フラミンゴ 98年10月号

<総評>

●吉本 それぞれの作品はいいのだが、完全に執筆陣が固定化した印象。この編集方針では新人が捕まりにくいのはよく、よーく分かるのだが、ややマンネリ気味なのも確か。積極的に登用をはかって欲しい。当然作家に逃げられない努力も。しろみを手放してはいかんぞ!!
●久遠 はっ?いかんっ。「なんか今月はうすくちだなあ」なんて思っている俺様ちゃんが確かにイるっ。うにゃあ。

 

   

吉本松明

久遠永遠

白羊宮通り

香愁

水の塔に住む女は体が朽ち果てつつあった。それも、迫ってくる交際相手にあてがうための「影」を魂をもとに作ったから。そして彼女は「影」に再会する。 端麗な描線と美しいカラー。それでいてフラミンゴに似合っている濃厚さ、ここでは耽美主義。こういうのもいいね。 よい。好きだなあ、こういうの。フラミンゴ読んでて、初めてだなあ、この気持ち。

鰤てり

再婚して新しい父親がやってきた家庭が舞台。父親はふだんは優しいが、夜になると自らのサディズムをむき出しにする人間だった。姉、カンナは妹、ミズキを守るために、いやいやながらも体を父親にあずける。 絵が少々アンバランスに見えるが、徹底的な暴力の描写はよい。カンナが絶対に暴力に対して心を許さないのもよい。後味は最悪だがそこに逃げはない。まんが大明神で逃げたりはしないのだ。次回はもっとやり切れない展開になりそう。楽しみ楽しみ。竹+ 実際の所、レイプというものは、見ず知らずの相手にされるよりも、義父だの、義兄だの、友達と思っていた人などからされることが多いんだそうです。皆さんよっぽど溜まってるんですね。
VIOLET

しのざき嶺

主人公、来栖川(男の子)は、新薬の実験のバイトに参加する。迎えたのはぼーっとした感じの女医。主人公はペニスや肛門の写真をとられ、精液も採取される。そして殺風景な、分娩台のある病室に案内される…。 前作Blueが中途半端に終わった分、今回は気合いが感じられる。本格的に性の障壁を乗り越えようとしているのだ。To Heartの形を借りていることからも、それを感じることができる。物凄く期待大である。松− 来栖川先輩はこんなに話さないんだあっ。にしてもそのまんまだな。ところで、嶺先生は、某即売会で、某メイドロボの耳をつけて、ご本を販売してらっしゃいました。梅もしくは松
いたずら犯婦(レイプ)

1ROO

主人公は28歳の中学校の女教師。若いチンポの群れを前に常に欲情している。そして一人の男子生徒をターゲットにし、徹底的に犯す。 …とまあそのままのオハナシであるが、ねちっこい描写は訴えるものがある。ただ、「乳子」を読んだ後ゆえ、パワーダウンは否めない。残念。 ジャンル的には、これはショタものになるのかなあ。まあ、どうでもいいや。
Bi.t.ch

ウサギの月

葵はジャーナリスト。失踪した先輩の意を継いで、少女誘拐組織の謎を追う。その組織はとらえた少女をタレントそっくりに整形し、多額の報酬を得ていたのだ。葵は組織の犯罪を一部暴くことに成功するが、罠にはめられとらえられてしまう。そして手足を切断され、滅茶苦茶な改造を施される… あっさりしたきれいな描線なのに、描いている内容は異形、のひとこと。蛇のようにのたうつ舌!乳首!クリトリス!ものすごい異化効果がここにある。表現したいことと線のあり方が乖離しまくっているが、それがまた特殊な大バロック感を作り出している。おそるべき漫画。 絶対に不可能だと思うんですけど。人体改造して何が楽しいんだか。
バージェスの乙女たち

蜈蚣Melibe

娼館ユグドラシルの手に落ちたアノマロカリス。それを取り戻すようバージェスを説得するアイシェアイア(胸の谷間に性器がある有機人形)。バージェスは説得に負け、アノマロカリス奪還を決意する。 ここにあるメンタリティにまず(相変わらず)感服する。あまりに完成された、追随するものなき美意識。何処まで本気か何処まで冗談か分からない、しかし実は大マジなストーリー構成。頭がくらくらする。この調子で連載をすすめる様なので期待できる。竹+ ををっ、今月ものってるっ。まあ、今月もピンクハウスが出てこないからなあ。竹の下
girl Hunt

