キューティーコミック2000年7月号

レヴュ担当 吉本松明
山田千里

灼熱地獄兄弟

安野モヨコ
吉本 今回は「5人娘」の番外。確かに詰んできた「5人娘」に距離をおくにはちょうどいいかもしれない。内容は非常に痛い。誰からも愛されない、誰に頼ることもできない人のさまを描くことによって、モヨコは現代の悲劇をつむぎ出す。
山田    
青とハニー

栗生つぶら
吉本 本格的な同棲に踏み切ろうか迷うふたり。極言してしまえばただそれだけのオハナシなのだが、栗尾はそれに付随する心の動きをきわめて丁寧に描き出す。思えば栗尾の作品はいつもそうであった。極小を極大に拡大するような顕微鏡的視点。それは一面大げさではあるものの、現代を生きる上で必要な視点であるように思う。主人公の女の子が小ちゃくって可愛いのもポイントが高い。
山田    
地獄のサラミちゃん

朝倉世界一
吉本 読者の要求に応えているのはいいのだが、やっぱり中途半端な印象が。ラブかギャグか、どちらかに寄せるといいと思うのだが。
山田    
ユカとまーくん

大倉かおり
吉本 いっしょに本屋で働くことにしたふたり。そこの店長はいい人なのだが、ユカに惚れぎみ。そして実は…という展開。まあありがちな猫的オハナシなれど、きちんとエンターテイメントにしているところに好感が持てる。で…エロは?エロを軸にしたシリーズじゃなかったっけ?
山田    
そどむ

小野塚カホリ
吉本 連載もすでに11回を数え、より拡大の一途。今まで短編、よくて掌編の作家であったためにやや戸惑うところではあるが、中心線からはぶれていないように思う。どうまとめるのか楽しみ。
山田    
ちきゅうのともだち

山本ルンルン
吉本 連続登場は嬉しいところ。今回はルンルン一流のブラッキーなネタは少ないものの、練り上げられた線は見ているだけで楽しくなる。次はクロいネタをお願いしますわ。
山田    
グッド・トリップ

大久保ニュー
吉本 カミング・アウトですか?ニュー先生?
と思わせるほど、男の子同士の恋愛感情をストレートに描いている。そも恋愛感情というものは「スイッチ」が入ってしまえば男も女も関係ないものだが、社会通念上よくないとされているパターンについては、抑圧が働く。それは一面で快楽を増すのだが、もう一方で切なさを作り出す。この作品は後者の切なさを実にリリカルに描いている。次はボーイズラブなんてどうすか?
山田    
最近どうよ?

黒田硫黄
吉本 まったくもってこの連載にはうならせられるばかり。硫黄ですよ、硫黄?内容も人を食っていて(肉を食う話だが)素晴らしい。トリは2センチ角だ!そして次はよりにもよってうえけんですか?ちょっとキテませんか?
山田    
スーパーミルキーボーイ

オーツカヒロキ
吉本 7.5 いつも彼女をとっかえひっかえしている男の子。それをたしなめようとする先生。この先生が超女顔で可愛いのだ。そんな先生に「スイッチ」が入ってしまい、ラブが燃え上がってしまう男の子…。か、可愛すぎるぜ、先生!絵で問答無用に語る、という漫画の特質を存分に使っているのが実に好ましい。そしてピロンタン先生らしく、最後にはブラッキーなオチをもってくるのも忘れない。面白いっす。
山田    
電光石火

かわかみじゅんこ
吉本 ああ!「ワレワレハ」ワールドはさらに広がるというのか!今回は歯医者のたまこ先生のオハナシ。トリックスターをうまく使って、たまこ先生の抑圧された思いを如実に描き出すこと!「Protect me from what I want」でも描かれたことであるが、今回は直接たまこ先生の過去を描くことによってそれが鮮明になっている。そして最後の1ページの迫力たるや。かわかみ先生はどんどん彼岸へと向かっておられる!
山田    
LOVE HOUSE

橋本ライカ
吉本 ライカらしいノリとスピードが感じられて良いではないですか。この調子。
山田    
ガーリーハイパーズ

藤末さくら
吉本  
山田    
夕日が丘

いわみえいこ
吉本 …。
やっぱりいわみえいこは評しづらい。もちろん以前の夢想的なオハナシに比べて格段に良くなっているのだが、やはりまだ表層的になっているように思う。この手のオハナシは直球勝負だけではダメで、おそらくは直球でないところに本当の人の心の動きが現れる。それに対していわみはまだまだ純真すぎるように思う。ただ、「もまれた」結果良くなってきているのは確かなので、メゲないでもっとズルくなってほしいと思う。
山田    
ハチミツとクローバー

羽海野チカ
吉本 何がいいってあなた、小ちゃくってコロポックルのように可愛い/だが実は実力ある彫刻家のはぐちゃんがいいのじゃあないですか。描写も可愛すぎ。周りの男なんて実はぜんぜんどうでもいいのが面白い。素晴らしい漫画です。
山田    
今夜も眠れない▽

かわごえさちこ
吉本 ディフォルメはいいのだが、こういう形の「力の抜け方」は、あまり肌に合わない。
山田    

<総評>

吉本 キリコ、Q太の不在はやはり多少マイナスに働いているが、あくまで「多少」にとどめているところが好ましい。オーツカヒロキ、大久保ニュー、羽海野チカといった、今までは中堅どころだった作家をうまく使っているのですな。結果として今までのキューティーコミックとは違った、いい意味で新鮮な感じのする雑誌に変わってきていると思う。今後も実力ある新人を積極的に活用して、「いま」の感覚を生かした雑誌作りをしてほしい。
山田  

<ベスト>

吉本 いつもならかわかみじゅんこなのだが、ここはやっぱりはぐちゃんに免じて「ハチミツとクローバー」にしなくてはならぬよ?はぐちゃん可愛すぎですよ?
山田  

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Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:15:59 JST