品を青林工藝社という出版社にあわせて描いてしまう作者の心意気。そしてそれに応えてしまう編集の姿勢。過去のガロに戻ろうというメンタリティは即刻捨てるべきだと思う。なぜならそれは閉塞しか生まないからだ。悔い改めよ!! |
久遠 | |||
犬 河井克夫 |
吉本 | 7 | なんともマイペースな人だ。説明が一切ないところがまた好もしい。 |
久遠 | |||
クルクルキーキー キクチヒロノリ |
吉本 | 7 | 「スカートさん」同様、統一テーマがあるところがとても良い。今回は4コマとしても結構良くできているように思う。 |
久遠 | |||
大発見 辰巳ヨシヒロ |
吉本 | 6 | 個人的には新人発掘を主体にして欲しいところではあるが、こうしたベテランのすっとぼけたようなオハナシも悪くない。たまにはいいでしょう。何度もやるとムカツクが。 |
久遠 | |||
玉姫様 菅野修 |
吉本 | 0 | これも問題作の一つ。純粋にひとつの作品としてみたときにはそこそこ面白いのであるが(6点はつけられる)、連載させる、という姿勢には正直疑問を感じる。今迄のガロでも全然続かなかったではないか、この人は。加えてこの人は旧ガロの悪い面を(原稿料が出ないがゆえの甘えを肯定する→それでいて発表の場を要求する)体現したようなところがある。オハナシ作りの才能があるようにも見えないし。青林工藝社になって真っ先に切るべき存在であったように私は考えているのだ。だが連載をさせる。この心性は本当に納得できない。 |
久遠 | |||
東京ルリ子 村田千峰 |
吉本 | 5 | これはこれでいいと思う。 |
久遠 | |||
うれしいお正月 花輪和一 |
吉本 | 9 | …一方でこんなにいい作品を載せているのにねぇ。花輪を前面に出さず、出所を前にして暗くなる受刑者に焦点を当てているのがとても良い。ただでさえ強力な迫力を持っているのが、変化球によりより威力が増している。凄い作品だ。 |
久遠 | |||
心の悲しみ 西岡兄妹 |
吉本 | 6 | この人もガロ以来ずっと載っている人であるが、菅野ほど嫌味を感じないのはきちんと抽象化がなされているからであろう。…つくづく難儀な人たちだと思うが、結構実際に会ったらサバサバしていそうだなぁ。 |
久遠 | |||
空のそこ 石川次郎 |
吉本 | 8.5 | 紙一重の作品。極めて容易に菅野と同じエリアに入る人であるが、狂気のエスカレーションが感じられ危ういところで一般性の領域に踏みとどまっている。客観的に見たときは非常に面白い作品だ。髪の毛の描写が!!!! |
久遠 | |||
哀愁劇場 東陽片岡 |
吉本 | 7 | 愛、だ。意外と東陽の作品で多いのがこうしたホモもの。それだけ日常的な出来事だ、ということなのかもしれない。 |
久遠 | |||
星に願いを 大越孝太郎 |
吉本 | 7 | 人間のもつ暗闇やアルタード・ステイツに意識的な描き方には好感が持てる。定期的な掲載を望む。 |
久遠 | |||
黒寿司十八番 根本敬 |
吉本 | 6 | …おお、今回は結構ちゃんとした漫画ではないか。日常に潜む異質なる物を上手く描いていると思う。…ひょっとしてこれも日常なのかも? |
久遠 |
<総評>
吉本 | 今回は一見今迄の通りのように見えるが、重大な変化が見える。一口で言えば昔の閉じていた頃のガロに戻ろうという傾向が強く見えるのだ。掲載される漫画にしてもそうだし、コラムなども段々とその傾向を強めているように思う。これはきわめて大きな問題である。確かに旧ガロの熱烈なファンであった私から見ると、この傾向は歓迎できなくもないのだが、漫画そのものに対する扱いがぞんざいになってきているようにも見えるからだ。その背後にガロの正統性を主張しよう、という政治的なものさえ感じられるところもまた嫌らしいところだ。はっきり言ってこの傾向はまずい。邪念を捨てて、純粋にいい漫画で勝負するという、工藝社立ち上げの頃の心意気を取り戻して欲しいものだ。 |
久遠 |
<ベスト>
吉本 | 複雑な気分。確かにそれぞれの漫画は結構すぐれているのだが、私は強く気分を害しているからなぁ…。客観的に見たときに一番すぐれている「うれしいお正月」にしよう。 |
久遠 |