変玉創刊号(98年6月号)

<総評>

●吉本  あからさまなサブカル指向。トレヴァー・ブラウンの起用、村崎百郎、下関マグロの文章などからそれは痛いほどよく分かる。ったく、どうしてこうサブカル野郎どもってのは高慢なのかね。人の知らないことを知ってるから偉いとでも思ってるのかね。(だが村崎のほうは節制がきいていていい文章だった)
 それはそれと。マンガのほうの編集方針は明確で、サブカルの良い面を上手に取り込んでいて非常に好感がもてる。人間の内面性への追及がよくなされているのだ。加えて絵の面でも達者な人が多く、見た目の面でも得をしている。ちょっとサブカル臭すぎて読み手が引いてしまうところもあるが、この調子で強力な漫画を載せ続けてゆけば、かなり凄い漫画誌になると思う。願わくば漫画のほうの編集方針が変わりませんように。次号も大注目。
●久遠  軒並み良いなあ。アッパーズなんかに比べると、よっぽど良いなあ。でも、ショタ度が高いのがなあ。俺様ちゃん的にはなあ、ちょっとなあ。

(▽はハートマークの代用)

  吉本松明 久遠永遠
τ −タウ−

しろみかずひさ

10 しろみの暴力性は、不可避で、やり切れない喪失の悲しみに基づいている。それはオハナシの痛ましさを倍加させ、人をうつ。「喪失」を歌う現代の「悲歌」の歌い手、しろみ。漫画読み必読の一作。 7 銀河鉄道の旅の途中なのだろうか。永久に存在することは拷問にすぎないのか。悲しすぎる。
少女ゲルニカ

肴耶珈暖

7.5 そんなにヤルタ=ポツダム体制が嫌いかね。いや、単にWWUが好きなだけか?オハナシと絵には高度なセンスが感じられる。まさにあびゅうきょと同じ鋭さだ。 5 2ページにしてオチが読める作品。まあ小綺麗な絵と、叙情詩的な作品に免じて及第点かな。
幼年 −Childhood's End−

きゃらめる堂

7.5 これももう一つの喪失のオハナシ。「少年」はあらかじめ時間と片足を失っている(丸尾≒寺山だねぇ)。母はそれを埋めようとするが、どうやっても埋められるものではない。そこに横たわるのはどうしようもない絶望と透明な悲しみ。 2 よーわからん。俺様ちゃんショタは好きくない、いや、嫌いだからなあ。
警部くん▽

町野変丸

5 えー、今回はどでかいチンポとかないの? 6 ををっ、珍しくきちんと話がオチている気がする。
嗚呼!!人生薔薇色▽

浅草寺きのと

6 きれいな絵だねぇ。ただ登場人物が多すぎて盛り沢山過ぎる気が。すけべえなのでいいんだけれど…。 5 うーん、これぞオタク男の夢か。冴えない男に複数の美女が迫る・・・か。使い古されてるなあ。絵は完成されているが・・・。
狼少年

藤真拓哉

8.5 最後のオチは素晴らしいんだけれど、それを生かすためには提示する情報を制限しなくっちゃいけないはず。もう少し慎み深ければもっと凄い作品になっただろう。それでも標準をはるかに超えた作品。 6 独善的で、自己中心的で、自己完結なのがいかにもナルキッソスだなあ。濃密な絵ではある。
SECRETLIFE

玉置勉強

- イラスト集なので採点は差し控えるが、実に好もしい暗黒イラスト。いい。惜しむらくはこうした題材もやや陳腐になりつつあることか。 6 壊れたおなご達がいい感じ。
デビル

てくてく

7 ありきたりのショタものかと思いきや、救いようのないラスト。ひと味違う作品。 3 ショタその2。それにしてもなんか無理矢理なオチやなあ。
花日記

戸隠イズミ

9.8 少しづつクルってゆくのが実に実に心地好い。晴れた日にはヒューロン湖を爆撃、雨の日にはスペリオル湖を爆撃だ!すげえ才能! 9 ぐるぐるの瞳がとってもヤナ感じ。2ページ目からの話の急転直下がとってもいい感じ。
夜より深く

宮下未紀

7.5 漂白された「羊のうた」。オハナシに逃げはなく、単体としてみるとかなりの出来なのだが、冬目景のような「凄み」の域には達しない。惜しい。 6 画面の白さが濃いのが続いた分だけ読みやすい。綺麗な線だけど、キャリア長いのかなあ。
特捜刑事マルサイ

大越孝太郎

7 マンガというより絵物語か。さすがに多少の違和感はぬぐえないが、サブカルの匂いのぷんぷんする本誌ではそんなに浮きまくってはいない。ナカミも面白い。 6.5 くだらないなあ。いいなあ、こういうの。
LIVING ROOM

A-10

7 デビュー作とは思えないほど狂気の描き方が上手い。どこかですでに経験を積んだ人なんだろうなあ。今後に注目。 6 どこだ、どこで見たことがあるンだっ。うにゃあ、思いだせん。線的には、鬼頭莫広の線ににているが、そんなことは絶対ないんだろうけどなあ。
眉村くんの逆襲

シャーク闇鍋

3 いまどきリトルショップ・オブ・ホラーズかね。主人公の造形も古い…。 3 なんじゃあ、この造形はっ。コロコロじゃないと思いますが・・・

<ベスト>

●吉本 良い作品が多いのでかなり難しい。「花日記」との微妙な勝負になるがここはやはり「タウ」にしよう。
●久遠 聞くまでもないでしょう。標準以上だけど、詰めが甘い作品が多い中、突き抜けて良い作品がありますでありんす。その作品の名は、「花日記」

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