キューティーコミック99年3月号

夢に現れた彼女の手

篠有紀子

吉本 - キューティーコミックお得意のカラーでのファンタジイ。やや漫画という文脈では語れないように思う。雰囲気はいいのだが点数をつけるのは差し控えることにする。
久遠 5 ふーん、彼女のことを考えると夜も眠れないってか。若いね。5
ラブ・マスターX

安野モヨコ

吉本 9 シビレる作品、その1。好きになるのも嫌いになるのも何が原因かはわからない。そう、それは永遠の謎。それを解こうとしているのか、モヨコは。ハミオという狂言回しを上手くその謎にぶつけているのが意欲的であるといえよう。オコサマだけに読ませておくのは非常にもったいない高度な、そう高度な作品。刮目せよ!
久遠 8 そうか、毒を抜けば美形になるのか。じゃあ、砂浜に埋まるか。
CUTIE BEAST

三原ミツカズ

吉本 8 ふだんのミツカズにしてみるとやや弱い感(=普通にすぎる感)は否めないが、上手くキャラクタの造形ができていて微笑ましい。特に黒い方(一見怖そうに、デスげに見えるが実は気が小さく可愛い性格)の造形には訴えるものがある。次回にも期待が持てる。
久遠 5 よくあるパターンですね。少々どころではなく、かなり残念です。
ラブリー!

桜沢エリカ

吉本 2 オコサマにはこの程度でもいいの?
久遠 6 やはり人類は滅亡しますよ。地球のアンゴルモアエネルギーが爆発するんです。
地獄のサラミちゃん

朝倉世界一

吉本 6 確信犯的にやっているところが好ましい。けっこう支持されているのもそのスタンスならではか。
久遠 4 バーズにおけるツンドラパンチですか?
南瓜とマヨネーズ

魚南キリコ

吉本 8 久しぶりの登場。内容はインターバルがある分さらに深く、追いつめられたものになっている。逃げ道なし!のーふゅーちゃー!とても「ハルチン」と同じ作者とは思えない。
久遠 8 ノーフューチャー!もう二人は手に手を取って青海川の駅で心中するしかありませんね。
夢の温度

南Q太

吉本 9 シビレる作品、その2。14歳という微妙な(性的にも内面的にも…おそらくはその相乗効果で)年頃をきわめて力強く描いている。徳目は二つある。兄が好きなため他の男が好きになれない妹、という「羊のうた」にも通じる緊張感。そして洗練されきった美しい絵柄。特に絵のちからはゆらさん出産後きわめて強まっている。まったく目を逸らすことの出来ない素晴らしい作品。
久遠 8 柔道か・・・。ところで浦沢直樹は、あのくそ女を著作権の侵害だ、とかいって訴えないかなあ。
保健室のまりあ様

下地のりこ

吉本 6 こういうくだらない4コマがひとつあるだけで雑誌の雰囲気が大きく良くなって見える。くだらないエロネタなのが微笑ましい。
久遠 4 保健室の先生って、基本的にババアですよね。
TELEVISION

山本ルンルン

吉本 7 こちらにも来たか。内容は以前のとおり、諧謔精神にあふれていてよろしい。それに何より統一された絵の世界があることがとてもよろしい。連載とはいわないものの、もっと多くの作品を発表して欲しい人だ。才能はあるのだから。
久遠 8 トゥルーマンショウでも見ましたか?
花粉航海

小野塚カホリ

吉本 9 シビレる作品、その3。成長期の小学6年生を誘惑する隣の女子高生のお姉さん…というシチュエーションにまずはグッと来るではないか。そして女の子のほうはもうイノセントな時期には戻れないことを、大人になってしまったことを嫉妬して、彼を暗闇にからめとろうとする。ここでのセックスと暗闇との結びつけは、描写がきわめて淫靡であることもあって、強い説得力を持って読者に訴える。テーマは「センチメントの季節」と同じなのだが、こちらのほうがエロに対して素直である分、読ませる。
久遠 8 俺様ちゃんもこの頃膝がギシギシします。寒くなったり、季節の変わり目はいつもこうです。身長のびますか?それともリウマチですか?
3Dマテリアル

藤末さくら

吉本 6 ヴァージンを捨てたくなる女の子の気持ちというのは分からないのだが、初めてつきあってみたときの世界の広がりは何だか共感するところがあって面白い。
久遠 6 そういえば、この頃目を奪われるような可愛い娘っていませんね。見てみたいものだ。
いいわけ

いわみえいこ

吉本 3 もう少し内容を凝縮することができるのではないだろうか。情報量が足りない。
久遠 4 そうですか。
ワレワレハ

かわかみじゅんこ

吉本 5 絵柄にせよ、展開にせよ、まったく訳が分からなくなっているのは何故?乱雑、混乱、視線移動への配慮もなし。ここには何らかの意図がありそう。一方でこの混乱はグルーヴ感を醸し出している。いろんな意味で注目すべき漫画。
久遠 7 今時の中学生は怖いね。ところで町中でスケボーやってる人って、邪魔じゃありませんか?
ニュー・ワールド

大久保ニュー

吉本 7 うむ。絵こそやや崩れてきた感があるが、内容は独特の「持論」があってとてもよし。こうした人を喰ったような観点は非常にこころ暖まる。「サブカル雑誌見て「ヘドが出る!」とか言えなくなるよ!」ってのがよい。
久遠 7 うむっ、暴言を吐くっていいよね。それを受け止めてくれる友人を持つっていうのは難しいけどさ。

<総評>

吉本 …信じ難いような全体のレベルの高さ。一歩妥協しているフィールヤングより(とはいっても編プロは同じだが)焦点が絞られている。作家の選択や編集方針などにそれは見ることができる。対象としている年齢層に対して「いい漫画を読ませよう」という情熱のようなものさえ感じられる。こうした漫画を読んで育つ女の子はちいとは人生に広がりがでるだろう。対象年齢層以外にも強力におすすめできる雑誌。特に漫画好きは必須。ていうか命令。「読まないことは許されない」(水木風)。
久遠 面白いですね。2,3ヶ月読んだ記憶がないけど、それでも楽しめる形式なのも、良し。

<ベスト>

吉本 「ルサンチマンの季節」を茶化しているかのようにも見受けられる「花粉航海」にしよう。ナリコは覚悟が足りないのだよ。あるいは青年誌ということで、ポーズをつけ過ぎなんだよ。まあそれが面白いところではあるのだが。
久遠 にゅー、難しいところだが、ルンルン(バンバンの妹)にしましょう。

Back