ガロ 2000年4月号

ねこぢるうどん

ねこぢるy
吉本 山野お得意のガイキチ登場でいい方向にオハナシが混迷している。ただちとレイヤーの使いすぎ(?)で、画面が見づらい感じ。ハーフトーンのほうがメイン、という作画方法は、CGの圧倒的な普及により今後増えていくのであろうが。
久遠    
無神経かさねが渕

丸尾末広
吉本 怪談をモチーフにした作品。かつて按摩から金を借りた男。しかしもはや借りることはできない。按摩を殺害して金を強奪しようとするが…といった基本的な筋は「怪談累ヶ渕」と同じなのだが、丸尾ならではのエロスが加わり、実に禍禍しいものとなっている。やっぱり丸尾が載ると雑誌全体が締まって見えますな。
久遠    
スイング シェル

津野裕子
吉本 10 父の小説の中で語られる「わたし」の生い立ち。それは真実なのか創作なのか。そして次第に明らかになる父の意図…。前作『エリクシル』でもそうだったのだが、最近の津野のオハナシは、隠されたエロスが濃厚に感じられるところに特徴がある。思えば旧ガロのおしまいの方で掲載された『Taste of Honey』の連作から、津野はエロスのアレゴリーを実に巧妙に使うようになってきた。そしてその傾向は最近恐ろしいまでに高まっている。また、それをいつもの流麗きわまりない描線で描くのだから、衝撃力は高まる。洗練と優雅さと直接的でない語り。最高級に持ち上げてもよい要素をこれほどまでに兼ね備えている作家は他には本当に数えるほどしかいない。来月も(連載だよな??)強く期待。
久遠    
大阪ダンジョン

川崎ゆきお
吉本 自らのアジトの地下にあるダンジョンに潜入する猟奇王。そこで遭遇するのは…。すでにロマンは現実ならざるところにしか存在しないことが良くわかる。あるいは、現実をロマンに造りかえるか、である。それにはイリンクスが必要だ。
久遠    
天国に結ぶ恋

大越孝太郎
吉本 時は大正末期、医者である宇佐美は、知人の双子の兄妹を診察する。兄の方は元気なのだが、妹の方は生まれたときから意識がないのだ。その二人は実は…という衝撃的な(じゅうぶん想像がつくものであるが)プロローグ。そうした小道具を「天国に結ぶ恋」というイメージ喚起作用の強いタイトルと結びつける方法は興味深い。大越のことである、本歌取りも上手くやってくれるであろう、連載がきちんと続けば、だが。頑張って欲しいもの。
久遠    
いぬちゃんの20世紀

加藤賢崇
吉本 私が最初にパソコンを買ったのは1993年のことであったが、まだ5インチは現役であった。98の神通力もあった。何もかも懐かしい。恐らくそれは賢崇のノスタルジーでもあろう。オハナシにリアリティがあるのが微笑ましくも楽しい。
久遠    
招く猫

やまだ紫
吉本 ちょっと今回は電波系?どうしたのですか。
久遠    
今日は大負け

蛭子能収
吉本 有名人であるところの自分の経験が反映されたであろうオハナシ。手抜きであることは変わらないのだが、無意識過剰のありさまがかつての古き良き蛭子に戻っているようで結構楽しめる。
久遠    
ちゃらいぜ!吉田くん

スージー甘金
吉本 やっぱりキックスケーター、ていうかキックボード、ていうか…
久遠    
ヨーチA

Q.B.B
吉本 ヨーチAが毎回新しいネタを繰り出してくるのが非常に微笑ましい。加えて翻弄されっぱなしの主人公(幼稚なオトナ?)の無意識的なこと。半ば自覚しつつどこか無自覚的な使い方が心地よい。
久遠    
父のいなか

みぎわパン
吉本 まだまだ続きます、田舎シリーズ。今回は不思議なこだまとピンホールカメラの虫食い穴と狸と枝豆。すっかり我々にとって他者になってしまった自然と、シュルレアリスティックな認識のさま。やっぱり線は好きになれないが、ぐらぐら感覚は好ましいところ。
久遠    
テロル

三本美治
吉本 おお、三本がオタクネタに手を染めている!オタク的、アニメ的な絵柄とははるか遠く離れきっているのに、ネタはオタク男がオタク女を思うがままにしようという優れてオタク的なもの。オタクとは一線を画しつつもオタクに接しなくてはならないというオタク的状況に対するアンチテーゼといえようか。そして展開はいつものように爽快。そして人を食ったようなオタク女の思い…面白いじゃないか。オタク
久遠    
漂流教師

パルコキノシタ
吉本 自らの経験から語るにしても、それをそのまんま提示することは洗練されていないことである。
久遠    
産院ミドリゴ

キクチヒロノリ
吉本 いつものような「何が何だか分からない展開」なのは変わらないのだが、ライバル登場で俄然盛り上がっている。短大とかにホントに良そうなライバルの造形にニヤリ。
久遠    
恐怖博士の花嫁

逆柱いみり
吉本 10 「反社会的限定しりとり」、これに尽きる。いきなり「悪魔崇拝」だもの。そして延々とミニマル的に続けられるしりとり…たまらなさすぎ!
久遠    

<総評>

吉本 今回は丸尾、津野、大越、みぎわ、いみりと、旧ガロからの人材が存分に実力を発揮した作品が揃っていたので、実にテンション高く読めた。初期のタマ不足も解消されてきたようで。旧ガロからの人脈を活用するだけでもかなりテンションの高い誌面づくりができるはずなので、まずは旧ガロの人脈をきちんと押さえるところから初めてほしい。もちろん新人登用も忘れて欲しくないところであるが。
久遠  

<ベスト>

吉本 それにしても津野裕子の作品の凄まじいことといったら。誉めるべき要素がふんだんに盛り込まれているのだもの!この調子で連載、単行本化を!
久遠  

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Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:16:05 JST