CUTiE Comic 98年11月号

    吉本松明 久遠永遠
ラブマスターX

安野モヨコ

姉を追い越そうと、美少女ユリナは強烈に権力志向を強める。そして姉の恋人であった落ち目のロッカー、マイジを取り込もうとする。一方、主人公のナオはあこがれの先輩とラブラブ関係になれて幸せ。それに呪いをかけるオタクのストーカー… 相変わらずではあるが猛烈なスピード感。まずそこに感心するが、それだけでなくそれぞれの登場人物のラブが猛烈に錯綜し、有機的に絡み合っているのが凄い。そしてひっくり返るようなストーカーの造形。やっぱモヨコは凄えわ。 よおしっ。爪と髪の毛を手に入れて、鴉に食べさせるンだっ。そうすれば、貴方の思い人も、イチコロよ。(殺してどーする)
HAUNTED HOUSE

三原ミツカズ

今日もホラー大好きなデス系家族にからかわれまくる常識人のサバト(!)君。耐えかねて堅物の委員長に泣き付くが… 強烈なギャグではないものの、じわじわと楽しめる佳作。硬質な描線で阿呆なオハナシをやるところがいい。センスを感じさせることこの上なし。やっぱミツカズはいいわ。7.5 あの黒髪美人はどこに行ったんだあっ。姉ちゃんのしゃべらない方がいい感じ。
一週間

小沢真理

喫茶店でバイトしているいりす。紫色のカシミヤのカーディガンを衝動買いしてしまう。夕方バイトに行くと、常連のモリくんが同じ色のニットキャップを被っていた…という絵物語。 2ページ目にしてすでにオチがバレバレであるが、良い雰囲気はあると思う。やっぱカラーはいいわ。 月曜日めでたく生まれたよー。火曜日学校優等生。水曜日・・・・。
塀の上で

小野塚カホリ

主人公の「あたし」(女子高生)は彼氏に体を迫られて、どうしたら良いか分からなくなっている。夏休み、田舎に帰った彼女は、圧倒的に大人の雰囲気を持ったエロ小説家の叔父に再会する… 「ニコ・セッズ」を読んでしまったのでやや物足りなくはあるが、神経質な描線と、論理に還元できない主人公の描写にはグッと惹かれるものがある。やっぱ自分の線を持っている人はいいわ。6.5 嗚呼、久しぶりに胃が痛くない。まあ、気は重くなるんだけどね。
コーヒーアンドシガレッチョ

やまだないと

カップルと部屋をシェアしているミキは何となく気まずい。そんなとき、ミキは憎からず思っているオビヤが転がり込んでくる夢を見る。 ……ないと先生!何ですかこのオハナシは!……やっぱ急いで作ったオハナシはまずいわ(例・ぐるぐるジャングる)。3.5 いいなあ、座り心地の良さそうな椅子なら欲しいなあ。
純情回路

藤末さくら

里央は友だちに紹介された伊都くんとラブラブ関係にある。しかし時折すれ違うサッカー部の男がとても気になる。それもこれもささいなこと? 主人公がその男にさっさと乗り換えてしまう、と思ってたら違ったので感心。簡単に結末に持ってこないところがなかなかよい。やや展開にぎこちないところがあるが、姿勢の良さは評価できる。やっぱ勢いのある新人はいいわ。6.5 何故におなごというのは授業中にメモを回すのであろうか。永遠の謎の一つであるな。
CLOSE CLOTHS

中野サトミ

女子高生のあづきは、服好き(裁縫好き?)がこうじて古着屋でバイト中。店の近くのCD屋の店員にあこがれている。ある日クラブに遊びにいったら当の彼氏がDJをやっているのを目撃する。 本当に服が好きだ、という女の子の姿は良く描けているとは思う。ラストがありきたりのBMGものになってしまったのが非常に残念であるが。やっぱクリーシェは駄目だわ。 ・・・・・・つい先日、その気をプンプンさせた白人のお兄さんから、肩に手を回され「英語教えてあげましょうかあ」となれなれしく話しかけられました。
地獄のサラミちゃん

朝倉世界一

iMacを買ったサラミちゃんは芸能プロダクションを始めることを決意する… 確信を持ってへっぽこな漫画を描いているところは良いと思う。結構軽視されてしまいがちではないかと思うが、良いところは突いていると思う。やっぱ世界を持っている人はいいわ。 む、却下。面白くないね。
スラング

橋本ライカ

ミツオ(女)はテレクラで出会ったセイタが気になる。セイタが浮気しているのを知ってしまうが、思いは逆に募ってゆく… 整理された線は、やや個性に欠けるような気がしないでもないが、光るものを持っている。もうちょっと深みが欲しいところではあるが、オハナシの構成も悪くない。やっぱ現代性に接している人はいいわ。 俺様ちゃんは、芸術性を高めるためにLSDをやりたいなあ。
ゆらゆら

南Q太

主人公に結婚を迫る不倫相手のバイト先の店長。主人公は全身でそれを拒否する。そのとき彼女は思う。この人をもう好きではないんだなあ、と。 最近のQちゃんはさらに線が洗練されてドキリとする。特に扉絵の力たるや!全体的に白い絵だが、線の魅力がそれをカヴァしている。出産後も衰えぬこのパワー、感嘆するものがある。やっぱゆらさんはいいわ。7.5 ああ、そうか。ゆらさんか。だからか。SABEよりも描いているということは、やっぱり原稿料が違うんだろうなあ。

<総評>

●吉本 まだ足元のおぼつかない新人たちを有力な漫画家たちが引っ張っている、という感じ。確かに明確にレベルの差が見て取れる。だがそれでも積極的に新人を登用しようという姿勢が見られるのを評価したい。見込みのある新人がいるようなので、今後伸びるのではないか。まあ、その前に、ありがちなオヤクソクの世界と明確な一線を画す必要があるかも知れないが。
●久遠 良いとこついてくるんだけど、柱以外のスマッシュヒットがないなあ。少々惜しい感じだねえ。

<ベスト>

●吉本 やっぱさべちんはいいわ、ちゅうことで「ゆらゆら」にしようかとも思ったが、やっぱ藤原紀香はいいわ、ちゅうことで「ラブマスターX」にしよう。え、意味不明?
●久遠 柱が盤石なだけに、それ以外で選ぶとなると、恋愛回路でしょうかねえ。

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