快楽天 99年9月号

ゴローダイナマイ!


かるま龍狼

吉本 自分の仕事を総括にかかっているのか、かれは。非常にオテガルなエロなので気楽ではあるが、今一つ物足りない感もある。
久遠 ふう、カラーなのに背景が・・・。まあ、夏のイベントではレー40bには行かないからいいんだけどね。
私の愛したコロッケじじい

朔ユキ蔵

吉本 人間は外見によって評価され、その位置を決定される。「人間は心だ!」と叫んだところで、それが通用する局面は皆無に近い。…皆、それが望ましいと分かってはいても。そしてそうであるがゆえに、人間の内面が現れる局面に、人は嫉妬を覚え、残酷さを発揮する。朔のこの作品は、人間の抱えるそうした残酷さと…そしてそれでも内面に目を向けようとする「勇気」を描き出していて、実にはっとさせられる。ざっくりとした描線世界と画面構成が緊張感を強化する。
久遠 相も変わらず痛い作品である。ところで何故に朔の単行本はこうも古本屋に出回りますかねえ。良い短編も入っているのに。
FLYING TEAPOT


えのあきら

吉本 さすがにえのあきらは上手い。無論セックスの限りないご都合主義など批判されるべき点もあるが、女の子のちょっとしたしぐさやポーズで、リアリティのあるエロを演出することに成功している。絵の、特にロリっ子の上手さは言わずもがな。欲を言えばラブコメ的構造を離れた作品も見てみたいものだが。
久遠 もうはじめの頃の話は覚えてないよ。ってゆうか、この作品よりも、扉の前のページの「ハート型時限爆弾」の広告にもうメロメロ。
阿佐谷腐れ酢学園


SABE

吉本 ウンコ太郎くんとは懐かしい。やさぐれているせいもあってか、ダークパワーが重要な位置を占めるこの「腐れ酢学園」は非常にテンションが高い。単行本になってくれるといいのだが。
久遠 ぽつりと下に加藤礼次郎のコミケ情報が載っているが、SABEのは載せなくて良いのか?
momo


神寺千寿

吉本 幼女専門の売春宿で、一人だけ「売れ残って」いる女の子。かの女は両親の借金のためにここに売られているのだ。それでもかの女はけなげに日々を過ごす。売春宿の管理人=「チーフ」に馬鹿にされつつも。非常にタイニーな作品世界。出てくるのは皆幼女であるし、描き方もまさしく少女漫画のそれだ。だが一方できちんとヤることはヤっている。そのギャップが漫画賞獲得の理由なのであろう。問題は現在流行の「エロの抽象化=ハイエンド」の流れにそのまんま乗っているところ。ご都合主義的なオハナシもそれを裏づける。どれだけ説得力のあるオハナシを紡ぎ出せるか、が今後の課題となろう。
久遠 手首足首が無いというのは結構気持ち悪いもんですね。サリーちゃんみたい。
天界公路


琴吹かづき

吉本 やはりこの人は独特である。独自の世界を持ち、それにあくまでも忠実であり続ける。その一貫した作劇態度には敬意を表しなくてはならない。
久遠 ・・・前世モノだったのか。
Paranoid

華沢れな

吉本 前回もそうであったが、現実と非・現実の境目が意図的に崩され、軽いめまいを覚える。それを強化しているのが端麗で説得力のある描線。この調子で妥協なくやって欲しいものだ。
久遠 なーんか、「ココロ」チックですねえ。このままだと、ソフ倫脱会くらって、設定とかかえてver1,01とかいって再販しなきゃならなくなるんだよ。
ひでおんな


板場広し

吉本 いかにもなエロ漫画的オハナシと展開。そしてへっぽこ極まりないオチ。まぁこれはこれでいいのかもしれない。エロ的には及第点なのだから。
久遠 夢オチか。ってゆうか、夢とか妄想オチなんてよくネームが通ったな。
メア


森永みるく

吉本 オハナシが動き、新たな展開になっている。オハナシそのものをハタンなくまとめようという試みは、まぁ悪くはなかろう。しかしやはり作家性とオハナシの間にある大きな乖離は埋めようがないように思う。終わるまで待ちますから、終わってから、お願いしますよ。
久遠 ちょこは?ねえちょこは?てゆうか、バカを描けーっ!
あほちん


松本耳子

吉本 耳子の徳目はイマドキの女子がいかにして欲情するかということを、きわめて赤裸々に…ちゅうかあまりにもそのまんまに…描き出すことにある。通りの真ん中でチンチン・マンマンをさらけ出して歩いているが如し。このズルムケ感覚はちょっと他では味わうことは出来ない。惜しむらくは下品になり過ぎているところか。もうチョイ洗練が欲しいところ。
久遠 どーも松本耳子は好きになれないんだよなあ。ってゆうか、欄外の作者からのメッセージが寒すぎ。
ワタクシ進化論


イサカミナミ

吉本 ほう、これは久しぶり。少し見ない間に随分線が洗練され、読みやすくなっている。ずっと休んでいた間この作品に注力していたことが感じとられる。セックスというものが動物的/野蛮とされる世界においても求め合う心、惹かれあうからだというオハナシもなかなか感じ入る点が多く、読ませる。未来のオハナシは現在の寓話。決して派手ではないものの、作品の魅力は強い。
久遠 なんか久しぶりだなあ。ちょっと鼻持ちならない感もあるが、割合好きな雰囲気なので。

<総評>

吉本 すべてを「FLAT」に持っていかれている感覚が強い。もちろんそれは雑誌の内容が村田蓮司の描く作品世界と共通しているからであるが(その分雑誌としての一体感があるということであるが)、村田世界と拮抗し、しのぐ作品が少ないことも意味する。私としては一体感のある雑誌も好きなので難しいところ。
久遠 なんかこの頃小さくまとめすぎてませんか?もっと破天荒なのを。もっと痛いのを!

<ベスト>

吉本 そうした状況のなかでも目をひく作家がいる。朔ユキ蔵とイサカミナミだ。朔は極端に文芸方向に特化したオハナシで、イサカは格段に洗練された描線世界で。
久遠 二回続けて朔というのもなんなので、イサカミナミに。

Back