モーニングマグナム増刊13号(2000年2月発売)

ちひろ

安田弘之
吉本 安田は常に人間の弱い面、しょーもない面に着目する。それがドラマの説得力を増す。
久遠    
サトラレ

佐藤マコト
吉本 独特の「サトラレ世界」のようなものが出来あがっているのはよろしい。オハナシ全体もハートウォーミングでよろしい。しかし…サトラレが実際に直面するであろう「苛烈さ」が全体的に弱められているのが気になるところ。弱めるところにこの人の作風があるのは分かるのだが、やさしいだけの人って物足りない(ほりのぶゆき『エコロG』より)。無遠慮なやさしさは、人をより深く傷つけることもあるのだから。
久遠    
しゃぼてん

野中英次
吉本 池上遼一風でくだらないネタ、といういつものパターンは変わらないが、面白いとは思う。
久遠    
女優ミドリ

八代富士男
吉本 オハナシとしては実に面白い。女優という役割に耽溺(?)するミドリの描写は迫力がある。その点は評価できるのだが、二つの点で反発を感じてしまう。第一にはドラマの作り方が非常に古典的であること。別にこれだけでは悪いことではないように思えるが、ドラマの作り方自体がやや無自覚的に見えてしまうのだ。第二に多分これを描いている人は私と最もソリが合わなそうな人だと思うこと。…ま、二つ目は冗談だが。
久遠    
ザ・グレートエスケープ

室井大資
吉本 本誌の方に載るという受賞作品が見てみたくなる。惜しむらくは世界滅亡ネタが陳腐化していることだが、よくあるネタを上手く料理している。
久遠    
そのワケは。

サラ・イイネス
吉本 猫の魅力が増している。
久遠    
MAKOTO

郷田マモラ
吉本 出来あがった作風に文句をつけるのは申し訳ないのだが、やっぱり構図がごく単調。自らの絵柄を守ろうとするあまり、大胆な構図や論理性のある構図を取ることができなくなっているのだ。オハナシの保守性とご都合が苛立ちを増加させる。私にはちょっと合わない。
久遠    
ネオデビルマン

田島昭宇
吉本 田島登場で期待していたところだが、内容的には『デヴルマン』のクライマックスを田島流に処理したようなもの。田島ならではの思想性の導入が欲しかったところでかなり薄味。
久遠    
社宅の人

山本深雪
吉本 何も言うことはありません。
久遠    
奇妙なボーダーライン

斉藤富士夫
吉本 この人、随分歳だったんですね。後ろ2本は良かったが、前1本はちょっとダレる感じがするのが残念。
久遠    
文車館来訪記

冬目景
吉本 今回はきちんと色も塗られており、完成度がずっと高い感じ。そうでなくても冬目の筆の迫力はたいそうなものなのだが。次回最終回ですか。もったいないところではあるが、きちんとまとまりそうなので期待できるところ。
久遠    
保険Gメンウキタカ

土屋瑞姫
吉本 端から見るとクロの事件を、物証を積み上げることでシロにする。逆ミステリの面白さといえようか。前回に続きロジックの組み立てと、メディアに対するさめた態度が面白い。予想を簡単にすくわれる快感。ちょっとドンデンが足りないようにも思うが、この調子で頑張って欲しいもの。
久遠    
カンパーニャ

小椋冬美
吉本 都市の出身者は田舎の感覚を理解するのに時間がかかるという。それは時間の進み方が違うからだというが。漫画全体に田舎の時間が流れているのが好ましい。
久遠    
魔呆症ハチスケ

タイム涼介
吉本  
久遠    
SUN

五味裕子
吉本 ドライな態度を取る産婦人科の女医。その女医が堕胎胎児を不正に使っているという情報を得た刑事。対立する二人…という筋。ドラマの作り方は昔ながらのもので、ぶっきらぼうだが実はハートフルというのは読めてしまうところ。しかし女医に反発する看護婦や、最後まで種を明かさない展開など、落としどころは実に上手。繊細な線も雄弁に物語を彩る。胎児を孕み、出産するという経験は男にはどうしても出来ないことなので、その経験/感覚に依拠してオハナシを進める作者の方法論は実に興味深い。次も読みたいところ。
久遠    
スピークフード・リトルマン

杉山凡銃
吉本 今風の絵柄、ブラックな内容。カネコアツシのように育つと面白いのだが。
久遠    
トライアングル

寺西徹記
吉本 トーンを使わず、カケアミで構成した画面はそれだけで惹かれるところ。しかしカードの妖精が出てきた瞬間にすべてぶちこわし。この人は前作でも「クサい」ところがあったが、やっぱりこういう人だったのか。絵に魅力がある人なので、地に足のつかないフャンタジイに逃げるのではなく、もっと人間に即したオハナシを作ってほしいところ。
久遠    
バカとゴッホ

加藤伸吉
吉本 大きな回り道をし、いろんなものを失ったりもしたが、再びスタートラインに立つ二人。かつてのスタートラインは、若さのゆえかまだ茫漠としていた。しかし今度のスタートラインは、失ったものがある分、辛い目を見た分、地に足のついた、そして希望にあふれたものになっている。底流に流れるオプティミズムも全然オッケー。ゴッホの『喪失』は、読者も強く感じるところなのであるから。確信に満ちた加藤の筆は実に力強い。
久遠    
さいぱら

ちゃおス
吉本 4ページですか。キャラクタがカワイイのでもっと長尺でもいいと思うのだが。
久遠    

<総評>

吉本 「ネオデヴルマン」にけりをつけることで、新しい雑誌に変わろうとしているのは見て取れる。しかしそれはどうも保守的な方向に向かっているように思う。新人を積極的に登用する役割を忘れて欲しくないものである。
久遠  

<ベスト>

吉本 クサイのだが、あまりにもクサイのだが、でもやっぱりじんと来る。それは作者に確固たる「確信」があるためだ。『バカとゴッホ』
久遠  

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Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:16:11 JST