ガロ 2000年5月号

レヴュ担当 吉本松明
久遠永遠

ねこぢるうどん

ねこぢるy
吉本 さらに殺戮を続けるころぺた号…。あんまり長く続けるのではなく、次のオハナシも読んで見たいところ。
久遠    
ルオーの前で

菅野修
吉本 うーん。「AX」でも感じるところだが、やはり新しい革袋には新しいぶどう酒を、と思う。
久遠    
鱗粉薬

津野裕子
吉本 やばいテンションの夢日記もの。最近は特に性的なメタファを縦横無尽に使うので危険きわまりない。場面展開の鮮やかさ、描線の流麗さは言わずもがな。はやく単行本を出してくれ!
久遠    
無神経かさねが渕

丸尾末広
吉本 原作と同様の展開をたどりながらも、あっさりと「これでいいの?」という感じに落としている。気にさえしなければ恐怖は恐怖にはならないんだものなあ。その人を食った展開がよろしい。尻切れトンボこそ丸尾の徳目??なんて思ったりして。
久遠    
大阪ダンジョン

川崎ゆきお
吉本 とうとう現実世界を抜け出して隠れ里に移り住む青年。そして猟奇王も現実を抜け出していく…。隠者の快楽。そういやウォールデンは危険人物だった。それと全く同様のレベルで、川崎先生も危険である。
久遠    
天国に結ぶ恋

大越孝太郎
吉本 美しい描線と猟奇的なオハナシ。今回は社長令嬢もキャラクタとして登場。大正時代の爛熟した雰囲気と、関東大震災後の不穏な雰囲気の同居。意欲的な連載である。
久遠    
いぬちゃんの20世紀

加藤賢崇
吉本 今回はいぬちゃんたちの他に3匹のどうぶつが加わる。時代は「若大将」…。続きものという展開は面白い。
久遠    
招く猫

やまだ紫
吉本 ペットロスの切なさは私も痛切に感じるところ。特に猫をモチーフに描いてきたやまだにとっては、その喪失の大きさは相当なものであろう。その痛さに同情するとともに、それをちゃんと作品に反映させてほしいとも思う。なぜなら、その痛みこそ漫画のよさを生み出すのであり、今後出版されるであろう単行本の中核となる作品になるだろうからである。
久遠    
父のいなか

みぎわパン
吉本 いなかの情景だけを描くのではなく、ちゃんと幻覚的な描写を取り入れている。この現実と非現実の融解感覚が実に心地よい。ようやく慣れてきた、という感じ。
久遠    
ヨーチA

Q.B.B
吉本 イラついているお父さんの心が狭くなっているのがいいじゃないですか。そして久住特有のしょーもない視点。ヨーチAの使い方も手馴れてきている。面白くなってきたじゃないか。
久遠    
ちゃらいぜ!吉田くん

スージー甘金
吉本 花粉症をなめてはいけない、ちゅうことですか?ポップな描線は相変わらず。
久遠    
これが私のステータス

クボサチ/クボイミサ
吉本 6.5 大和堂ガロ初の入選作品。サタデーナイトフィーバー部は、全員トップレス。練習のときも、試合のときも。試合のときはニプレスを貼るが、当然ちちがぶるんぶるん揺れて…と。くっだらないですなあ。一見描線が女性漫画っぽく、リアル方面に寄っているのに対し、内容はこの上なくしょーもない。ガロ的じゃない、という人もいるかもしれないが、ばかばかしくて面白い漫画なのは確か。これからもどんどん新人を取り上げていって欲しいもの。
久遠    
祈る会社員

蛭子能収
吉本 会社が宗教を信仰することが流行していた。そんな中で無信仰を表明する主人公。すると他の会社員からの襲撃を受ける。その展開はまさにエビス流なのだが、やっぱり尻切れトンボ。やる気が感じられないのが良いところなので、これはこれでいいかも。
久遠    
テロル

三本美治
吉本 今回はアイスホッケーが舞台。プロリーグはあるものの、イマイチ人気のないアイスホッケー。西武の力を使い、松阪を引き入れて人気を取ろうとする。そしてカタストロフ、といういつもの展開。実在するネタの使い方はやっぱりそのまんま過ぎてアレなのだが、そこからカタストロフに向かうシーケンスと、カタストロフの描き方そのものが実にエラン・ヴィタルでいいのですな。松阪は再起不能にされるし。人を食いまくったラストもまたよし。
久遠    
産院ミドリゴ

キクチヒロノリ
吉本 どんどん加速している。今回は主人公とおぼしきふたりさえ出てこない。新たなキャラクタを手に入れたキクチが楽しそうに、筆の赴くまま描いている様子がよく見える。勢いがありますな。
久遠    
恐怖博士の花嫁

逆柱いみり
吉本 10 ノコギリ男に改造される恐怖博士の花嫁の家来。ヒーロー・ドリルライダーマン。ライダーカードにドリルガールよし江。昔懐かしい特撮番組の世界のテイストが正面に出ている。扉絵の美しいことといったら!また展開の突飛さや、「イヤな事」方向への想像力の羽ばたきが飛びぬけているのもよろしい。至福のひとときが味わえる作品。
久遠    
漂流教師

パルコ木下
吉本 生徒をものとしてしか見ない教師。それに反発するパルコ。それはそれでいいと思う。きちんとオハナシとしてまとまってもいるし。問題はそれにどう反応し、どう行動を起こすか。「だから芸術家になりました」と逃げて欲しくないもの。
久遠    

<総評>

吉本 5号目にして初の入選作品の掲載。また漫画も戦力が揃ってきた印象。菅野修はやっぱり避けるべきだと思うが、ほかの作家はレベルの高い作品をコンスタントに発表するようになってきている。津野、大越、いみりと、連載陣が好調なのも好ましい。次はガロの特質であった新人登用をどうするか、であろう。
久遠  

<ベスト>

吉本 「これが私のステータス」にしよう。くっだらないお話を端正な線で描くのは、反則ではあるが面白い。次回作も読みたいところ。
久遠  

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Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:16:06 JST