モーニングマグナム増刊14号(2000年4月発売)
蚤の王 安彦良和 |
吉本 | 6 | 古代日本をモチーフにしているとは、かつての「大国主」を念頭においているのか。もちろん安彦独特のつかみは万全。一話目から読者をぐいぐいと惹きつける。もちろん、そうである分、読者の期待も高まるというわけだ。…二重に! |
久遠 | |||
保険Gメンウキタカ 土屋瑞姫 |
吉本 | 6 | 今回はクロをシロにするのではなく、クロなんだけど魂で見逃す、という展開。親に捨てられた子どもたちが自分たちで生きていこうとする描写は「ぶんぷくちゃがま大魔王」ですでにやられているのがちょっと痛いところか。もうひと押しほしい。 |
久遠 | |||
MAKOTO 郷田マモラ |
吉本 | 3 | …。 |
久遠 | |||
GOD'S MARBLE 木場/佐藤 |
吉本 | 5 | オーストラリアには存在しないはずのファイア・オパールの謎を追って旅立つ二人。原作木場とあるが、それが何?描線の伸びやかさや独特のパースの取り方など、十分に佐藤の漫画になっている。アクの強さに期待。ただ、オルタナティブという感じではなく、基本的な雰囲気は実に正統派。もう昔の前衛性はなくなってしまったのだね。それは残念。 |
久遠 | |||
しゃぼてん 野中英次 |
吉本 | 5 | マジな描線でバカな話をやるのがいい。まあこの人の基本的方法論であるが。 |
久遠 | |||
ちひろ 安田弘之 |
吉本 | 7 | 安定した状態をあえて壊そうとするちひろ。今は十分に幸せなのに、だからこそそこから逃げ出そうとする。人間はそうした不合理に向かう傾向も強く持ち合わせている。その「どうしようもなさ」を描き出そうとしているのがよい。 |
久遠 | |||
文車館来訪記 冬目景 |
吉本 | 6 | 最終回なのに線が荒れているのが残念。確かに「羊」「イエスタディ」と重なっているから、仕方ないのかもしれないが。是非単行本では加筆修正を希望。 |
久遠 | |||
月と雲の間 岩館真理子 |
吉本 | 7 | 以前掲載された調理師のお母さんと娘のオハナシ。このお母さんが相当なもの。生活に魂が磨り減っちゃって、自分の行動がどんなものかわからなくなっちゃっているのですな。コンビニで立ち読みしている人の後ろからまた読んだり…というアブない描写は影を潜めているものの、それにしてもこの人の行動ロジックは常軌を逸している。それをつらつら眺める快楽!ぐらぐらになる常識の観念! |
久遠 | |||
女優ミドリ 八代富士男 |
吉本 | 4 | 「発情期」に入り、やりまくりのミドリ。はあ。血圧高いっすね。血圧の高い人には良いでしょう。私にはやっぱりダメです。 |
久遠 | |||
サトラレ 佐藤マコト |
吉本 | 7 | 医者を目指すサトラレ。病人に真実を覚られては困るため、医師の道を断念するよう仕向けられる。どうにもならない事情のため、国家はかれを医師にするが…。巷では絶賛ですなあ。確かに思考実験のうえで作られたオハナシに対して誠実だと思う。定められた舞台の上で、ベストを尽くしているとは思う。だがその舞台設定そのものがどうにも気に食わないのですな。超常的な存在を設定することで、オハナシに「どうにもならなさ」が欠けてしまうのですな。ワイルドカードは苛烈さを台無しにして、強い痛みの照らし映えとして現れる喜びや感動を差し引いてしまう。惜しい作品。サトラレ禁止、ちゅうのはどうすか。 |
久遠 | |||
さいぱら ちゃおス |
吉本 | 5 | 可愛いキャラ、ブラックな展開。 |
久遠 | |||
そのワケは。 サラ・イイネス |
吉本 | 4 | 大阪的ぶっきらぼうさとでもいうのだろうか。それはいいのだが、それだけという気もする。 |
久遠 | |||
MATCH 村上達也 |
吉本 | 7 | KOを恐れないボクサーとはずれ者のトレーナー。噛ませ犬となることを迫られ、リングに臨むふたりだが。ボクシング漫画に必要な迫力とスピード感は相当なもの。そしてボクシング、という命を削った戦いに臨むふたりの姿は心をうつ。次回に期待。 |
久遠 | |||
魔呆症ハチスケ タイム涼介 |
吉本 | 5 | ギャグは波長が合うか合わないかによっても面白さが変わってくる。まだまだこの人とは波長が合わない感じ。 |
久遠 | |||
カンパーニャ 小椋冬美 |
吉本 | 5 | ネタのせいもあってか、のーんびりとした展開。それがこの作品のキモでありよさなのだが、やっぱり地味。 |
久遠 | |||
社宅の人 山本深雪 |
吉本 | 1 | 何もいうことはありません。 |
久遠 |
<総評>
吉本 | 「ムーミン谷」の季節は終わり果ててしまった。オルタナティブな漫画、前衛的な漫画はすっかり影を潜めてしまった。確かに手堅い作品をそろえた漫画雑誌ではあると思う。面白い作品もあるとは思う。だが、そうした雑誌はほかにいくらでもあるのであって、そんな中こうした方向を目指すのは、文化的には堕落である。もう期待してないからいいんですけど。 |
久遠 |
<ベスト>
吉本 | なし。 |
久遠 |
Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:16:11 JST