モーニングマグナム増刊12号(99年12月発売)
ネオデビルマン 安彦良和 |
吉本 | 5 | …ていうか、何ですか?確信犯的に「デビルマン」を「ずらそうと」しているところは面白い。ただねぇ。フャンに殺されそうな内容ですよ?「ああっ柏木さんがひき肉にっ(必殺山本るりこ)」 |
久遠 | |||
MAKOTO 郷田マモラ |
吉本 | 編集方針に抗議を込めて0 | こうした表現こそ郷田の特徴であることはよくわかる。しかしだ。あまりに構図が単調で、のっぺりしすぎていはしないか。「そういうあなたもアップばっかり(必殺山本るりこ)」。オハナシも幽霊という段階でげんなりしてしまう。とにかく安定性ばかりが感じられ、アヴァンギャルディアがないのだ。これは「ビッグコミック」や「モーニング」であれば良いであろう。しかし「マグナム増刊」では、雑誌の勢いを削ぐ結果にしかならない。これは…ちょっとねえ。 |
久遠 | |||
Forget-Me-Not 鶴田謙二 |
吉本 | 7 | 最初の4ページの大ゴマの使い方にどきりとする。「いつのまにか2ページも埋まってしまったわ/まるで魔法だわ(必殺山本るりこ)」。今回長いという事は次回はなしですか?ただやはり丁寧に描いた絵は非常に流麗で宜しい。 |
久遠 | |||
テクリン 立沢直也 |
吉本 | 4 | テクノロジーに倫理性を求めること自体をパロディにすべきだと思うのだが。 |
久遠 | |||
月と雲の間
岩館真理子 |
吉本 | 8 | 離婚した母(給食の調理師)のもとを訪ねる娘。このお母さん、なかなか強烈。到底似合うはずもないガーリィな服を着てみたり、コンビニで立ち読みしている客の後ろからさらに立ち読みしたり。歯車が2コも3コもはずれてる感じなのだ。それはあらまほしきストーリーの流れにいちいち竿を差し、読者の思惑をつまずかせる。それはいらだちなのだが、独特な感興を読者に与える。「話田家」にも共通するオハナシの構成だ。こっちが先? |
久遠 | |||
ちひろ 安田弘之 |
吉本 | 6 | イブの日にストーカーを撃退するが、逆に刺されてしまうちひろ。そんな状況を楽しんでみたりもするのだが…ダメじゃん、ネタをばらしちゃ。 |
久遠 | |||
オスならなんでも! 倉田真由美 |
吉本 | 6 | 男を見る目がない、ということは、実はどうにもならないことであり、直そうとしても直るものではないのじゃあないか。だって人を好きになる、ってことは、問答無用のことなのだから。 |
久遠 | |||
さいぱら 田中タケ |
吉本 | 5 | 異能キャラ登場でギャグを古典的にしているが、可能性も狭めるので注意が必要だと思う。絵はきれい。 |
久遠 | |||
保健Gメン・ウキタカ 土屋瑞姫 |
吉本 | 8 | いやあ、はっきり言って絵柄を見た瞬間辟易したのですな。特に浮気主任の造形のステロタイプには。しかし読んでいくうちにぐいぐいとオハナシに引き込まれる。ありきたりのドラマと同じプロットながら、種明かしの仕方が実に上手いのだ。そして人間への(多少薄っぺらに見えなくもない)信頼も感じられる。丁寧な人物観察と描写を欠かさないところもよい。この手のハートウォーミング作品は、得てしてぞんざいに人物を描いてしまうが、この作品にはそれがない。次が楽しみ。 |
久遠 | |||
バカとゴッホ 加藤伸吉 |
吉本 | 8 | デコスケと一緒に風呂に入る堺。ありきたりの父親の言葉が、かえって深層からの言葉を紡ぎ出す。一見オヤクソクの展開ながらも、それをリアルな経験に変換する加藤の筆は力強い。 |
久遠 | |||
文車館来訪記 冬目景 |
吉本 | 8 | 何も言うことはありません。 |
久遠 | |||
サトラレ 佐藤マコト |
吉本 | 7 | 今度は成長過程にあるサトラレの物語。サトラレを育てるための閉鎖された町で、ややヒネくれて育っているサトラレ。住人は皆サトラレに気取られないよう注意を払っている…という息詰まるような展開。しかし最後はハートウォーミングでしめる。宜しいのではないか。 |
久遠 | |||
そのワケは。 サラ・イイネス |
吉本 | 4 | 可愛い猫さんですね。 |
久遠 | |||
aiko 中山和成 |
吉本 | 7 | たばこ屋の看板娘に惚れている青年。ひょんなことでたばこ屋の入院した婆さんを見舞うことになる。婆さんは一言「がんばれよ」と青年に言う。大胆に間を取った画面構成、空白の使い方のうまさ。もちろん絵は真っ白なのだがそれもまた心地よい。やや文芸的な方向に偏りすぎている嫌いはあるが、いくつも作品を描いていくうちに「練れて」来るであろう。楽しみな作家。 |
久遠 | |||
派犬社員ケンイチ タイム涼介 |
吉本 | 3 | 内容的にはかなり寒いですな。ギャグの「落としどころ」が明確になっておらず、常に流動的なのが痛い感じ。 |
久遠 | |||
女優ミドリ 八代富士夫 |
吉本 | 4 | オハナシとしては面白いのだが、どうにも(作者の/作品の)血圧が高そうで好きになれない。 |
久遠 | |||
台風と猫小屋 石田康成 |
吉本 | 6 | 猫の生死を母の喪失に重ねる主人公(おそらくフリーライター)。直接オハナシを描かないのは良い。母親のことばかり考えてるんじゃねえ!と言いたくもなるが。 |
久遠 | |||
社宅の人 山本深雪 |
吉本 | 0 | 眉一つ動きません。 |
久遠 | |||
雨太 正木秀尚 |
吉本 | 7 | 海へと帰ってゆく雨太。雨太の子を孕む麻代。静謐な画面による高い説得力で、上手く終わらせてくれました。次回作も読みたいもの。あんまりカッコつけないような奴を。 |
久遠 |
<総評>
吉本 | 一つ一つの作品は良いのだが、全体を通してみたときにどうにもつまらない。ありきたりの雑誌になりすぎてしまっているのだ。恐らくは郷田マモラが最初に来ている、ということが強く影響しているのだと思われる。これだけアクの強い作家を最初に持ってきてしまうと、全体がそれに規定されてしまうのだ。オハナシの内容や絵柄が凡庸きわまりないのも致命的。もうダメ、って感じですか。清田も松田も載ってないし。 |
久遠 |
<ベスト>
吉本 | 一つ一つの作品は優れているのでちょっと難しい。ここは岩館真理子の「月と雲の間」にしよう。いらつくオバハンの描写が!! |
久遠 |