海明寺裕

保健の先生に「優等生クラブ」に入ることを命じられた主人公。そのために必要な首輪、ハーネス、レオタードを買いに町に出る。そのレオタードはまさに紐であった。 今回はさらに引っ張ること。さすがに優等生だけあってなかなか「堕ちない」ねぇ。完全に作られたK9世界、そうであるがゆえに様々な要素が介入しうる。そこを先生は楽しんでいるのだろう。 うーん、ぢつは海明寺裕は引き出しが小さいのかもしれん。
フィリピン大攻防戦

駕籠真太郎

深町1等兵は慰安戦車(主力兵器である戦車の欲求不満を舌技で解消する)に改造されることが決まっている。この世界では兵器は全て巨大化した女体で作られているのだ。改造される前、深町は上官である白倉と同性愛関係にあった。彼女らは激戦地であるフィリピンに送られるが、途中輸送船が撃沈され、アメリカ軍の捕虜となってしまう。レイプされる白倉を前に、深町は敵の戦車の慰安に同意する。 ここにあるのは深刻なアイデンティティ・クライシスだ。駕籠はあえなく負けてしまった日本に、日本軍に強い嫌悪感を抱きながらも、日本のナショナリズムにも強く惹かれている。アイデンティティを求めたくても求めたくない、このジレンマが、この物凄い怪作をなさしめているのだ。間違いなく今年のベスト5に入る強烈な作品。興味のある人に言おう、読め、と。松松 すげえなあ。どういう脳みそしていればこういう設定思いつくんだろうなあ。ぢつは、これが真編紺碧の艦隊だったりして。
おめでた▽

町野変丸

ついに妊娠してしまったゆみこちゃん。だんだんと変化してゆく体。それとはお構いなしに、いつもの調子でたくさんセックスしますよ。 きちんと女性の体の線を描ける作家だったのだなあ、変丸は。ゆみこちゃんが美しい。 やはりこういうオチできたか。まあ、いろいろ話し考えるのも大変なんだろうしなあ。
FRIENDS

北原武志

性的なものに徹底的な嫌悪感を抱いているめぐみの妹・なぎさ。が彼女もレズ集団の手に落ち、明子の手によって屈辱的な性行為を強要される。駆けつけためぐみは明子を殴りつける。「友だちなんか見えないよ、どこにも…」 さらに、さらにやりきれない方向へと、後味が悪くなる方向へと突き進んでいる。その容赦のなさには暗い気持ちになりながらも、そこにうごめく「そうしなくてはいられないこころ」に深い感興を覚えざるを得ない。竹+ もう解放してやれよ。
笑って▽ぶたぱん

白井薫範

ぶたぱんはきつねの飼い豚になることを同意する。秘部を全開にして忠節を誓うぶたぱん。そこに自分のおさげ髪で作ったディルドーが挿入されてゆく。 …とまあ、常人の趣味範囲を軽々と超越した特殊中の特殊作品。単なるプランパーとも言えないところが恐ろしい。いつか語られるときが来よう。 はあ、ふう、ほえ。
飢え

海野やよい

主人公の男は彼女を深く愛している。が、彼女の愛にどうしても疑問を抱いてしまう。露出プレイをしたりして具体的な証拠を欲しがるが、疑念は増すばかり。ついにはスカトロプレイに走るが、結局彼女の真意は分からない。 追いつめられてゆく彼氏の心理が前面に押し出されているのが良い。地味な、そう地味な作品ではあるが、良質のサイコホラーとなっている。絵の妖艶さも相まって良い印象を受ける。竹+ 海野やよい先生はでぶっていうかんじではなくって、ガタイが良いって言う感じの人でしちゃ。

<ベスト>

●吉本 本文中でも述べたとおり、もの凄い作品がある。この作品はベットリと漫画の歴史に、小さいながらも残るであろう。大怪作の「フィリピン大攻防戦」だ!!!
●久遠 そりゃあ、白羊宮通り意外考えられようか?いや、考えられまい。

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